静電場、静磁場におけるMaxwellの式 電磁気学C Electromagnetics C 4/23講義分 静電場、静磁場におけるMaxwellの式 山田 博仁
Maxwellの方程式 物質中(勿論真空中も)の電磁場を規定する基本法則 ファラデーの電磁誘導則 アンペール・マクスウェルの法則 電場に関するガウスの法則 磁場に関するガウスの法則 E(x, t): 電場 (V/m) SI国際単位系 H(x, t): 磁場 (A/m) D(x, t): 電束密度 (C/m2) 変位電流 B(x, t): 磁束密度(磁場) (Wb/m2) ie(x, t): 伝導電流密度 (A/m2) re(x, t): 真電荷密度 (C/m3)
Maxwell方程式の意味 1. ファラデーの電磁誘導則 磁場(磁束密度)の時間的減少が、その周りに電場の渦を右ネジ方向に作る B(x, t1) E(x, t1) B(x, t2) E(x, t2) B(x, t3) E(x, t3) 変化する磁場の周りの電界は、そこに導線(コイル)が有る無しに関わらず生じる I コイル たまたま導線が有ると、導線内の自由電子が電界により動き、電流 I が流れる
Maxwell方程式の意味 2. アンペール・マクスウェルの法則 ie(x, t) H(x, t) 定常電流が、その周りに磁場の渦を右ネジ方向に作る さらに、電場(電束密度)の時間的増加が、その周りに磁場の渦を右ネジ方向に作る E(x, t1) H(x, t1) E(x, t2) H(x, t2) E(x, t3) H(x, t3)
Maxwell方程式の意味 3. 電場に関するガウスの法則 D(x) re(x) 電荷密度が電場(電束密度)の発散を引き起こす 4. 磁場に関するガウスの法則 B(x) rm(x) 磁場(磁束密度)の発散源(磁荷)は存在しない ローレンツ力 ニュートン力学と電磁気学を関係付ける式 磁場 B v F +q ニュートン力学 電磁気学
ファラデーの単極誘導 [1] 起電力は発生するのか? [2] 起電力は発生するのか? 回転する導体円盤 V B + - S N w 静止した永久磁石 V B + - S N w 回転する磁石 静止した導体円板 [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない
ファラデーの単極誘導と単極誘導モータ [3] 起電力は発生するのか? [4] 単極誘導モータ 回転する導体円盤 V B + - S N w 回転する磁石 + - w S N 永久磁石と円盤が一体になっていても回る 単極誘導モータに関しては、以下のURLを参照 http://sysplan.nams.kyushu-u.ac.jp/ gen/hobby/elec/Motor/UniMotor.html [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない http://www.youtube.com/watch?v=7CiEFsQstsI
クイズ [5] 起電力は発生するのか? [6] 起電力は発生するのか? V B + - S N 静止した永久磁石 v 静止した導体棒 v [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない
クイズ [7] 起電力は発生するのか? ローレンツ力 で記述される v は、何の何に対する速度なのか? V B + - S N それとも、荷電粒子の観測者に対する速度 ? 注) [5] ~ [7]の実験を行ったとしても、外部回路に起電力(電流)を取り出すことはできない。何故なら、外部回路にも導体棒で生じた起電力を打ち消す方向に起電力が発生するから。従って、これらはあくまでも思考実験である。 [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない
静磁場中を運動している荷電粒子のパラドクス x y z 一様な磁場 B0 v F +q x y z 一様な磁場 B0 v +q F v = 0 F = q v B ローレンツ力が働き、粒子はこちらに近づいて来る 荷電粒子と同じ速度で運動している観測者から見ると v = 0 従って、ローレンツ力Fは働かず、粒子はこちらには近づいて来ない。本当か?
より本質的な量としてのベクトルポテンシャル この問題は、磁場 B で考えると分からなくなる。何故なら、一様な静磁場 B(x, t) = B0 は 互いに等速度運動をするどの座標系から見ても B0 だからである。 しかし、ベクトルポテンシャル A(x, t) には違いがある。 従って、ベクトルポテンシャル A(x, t) で考えると理解できる。 一様な磁場 B ベクトルポテンシャル A ベクトルポテンシャル A は磁場 B よりも本質的な物理量である !!
より本質的な量としてのベクトルポテンシャル 一様な磁場 B を作っている根源(例えば電流の流れているコイルのようなもの)がロケットの中にある場合、同じロケットに乗っている観測者から見るとベクトルポテンシャルは時間的に変化しない。つまり、∂A/∂ t = 0 この場合、荷電粒子に力 F は働かない v x +q v F 一様な磁場 B0 z ベクトルポテンシャル A y
より本質的な量としてのベクトルポテンシャル ところが、一様な磁場 B を作っている根源(電流の流れているコイル)がロケットの外にある場合、ロケットに乗っている観測者から見るとベクトルポテンシャルは時間的に変化している。つまり、∂A/∂ t ≠ 0 この場合、荷電粒子に力 F が働く v x +q v F 一様な磁場 B0 z y ベクトルポテンシャル A
ローレンツ力と相対運動 Fy’ = q v×Bz x y z K E Bz x’ y’ z’ K’ v q Fy’ -v 電場が無く、z 方向の磁場 Bz しか存在しない場合 x’ y’ z’ K’ v + q 粒子はいつまでも静止し続ける Fy’ それなら、粒子にはローレンツ力が作用するのか? Fy’ = q v×Bz -v ところが、座標系 K に対して –x 方向に速度 v で運動をしている座標系 K’ から見ると、荷電粒子 q は +x 方向に速度 v で運動をしていることになる
種明かし 電場や磁場は座標系によって見え方が変わる ベクトルポテンシャルが時間的に変化する場合、電場 E が見えてくる。 先のケースでは、座標系 K においては電場が無いと言っているから、ベクトルポテンシャルは時間的に変化していない。つまり、∂A/∂ t = 0。(電荷も無いとして、従って ϕ = 0としている)しかし、座標系 K に対して等速度運動している座標系 K’ から見ると、 ∂A/∂ t ≠ 0ために、式(1)より、電場 E が存在することになる。この電場が Fy’ を打ち消す方向に作用するために、座標系 K’ から見ても粒子はこちらには近づいては来ない。 座標系 K この場合の電磁場は、座標系 K から見ると 磁場 Bz に見える。 座標系 K’ ところが、別の座標系 K’ から見ると 磁場 Bz’ と電場 Ey’ に見える 電磁場 Bz 電場や磁場は座標系によって見え方が変わる。 Bz’ 普遍的なのは電磁場 !! Ey’ 砂川重信著 電磁気学 岩波書 p.162参照
静電場、静磁場 全ての物理量が時間 t に依存しない時、Maxwell方程式は以下のように電場、 磁場に対して各々独立な方程式系に分離できる 静電場に関する基本法則 媒質中での電磁場を扱うための構造関係式 定常電流による静磁場の基本法則 電荷も電流も時間的に不変である限り、電気と磁気は別々の現象と見なせる 当初は、電気力(クーロン力)と磁力とは全く別のものだと考えられていたが、 Maxwellがこれら二つの力を電磁力として統一した。(力の統一理論)
力の統一理論 物質間に働く4つの基本的な力(相互作用) 長距離 短距離 10-15m 力の働く距離 1m 1010m 強い 弱い 102 1 10-40 力の強さ 量子色力学 大統一理論 強い相互作用 核力 電磁力(ローレンツ力) 摩擦力 弱い相互作用 核力 電弱統一理論 電気力(クーロン力)と磁力の統一(マクスウェル) 重力 天体間引力 ニュートン 万有引力 慣性力 超弦(ひも)理論? 一般相対性理論(アインシュタイン)
静電場 静電場の基本方程式 第(1)式より、静電ポテンシャルf(x)が定義できる ベクトル恒等式 第(3)式の関係を用いて、上式を第(2)式に代入すると、以下のポアソン方程式を得る (局所的な電荷密度分布とその周りの電位を関係付ける) 上記ポアソン方程式の無限遠方でゼロとなる解は、 上式を(4)式に代入することにより、電場E(x)が求まる
静電ポテンシャル f の意味 山の等高線 f(x) スカラー量 山の斜面の勾配 E(x) ベクトル量 {Ex(x), Ey(x), Ez(x)} 山の等高線(スカラー量)と斜面の勾配(ベクトル量)とは同じ情報(地形)を伝えている 等高線に相当するのが静電ポテンシャル(電位) f であり、電位の勾配が電場 E (ベクトル量)である 静電ポテンシャルはスカラーなので、スカラー・ポテンシャルとも呼ばれている
静電場 微分形式でのガウスの法則 (局所的な電荷密度分布とその周りの電束密度の発散を関係付けている) 両辺をある体積 V について積分する dS V S n D(x) re(x) Gaussの定理 積分形のガウスの法則
球状電荷分布の周りの静電場 誘電率が e、半径が a の球内に電荷が密度 r で一様に分布している。球の中心Oより r だけ離れた点Pにおける電場を求めよ。 電場に関するガウスの法則 V n dS (局所的な電荷密度分布とその周りの電束密度の発散を関係付けている) a O P r 構造関係式 S E(x) (局所的な電荷密度分布とその周りの電場の発散を関係付ける式) ガウスの定理 (r > a) 電荷分布が球対称だから、 電場は球の中心から放射状 (r < a)
静磁場 静磁場の基本方程式 第(2)式のガウスの法則から、磁場B(x)はベクトル・ポテンシャルA(x)を用いて ベクトル恒等式 第(3)式の関係を用いて、上式を第(1)式に代入し、ベクトル公式を用いると以下の式を 得る 上式の解は、 上式を(4)式に代入することにより、磁場B(x)が求まる ビオ・サバールの法則
静磁場 微分形式でのアンペールの法則 (局所的な電流密度分布とその周りの磁場の回転を関係付けている) dS ie(x) S dr C n(x) H(x) 両辺をある面 S について積分する Stokesの定理 Ie H(x) 積分形式でのアンペールの法則 r H(r) 2πr H(r) 直流電流 Ie から距離 r だけ離れた点での磁場の強さ H(r) は ?
ベクトル解析の復習 重要なベクトル恒等式 ガウスの定理 ストークスの定理 dS F V S n dS F S dr C n
ベクトル解析の復習 演算子∇(ナブラ)と D(ラプラシアン)の意味 (ベクトルと見なせる) (スカラーと見なせる) 勾配(gradient) ‥ スカラー量に作用して、ベクトル量を導く演算子 発散(divergence) ‥ ベクトル量に作用して、スカラー量を導く演算子 ナブラ∇と E(x)のスカラー積 スカラー積(内積)
ベクトル解析の復習 回転(rotation) ‥ ベクトル量に作用して、ベクトル量を導く演算子 ナブラ∇と E(x)のベクトル積 ベクトル積(外積)
電磁気学のパラドックス 磁場 電流 1 2 力 電子と一緒に動いている座標系から見るとこのように見える - 1 2 一本目の導線を流れる電流 ファインマン物理学Ⅲ13-6 磁場 電流 1 2 力 電子と一緒に動いている座標系から見るとこのように見える - 1 2 一本目の導線を流れる電流 が作る磁場により、二本目の 導線を流れる電流(電子)が 力を受ける (F=q v×B) 同一方向に電流が流れている導線間には引力が働く 磁場は存在しない? 二本の導線間には、クーロン力による反発力が働く