社会保障の枠組とSafety net 甲田
GIO 社会保障の理念と制度の概要を習得し、様々な状況に適切な対応をするための基礎を養う。
SBO 社会保障の理念と主たる分野について述べることができる。 社会保険を列挙し、その目的を説明できる。 公的年金のシステムを概説できる。 公的扶助のシステムとその内容を説明できる。
社会保障の概要
Aさんはどうなるか Aさん55歳男。小さな商事会社の営業。 最近、胸部の痛みがひどくなり、近大病院を受診。 大動脈弁狭窄があり、それによる狭心症と診断された。狭窄は高度で、手術が必要と言われた。 約400万円の医療費がかかり、 3ヶ月以上仕事はできないという。2人の子供はまだ大学生と高校生で、家のローンもある。3ヶ月も会社を休むとクビになるかもしれない。Aさんは途方に暮れた。 Aさんは医療費をどの様に支払うのだろうか。 クビになった場合、生活してゆけるのであろうか。 公的医療保険 雇用保険 生活保護
社会保障は自助、共助、公助の組み合わせ 自助:人は働いて生活の糧を得、その健康を自ら維持。 共助:自助を補完するため、社会保険制度などで生活のリスクを相互に分散する。 公助:自助や共助で対応できない困窮に対し必要な生活保障を行う。 (H18社会保障のあり方に関する懇談会)
社会保障とは 病気・けが・出産・障害・死亡・加齢・失業などの生活上の問題による貧困者を救い、生活安定を目的。 国家または社会が所得を保障し、医療や介護などの社会サービスを給付する制度。 19世紀から20世紀にかけて、各国で失業が問題となる。 その中から社会保障が進展してきた。
我が国の社会保障制度 日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と記載。 社会保障 社会保険 社会福祉 公的扶助 公衆衛生および医療
我が国の疾病構造の変遷 憲法25条と社会保障 厚生労働省HPより改変して引用
社会保険 国民が強制加入の保険にはいることによって、事故が起こった時に生活を保障する相互扶助の仕組み。 年金保険 医療保険 介護保険 労災保険 雇用保険
社会福祉 社会生活をする上で立場が弱い、または障がいを持っている者を公的に援助する仕組み。所得保障だけではない様々な援助。 母子福祉 児童福祉 高齢者福祉 障害者福祉
公的扶助 生活困窮に陥った者に一般租税を財源に最低限度の生活を保障する仕組み。 日本では生活保護の制度がこれにあたる。 生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助
公衆衛生 共同社会の組織的な努力を通じて、疾病を予防し、寿命を延長し、身体的・精神的健康の増進をはかる仕組み。 環境保全、医療保障、感染症対策、公害対策、上下水道、食品衛生など、社会保障制度の基盤となる仕組み。 医師法第1条「医師は医療及び保健指導をつかさどることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。」 医師は社会保障制度の基盤を担う
国民生活と社会保障 社会保険 公衆衛生 社会保険 公衆衛生 社会福祉 公衆衛生 社会福祉
社会保障関係費
何が資金か? 図「厚生労働省HP」より引用
2011年日本は23.7% 図「H24厚生労働白書」より引用
社会保険 公的年金 雇用保険 医療保険(講義済み) 介護保険(講義済み) 労働者災害補償保険(労災保険)
公的年金 加齢などによる稼得(かとく)能力の減衰・喪失に備える社会保険 加入者が保険料を納める 老後に年金の給付を受ける 現役世代は全て国民年金の被保険者となる(一階部分、国民皆年金) サラリーマン・公務員・教員は、国民年金に加えて厚生年金保険にも加入(二階部分)
平成27年から厚生年金に公務員や教職員も加入(一元化法) 図「厚生労働省HP」より引用 平成27年から厚生年金に公務員や教職員も加入(一元化法)
公的年金 将来の経済社会がどのように変わろうとも、収入確保を約束できる。 賃金や物価の変化に対応できる。 世代間扶養の考え方を基本においた社会保険。 ほとんどの主要国で採用されている。
雇用保険
雇用保険 いわゆる失業保険 政府管掌の強制保険 生活及び雇用の安定と再就職活動を容易にする制度。 保険者:国 被保険者:全労働者 保険料:労働者と事業主の双方で負担する。 基本手当ての他、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付などがある。
基本手当 被保険者が、定年、倒産、契約期間の満了等により離職した場合 生活の心配がなく、早く再就職するために支給される 給付期間は、被保険者の期間及び離職の理由などによって異なる 90日~360日の間
労働者災害補償保険
労働者災害補償保険 いわゆる労災保険 業務上の事由又は通勤によって労働者が負傷、疾病、傷害、死亡等した場合に給付。 労働者を1人でも使用している事業所では強制加入(事業主の義務)。 事業主や役員は原則的に加入できないが、零細個人事業主は特別加入できる。 保険者:国 被保険者:全労働者 保険料:業種によって異なる。 事務系は安く、建設業や漁業、鉱業は高い。 雇用者が全額支払う。
公的扶助(生活保護)
生活保護の原則 憲法第25条に規定する理念(生存権) 国が生活に困窮するすべての国民に対し、必要な保護を行う 最低限度の生活を保障する 自立を促す 資産(預貯金・生命保険・不動産等)、能力(稼働能力等)や、他の法律による援助や扶助などその他あらゆるものを生活に活用してもなお、最低生活の維持が不可能なものに対して適用
公的扶助(生活保護) の種類 生活扶助 住宅扶助 教育扶助 生業扶助 医療扶助 介護扶助 出産扶助 葬祭扶助
図「国民の福祉と介護の動向」より引用
生活保護 生活扶助 飲食・衣服・光熱のための費用の扶助 年齢や世帯人員で金額が異なる
生活保護 住宅扶助 賃貸住宅の家賃のための費用 基準額がきめられている 自宅(資産価値の無い)の維持費
生活保護 教育扶助 義務教育を受けるのに必要な扶助。
生活保護 生業扶助 仕事を始めるために必要な設備費、運転資金、技術拾得のための費用。 高校就学費がこの扶助により支給。
生活保護 医療扶助 金銭給付ではなく、現物給付を原則 医療費の全額を公費で負担。 (被保護者は国民健康保険からははずされている) 金銭給付ではなく、現物給付を原則 医療費の全額を公費で負担。 (被保護者は国民健康保険からははずされている) 他の法令等による給付がある場合にはその給付を優先。
生活保護 介護扶助 介護保険と同一内容の介護サービスが現物給付。 介護保険の保険給付が行われる場合、1割自己負担分に適用。
生活保護 その他の扶助 出産扶助、葬祭扶助がある。
保護の決定と実施 保護の決定は各自治体からから福祉事務所長が委任 プリントの空欄が改行で消失
被保護者数の動向 バブル崩壊後増加 約216万人 都市部で増加 図「国民の福祉と介護の動向」より引用
世帯人員別の被保護世帯構成割合(2014) 単身世帯 77.3% 2人世帯 15.4% 世帯類型別の被保護世帯構成割合(2014) 高齢者 47.5% 母子 6.8% 傷病・障害者 28.3%
表「国民の福祉と介護の動向」より引用
1か月の一人あたりの平均受給額は14万円で、その中でも医療扶助は8万4千円と大きなウエイトを占めています。 表「国民の福祉と介護の動向」より引用
形成評価試験 1. 我が国の社会保障は憲法第25条に基づく。 2. 社会保障制度は健康で生活に困窮していない国民をも対象としている。 3. 社会保障制度の公的扶助は生活困窮者への金銭的保障である。 4. 我が国の医療保険は社会保険の1つである。 5. 公的扶助の介護扶助では介護に要した費用の全額が支給される。 6. 日本は国民皆年金を達成している。 7. 医療扶助による入院の半分弱が精神疾患である。 8. 労働者災害補償保険はいわゆる失業保険のことである。 9. 公的扶助の被保護人員は平成バブル景気崩壊後増加している。 10. 生活保護の開始理由では世帯主の傷病が最も多い。