費用関数(Cost function).

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費用関数(Cost function)

例 食パンをグラム売りするとする。 一定の質のパンを100kg作る 燃料の選択などで、費用が違う 最小の費用が、100kgの費用関数

費用関数 単一の生産物を作るのに必要な最小の費用 単にCで表すことも多い

費用の決定要因 生産量 投入などの価格・・中級の経済学で扱う 電気料金 小麦の価格 釜を変える・・・長期の問題

費用関数について 増加的 y2>y1Þ C(y2) >C(y1) 固定費用(fixed cost) FC=C(0) 生産が0でも必要な費用 変動費用または可変費用 VC(y)= C(y) - C(0) 固定費用以外の費用

限界費用(marginal cost) パンをほんの少し余計に作るときの単位あたり必要な追加的費用 一般的にはC’(y)

費用曲線 費用関数のグラフ

例 1 限界費用は、一定(c)、固定費用0 費用 c y 生産量

例 2 限界費用は、一定(c)、固定費用c0>0 費用 c y+c0 c0 生産量

例 3 限界費用は、逓増的、固定費用c0>0 費用 生産量

限界費用逓増 「限界費用逓増の法則」(the Law of Increasing Marginal Cost) パン焼き工場や釜は、当面変えることができない (短期) 無駄なパン粉がいる パン職人に超過勤務手当てがいるかもしれない etc etc

限界費用逓増と収穫逓減 投入をすべて二倍にしても、産出が二倍にならない 小麦粉を二倍にして、職人を二倍にしても、パンが二倍でき ない 釜も工場も何でも二倍にすれば、パンは、二倍でき る この場合は、収穫一定(constant return to scale) ・・・新古典派の世界 経済全体の収穫逓減は、マルサスの世界

平均費用 生産量一単位あたりの費用が平均費用 ここで再び大きくなる この傾きが平均費用 平均費用 = 限界費用 ここで最小になる

平均費用と限界費用の関係 平均費用の最低点を限界費用が通る 次の右の図が単位あたりの図で、基本的

平均費用 総費用 限界費用 限界費用

この絵は、 必ず マスターすること

注意点 (総)費用、平均費用、限界費用のいずれも、生産量によって異なる。 この意味で、各々は、 (総)費用関数、平均費用関数、限界費用関数である。 平均費用の最低点で、平均費用と限界費用が一致するというのは、「平均費用関数を最小にする生産量が独立変数のとき、平均費用関数と限界費用関数が一致する」というのが正確な表現

総費用 平均費用 限界費用 限界費用 平均費用

数式による説明 限界費用より平均費用が小さいか等しいか大きいかにしたがって、平均費用が逓減するか、一定か、逓増するかを示す 前の図に対応 式では、以下の関係

数IIIの微分公式を使うと、以下の一発で出る

数IIIの微分は、数IIまでの問題と違って、以下の二つの公式を組み合わせて、体力で計算するだけなので、工夫と閃きが必要な数IIまでと違ってとても易しい 積の微分 合成関数の微分

積の微分を使う

直感的な説明 昨日までの打率より今日の打率が高いと、(平均)打率が上がる 昨日までの平均点より、いい点を取ると平均点は、上がる

平均固定費用と平均可変費用 (総)費用=固定費用+可変費用 生産量で割る 平均費用=平均固定費用+平均可変費用

直角双曲線

限界費用曲線と個別企業の供給曲線 完全競争市場では、「限界費用曲線が供給曲線になる」

競争企業の行動 (製品)価格 p 完全競争市場で与えられている 生産量 y このとき、売上ないしは、収入は p y 利潤はP (y) = p y-C (y) 次の図を参照

価格と限界費用が等しいとき、利潤が最大になる (総)収入は、原点を通る傾きが価格の曲線 収入と費用が等しいときは、利潤は0 各生産量で、収入と費用の差が利潤 収入曲線の傾きと費用曲線の傾きが等しいとき、利潤が最大になる

命題 「競争企業が利潤を最大化するときは、価格は、限界費用と等しくなる。」

数式による説明 利潤 最大化の必要条件は、微分して0 価格=限界費用 最大化の十分条件は、二階微分が負 限界費用は、逓増する

右下の図 限界費用の下の面積も可変費用 固定費用 可変費用

生産を止めるとさらにこれだけ赤字が増える。 右上の図 操業停止点 これだけ赤字になる。 市場 価格 この価格以上なら生産を続ける 生産を止めるとさらにこれだけ赤字が増える。 限界費用=供給だとこれだけ作る

競争市場の供給曲線 価格を与えられたとして、各企業の供給の和 1番目の企業 2番目の企業 3番目の企業 市場(産業) 産業の供給

傾きは、一単位(限界的に)余分につくるのに必要な費用 費用曲線(復習) 限界費用 ここでは、限界費用と平均費用が一致する 傾きは、一単位(限界的に)余分につくるのに必要な費用 総費用 ここでは、限界費用と平均費用が一致する 費用 限界費用は、平均費用の最小点を通る この傾きが一番小さい 全部で、これだけかかる。 これだけ作るのに 原点結ぶ直線の傾き = 総費用曲線の傾き 原点からの傾きは、一単位あたりの生産費 平均費用 平均費用 生産量 限界費用

短期平均費用曲線と長期平均費用曲線 短期平均費用曲線の包絡線 費用 もっと設備が大きい より多い生産量に対応した短期平均費用曲線 設備が少し増やす 長期平均費用曲線 各生産量に対応した設備を選ぶ 少ない生産量に対応した短期平均費用曲線 少し多い生産量に対応した短期平均費用曲線 短期平均費用曲線の包絡線 設備が小さい 生産量

短期平均費用曲線と長期平均費用曲線 一部の投入しか変えれないので、長期平均費用曲線より高い 少ない生産量に対応した短期平均費用曲線 少し多い生産量に対応した短期平均費用曲線 もっと多い生産量に対応した短期平均費用曲線 費用 この生産量で、一部の投入は、固定し、残りの投入のみを変化させる。 もっと多い生産量で、一部の投入は、固定し、残りの投入のみを変化させる。 少し多い生産量で、一部の投入は、固定し、残りの投入のみを変化させる。 すべての投入を調整して、費用を最小化する。 長期の平均費用曲線 生産量

短期総費用曲線と長期総費用曲線 一部の投入しか変えれないので、長期費用曲線より高い 短期限界費用曲線は、これ 総費用 もっと多い生産量で、一部の投入は、固定し、残りの投入のみを変化させる。 この生産量で、一部の投入は、固定し、残りの投入のみを変化させる。 少ない生産量に対応した短期総費用曲線 少し多い生産量で、一部の投入は、固定し、残りの投入のみを変化させる。 もっと多い生産量に対応した短期総費用曲線 すべての投入を調整して、費用を最小化する。 少し多い生産量に対応した短期総費用曲線 長期の総費用曲線 生産量

短期限界費用曲線と長期限界費用曲線 総費用 長期費用曲線と短期費用曲線が一致する点を取る。 長期費用曲線と短期費用曲線が一致する点を取る。 傾きが一致する。 傾きが一致する。 長期限界費用は、短期限界費用と一致する。 傾きが一致する。 長期限界費用は、短期限界費用と一致する。 長期限界費用は、短期限界費用と一致する。 生産量

短期限界費用曲線と長期限界費用曲線 この短期平均費用曲線では、 長期費用曲線と短期費用曲線が一致する生産量では 短期限界費用 = 別の短期平均費用曲線を1つ取る 短期限界費用曲線は、これ 費用 対応する短期限界費用曲線 短期平均費用曲線を1つ取る 対応する短期限界費用曲線 長期限界費用は、ここを通る。 長期費用曲線と短期費用曲線が一致する生産量では 短期限界費用 = 長期限界費用 長期平均費用曲線 長期限界費用は、ここを通る。 短期平均費用曲線の底を通る。 長期限界費用は、ここを通る。 長期限界費用曲線 生産量

長期的に収穫一定の場合 少し多い生産量に対応した短期平均費用曲線 少ない生産量に対応した短期平均費用曲線 もっと多い生産量に対応した短期平均費用曲線 費用 長期平均費用曲線 生産量

産業の長期均衡 条件 この生産量が経済全体の需要と比べて小さい 完全競争 参入・退出が自由 帰結 単位あたりの生産費用が最小で、効率的 少ない生産量に対応した短期平均費用曲線 産業の長期均衡 平均費用に対応した設備に増やすと この平均費用に対応した設備とする。 少し多い生産量に対応した短期平均費用曲線 もっと多い生産量に対応した短期平均費用曲線 長期均衡では、ここになるというお話 費用 競争価格がこの水準だと 条件 この生産量が経済全体の需要と比べて小さい 完全競争 参入・退出が自由 これだけ儲かる 参入が生じて価格 が下がる 長期平均費用曲線 これだけ儲かる 帰結 単位あたりの生産費用が最小で、効率的 競争価格がここまで落ちると 長期的にここで落ち着く 対応する短期限界費用曲線 収支均衡する 供給曲線 生産量

前の話のもっともらしさ 投資の決定より参入の決定が容易と仮定 何故、最初から大きい設備投資をしないか 他にもいろいろ話が作れる

Contestable Marketの理論 Sunk Costがなくて Hit end run strategy(ひき逃げ戦略)が可能 つまり、既存企業が値段を下げたら退出できる。 このとき、企業が少数でも、費用最小の生産が実現する 価格決定より参入退出決定が早いという仮定は、もっともらしくない。 訪問介護や看護は、contestableに近い?