-21世紀のテレコム産業のグローバル・トレンドと日本- 日本の情報通信産業 2 -21世紀のテレコム産業のグローバル・トレンドと日本- 2004年11月2日(火) 京都大学経済学部 「情報通信産業論A」 (株)情報通信総合研究所 政策研究グループ シニアリサーチャー 神野 新(かみの あらた)
現在のテレコム産業では、10年程度前から「100年に1度」級の構造変化が進行中 最近の通信産業の概観- ブロードバンドとワイヤレスが主導する21世紀のテレコム産業 - 現在のテレコム産業では、10年程度前から「100年に1度」級の構造変化が進行中 (1) 通信市場の全面自由化と競争の激化 (2) 固定電話市場の縮小(料金競争と代替サービスへの移行が主因) (3) ブロードバンド、ワイヤレス通信(携帯電話など)の急速な普及拡大 (4) 技術の融合化の流れ(通信と放送/固定と移動 etc.) 21世紀のテレコム産業の将来像はどうあるべきか? 1
構造変化 対応策 変化する環境 テレコム産業の構造変化と大手キャリアの対応策 固定電話市場の縮小 インターネット市場の拡大 移動体市場の拡大 1995年頃~ 1990年頃~ インターネット市場の拡大 競争の激化 移動体市場の拡大 対応策 インターネット投資の積極化 (ブロードバンド投資) 固定電話競争への対応 移動体投資の積極化 料金競争 海外投資 3G投資 海外投資 国内投資 変化する環境 通信自由化 【市場開放】 《民営化》 1984年 【英国】 《BT》 1985年 【日本】 《NTT》 1995年 《ドイツ・テレコム》 1997年 《フランス・テレコム》 1998年 【EU(独仏等)】 縮小する 固定電話 (日本) 通話回数(億分) (出典)総務省統計 2
世界のワイヤレス(移動体通信)の普及状況 【携帯電話 加入者数 上位20カ国】 (2003年12月末) 【携帯電話 普及率 上位20カ国】 (2003年12月末) (*1)プエルトリコ含まず (*2)PHS含む (*3)人口100万未満 ※日本は66.82%〔携帯+PHS〕(順位は不明) 携帯のみでは62.72% (出典)各種資料より、情報通信総合研究所が作成 3
Equant/TPグループ(ポーランド) ワイヤレス(移動体通信)に大きく依存する世界の大手キャリア NTTグループの連結売上高(H16年第1四半期業績)に占めるNTTドコモの割合 〔営業収益(売上高)〕 46% (NTTドコモ〔12,211億円〕、NTT東〔5,313〕、NTT西〔5,228〕、NTTコム〔2,571〕、NTTデータ〔1,950〕) 〔営業利益〕 66% (NTTドコモ〔2,766億円〕、NTT東〔234〕、NTT西〔232〕、NTTコム〔249〕、NTTデータ〔110〕 ) BT ドイツ・テレコム フランス・テレコム 2003年度 営業収入 【内訳】 ほぼ0% 33% 35% 移動体事業は存在せず!! 国内固定 BTホールセール BTリテール T-Com FT インターネット T-Online Wanadoo 企業向けIT BTグローバル・サービス T-Systems Equant/TPグループ(ポーランド) グローバル T-Mobile オレンジ 移動体 mmO2 (2001年に資本分離) 4 (出典)各キャリアの財務諸表より、情報通信総合研究所が作成
拡大するブロードバンドの普及(日本のブロードバンドの構造と特徴) FTTH 160万(10%) 特徴1 ■日本は世界最大の光インターネット(FTTH)大国 ◇米国は2-3万程度、欧州はイタリア、スウェーデンで10数万。英独仏はほぼゼロ。 ケーブル・ インターネット 277万(16%) 日本はアンバンドル・ローカル・ループの利用、FTTHの普及、 ブロードバンド型IP電話の普及で世界最大の国である。 DSL 1,255万(74%) NTT東西 466万(37%) 特徴2 ■日本は既存の大手電話会社のDSL市場シェアが低い ◇米国は約95%、英(40%)、独(88%)、仏(51%) ■日本は世界最大のローカル・ループ・アンバンドル大国 (競争的DSLは、ほとんどNTTのアンバンドル・ループを使用) ◇米国は20-30万、英(1.4万)、独(65万)、仏(73万) 他の事業者 789万(63%) イーアクセス他 346万(44%) Yahoo!BB 443万(56%) BBフォン加入者 418万 特徴3 ■日本は世界最大のブロードバンド型IP電話大国 ◇米国は数10万(最大手で30万)、欧州は不明 日本のブロードバンド加入数と競争の構図 (2004年8月末現在) 5
ブロードバンド競争の構図-サービスベースか施設ベースか? ◆日本では、競争的なDSL(800万回線、シェア63%)の大半が、NTTのアンバンドルされたローカル・ループを利用して おり、世界最大の「LLU大国」となっている。(2004.6末のLLUは、仏73万、独65万、英1.4万、日本は約760万) ◆EU加盟国(下図)においては、再販売ベースの競争が盛んであり(特に、英国)、今までLLUは余り利用されて来な かった。そのため、欧州委員会及び加盟国の規制当局は、LLUベースの競争への移行を積極的に推進している。 欧州のDSL市場 既存の大手電話会社が小売しているDSL サービスベースの競争 ISPが再販売しているDSL (既存の大手電話会社の製品を卸売で購入) 設備ベースの競争 既存の大手電話会社のアンバンドルされた ローカル・ループを借りて、競争事業者により 提供されているDSL 真の設備ベースの競争?(非現実的?) (出典)欧州競争通信事業者協会(ECTA) “ECTA Broadband scorecard end of June 2004” 競争事業者が自前で敷設したローカル・ループ を通じて提供しているDSL(世界的にも住宅向けは稀) (注)日本では、DSLの卸売制度は利用(導入)されていない。 6
EUの新通信規制の枠組み(新通信規制パッケージ) 通信規制を大幅に見直す新通信規制の枠組み(新通信規制パッケージ)を2002年4月に採択した。 現在、加盟国は法整備(新通信法の策定等)や、 下記③の市場レビューを実施中である。 新通信規制パッケージのポイント ①電子的通信ネットワーク/サービス EUは、21世紀における技術、ネットワーク、サービスの融合化を睨んで、従来は規制面で個別に取り扱ってきた、 電話、ケーブルTV、放送、無線通信などのネットワークを「電子的通信ネットワーク(ECN:Electronic Communications Network)」として概念的に統合し、その上で提供されるサービスを「電子的通信サービス(ECS:Electronic Communica tions Services)」と総称している。 ②免許制度の廃止(一般条件と個別条件) EUは、新通信規制パッケージを構成する「認証指令」において、加盟国における免許制度の廃止を命令し、市場への 参入を完全自由化した上で、事業者はレディメイドの「一般条件」を遵守することのみを義務付けている。ただし、SMP (Significant Market Power)事業者(市場支配的事業者)など、一部の事業者については、オーダーメイドの「個別条件」 を適用される場合がある。 ③市場レビュー(有効競争レビュー)の実施 ⇒ 日本の総務省が実施している競争評価 EUは競争が進展する通信分野においては、競争の度合いに応じて「事前規制」から「事後的な取り締まり」に移行する ことが望ましいとして、ある市場における競争分析を行い、市場支配的な事業者(SMP事業者)が存在する場合にのみ、 事前規制を課すように加盟国に命令している。(SMP事業者が不在の場合は、事前規制を撤廃する) 7
(electronic communications service) メディアの融合化の流れ(EUのフレームワーク) ◇最近になり、ネットワーク、サービスの統合化/融合化の流れが加速している。 (具体例) ■ケーブルTV電話/ケーブル・インターネットによるVoIP(通信と放送の融合) ■インターネットによるストリーミング(通信と放送の融合) ■屋外では携帯電話、屋内ではコードレスホンとして使える電話機(BTが商用化予定) (固定と移動の融合) ※BT、NTTコミュニケーションズなどの世界6大キャリアは「固定移動融合連合」を形成 固定電話 電子的通信サービス (electronic communications service) (融合) 伝送ネットワークの種類に係わらず、基本的には、同様の規制が課される(“理想”) 携帯電話 ケーブルTV EUのフレームワーク 固定ネットワーク 電子的通信 ネットワーク (統合) 移動体ネットワーク 衛星ネットワーク 電力ケーブル・システム 放送用ネットワーク ケーブルテレビ・ネットワーク 8
通信と放送の融合の局面 インターネットの普及、アクセスの高速化と多様化、パソコンの高速化、放送のデジタル化等を背景に通信と放送の融合現象が顕在化してきた。 (出典)総務省資料 例.CATV事業者の通信事業参入 ISPの放送参入 例.TV放送を受信・録画できるパソコン TVでインターネット接続できるSTB 事 業 体 電気通信事業と放送事業の兼営 端 末 通信・放送双方に利用できる端末 融合の起こる局面 最近のトレンド-Broadband Triple Play 伝 送 路 同じ伝送路を通信と放送が共用 サービス 通信と放送の中間領域的サービス 例.CATV網を利用したインターネット接続サービス 光ファイバを利用したCATV 例.インターネット放送,データ放送 9
EUの新通信規制の枠組みにおけるサービス分類と規制 新通信規制の枠組みにおいて、従来の通信サービスは「ECS」、「PATS」などの全く新たな定義・分類を付与される こととなった。ECSと分類されれば一般条件が適用される。 無料サービスなどは、通常 「ECS」の定義に該当せず、非規制。 電子的通信サービス(ECS)以外 プライベート プライベート利用のECS 利用機器の他NWとの干渉回避など軽微な規制 公衆向けのECS 一般条件 が適用 される 消費者保護など追加的な規制 PATS(電話) 固定拠点 PATS 緊急サービスへのアクセスなど追加的な規制 公衆向け データ 音声 ECS:電子的通信サービス(Electronic Communications Services) PATS:公衆が利用可能な電話サービス(Publicly Available Telephone Service) 10
独占 完全競争 移行期 × 21世紀のテレコム産業の制度・規制のトレンド 1事業者のみが存在 ・複数の事業者が競争 ・しかし、支配的事業者 (独占事業者= SMP事業者) ・複数の事業者が競争 ・しかし、支配的事業者 (SMP事業者)が存在 ・多数の事業者が競争 ・SMP事業者は存在せず 【事前規制】 SMP事業者に対する事前規制 を設定 【事後的な取締まり】 不正、不当な行為を行なった 事業者を事後的に取り締まり × 一気に移行は無理 【移行期(現在)】 ・市場ごとに競争状況を分析 ・その市場にSMP事業者が存在 する場合のみ、事前規制を設定 ・市場レビュー(有効競争レビュー) ・競争評価 SMP:Significant Market Power 11
EUにおける光ファイバー・ループの開放義務付けの詳細 市場レビュー実施以前の規制 市場レビュー実施後の今後の規制 移行中 従来の規制の枠組み (現在も移行期として有効な規制) 新しい規制の枠組み 加盟国 開放義務 対象事 理由(規定文書) 開放義務 理由 の有無 の有無 業者 EU なし ー EU 「 ローカル・ループ・アンバンドリング規則」は、ループを「銅線ループ」と 定義している。 なし - 英国 なし ー ( 「 1984 年電気通信法第 7 条に基づき、 BT に付与された免許の免許条件 市場レ 83 」 ) 未決定 ビュー 未完了 フランス なし ー 「ローカル・ループへのアクセスに関して郵電法典を改正する 2000 年 9 月 12 日付け政令 no.2000-881 」 は、ローカル・ループを、ネットワークの銅線部 〃 〃 分と定義している。 ドイツ あり DT 光ファイバー・ループは、「 1996 年 7 月 25 日付け修正電気通信法( TKG )」 第 33 条により、市場支配的な事業者( DT ) が、「不可欠」サービスとして、 〃 〃 競争者に提供しなければならないローカル・ループに含まれる。 イタリア あり テレコム・ 「 2000 年 3 月 16 日付け AGCOM 決議 No.2/00/CIR ( その後、 2001 年 7 月 25 日 イタリア 付け AGCOM 決議 No.15/01/CIR により修正)」 〃 〃 スウェー あり テリアソネ 「 1999 年 12 月 29 日付けテリアソネラに対して発行された PTS 決定 99-18766 」、 デン ラ、 Stokab 、 「 1999 年 12 月 29 日付け Stokab に対して発行された PTS 決定 99-18771 」、「 1999 年 〃 〃 Banverket 12 月 29 日付け Banverket に対して発行された PTS 決定 99-18767 」 12
米国のFTTHループのアンバンドリング義務(2003.8.21発表のFCC規則) 更地(Greenfield) 既存開発地(Brownfield) 既存の地域電話 会社の交換局 銅線を残置 重複敷設 新規敷設 アンバンドル義務なし アンバンドル義務なし 銅線撤去 音声サービス用の64Kbps 伝送パスの提供義務あり (注) FTTHループ ■FCCがFTTHループのアンバンドリング義務を撤廃、緩和した理由(FCCの説明) 〇FTTHループの展開は未だ揺籃期にある。FTTHの広範な展開を享受しているのは、全米のわずか47コミュニティだけである。 〇住宅市場向けのFTTHは、ほとんどすべてがブロードバンド・サービス提供のために利用されており、ナローバンド・サービスのため だけの利用は無い。 〇FTTHループは、銅線ループと比較すると、いくつかの経済面、運用面での参入障壁を示している。しかし、FTTHループ展開の潜在 的な見返りは相当なものがある。 〇従って、FCCは、FTTHループ展開による相当な収入機会は、参入障壁の多くを改善する助けとなると考える。 ■米国のFTTHループの普及状況(日本と大きく異なる現実) FTTH加入数(2003.12末現在) : 米国(2万加入)×日本(89万加入) ※米国ではほとんど普及が進んでいないため、既存の大手地域電話会社に投資(敷設)へのインセンティブを与える必要があった。 ※また、ケーブルTV会社のBBサービスがDSLの2倍と支配的なため、大手地域電話会社を対抗勢力として育成する必要があった。 13
VoIP 米国のVoIP規制議論における主な論点 連邦通信法上の定義(電気通信 サービスか情報サービスか?) そもそも規制すべきか否か? サービスか情報サービスか?) そもそも規制すべきか否か? 緊急通報サービス(911/E911) への接続を義務付けるか? 規制管轄権は誰が有するのか? (連邦 or 州) VoIP アクセス・チャージを課すべきか? 連邦盗聴法への協力を義務 付けるか? ユニバーサル・サービス基金に拠出させるべきか? 公衆通信事業者の一般的義務(通信法第Ⅱ編) を課すべきか?(非差別的アクセス、公正・妥当 な料金 etc) その他の多くの課題 (サービス品質/番号計画 etc) 14
? ? VoIP 米国におけるVoIPの規制上の定義-「電気通信サービス」か「情報サービス」か、それとも... 基本サービス(Basic Service) 高度サービス(Enhanced Service) コンピュータ裁定(1996年以前) 1996年電気通信法で改正された1934年通信法 電気通信サービス (Telecommunications Service) 「使用される設備に関係なく、公衆が効果的に 利用可能となるように、公衆もしくはそのような 一群のユーザに対する、有料による直接的な 電気通信の提供」 情報サービス (Information Service) 「電気通信を通じた、利用可能な情報の創出、取得、蓄積、加工、処理、検索、使用、もしくは作成」 ? ? VoIP ○従う(通常) ×従う必要は無い 同法の第Ⅱ編「公衆通信事業者」(に対する規則) 15
EU/加盟国と日本のVoIP規制への取り組み ガイドライン文書に昇格させる予定。 英国 ⇒ VoIP規制問題の議論に熱心であり、オフテル時代から通算で4回のガイドライン文書を 公表して来た。 ドイツ ⇒ 規制機関のRegTPは、現在、VoIP規制に関する正式な規則制定の諮問手続きを行って いる。(他に、オランダも実施している模様) VoIP規制の議論のポイント ◆ VoIPは従来の電話サービス(PATS)の代替物か補完物か? ◆ 代替物であれば、PATSと同様の規制を課す可能性がある。 ◆ 換言すれば、VoIPとPATSの市場は同一の関連市場であるのか? * PATS:Publicly Available Electronic Communication Services ■日本のVoIPの規制議論 ◇VoIP事業者が使用する電話番号(一般番号か、050番号か)により、規制の義務付け(緊急通報等)を変えている。 ◇総務省は、2004年9月に発表した「電気通信事業分野の競争状況の評価に関する平成16年度実施細目(案)」の 中において、平成16年度の競争状況評価(有効競争レビュー)の分析対象として、「ブロードバンド、携帯電話及び IP電話の三つのサービスの今後の関係に注目する」として、IP電話を取り上げることを明らかにしている。 16
英国の規制機関オフコムが開始したテレコム産業の戦略的見直し ●オフコムは2004年4月から12月にかけて、電気通信の戦略的見直し(Strategic Review of Telecommunications)(「テレコム・レビュー」) を行っている。テレコム・レビューは、13年ぶりの電気通信分野の広範な見直しであり、電気通信規制に対するオフコムのアプローチ を定めるための諮問作業である(3段階のフェーズに分けて実施。現在はフェーズ1の諮問作業中)。 ◇テレコム・レビュー実施の背景◇ 〇EUの新通信規制パッケージの採択、それに基づく英国の2003年通信法の成立、新通信規制機関オフコムの発足により、新しい観 点から規制を見直す機会が生じたこと。 〇分野特殊な事前規制は競争が進展するまでの暫定的な措置であると考えられてきたが、現在まで、事前規制を撤廃するほど十分 に競争は進展していないと、規制当局は考えてきたこと。 〇技術や消費者の行動の基本的な変化により、既存の規制アプローチは時代遅れのものとなるかもしれないこと。 オフコムによる21の質問(諮問事項)のうち、ワイヤレスやブロードバンドに関連するもの。 音声サービス競争 質問7:固定ネットワークと携帯電話ネットワークは、どの程度の速度で、またどの程度の範囲で、相互に代替物となるであろうか? 質問8:電気通信市場に対してVoIPはどのような影響をもたらすか? ブロードバンド・IP 質問9:ブロードバンドは、どの程度の速度で、またどの程度広い範囲で、英国において普及するであろうか?また、このような成長の規制上の意味はどのようなものか? 質問10:展開される、新しい競合プラットフォームの範囲はどのようなものか?また、どの技術が最も利用されそうか? 質問11:事業者は何時、「オールIP」アーキテクチャーに向けて動きそうか? 17
BTのオールIP化構想:21CNの概要とスケジュール を資本分離し、現在は、世界の大手電話会社の中では稀な「固定専業事業者」と なっている。 ◇固定電話市場が縮小を続ける中で、それを相殺する移動体収入を持たない BTは、財務状況は大きく好転しているものの、「戦略的事業」が見当た らないとして、投資家やアナリストからの評価は厳しく、株価は長期的な 低迷傾向にある。 ◇BTは、それらの批判に対抗するために、固定移動融合 サービスとブロードバンド事業(“New Wave”と総称) に熱心に取り組んで来たが、2004年6月、 同社の大半のネットワークを2008年まで にオールIP化する「21世紀ネットワーク構想」 を発表し、業界を驚かせた。 2009 2004 2005 2006 2007 2008 ブロードバンドの利用可能性を99.6%に 戦略的提携のベンダーを発表 MSAN/combo cards上でのブロードバンドの発展 再使用可能な機能(re-usable capabilities)上での最初のサービスを開始 PSTNからの大規模な移行を開始 17の新製品を開始/再使用可能な機能(re-usable capabilities)上での高度化 新たな運用・サービス管理機能を開始 ブロードバンド・ダイヤルトーン がほとんどの顧客で利用可能に 大規模な非PSTNサービスへの移行を開始 PSTNの大規模な移行が顧客の50%以上で完了 PSTNの転換のトライアル ディープ光ファイバーのトライアル(Deep fibre trial) 融合化されたネットワーク サービスの創造 Experience development centre BT’s 21 Century Networkは大手電話 会社による世界初のオールIP化構想 の実現のはずであった、が.... 18
KDDIのオールIP化構想 ◇KDDIは2004年9月15日、「固定電話網のIP化推進について」と題する報道発表を行なった。 (http://www.kddi.com/corporate/news_release/2004/0915/pdf/p_index_01.pdf) ■BTの21CN構想よりも完了が1年早く、「世界に先駆けて固定網のIP化を完了」と主張。 ■その目的は「ブロードバンドをご利用にならない利用者にもより低廉なサービス提供が可能」と しており、アナログ音声サービスにおける競争の高度化と競争優位の確立にある。 KDDIの報道発表 資料より 19
■ 融合化が進むネットワーク、サービスへの対応 ■ 競争の進展に応じた政策、規制のあり方 ■ オールIP化、デジタル化への移行のタイミング まとめ-21世紀のテレコム産業の課題(中短期的な課題)(私見) ■ 融合化が進むネットワーク、サービスへの対応 ■ 競争の進展に応じた政策、規制のあり方 ■ オールIP化、デジタル化への移行のタイミング ■ 施設(インフラ)ベースの競争か、サービス・ベースの競争か? ■ 顧客(エンドユーザー)、通信事業者の双方にとっての利益の もたらされる競争 → 社会的効用の最大化(最適な競争を通じた業界規模の拡大) 20
(参考1)欧州のブロードバンド競争の構図 1 (出典)欧州競争通信事業者協会(ECTA) “ECTA Broadband scorecard end of June 2004” 21
(参考1)欧州のブロードバンド競争の構図 2 22 (出典)欧州競争通信事業者協会(ECTA) “ECTA Broadband scorecard end of June 2004” 22