青果物の物流管理に関する研究 課程名:流通情報工学課程 学籍番号:2002735 氏名:藤木貴之 指導教官:鶴田三郎 教授 黒川久幸 助教授 平成17年度卒業論文 2018/9/21 青果物の物流管理に関する研究 課程名:流通情報工学課程 学籍番号:2002735 氏名:藤木貴之 指導教官:鶴田三郎 教授 黒川久幸 助教授 鶴田・黒川研究室の藤木です 青果物の物流管理に関する研究の発表を始めます
研究背景 青果物の価値は品質が鍵となる 今までに様々な品質維持のための研究がされてきたが様々な問題点が残っている 2018/9/21 青果物の価値は品質が鍵となる ↓ 今までに様々な品質維持のための研究がされてきたが様々な問題点が残っている 青果物物流の現状を整理し、どのような問題点があるかを明確にする必要がある 物流時の品質維持が難しいものの代表として、青果物を取り扱います。 その青果物の価値は小売店に届いた時点での品質の度合で決まり、 品質を落とさずに流通させる技術の研究がされてきたんですが、 生産者の人達に正確な品質維持方法が伝わっていない等の 問題点が残っているのも実状です。 なので、青果物物流の現状を整理し、問題点の明確化する必要があると思います。
研究目的 「物流管理」の定義、「青果物の品質」を定義し、青果物物流の現状を整理する 2018/9/21 「物流管理」の定義、「青果物の品質」を定義し、青果物物流の現状を整理する 青果物の品質を維持し、良い状態で届けるために必要なことの明確化 品質維持の視点から見た青果物物流の問題点の解決策の提言 題目にもある管理という言葉の定義と、品質の定義をして、青果物物流の現状を整理します そして、青果物の品質を維持するためにどのようなことが必要かを明確にして、 品質維持のための青果物物流の問題点を明らかにし、解決策の提言をします
「物流管理」の定義 「管理」とは、本研究では「ある一定の水準を保つための維持作業と、より良い水準に引き上げるための改善作業」とする 2018/9/21 「管理」とは、本研究では「ある一定の水準を保つための維持作業と、より良い水準に引き上げるための改善作業」とする 青果物を取り扱うので 「物流管理」とは、本研究では「ある一定の青果物の品質を保つための維持作業と、より良い水準に引き上げるための改善作業」と定義する ではまず物流管理の定義から説明しますが、その前に管理という言葉を定義します。 管理とは、「ある一定の水準を保つための維持作業と、より良い水準に引き上げるための改善作業」 と定義しまして、僕の研究では青果物を扱うので(アニメーション 物流管理とは「ある一定の青果物の品質を保つための維持作業と、より良い水準に引き上げるための改善作業」 と定義します
品質の定義 本研究での品質の定義(品質の評価項目) 腐敗の度合 青果の糖度 青果の硬度 変色の度合 カビの有無 青果中の水分 凍結の有無 2018/9/21 本研究での品質の定義(品質の評価項目) 腐敗の度合 青果の糖度 青果の硬度 変色の度合 カビの有無 青果中の水分 凍結の有無 損傷の有無 変色、糖度硬度減少や悪臭、有害物質の発生 青果の甘味が減少し、味が悪くなる 青果の硬さが減少し、食感が悪くなり、外力に弱くなる 褐変や黒変等、新鮮とは思えない色に変色する 様々なカビが発生 青果のみずみずしさが減少し、食感が悪くなる では次に品質を定義します 品質を評価する項目として腐敗の度合や糖度があり、 この8つの項目で品質を評価、定義します そしてこの8つの項目に様々な因子が作用して、品質低下という結果が生じます 凍結により内部組織の損傷 果皮や果肉に裂傷、打撲、陥没、破壊が生じる
評価項目と因子の関係 腐敗の度合 青果の糖度 エチレンガス 青果の硬度 変色の度合 カビの有無 湿度 青果中の水分 凍結の有無 損傷の有無 2018/9/21 腐敗の度合 青果の糖度 青果の硬度 変色の度合 カビの有無 青果中の水分 凍結の有無 損傷の有無 エチレンガス 湿度 温度 振動 真ん中に位置してる品質の評価項目が下の結果を出すのですが、 これらの評価項目にこの5つの(アニメーション)因子が影響してきます これらの因子には一定の水準(適した温度帯等)があり、 その水準をクリアするために(次のページ 衝撃
・エチレンガス → エチレンガスの分解、感受性抑制 ・温度・湿度 → 低温保管、低温輸送 ・振動・衝撃 → 包装・梱包 改善作業 2018/9/21 維持作業 ・エチレンガス → エチレンガスの分解、感受性抑制 ・温度・湿度 → 低温保管、低温輸送 ・振動・衝撃 → 包装・梱包 改善作業 ・追熟 → 青果物を未熟なまま収穫し、卸売場で商品価値が出る熟度まで進行させる作業 各因子に対してこれらの作業があります 改善作業に追熟があるのですが、 追熟とは商品として価値がある熟度まで進行させることなのですが、 そのためにエチレンガスを用いて青果物の成熟ホルモンを増加させます。 分解、と書いたのは収穫後の青果物はエチレンガスを生成、放出する性質があって、 過剰なエチレンガスを生成してしまう危険性があるので、 余分なエチレンガスを分解したり、青果物自体の感受性を抑える必要があります。
品目のグループ分け エチレングループ ・感受性が低く、生成量が少ない ・感受性が高く、生成量が多い ・感受性が高く、生成量が少ない エチレン 2018/9/21 エチレングループ ・感受性が低く、生成量が少ない ・感受性が高く、生成量が多い ・感受性が高く、生成量が少ない エチレン 温度・湿度グループ ・低温障害が発生しやすい ・低温障害が発生しにくい 温度・湿度 品目をグループ分けする際に3つのグループに分けます まずエチレンガスの感受性と生成量の組み合わせで3つに分類します(エチレン軸を出す 次に温度と湿度の関係を2つに分類します(温度・湿度軸を出す そして振動の関係を2つに分類します(振動軸を出す これらの3グループを同時に考慮し、合計12個のグループに分類しました。 振動のグループ ・振動に弱い(マイナス方向) ・振動に強い(プラス方向) 振動
エチレン 苺、梨、葡萄 (グループ⑥) トマト(完熟) バナナ(未・完熟) (グループ③) 桃(グループ⑤) 梅(グループ④) 2018/9/21 エチレン 苺、梨、葡萄 (グループ⑥) トマト(完熟) バナナ(未・完熟) (グループ③) 桃(グループ⑤) 梅(グループ④) 12個に分けたグループに、僕の研究で扱う品目を当てはめるとこのようになります。 12個中6個のグループに分かれまして、各グループに①~⑥の番号を振ります。 例えば、振動に弱く、低温障害が発生しにくく、エチレンの生成量が少なくて感受性が低いグループ⑥に分類される青果物で 代表的なものに、苺や梨、葡萄が該当します。 ここに挙げた青果物は、各グループの代表的なものをピックアップしました トマト(未熟) (グループ①) 温度・湿度 振動 レタス、西瓜(グループ②)
各グループの特徴 2018/9/21 ①~⑥の各グループの特徴と利用施設・設備を一覧で示します。 例えばグループ③はエチレンの感受性が高く、生成量が多い、 低温障害に弱く、振動に強いグループです。 利用設備・施設にはエアサスペンション、低温保管庫、冷蔵車、予冷庫が挙げられます。
必要な維持・改善作業 すべき作業 トマト(未熟)① 包装、梱包、振動対策、追熟、低温輸送、低温保管、予冷 トマト(完熟)③ 2018/9/21 すべき作業 トマト(未熟)① 包装、梱包、振動対策、追熟、低温輸送、低温保管、予冷 トマト(完熟)③ 包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 バナナ(未熟)③ バナナ(完熟)③ 包装、梱包、振動対策、低温保管 レタス② 予冷、包装、梱包、低温輸送、低温保管、振動対策 西瓜② 予冷、包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 桃⑤ 梅④ 予冷、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 イチゴ⑥ 予冷低温保管、低温輸送、振動対策 梨⑥ 葡萄⑥ そして、各品目に必要な作業を挙げるとこの表のようになります。 例えば、スイカに対しては予冷、包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管という 作業が必要です。
実態調査 2018/9/21 各品目ごとに行われている作業の実態を調査するために、食品の低温物流ハンドブック等の文献以外に、東京青果(株)にヒアリング調査を行った。 では、各品目ごとに現在どのような作業が行われているのか、をこれから喋りますが 文献やWEBでの調査だけではデータが足りなかったので、東京青果の 大田市場まで行ってヒアリング作業を行いました。 写真は、ヒアリング時に市場内を案内してもらった時に撮影した卸売り場内の写真です。 東京青果内の卸売り場
維持・改善作業の実態 2018/9/21 各品目に対して現状で行われている作業をまとめるとこのようになります。 これらの調査には文献やWEBだけでなくて東京青果に直接見学に行って 部長さんに案内してもらったり写真撮ったりしてきました。 共通して見られる作業に低温輸送・低温保管があります。 これらの作業に加え、さらに必要になってくる作業がいくつか抜けている品目があり、 それらをまとめると(次のスライド
品目ごとに必要な作業と実態 2018/9/21 各品目ごとに必要な作業と実態を表にまとめました。 必要にも関わらず行われていない作業がある品目のみを載せてあります。 また、低温輸送と低温保管は全ての品目に共通して 行われていたので省きました。 また、斜線の部分は不要な作業です。 ベージュの部分(アニメーション)が4つありますが、これは 包装による振動対策が抜けている、という意味です。 青いセルの部分(アニメーション)が3つありますが 予冷が必要なのに行われていない品目がこの3つです。 これらをまとめると(次のスライド
必要なのに行われていない作業 未熟トマトの包装による振動対策 未熟バナナの包装による振動対策 完熟バナナの包装による振動対策 2018/9/21 未熟トマトの包装による振動対策 未熟バナナの包装による振動対策 完熟バナナの包装による振動対策 梅の包装による振動対策 西瓜の予冷 梨の予冷 葡萄の予冷 このような7つの結果になります。 包装による振動対策と予冷の2つに分けられます。
青果物の物流管理上の問題点 予冷→産地で確実に行われていない、予冷温度が不明確かつ不統一、品温が予冷温度まで下がっているか不明 2018/9/21 予冷→産地で確実に行われていない、予冷温度が不明確かつ不統一、品温が予冷温度まで下がっているか不明 包装→産地で確実に行われていない 振動の影響→輸送中の振動が与える品温上昇や衝撃等による破損、腐敗 温度→物流中の品温上昇 そして、物流管理上の問題点を挙げると、この4つが挙げられます。 特に予冷と包装に関して、産地で確実に行われていないというのは 致命的ではないかと思います。 これらの問題点を解決するために(次のスライド
解決策 予冷→予冷の重要性を生産者に啓蒙し、実施を確実なものにする、予冷温度の統一、データロガーによる記録、予冷後は品温の確認 2018/9/21 予冷→予冷の重要性を生産者に啓蒙し、実施を確実なものにする、予冷温度の統一、データロガーによる記録、予冷後は品温の確認 包装→品目に適した包装、梱包と重要性を提示し、確実に行う 振動の影響→包装、梱包、輸送機器(エアーサスペンション等)の点から確実に対策を行う 温度→輸送時、保管時の温度を統一し、温度変化を極力少なくすること このように対策を行うことによって、解決をしていけば良いのではないかと思います。 行われていない作業は確実に行い、振動は包装、梱包、輸送機器で影響の軽減を行い 流通時の温度変化を少なくすることによって、品質維持効果がさらに得られると思います。
結論 青果物の物流に関して現状を調査、整理し、様々な品目をグループに分け、各グループの特徴を明らかにした 2018/9/21 青果物の物流に関して現状を調査、整理し、様々な品目をグループに分け、各グループの特徴を明らかにした 例)苺に代表されるグループは、エチレンの感受性が低く生成量が少なく、低温障害が発生しにくく、振動に弱い、という特徴がある 各品目に対して必要な作業を整理し、行われていない作業があれば何故行われていないかと、解決策を提言した 例)振動の対策は、包装、梱包、エアーサスペンションという3つの視点から確実に行うべきである 僕の研究を総括すると、青果物物流の現状を整理して、品目のグループ分け、グループの特徴を明らかにしました 各品目に必要な作業と実態を東京青果へのヒアリング等により調査し、 抜けているところの明確化と解決策の提言を行いました 以上で発表を終わります