平成19年8月 腎臓と腎不全 東京事業本部 治療機器販促部透析課
腎臓とは 生物が生命を維持するためには、食事をすることによりエネルギーを獲得。また、その老廃物を排泄も必要。このような物質代謝は体液内で行われる。従って、生体の体液を一定に保つことは、生命の維持に必要不可欠。この老廃物の排泄と 生体内の内部環境を一定に保つ働きを行っているのが腎臓である。
1500Lの血液腎臓 150Lの原尿、99%再吸収し1.5Lが尿として排出。
腎臓の構造
ネフロンの構造
腎臓の位置・構造 腎臓は背中側近く、腰のやや上に 左右1個づつあり、そら豆のような形で、大きさは握りこぶし程度であり、重さは1個あたり120~150gである。 腎臓の血流は、1分間に約800~ 1000mlという大量の血液が送られる。 腎臓の主な働きは尿をつくる
尿を作るメカニズム 腎臓の構成単位をネフロン 糸球体・ボーマン嚢・尿細管を1ネフロン 2個の腎臓に約200万個ある 糸球体の総表面積 1.2~1.5㎡ 糸球体で血液を濾過 → 原尿 原尿は1日で約150リットル
尿細管で原尿を再吸収 最終的に1日約1.5リットルの尿が作られる 尿は腎盂に貯留され、尿管を通り 膀胱へ 尿道を通り体外に排出
体液濾過のしくみ
(1)老廃物の排泄 ①尿毒素の排泄 小分子量物質 (BUN、クレアチニン、尿酸など) 正常な腎機能 (1)老廃物の排泄 ①尿毒素の排泄 小分子量物質 (BUN、クレアチニン、尿酸など) 中分子量物質 (β2-Mg,タンパク、ホルモン他) ②身体の中で不要になった重金属、 薬剤、有毒物質などを排泄する。
腎臓では尿の濃さや量を調節し、 身体の中の水分のバランスを保つ。 (2)水分の調節 腎臓では尿の濃さや量を調節し、 身体の中の水分のバランスを保つ。 例)体内の水分が少ない時 → 尿は濃く少ない 体内の水分が多い時 → 尿は薄く多い
(3)電解質のバランスの調節 電解質には、 ナトリウム(Na)、 カリウム(K)、 カルシウム(Ca)、 クロール(Cl)、 マグネシウム(Mg)、 リン(P)、 重炭酸(HCO3)他があり、 腎臓ではこれらの電解質の濃度を 正常に保っている。
2つめの働きとしては、水分や電解質バランスの調節を行っています。 イラストで見ると分かると思いますが、体内の水分が少ないときは、尿は濃く少なく、 体内の水分が多いときは、尿は薄く多くなります。
(4)血液を弱アルカリ性に保つ 腎臓は身体の中に生じた酸性物質を重炭酸で中和し排泄。 *肺と腎臓による酸塩基並行 肺 腎臓 腎臓は身体の中に生じた酸性物質を重炭酸で中和し排泄。 *肺と腎臓による酸塩基並行 肺 腎臓 呼吸性 アシドーシス 代謝性 呼吸性 アルカローシス 代謝性
(5)造血刺激ホルモンの分泌 赤血球は骨髄でつくられており、腎臓は造血刺激ホルモン(エリスロポエチン、EPO)を分泌し、 骨髄の赤血球産生を促している。
3つめには、血液を弱アルカリ性に保つ働きがあります。 私たちの体は、酸素をエネルギーとして産生するときの動力源としています。 そのため、その酸素が使われて、酸化物ができてしまいます。 この酸化物は、私たちにとって非常に有害になるものです。 これを中和するために、血液は常に弱アルカリ性に保たれるようになっています。 私たちの体は、pH7.4付近に保たれています。
(6)ビタミンDの活性化 ビタミンDは食べ物から摂られるか、日光の紫外線により皮膚でつくられます。その後、肝臓で一度変化をうけ、腎臓で活性化されて、活性型ビタミンDになります。 活性型ビタミンDは腸から血液中にカルシウムの吸収を助けています。
また、腎臓は、カルシウムとの関わりも持っています。 ビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける物質です。 しかし、人間がビタミンDを含む物質を接種しても、ビタミンDはすぐには働きません。 これが太陽の光や、肝臓などの作用を受け、腎臓で活性化されて初めて、腸からCaを 吸収する作用を発揮します。
(7)血圧の調節 血圧が下がり腎血流が減少すると、腎臓からレニンというホルモンが分泌され、 血圧を上げるように働く。
腎臓は、血圧の調節も行っています。 血圧が減少すると、腎臓に流れる血流量が少なくなります。 すると、腎臓はそれを感じて、レニンという物質を分泌し、血圧を上昇させます。 (腎臓は脳や心臓などと比べると、血液の供給の優先順位が少なく、そのため 腎臓に流れる血流量は、血圧低下にとても鋭敏に反応し、それが血圧低下のセンサーとなる。)
腎不全とは 腎臓の働きが低下した状態を腎不全という。 急性と慢性に分けられる。
腎不全について 急性腎不全 ショックや腎毒性物質などなんらかの原因で腎臓の機能が急速に低下して、体液の恒常性(ホメオスターシス)を維持できなくなった状態を意味する。
慢性腎不全 慢性腎不全とは、「数ヶ月ないし数年間にわたる持続性の腎予備力減退に基づく機能不全によって起こる臨床状態である」と定義されている。
腎臓は生命の維持にたいへん重要な働きをするため腎臓にはかなりの予備力があり、このため健康時の約75%のネフロンが破壊されても症状が自覚されないことが多く、しばしば早期発見は困難です。
慢性糸球体腎炎と糖尿病性症で全体の約8割を占めています。 ・ 慢性腎不全は急性腎不全と異なり、1度発症すれば機能回復の可能性はまったくない (不可逆性) ・ 慢性腎不全の原疾患 慢性糸球体腎炎と糖尿病性症で全体の約8割を占めています。
慢性腎不全の症状 慢性腎不全の進行状況を知るには、血清クレアチニン(Cr)の濃度を測定。正常値は1.4/dl以下だが、慢性腎不全の進行に伴って上昇。腎機能が正常の20%くらいになると急激に上昇。一般に血清Crが2~3/dl以上になると慢性腎不全と診断されるが、この程度の腎機能障害では自覚症状がでてくることはほとんどない。進行した慢性腎不全では、どのような症状が現れるのか?
①尿毒素がたまる 尿毒素が体内に蓄積すると・・・ ・消火器症状 食欲がない、吐き気、口臭 ・精神神経症状 記憶力・思考力の低下、 尿毒素が体内に蓄積すると・・・ ・消火器症状 食欲がない、吐き気、口臭 ・精神神経症状 記憶力・思考力の低下、 怒りっぽい、不眠、しびれ、 汗が出ない、低体温 ・皮膚症状 皮膚が黒っぽくなる、かゆみ ・眼症状 視力低下、眼底出血 ・呼吸器症状 呼吸困難(肺うっ血、肺水腫 ) ・その他 感染症(風邪、肺炎)、貧血
②水分がたまる ・体重が増え、むくみ出現 ・循環血液量が増加する(血液が 薄まり貧血になる) ・循環血液量が増加する(血液が 薄まり貧血になる) ・血管内に血液量が多くなり、血管 に負担がかかる(高血圧) ・心臓が大きくなる(心不全) ・肺に水がしみだす(肺水腫)
③.電解質の調整ができなくなる ・ナトリウム むくみ、血圧上昇 ・カリウム 手・唇のしびれ、だるい ・リン Ca沈着による関節の痛み ・ナトリウム むくみ、血圧上昇 ・カリウム 手・唇のしびれ、だるい ・リン Ca沈着による関節の痛み ・マグネシウム はきけ、嘔吐
④.血液中のphが酸性に傾く 酸性物質が腎臓から排泄されず、血中にたまり、ひどくなると生命に危険を及ぼす。
⑤.貧血になる エリスロポエチンの分泌低下によって貧血が起こる。 ⑥.血圧が上昇する 尿量が減少し、水分・塩分がたまる
⑦.カルシウム代謝異常がおこる 腎臓でビタミンDが活性化されないために血液中のカルシウムが不足し、骨がもろくなる *二次性副甲状腺機能亢進症