公益社団法人 日本技術士会 原子力・放射線部会 技術士試験の受験のすすめ 公益社団法人 日本技術士会 原子力・放射線部会
技術士とは(1/2) 技術士とは、「技術士の名称を用いて、科学技術に関する高 度の専門的能力を必要とする事項についての計画、研究、設 計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う もの」です。(技術士法第二条より) 技術士 (Professional Engineer, Japan)は、 「技術士法」 に基づいて行われる国家試験(技術士第二次試験)に合格し、 登録した人だけに与えられる名称独占の資格です。 機械、建設などの20の技術部門と総合技術監理部門がある。 「原子力・放射線」部門もその一つ 技術士の特徴 高等の専門的能力を持つ…技術力 業務を自立して遂行することができる…実務経験 倫理規範を備えている…倫理性
技術士とは(2/2) 技術士法に定める義務・責務 技術士倫理綱領 信用失墜行為の禁止 技術士等の秘密保持義務 技術士の名称表示の場合の義務 技術士等の公益確保の責務 技術士の資質向上の責務 技術士倫理綱領 https://www.engineer.or.jp/c_topics/000/000025.html 技術士は、国によって認められた優れた資格であり、科 学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある、 国際的にも通用する国家資格です。 “A top engineer of engineers”
技術士になるには(技術士試験の仕組み) 技術士第一次試験は技術士の第一歩 APECエンジニア等 ※ 一次試験と同じ部門でなくても良い ☆ ※ 一次試験と同じ部門でなくても良い 年齢、学歴、業務経歴等による制限なし ☆日本技術者教育認定機構(JABEE)認定コース(原子力・放射線部門はなし) ※第一次試験前の実務経験も通算。通常は7年だが、理科系統の大学院での研究経歴の期間を2年間を限度として減じることができる。 技術士第一次試験は技術士の第一歩 出典)日本技術士会「技術士試験 受験のすすめ」 (平成29年3月) http://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1680_3.pdf に加筆
技術士の部門 技術士の部門別分布 機械、建設などの20の技術部門と 総合技術監理部門がある。「原子 力・放射線」部門もその一つ 機械、建設などの20の技術部門と 総合技術監理部門がある。「原子 力・放射線」部門もその一つ 日本技術士会 (Institution of Professional Engineer, Japan) を組織する 技術士の部門別分布 昭和33年度以来、平成28年12月末現 在、技術士の合計は約8万6千名(複 数部門取得者有り) 原子力・放射線部門の技術士二次試験 合格者は509名、一次試験合格者は 2166名(H30.2.10現在) 1.機械 8.資源工学 15.経営工学 2.船舶・海洋 9.建設 16.情報工学 3.航空・宇宙 10.上下水道 17.応用理学 4.電気電子 11.衛生工学 18.生物工学 5.化学 12.農業 19.環境 6.繊維 13.森林 20.原子力・放射線 7.金属 14.水産 (21.総合技術監理)
原子力・放射線部門はなぜ生まれたか? 1990年代末、続出した原子力関連不祥事・事故 1997年 国内原発での溶接焼鈍記録(の温度)の改ざん発覚 1998年 使用済み核燃料輸送容器データ改ざん発覚 1999年9月 MOX燃料製造データ改ざん発覚 1999年9月30日 JCO核燃料加工施設臨界事故発生 2001年11月、日本原子力学会から技術士試験における技術部門見直し中 の文科省 へ「原子力部門」設置を要望 2003年6月、科学技術・学術審議会より文科省に、技術部門見直しの検討 結果として、原子力・放射線部門設置を答申 技術者一人一人が組織の論理に埋没せず、常に社会や技術のあるべき姿を認識し、意識や技術を常に向上させていく仕組みが必要である 社会から信頼される個人としての技術者の存在が不可欠である http://www.engineer.or.jp/c_topics/000/000121.html http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu0/shiryo/attach/1331978.htm http://www.engineer.or.jp/c_dpt/nucrad/topics/001/001444.html →大きな期待と使命を担って誕生…組織的な活動も必要
原子力・放射線部会の設立と東電福島事故 日本技術士会「原子力・放射線部会」の設立経緯 日本技術士会「原子力・放射線部会」の設立経緯 2005年 4月 原子力・放射線部会設立準備会の開催、日本技術士会会長への 申請、準備会合の開催 2005年 5月 日本技術士会理事会にて部会承認 2005年 6月 原子力・放射線部会設立総会の開催 2011年3月11日の東電福島第一の事故:専門家として防ぐことができず 部会として福島復興支援活動を実施 程度の差こそあれ、原子力・放射線分野を取り巻く世の中の環境と我々自身 の姿勢に起因する課題は何も変わってはおらず、それ故専門家に求められる 資質も変わっていない 現在の原子力・放射線部会の重要活動項目 安全文化醸成に資する活動 技術士の認知度向上と技術士増に向けた活動 部会員の技術士活動の支援 広報活動 部会HP http://www.engineer.or.jp/c_dpt/nucrad/
平成30年度の一次試験予定 試験は、基礎科目、適性科目、 専門科目(20部門) 試験日:平成30年10月7日(日) 申込:6月21日~7月2日まで 試験地(12か所):北海道、宮城県、東京都、 神奈川県、新潟県、石川県、 愛知県、大阪 府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県 問題の種類 解答時間 Ⅰ 基礎科目 科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 1時間 Ⅱ 適性科目 技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う問題 Ⅲ 専門科目 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題 2時間 https://www.engineer.or.jp/c_topics/005/005459.html(平成30年度技術士第一次試験の実施について)
技術士第一次試験へのアプローチ 基礎科目、適性科目、専門科目 一次試験はどれも50%とれれば合格(平成30年度技 術士試験合否決定基準による) https://www.engineer.or.jp/c_topics/005/005607.html 原子力・放射線部門の専門科目 (一次)は、基本的に は、原子力・放射線分野の入門的な試験 大学の原子力関係学科の専門課程での学習内容 35問中25問で五肢択一 原子力関係が10~15問 放射線関係が10~15問 エネルギー関係その他が7問程度 9
技術士一次試験(原子力・放射線部門)の例 【20】 原子力・放射線部門 Ⅲ 次の35問題のうち25問題を選択して解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。) Ⅲ-3 使用済燃料プール中の使用済燃料の残留熱(崩壊熱)を除去する。プールの水を熱交換器に送り,この熱を全て対向流型の熱交換器を用いて二次側の水で冷却する。系統は定常状態にあるとする。熱交換器の一次側(プール側)の入口温度を50 ℃ ,出口温度を30℃とする。また,二次側の水の入口温度を20 ℃ ,出口温度を30 ℃ とする。このときの熱交換器の除熱量として次のうち,最も近い値はどれか。 ただし,熱交換器の熱通過率を1kW・m 2・K-1,伝熱面積を30m2とする。また,水の 比熱と熱通過率は温度によらず一定とし, ln2=0.69とする。 ① 300 kW ② 360 kW ③ 420 kW ④ 480 kW ⑤ 540 kW ... Ⅲ-24 人への放射線影響に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。 ① 被ばく線量と影響の発生頻度の関係から,確率的影響と確定的影響に分類される。 ② しきい線量とは,確定的影響が現れる最小の線量である。 ③ 確定的影響では,被ばく線量が大きくなると重篤度が増す。 ④ 確率的影響には,がんと遺伝的影響が含まれる。 ⑤ 妊娠中に被ばくした胎児に現れる影響は遺伝的影響である。 Ⅲ-29 2015年12月パリにて気候変動対策に関する新しい条約「パリ協定」が合意され,翌年11月に発効した。この「パリ協定」に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。 ① パリ協定は,京都議定書同様,気候変動枠組条約の下で策定された。 ② パリ協定には,産業革命前からの地球の平均気温上昇を2℃より十分下方に抑えること等が,協定の目的として記述されている。 ③ パリ協定は,京都議定書同様,先進国のみに温室効果ガスの削減義務を課している。 ④ パリ協定は,温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを今世紀後半に達成することを目指}している。 ⑤ パリ協定を受けて,日本国政府は長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガ スの排出削減を目指すとの閣議決定を行った。 左は、平成29年度の 一次試験のうち、原 子力、放射線、エネ ルギー分野のそれぞ れの出題の例 https://www.engineer.or.jp/c_topic s/005/attached/attach_5371_11.pdf 出題範囲はある程度 限定されており、過 去の傾向は同じ。 まずは、思い切って チャレンジしてみよ う!
専門科目の学習について まずは、過去問が参考となる。 最新の原子力の動向等を適宜確認する。 計算問題の対応をよく練習しておくこと。解法は難しくないものが多い。 なお、関数電卓は使えないので、その際の指数計算の要領に慣れておくこ とが必要。 第一次試験専門科目の学習に参考になると思われる出版物、ネット情報 「原子力がひらく世紀」日本原子力学会編 「原子力ハンドブック」オーム社(値段は高いですが網羅性あり) 「原子力教科書シリーズ」オーム社→ 原子力プラント工学、原子炉設計など 「放射線取扱の基礎-第1種放射線取扱主任者試験の要点」日本アイソトー プ協会(RI1種と同時に受けるのであれば合理的) 原子力百科事典ATOMICA( http://www.rist.or.jp/atomica/) 原子力学会HP等では過去問の解説等が公開されている。 http://www.engineer.or.jp/c_dpt/nucrad/topics/002/002467.html http://www.aesj.or.jp/gijyutsushi/
基礎科目の概要と学習 基礎科目は、科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 ⇒理工系であれば、大学の教養レベルで習得しているべき知識 設計・計画に関するもの〔設計理論, システム設計, 質管理等〕 情報・論理に関するもの〔アルゴリズム, 情報ネットワーク等〕 解析に関するもの〔力学, 電磁気学等〕 材料・化学・バイオに関するもの〔材料特性, バイオテクノロジー等〕 環境・エネルギー・技術に関するもの〔環境, エネルギー, 技術史等〕 (試験時間:1時間、問題数:各群3/6 問選択×5 群、15点満点) ⇒理工系であれば、大学の教養レベルで習得しているべき知識 何よりも、過去の出題内容を確認して学習する ⇒ 得意な分野はきっちりと過去問や教科書等で知識を定着さ せること。 ⇒ 馴染みのない分野もちょっと齧れば十分に対応可能。 ⇒ ただし、あまり広範囲にやる必要はない。 12
適性科目の概要と学習 適性科目は、技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問 う問題 試験時間:1時間、問題数:15問、15点満点 3義務2責務 ⇒信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、名称表示の場合の義務、 公益確保の責務、資質向上の責務 一般的な技術者倫理・コンプライアンス等に関するもの ⇒キーワード:倫理と法・モラル、インフォームドコンセント とパターナリズム 、専門職業人、公衆、利益の相反、功利主 義、内部告発、公益通報、男女共同参画、安全とリスク、個 人情報、製造物責任、知的財産 仮想事例、実際事例、裁判事例 等 基本的に知識を問う問題ではない。過去問及びその解説をよ く読んでおけばそれほど難しい内容ではない。インターネッ トの情報で十分か。 13
二次試験、技術士登録とその後 7年の実務経験等が必要ですが...将来を考えよう! 社会に出て、専門家として経験を重ね、最もふさわしい技術部門でチャレンジできます。 原子力・放射線部門の二次試験は、以下の5つの分野に分かれており、どれかを選択 原子炉システムの設計及び建設 原子炉システムの運転及び保守 核燃料サイクルの技術 放射線利用 放射線防護 筆記試験(必須科目/択一式1.5時間、選択科目/記述式 2時間×2) →これに合格すると 口頭試験(面接) 口頭試験に合格→技術士登録→晴れて技術士に! 技術士会への入会→原子力・放射線部会での活動参加など 継続研鑽(CPD)が必要(技術士の資質向上の責務) 注:平成31年度より以下の3分野に統合 原子炉システム・施設 核燃料サイクル及び放射性廃棄物の処理・処分 放射線防護及び利用
H29.11.17 林道寛氏 「原子力施設の廃止措 置と課題‐諸外国の実施状況と反映‐」 原子力・放射線部会のCPD支援活動 部会の現在の東電福島第一発電所 事故を踏まえた活動方針に基づき、 専門家を招いた講演会等(技術士 の夕べ)を2か月に1回程度開催。 単なる講演会ではなく、会員同士 の議論を深める機会も設けている。 講演会での質疑応答の様子 H29.11.17 林道寛氏 「原子力施設の廃止措 置と課題‐諸外国の実施状況と反映‐」 また、部会主催の講演会だけではなく、技術士会とし ての「CPD講座」にも積極的に関与している。 →一次試験合格者だけでなく一般の人の参加も可能 年2回程度、原子力・放射線の関連施設の見学会を実 施している。
おわりに 技術士試験は誰でもチャレンジできます。 多くの大学生が受験しています。 原子力・放射線分野の学生であれば、是非ともこの分野 で受験してみてください。 他の試験(例えばRI試験)等と並行して学習するのもよ いでしょう。(それに比べれば技術士一次は易しい。) 原子力・放射線の利用は「倫理」と切り離して考えるこ とはできない技術分野です。 即ち、技術士資格を活用するにふさわしい分野と言えま す。 技術士試験に挑戦して、専門的な原子力・放射線技術者をめざそう! http://www.engineer.or.jp/sub02/ (技術士会 試験・登録情報) 16