本間 希樹 (国立天文台) @メタノール研究会(2007/Nov/22)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
パルサーアストロメトリー観測について 亀谷 收 (国立天文台水沢 VERA 観測 所) Radio Pulsars ~1700 SMC 1 LMC 4 Supernova Remnant ~20 Globular Cluster 5 “Recycled” 15 Binary 6 Planets 1 1.
Advertisements

口径合成によるメーザー源の 時間変動の観測 SKA に向けて 岐阜大学 高羽 浩. 東アジア VLBI 網の 22GHz 日本 野辺山 45m 、鹿島 34m 、 高萩、日立、つくば、山口 32m 、 VERA20m× 4 北大、岐阜大 11m 、水沢 10m 韓国 KVN20m× 3+測地 20m.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
かなた望遠鏡による NGC2264の可視赤外同時観測
星形成領域NGC2264における AA Tau 型星の可視赤外同時観測
高感度 VLBI 時代の QSO ターゲットを考えた
野辺山 45 m 望遠鏡用 100 GHz 帯 2SB 受信機システムの開発
川口則幸教授 退任記念ワークショップ 日通機における 電波天文機器の開発 2014年6月3日 日本通信機株式会社 武井 健寿.
W31A領域に付随する 水蒸気メーザーによる3次元的速度構造
三鷹FX相関器互換の ソフトウェア相関処理システムの構築
電波分野での主たる 偏光測定原理 藤沢健太(山口大学) 研究会「次世代の多波長偏光サイエンスの開拓」 2011/09/28-29@三鷹.
VERAによるミラ型変光星 R UMaの年周視差計測(改)
晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~
VERAのプロジェクト観測とその成果 本間 希樹 国立天文台 水沢VERA観測所.
山口大学電波グループ ブレーザー電波データの紹介
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
みさと8m電波望遠鏡の性能評価 8m (野辺山太陽電波観測所より) (New Earより) 和歌山大学教育学部 天文ゼミ  宮﨑 恵 1.
ガンマ線連星LS 5039におけるTeVガンマ線放射とCTA
須藤 広志 高羽浩、川口則幸、 他光結合VLBIグループ
木村公洋、小川英夫、大西利和(大阪府立大学・理)
茨城局における 22 GHz 帯受信システム整備状況
3.8 m望遠鏡主鏡エッジセンサ 開発進捗 京都大学 理学研究科 M2 河端 洋人.
米倉 覚則 (茨城大・宇宙科学教育研究センター) Y. YONEKURA (Ibaraki U.)
高周波観測 大田 泉 (甲南大学理工学部) 空気シャワー電波観測ワークショップ2014@甲南大
本間 希樹 Mareki Honma (水沢VLBI観測所)
関戸 衛、岳藤一宏 情報通信研究機構 鹿島宇宙技術センター 時空標準研究室
2007年9月19日 小林秀行 (国立天文台、水沢VERA観測所)
ALMA Band10用 導波管型LOカプラ一体型低雑音SISミクサ
電離領域の遠赤外輻射 (物理的取り扱い)      Hiroyuki Hirashita    (Nagoya University, Japan)
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
M33の巨大HII領域 NGC604における、GMCごとの物理状態の違い
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
茨城 32 m 電波望遠鏡(高萩局・日立局)の整備状況
グリシン前駆体、メチレンイミンの多天体探査
Taurus-Auriga association
脈動変光星による銀河系研究と 位置天文衛星の重要性
HⅠ輝線を用いた 高銀緯分子雲の観測的研究
SFN 282 No 担当 内山.
大学VLBI連携の成果 藤沢健太(山口大学)
MOAデータベースを用いた 超長周期変光星の解析
大学VLBI連携の現状と将来 藤沢健太(山口大学)
クワッドリッジホーンアンテナ (広帯域フィード) を 用いた電波望遠鏡の測地VLBIにおける性能評価
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
ANIRによるM型星まわりの トランジット地球型惑星の観測 国立天文台 成田憲保.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
空洞型ビーム軌道傾きモニターの設計 東北大学 M1 岡本 大典 .
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
パルサーって何? 2019/4/10.
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
小型衛星パスファインダーによる総合的試験
ROACHボードによるFOREST用バックエンドの開発
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
22/43 GHz帯フィルタによる 野辺山45 m鏡二周波同時観測の現状について
クエーサーの内部構造はどうなっているのか? マグナム望遠鏡の威力
滝脇知也(東大理)、固武慶(国立天文台)、佐藤勝彦(東大理、RESCEU)
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
1.85m電波望遠鏡 230GHz帯超伝導(SIS) 受信機の現況
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
ALMAへの期待 -埋れたAGNの探査から-
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
10/19 GMCゼミ.
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
ASTE搭載用ミリ波サブミリ波帯 多色ボロメータカメラ光学系の開発 竹腰達哉 北海道大学修士課程2年 Collaborators:
米倉 覚則 (茨城大・宇宙科学教育研究センター)
ASTE望遠鏡を用いたVLBI観測の ための超伝導230GHz帯受信機開発
大学連携 局代表者会議 昨日の議論 次期計画 サイエンス 各機関の計画/大学連携としての方針 開発 来年度の研究計画 予算計画.
(FMOS戦略枠観測で余ったファイバーによる) M型星まわりのトランジット地球型惑星探し
Presentation transcript:

本間 希樹 (国立天文台) @メタノール研究会(2007/Nov/22) VERAにおける6.7GHz観測 本間 希樹 (国立天文台) @メタノール研究会(2007/Nov/22) VERA石垣島局と、6.7GHzメタノールメーザーのVERA初のスペクトル  (W3OH @ Ishigaki-jima, on 2005/Feb/3)

内容 VERAにとってのメタノール 受信機開発状況 メタノールメーザー源についての(かなり適当な)考察

VERA 6.7GHz帯追加の利点 銀河系位置天文の新たなプローブ 約800個のメーザー天体が存在。 半数は水メーザー天体と独立 内部運動が小さく銀河回転計測に有利 周波数が低く、22 & 43 GHzのbackupに最適、特に夏場は重宝するバンド 星形成研究の多様化 有名な星形成領域は水およびメタノール両方で観測可能 >  異なる領域 ?、 ジェット vs YSO、 星形成領域の内部運動、構造

世界のメタノール観測網の比較 局数 最長基線 コメント VLBA - 12GHz有 EVN 8 ~7000 km 北天、集光力大 - 12GHz有 EVN 8 ~7000 km 北天、集光力大 機動性小(年~3回) LBA 5 1700 km 南天で唯一 VERA, 大学連携 4 ~ 8 2300 km 専有性、機動性、短基線高密度UVを売りに

VERAメタノール関連の進展 2004年12月 V懇シンポ(山大藤沢さんと6.7 GHz試 験観測の可能性を議論) 2005年6月 水沢にVLBI試験観測用受信機を搭載 水沢でVERA 6.7GHzファーストライト 2005年8月 山口-水沢間でファーストフリンジ (日本発の6.7GHz VLBI !!) 2005年9月 山口-水沢-石垣島 3局VLBI 2006年夏 山口、臼田+VERA2局以上での観測 2007年 大阪府立大を中心としたホーン開発

水沢局6.7GHz試験 (2005/6/8) 市販品で組み上げた受信機 Xバンド標準ホーン、Tsys~120 K(常温アンプ!) W3OHを無事検出(1秒積分)、開口能率の推定値~15%程度 この受信機でVLBI観測も行い、マップも得た(Sugiyama et al. 2008) メタノール観測可能性を実証するという目的は果たした。

VERAに最適化した新受信機の開発 設計、作成: 氏原(NAOJ)、木村、利川、小川(大阪府立大) 設計、作成: 氏原(NAOJ)、木村、利川、小川(大阪府立大) 受信機室の高さに制約があるため、軸長が短くなるマルチモードホーンを採用 上図 ホーンパターン(計算値) 副鏡縁はホーンから約12度であり、それまではEH面は比較的対称である。また、副鏡には約87%の電力が照射されている。 下図 アンテナパターン(計算値) 受信機室での配置の制約があり、最適にホーンを配置できないため、若干収差が見えている。これでも能率は約60%(表面荒さ等は考慮していない)。 6.7GHz帯マルチモードホーン

マルチモードホーンの測定評価 2007年11月に、京都大学生存圏研究所にある近傍界測定装置(NSI社)を 用いて評価を行い、計算値との一致を確認した。 同軸導波管変換器 円角変換 被測定ホーン プローブホーン 上図 京都大学生存圏にある近傍界測定装置を用いた測定風景 6.7GHzビームパターンの主偏波と交差偏波の3D分布。最大交差偏波強度も-25dBと十分に低い事が確認できた。 6.7GHzビームパターンの計算と測定の比較

ポーラライザーの設計 ポーラライザーは、方形導波管内部にリッジ状のセプタムを挿入するタイプを採用し、設計製作をおこなった。 セプタム 出力部 HFSSを用いて設計を進めた。 セプタム 出力部 (右旋) 入力部 出力部 (左旋) 製作したポーラライザー 直線偏波から円偏波が生成できるしくみ (元ファイルの動画が表現できないのが残念です。)

受信機ホルダーの設計 開発を行った受信機部品を組み合わせて、望遠鏡に搭載するためのホルダーの 設計を進めている。支持する箇所はホーン中程に設計した固定用のフランジ (ホーン自体は一体物)およびポーラライザー部分である。 2007年11月末に水沢でアンテナ搭載試験を行う。 検討中のホルダー 約690mm 穴をあけた板でホーン 固定用フランジに固定 L字パーツでポーラライザー を固定 VERA搭載のイメージ図 (注あくまでイメージです。) 柱間に、壁や筋交いを設置して強度を上げることを検討中

期待される性能 開口能率50%以上 システム温度 120K (常温受信機) システム温度 120K (常温受信機) アンプ単体は常温で60Kなので、冷却アンプを採用すれば50Kはさがる → システム温度最終目標 70K 22G帯に対して、感度が2~3倍良い

メタノールメーザー源に関する考察 (個人的なたわごと?) メタノールメーザーの一般的性質 狭い線幅、系統的な速度構造 小さい構造変化、固有運動 周期的な強度変動(一部) リング状構造(一部) 水メーザーでみえるアウトフローとは明らかに異なる性質 大質量星周囲の円盤起源の可能性も(期待込み)

Cep HW2のケース 原始星周囲のリングに見える 適当に物理量を評価すると リング半径 ~750 AU 線幅 ~ 4 km/s → 質量 ~ 13.3 M_sun 励起温度 120 Kを仮定すると → 中心星の光度 L ~ 60000 L_sun 一方、Patel et al.(2005)より 中心星の質量 ~ 15 M_sun (B0~B1) B0星の光度 ~ 53000 L_sun Sugiyama et al. それになりに合致(偶然?)

周期変動:中心星の脈動? Goedhartらの周期変動:周期 130~520 day ミラ型変光星とほぼ同じ > 星の脈動か? ミラ型変光星とほぼ同じ > 星の脈動か? 周期を決める密度(多分妥当な仮定) τ~ (1/Gρ)^1/2 典型的なミラを 1M_sun, R~2 AU とする 同じ周期を得るには同じ平均密度が必要 Cep A HW2の場合 M ~ 15 M_sun, R~ 5AU なら良い → T_eff ~ 2700 K

中心星は林トラック付近の原始星? 前述の(かなり適当な)評価が妥当なら、中心星 はHR図で林トラック付近に星が存在(AGBと同様) 林トラックを離れ MSへ行く前のフェーズ を見ている? 15太陽質量の星の進化 絶対等級 Cep A HW2 温度

メタノールへの(勝手な)期待 大質量原始星のある特定のフェーズを見ている? 本当なら以下のような情報が引き出せるか 分布の大きさ → 中心星の光度 分布+線幅 → 原始星の質量 脈動周期 → 星の密度、半径、温度  大質量星の初期進化フェーズの定量的な研究? 上記研究には、マップ、距離、強度モニター が必要 このシナリオの予言: メタノールメーザーの周期光度関係!?

やるべきこと VLBIマッピング(JVN) 距離決定(アストロメトリ with VERA+JVN) 強度変動モニター (単一鏡モニター)

まとめ メタノールメーザーはVERAの位置天文観測の拡充にとって重要 現在、VERAに最適化された受信機を開発中 メタノールメーザーは大質量星本体に迫れるユニークなツールかも知れない(今後の進展が非常に楽しみである)

まとめ 参加~20人、発表16件 日本のおかれた状況(蜂須賀、杉山、藤沢) 感度的には世界と差、でもまずまず使える装置になってきた 大質量星形成領域の研究 単一鏡モニター: (周期?)変動 統計的変動 (石川)、 Cep-A変動 (杉山) マッピング: disk/jet問題、進化フェーズ 水との比較 (今井、廣田)、分子輝線との比較 (梅本) メーザーサイズ (岸本)、多数天体の比較(廣田、梅本) アストロメトリ: 回転運動?、視差 内部運動 (杉山)、絶対位置(土居) 系外銀河 (佐藤) 晩期型星 (松井) 観測システム: VERA(本間)、臼田(望月)、山口(藤沢)、茨城(小林)

我々の方向性 単一鏡 サーベイは不要 (銀河面以外なら余地有り) 強度変動はまだやることがある イメージング 感度では世界と勝負できない サーベイは不要 (銀河面以外なら余地有り) 強度変動はまだやることがある イメージング 感度では世界と勝負できない 数を稼ぐ観測なら可能 他波長データの収集(電波、赤外etc) H2Oとの比較(VERAと共同) 大質量星の進化、環境の理解? アストロメトリ 内部運動は時間をかけて頑張ればできる VLBA, EVNとは競争(my telescopeの強みはある) 工夫すれば精度は出そう、要検証

今後の長期ビジョン 2007年度 VERA6.7G新受信機評価 2008年度 VERA新受信機の各局配備 山口高感度化、広帯域化、VERAとの1Gps観測 茨城の整備 2009年度 茨城のメタノール定常観測? 中国との連携

今後の短期ビジョン 2007年度・08年度 単一鏡 山口での継続 VLBI観測 100時間: ~10天体程度か 100時間: ~10天体程度か 科学観測はマッピング、内部固有運動あたり +試験観測も(新システム、位相補償) VERA6.7Gの受信機評価 茨城をどう巻き込むか