訪問面接調査における 回収率低下幅の相違について 日本行動計量学会 2016年9月1日 国士舘大学 山田 茂
調査の仕様⇒不能 ①抽出時期と実地調査の間隔⇒「転居」「長期不在」 ②実地調査の期間の長短⇒「一時不在」 ③標本規模・地点当たり標本数 ⇒必要な調査員・全般的な負担 ④主題・質問数 ⇒ 「一時不在(ソフトな拒否)」 「拒否」 *適切な訪問時間の判断・説得: 調査員の技量などで変動 ⇒「一時不在」「拒否」 調査員は、与えられた枠内で活動
訪問面接調査の手順 住基台帳・選挙人名簿 地域年齢別 抽出標本 訪問 理由別 調査不能 回収標本
6タイプの不能のうち「一時不在」と「拒否」が大半。
①抽出時期 ・一部市区町村:閲覧日をネット上で公表 ・月次時事世論調査:C社 *抽出:毎年2・3月、8・9月 住基台帳からは少数 (選挙人名簿の更新は3か月毎) ⇒年度後半に回収率低下 ・内閣府政府広報室:C社・S社 *住基から抽出:実地調査の概ね4週間~1週間前 ・「国語」:C社 ・「土地問題」・「食育」:C社・S社 *住基から抽出:広報室分とほぼ同様の日程
20代は全体より高い
15年 名簿登録者数(全国計)は229,200人
②実地調査の期間 全国 住基台帳等から無作為抽出:主に2006年度実施分~ ・内閣府政府広報室 ⇒C社・S社(各年度) NR社(2010年度7件) *対象3000人( 11日間 「外交」のみ年次 69件) 1地点 C社:9~17人、S社:10~17人 *5000人(18日間 12件) :同上 *10000人(18日間 「国民生活」「社会意識」のみ 18件) 1地点 C社:17~33人、S社:20~33人 ・月次時事世論調査⇒C社 対象2000人 上旬木曜~4日間 1地点13人前後
広報室以外の年次面接調査 *いずれも対象3000人 210地点 *地点当たり標本数は両社の同規模の他の調査とほぼ同じ *いずれも対象3000人 210地点 *地点当たり標本数は両社の同規模の他の調査とほぼ同じ 国交省「土地問題」(20歳以上) :C社・S社 日数:~2013年度:19日⇒14年度:11日⇒14年度:17日 文化庁「国語」(16歳以上、2005年度~予備標本使用) :C社 日数:~2011年度:20日以上⇒ 12年度~:16日 食育推進室「食育」(20歳以上) :C社・S社 日数:~2008年度:11日⇒ 2009年度~: 18日 *「国語」・「食育」:質問は「意識」・「意見」+「実態」
③標本規模と登録調査員 C社 760名 2015年4月 C社サイト S社 890名 S社サイト NR社(2010年度のみ) 約1100名 NR社サイト *内閣府調査 計画標本1万人:調査地点350か所 同3000人・5000人: 同210か所 *時事世論調査 同2000人: 同157か所 上旬 *C社エリア抽出 同4000人: 同157か所 上旬
「熟練の調査員は不足気味」の傍証? *JGSS調査員の訪問状況 C社 8000人対象 面接・留置併用 正規の調査期間:2006年10月3日~12月3日 *対象者本人に会えるまでの訪問 開始直後よりも第3~5週に約50%集中 (2005年は開始第1週~第6週が高水準) 「かけもちの可能性」 保田(2009) C社:広報室「外交」 10月5日~15日 3000人 「時事世論」 10月6日~9日 2000人 広報室「臓器移植」 11月9日~19日 3000人
④主題・質問の順序 ・月次:時事世論調査: 固定8問(政党/内閣支持 +暮らし+好きな/嫌いな国) +2主題(多様)+FQ ・年次:ほぼ固定 ・月次:時事世論調査: 固定8問(政党/内閣支持 +暮らし+好きな/嫌いな国) +2主題(多様)+FQ ・年次:ほぼ固定 内閣府政府広報室(3調査)・同食育推進室・ 国土交通省「土地問題」:主題関連+FQ 「国民生活」収入項目:2006年度~削除 ・年次以外:政府広報室(3調査以外、大半2主題)・ 文化庁「国語」:主題関連(18~26問+枝問)+FQ
時事調査・広報室調査の質問数 *時事世論調査:計15問前後+枝問+フェイス項目 *広報室:枝問・フェイス項目を含む 3000人調査:1主題20~30問 「外交」など ほとんど2主題 5000人調査:30問前後 例「女性」32 「防災」29 10000人調査:40問前後 「国民生活」「社会意識」
時事世論・広報室調査の回収率 2006年度~2015年度(2011年度を除く)
内閣府・調査不能の増加 「食育」以外は拒否の増加が大きい
時事世論調査 利用上の制約と代替策 地域別(大都市・町村部など)・年齢別標本数:未公表 不能理由:未公表 標本の地域別配分: 時事世論調査 利用上の制約と代替策 地域別(大都市・町村部など)・年齢別標本数:未公表 不能理由:未公表 標本の地域別配分: エリア抽出調査・C社受託広報室調査と共通と想定 上記で利用 「住基台帳の地域別20歳以上日本人」 種田(2015) ・全国の年齢層別比率⇒抽出標本での比率と想定 *C社:エリア抽出 2007年開始 総回収数以外は未公表
一時不在 2006年~15年度 11年度を除く
拒否 2006~15年度 2011年度を除く 2006年S社 拒否22%
調査員の登録先 2011年 マーケッティングリサーチ協会 22社1125人 調査員の登録先 2011年 マーケッティングリサーチ協会 22社1125人
LH 12年度12月16日 14年度12月14日 UH13年度7月21日 14年度2月は祝日含まず
2015年度回収標本に占める比率
同時期の調査での回収標本 1人世帯の比率
むすび:回収率低下が小さい調査 ・時事世論調査: 不利な点:短い日数 選挙人名簿 3か月ごとに更新 抽出が半年周期 ⇒「転居」増 有利な点:必要な調査員が少ない 地点当たり標本数が少ない⇒ 「一時不在」 冒頭の質問固定・質問数がやや少ない⇒「拒否」 ・政府広報室 標本5000人(3000人、10000人と比べて) 地点当たり:3000人並み 期間:10000人並み 調査員の負担が相対的に小さい ⇒ 「一時不在」 主題1件だけ 面接途中の「拒否」減?
文献 保田時男(2009) 「JGSSにおける調査員の訪問記録の分析」 『日本版General Social Surveys研究論文集[8]』 山本健浩(2012)「対象者のニーズおよび調査員の稼働状況に関する一考察」『新情報』100 佐藤寧(2013) 「内閣府政府広報室の世論調査」『中央調査報』671 事前・実査中は内容非告知 種田 啓介(2015)「中央調査社のサンプリング」『中央調査報』696 松岡 亮二・前田忠彦(2015)「『日本人の国民性第13次全国調査』の欠票分析」『統計数理』63-2
配布 スライド 台帳閲覧公表 50部
残り 現況掲載調査の調査期間日数 休日が含む日程か否か 内閣府オムニ比率 他調査並行日程 『現況』からの脱落 国語 拒否と他の不能 現況掲載調査の調査期間日数 休日が含む日程か否か 内閣府オムニ比率 他調査並行日程 『現況』からの脱落 国語 拒否と他の不能 2015年 国民生活 社会 外交 抽出日 2010年~ 時事 20代以外の回収率 06~10年 上昇の理由 不能の内訳 新情報センター 山本健浩