Outcomes Among Patients Discharged From Busy Intensive Care Units 聖マリアンナ医科大学病院 腎泌尿器外科 青木 直人
【背景】 ICUの忙しさ(キャパシティへの負荷)はICUから一般病棟への転棟に影響されていると言われている。 【目的】 ICUの収容能力の3つの指標(ICU滞在患者数、新規入院数、平均重症度)がICU滞在期間やICUから転出した後の予後にどのように影響するか。 【デザイン】 2001年~2008年の後ろ向きコホート研究 【設定】 米国の155のICU 【患者】 200730人のICUから一般病床に転棟した18歳以上の成人
【方法】 ICUのキャパシティへの負荷と3つの指標との関連性と、ICU滞在期間、72時間以内のICU再入室数、院内死亡率、および退院後の予後を検討している。 米国ICUのIMPACTというデータベースを使用している。 またMPM0-Ⅲスコアを使用(入室1時間のICU重症患者の身体所見や検査所見をもとに判断されるスコア)
ICUから一般病床に転棟した患者を以下の5つに関して評価した ・最初にICU入室した患者のICUでの死亡を含め、一般病床に転棟した後の院内死亡率 ・ICUから一般病床に転棟した後の病院滞在期間 ・退院後の予後、特に自宅退院の割合
初期ICU入室から、一般病床へと転棟 となった200730人の患者が対象
Census: ICU滞在患者数 Admissions: ICU新規入院患者数 Acuity: 重症度
患者の特徴 ・男女比はほぼ1:1 ・64歳以下が55.6%、65歳以上が44.4% ・ADLはFull78.5%、一部介助15.4%、全介助6.1% ・ICUに入院した患者の経路 救急外来 39.7% 他病院 5.9% 一般病床 11.9% 術後 35.9% 急性期リハビリ病院 0.5% 他のICUから転院 1.5% ・ICU入院のタイプ 予定手術 24.5% 緊急手術 13.3% 治療目的 62.2%
患者の特徴 ・平均ICU滞在期間 48時間(26-91) ・ICUから一般病床に転棟した後の平均入院期間 96時間(47-188) ・一般病床転棟後の院内死亡 4.0% ・退院先 自宅 63.3% 急性期リハビリ病院 27.4% 転院 2.6% その他 2.8%
ICU滞在日数 ICU滞在患者数 ICU入院患者数 重症度
患者が退院した日の忙しさによる3つの項目の推移 72時間以内ICU再入室 院内死亡 自宅退院 患者が退院した日の忙しさによる3つの項目の推移
ICU患者数の増加は優位に72時間以内のICU再入室の割合を増加させた。 しかし、それは院内死亡率の増加や自宅退院数の減少には関連していなかった。
この研究には7つの問題点が存在する。 1、ICUがランダム化されていない。 2、MPM0-Ⅲを使用したので入室1時間以降の評価はされていない。 3、ICU滞在数が多いときと少ないときに他病院に転院した患者の違いを評価していない 4、退院後の長期の転帰を評価していない 5、ICUから転棟した患者しか評価していないため、自宅退院した患者や転院した患者のその後を評価していない 6、転院した病院の病床数などを評価していない 7、ICUから転出される際の基準が定められていない
結論 ・ICUが満床などで忙しかった場合、患者のICU滞在期間は有意差をもって短くなり、その後のICU再入室の割合がやや高かった。 しかし、それによって患者の死亡率の増加、入院期間の全体的な長さ、自宅退院の比率に差はほとんどなかった。 問題点としては長期間の転帰を検討していないことである。