破砕帯地すべりの多面的解析とその対策 ~分杭峠地すべりについて~ 治山学研究室 山口 有理
Keyword:中央構造線,破砕帯, すべり面,すべり粘土 地すべり地の概要 調査地の位置 地質 地形 降雨
調査地の位置 長野県上伊那郡長谷村と同県下伊那郡大鹿村の境界である分杭峠の長谷村側斜面 標高約1,400m 地すべり地は三峰川支流 粟沢川の源頭部 地すべりの末端部は 小渓流が最初に合流 する尾根にある
地質 地すべり地は中央構造線の ほぼ真上に位置している 中央構造線によって内帯と外帯が分けられている 地すべり地は中央構造線の ほぼ真上に位置している 中央構造線によって内帯と外帯が分けられている 地すべり地付近は鹿塩構造帯と呼ばれる幅約1kmほどの地質帯である 基盤岩は風化が進み脆弱である
地形 中央の緩斜面を囲む形で急斜面が分布し凹状の地形を呈している 地すべり地の末端部は閉塞している 粟沢川は中央構造線による構造谷である
降雨 梅雨と台風・秋雨による降水が比較的多い太平洋岸式の気候である 平成10年春先の積雪は非常に多かった翌、平成11年春先の積雪は平年並み 大鹿村日降水量 伊那市における積雪量 20 40 60 80 100 120 140 70 60 50 40 30 20 10
地すべりの状況 すべり粘土について 土塊移動の変化について 降雨と土塊移動について 対策工の進行と土塊移動について
すべり粘土について 地すべり地の主動部を三区分すると… 頭頂部の地表付近は粘性土、粘土混じり砂礫が中心 末端部は強粘土化しており灰色と灰白色の細互層状 中腹部では中間の様相を呈している 中腹部、末端部ともに一部地表に露出している
すべり粘土について
土塊移動の変化について 平成元年頃からから分杭峠では地すべりが発生していたと思われる 平成9年の春先頃から活動が活発化した 土塊移動は最大でも一日あたり5cm程であった この地すべりの原因は脆弱な基盤岩の上に捨て土をしたことである
降雨と土塊移動について 伸縮計の変位は降雨との整合性が認められる 孔内水位の変位は降雨後に上昇することが認められる 土塊移動は、降雨後地下水位がすべり面よりも高くなることで加速すると考えられる
降雨と土塊移動について 孔内水位の変化 伸縮計日変位量 -30.00 -25.00 -20.00 -15.00 -10.00 -5.00 A1−1 A1−2 A2−1 A2−2 A2−3 A2−4 B1−1 B1−2 B3−1 B3−2 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 S‐1 S‐2 S‐3 S‐4 S‐5 S‐6 S‐7 S‐8 伸縮計日変位量
対策工の進行と土塊移動について 対策工の進行に伴い、降雨後の土塊移動が緩やかになっている 孔内水位が緩やかに下降しているのは、緊急対策の地下水排除工によるものと考えられる 伸縮計の変位から地すべりは収束に向かっており、今後対策工事は順調に進むと思われる