国際経済の基礎12 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月20日 マクロ経済と国際収支3 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月20日
民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 三面等価 生産=支出=所得 貯蓄~所得の中で消費しないで残った額 貯蓄はお金が余っていることを意味 国際経済の基礎12 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 三面等価 生産=支出=所得 貯蓄~所得の中で消費しないで残った額 貯蓄はお金が余っていることを意味 赤字は収入よりも支出が多い. つまりお金が不足 国際経済の基礎12
民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 3部門:以下の三者の関係を考える. 民間部門(消費者・企業) 政府 外国 日本で販売される生産物= 国際経済の基礎12 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 3部門:以下の三者の関係を考える. 民間部門(消費者・企業) 政府 外国 日本で販売される生産物= 日本の生産 +外国の生産(輸入) 国際経済の基礎12
国内支出と外国支出 アブソープション(absorption,吸収)とは民間部門(個人と企業)と政府の支出の合計 アブソープション=消費+投資+政府支出 Aで略す A=C+I+G 外国支出=日本の輸出 X 国際経済の基礎12
国際経済の基礎12 支出=生産 支出=A+X 生産=Y+M 支出=生産より A+X=Y+M 変形して Y-A=X-M 国際経済の基礎12
Y-A=X-M 支出=生産 国内支出を超過した国内生産が貿易黒字に等しい 生産の超過=Y-A >0 貿易黒字=X-M >0 国際経済の基礎12 支出=生産 Y-A=X-M 国内支出を超過した国内生産が貿易黒字に等しい 生産の超過=Y-A >0 貿易黒字=X-M >0 貿易赤字ならば国内生産以上に消費や投資をしている 国際経済の基礎12
所得=支出 個々の経済主体では所得を全て使い切るとは限らない けれども経済全体では一致している 民間部門の所得は消費に貯蓄(saving)を加えたものに等しい. 貯蓄をSで略す 民間部門の所得:C+S 民間部門の支出:C+I 国際経済の基礎12
C+S+T+M=C+I+G+X 所得=支出 政府部門の所得:T 政府部門の支出:G 外国部門の所得:M (輸入代金) 全ての主体で所得イコール支出で式にすると C+S+T+M=C+I+G+X 国際経済の基礎12
民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 両辺でCが消える Iを左辺へ,T,Mを右辺へ S-I=(G-T)+(X-M) 民間純貯蓄=政府赤字+貿易黒字 国際経済の基礎12 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 両辺でCが消える Iを左辺へ,T,Mを右辺へ S-I=(G-T)+(X-M) 民間純貯蓄=政府赤字+貿易黒字 政府と外国の資金不足を日本の企業と消費者が解消している この関係式は重要です 国際経済の基礎12
外国人の支出(輸出)-外国人の生産(輸入) 国際経済の基礎12 三面等価からもう一度 三面等価によって次が成り立ちます 収入=支出 前のページ2式をイコールで結び移行することによって,次の式が成り立ちます 日本人の収入-日本人の支出 =政府の支出-政府の収入+ 外国人の支出(輸出)-外国人の生産(輸入) 国際経済の基礎12
民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 民間純貯蓄= 日本人の収入-日本人の支出 政府赤字= 政府の支出-政府の収入 貿易黒字= 国際経済の基礎12 民間純貯蓄,政府赤字,貿易黒字 民間純貯蓄= 日本人の収入-日本人の支出 政府赤字= 政府の支出-政府の収入 貿易黒字= 外国人の支出(輸出)-外国人の生産(輸入) 国際経済の基礎12
国際経済の基礎12
民間の純貯蓄 日本の民間の純貯蓄が経常収支黒字を補っている 加えて政府赤字を支えている 国際経済の基礎12
海外投資 S=I+(GーT)+ If 民間貯蓄は民間部門,政府赤字,海外部門の投資に用いられます. 例えば,海外部門の投資はトヨタがアメリカに工場を建設すること 海外投資(foreign investment) これを If で略します. S=I+(GーT)+ If 国際経済の基礎12
海外投資 If =X-M S=I+(G-T)+ If をS-I=(G-T)+(X-M)に代入 つまり海外投資は貿易黒字に等しい 財を輸出していることは外国へ資金を貸し出しているあるいは投資をしていることなのです 国際経済の基礎12
トヨタの自動車の輸出 財の流れと資金の流れ 日本 アメリカ トヨタ 輸出 輸入 自動車 Car アメリカ人 トヨタの銀行口座 国際経済の基礎12 トヨタの自動車の輸出 財の流れと資金の流れ 日本 アメリカ トヨタの銀行口座 トヨタ 輸出 輸入 購入代金の振り込み 自動車 Car アメリカ人 日本の対外資産の増加 アメリカの対外負債の増加 国際経済の基礎12
貿易黒字と対外資産 ヤワラは今川焼きからの収入をそのままアメリカの預金とする あるいはアメリカ国債を購入する 国際経済の基礎12 貿易黒字と対外資産 ヤワラは今川焼きからの収入をそのままアメリカの預金とする あるいはアメリカ国債を購入する 輸出した金額だけアメリカでの資産が増える これを日本の資本流出と言います 国際経済の基礎12
財の流れと資産の流れ 貿易収支黒字=海外投資増加 純輸出(=輸出-輸入)は対外資産の増加を意味します 日本の資本流出 アメリカの資本流入 国際経済の基礎12 財の流れと資産の流れ 純輸出(=輸出-輸入)は対外資産の増加を意味します 日本の資本流出 アメリカの資本流入 つまり, 貿易収支黒字=海外投資増加 国際経済の基礎12
アメリカの貿易赤字 アメリカの貿易赤字は日本人よりもアメリカ人の方が物を一杯買っていること 経済全体で他国の物を一杯買う=貿易赤字になる 国際経済の基礎12 アメリカの貿易赤字 アメリカの貿易赤字は日本人よりもアメリカ人の方が物を一杯買っていること 経済全体で他国の物を一杯買う=貿易赤字になる 資金面からアメリカに外国人の預金が増加 預金は他に貸し出しに回る これを資本の流入と言う 日本では資本の流出という 国際経済の基礎12
国全体の経済活動 GDPを学んだ. 今回は一国の経済活動を集計して得られる変数間の関係を見る 貿易黒字,政府赤字,民間貯蓄にはある関係がある 国際経済の基礎12 国全体の経済活動 GDPを学んだ. 今回は一国の経済活動を集計して得られる変数間の関係を見る 貿易黒字,政府赤字,民間貯蓄にはある関係がある 民間純貯蓄=貿易黒字+政府赤字 国際経済の基礎12
GDPの三面等価 付加価値アプローチ(生産) 全産業の付加価値 最終財アプローチ(支出) 消費,投資,政府購入,輸出入 国際経済の基礎12 GDPの三面等価 付加価値アプローチ(生産) 全産業の付加価値 最終財アプローチ(支出) 消費,投資,政府購入,輸出入 所得アプローチ(所得) 住民(労働者,企業家,地主,政府)の所得 国際経済の基礎12
国際収支表 経常収支=物やサービスの輸出入 資本収支=資本・資金の借り貸し 外貨準備増減=中央銀行の資産の増減 誤差脱漏=帳尻合わせ 国際経済の基礎12 国際収支表 経常収支=物やサービスの輸出入 資本収支=資本・資金の借り貸し 外貨準備増減=中央銀行の資産の増減 誤差脱漏=帳尻合わせ 国際経済の基礎12
国際経済の基礎12 国際収支表/2 国際経済の基礎12
経常収支 経常収支にはモノ,運送サービス,旅行,利子受け取り,政府援助等が取り扱われます. モノやサービスを輸出すればプラス 国際経済の基礎12 経常収支 経常収支にはモノ,運送サービス,旅行,利子受け取り,政府援助等が取り扱われます. モノやサービスを輸出すればプラス 外国で観光旅行をしてお金を使えばマイナス 外国に援助をするとマイナス こうしたすべての取引を足し合わせてプラスになれば黒字. 反対にマイナスになれば赤字といいます. 国際経済の基礎12
資本収支 資本収支には日本企業による直接投資(株式取得,資金貸借)などの企業間取引, 国際経済の基礎12 資本収支 資本収支には日本企業による直接投資(株式取得,資金貸借)などの企業間取引, 債券取引,およびそれらに含まれない資産の取引が扱われます. ヤワラちゃんがアメリカのマクドナルドの証券を1億円購入したら,マイナス1億円が計上されます. 国際経済の基礎12
資本収支/2 これは日本人の対外資産の増加を意味しますが,マイナスと記帳されるのは奇異に見えるかもしれません. 国際経済の基礎12 資本収支/2 これは日本人の対外資産の増加を意味しますが,マイナスと記帳されるのは奇異に見えるかもしれません. しかし,国際的に決まっているルールなので仕方ありません. 反対に日本人が手持ちの証券を売却するとプラス. それは対外資産の減少を意味します. 国際経済の基礎12
資本収支/3 今度はアメリカ人のトム・クルーズが日本のソニーの株を買ったとします. これは日本の対外債務の増加を意味します. 国際経済の基礎12 資本収支/3 今度はアメリカ人のトム・クルーズが日本のソニーの株を買ったとします. これは日本の対外債務の増加を意味します. このときプラスの金額が計上されます. 反対にアメリカ人が手持ちの証券を売却するとマイナス.それは対外債務の減少を意味します. 国際経済の基礎12
収支の符号 プラス マイナス 財サービスの輸出 財サービスの輸入 金融資産の減少 金融資産の増加 金融負債の増加 金融負債の減少 国際経済の基礎12 収支の符号 プラス マイナス 財サービスの輸出 財サービスの輸入 金融資産の減少 金融資産の増加 金融負債の増加 金融負債の減少 国際経済の基礎12
外貨準備増減と誤差脱漏 外貨準備増減は中央銀行の資産の増減を示します. 国際経済の基礎12 外貨準備増減と誤差脱漏 外貨準備増減は中央銀行の資産の増減を示します. 誤差脱漏とは収支表間の整合性を保つためののりしろと考えて無視してください. 日本の経常収支はいつも黒字ですが,資本収支はいつも赤字です 外貨準備増減は赤字と黒字を計上 経常収支と資本収支に比べ金額は小さい 国際経済の基礎12
外貨準備増減と誤差脱漏 プラス マイナス 経常収支 黒字 赤字 資本収支 流入超 流出超 外貨準備 減少 増加 国際経済の基礎12
経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0 この関係式は大変重要です! トヨタが自動車を輸出→経常黒字↑ 国際経済の基礎12 国際収支表の恒等式 経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0 この関係式は大変重要です! トヨタが自動車を輸出→経常黒字↑ 資本収支↓ or 外貨準備増減↓ 日本人か日本政府の資産が増える 国際経済の基礎12
経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0 国際経済の基礎12 国際収支表の恒等式 経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0 誤差脱漏は余りなので0とする 経常収支+資本収支+外貨準備増減=0 これを書き換えると 国際経済の基礎12
国際収支表の恒等式 経常収支=-資本収支-外貨準備増減 経常収支=資本流出超+外貨準備増加 国際経済の基礎12 国際収支表の恒等式 経常収支=-資本収支-外貨準備増減 経常収支=資本流出超+外貨準備増加 経常収支黒字が日本人の対外資産の増加と政府の外貨準備の増加の合計になっている 資本流出超+外貨準備増加=対外純資産の増加 国際経済の基礎12