第1種衛生管理者養成講習会 労働衛生10章 労働生理2-5章 (新/衛生管理・上-第1種用- 第6版準拠) 第1種衛生管理者養成講習会 労働衛生10章 労働生理2-5章 (新/衛生管理・上-第1種用- 第6版準拠) 神奈川労務安全衛生協会 保健対策委員会 仲村 準 2009/01/08版 2005年渡部真弓/2008年北原佳代 作 仲村改変(健康管理B Version 05-1)
今日の内容 労働衛生 (P320~P335) 労働生理 (P410~P437) 第10章 労働衛生管理統計 第10章 労働衛生管理統計 労働生理 (P410~P437) 第2章 環境条件による人体の機能の変化 第3章 労働による人体の機能の変化 第4章 疲労およびその予防 第5章 職業適性
目的:統計により事業場の労働衛生診断を行い、現状把握や問題を明確にし、対策を行う 労働衛生 第10章 労働衛生管理統計 目的:統計により事業場の労働衛生診断を行い、現状把握や問題を明確にし、対策を行う キーワード 有所見率と発生率 病休度数率 病休強度率 病休件数年千人率、疾病休業日数率など
有所見率 ある時点(多くは健診日)の有所見者の割合 有害物質に関する統計の場合は分母となる集団を “常時従事する労働者” に限定 有害物質に関する統計の場合は分母となる集団を “常時従事する労働者” に限定 2007年7月 労働者300名中、高血圧のある人が30人いた →高血圧の有所見は30÷300=0.1 すなわち有所見率は10%
発生率 ある期間(多くは1ヶ月、1ヵ年)に有所見者が発生した割合 有所見率と発生率の動きは一致しない 例1:経過が長い異常所見では有所見率は高いが発生率は低い 例2:経過が短い異常所見では“ある時点”の有所見率は低いが発生率は高い
労働者の定着率が低いと有所見率、発生率が実際よりも低くなることがある 2006年7月 2007年7月 この間に病気が発生した人の割合 労働者300名中、新規に高血圧が発症した人が6人いた →高血圧の発生率は6÷300=0.02 すなわち1年間の発生率は2%
労働者の疾病休業状況 の把握 (P335) 病休度数率=疾病休業件数/在籍労働者の延実労働時間数×1,000,000 病休強度率=疾病休業延日数/在籍労働者の延実労働時間数×1,000 病休件数千人率、各種の休業日数率 これらは覚えよう!
労働生理 第2章 環境条件による人体の機能の変化 温熱、空気(気圧、成分)、視環境、音環境 ホメオスターシス=恒常性 生体の生命現象の維持のために外部環境変化と内部環境変化は同調しない ⇒ 外部環境の変化に対して内部環境を一定に保つための自動調節機構 限度を超える ⇒ 恒常性の破綻 ⇒ 病的状態(職業関連疾患など) その調整役=(自律)神経系+内分泌系 (神経性調節) (体液性調節) 環境負荷(例えば騒音) 自律神経の交感神経↑ 内分泌(ホルモン)の副腎皮質ホルモン(副腎皮質)↑ アドレナリン・ノルアドレナリン(副腎髄質・交感神経)↑
自律神経系 →交感神経 / 副交感神経 内臓・血管・腺などの不随意筋に分布 生命維持に必要な作用を無意識・反射的に調節 (特に交感神経は、後述するアドレナリンというホルモンと密接に関係している)
交感神経と副交感神経 同一器官に分布しているが,作用は正反対 交感神経 ⇒昼に活発 副交感神経 ⇒夜に活発
内分泌・代謝系 もう一つの調整役=内分泌系 各種ホルモンにより調整 ホルモンを分泌する腺=内分泌腺
【内分泌の器官】 視床下部 下垂体 副腎(皮質、髄質) 甲状腺 副甲状腺 すい臓 胃 十二指腸 精巣 卵巣
アドレナリン 副腎髄質から分泌される 交感神経同様の働き ・心臓の自動中枢に作用→血圧↑ 心拍出量↑ ・肝臓のグリコーゲン分解↑→血糖↑ ・心臓の自動中枢に作用→血圧↑ 心拍出量↑ ・肝臓のグリコーゲン分解↑→血糖↑ ・筋活動が円滑に遂行されるよう身体の 態勢を整える
副腎は形が京都の銘菓「生八橋」に似ている 八橋の皮の部分が「皮質」 (参考までに)混乱の臓器「副腎」 -副腎皮質と副腎髄質- 副腎は腎臓の上に乗っかっている 副腎は形が京都の銘菓「生八橋」に似ている 八橋の皮の部分が「皮質」 →副腎皮質ホルモン(ステロイド)を分泌 ストレス反応と関係あり 餡の部分が「髄質」 →アドレナリンを分満 交感神経と関係あり
環境条件による人体の機能の変化 温熱
恒常性維持の代表格 ⇔ 体温の維持 (人間は恒温動物) 熱の産生 ⇔ 熱の放散
温熱環境 体温調節中枢→視床下部 高温環境 低温環境 発汗:熱放散の温熱性発汗と精神的発汗 放熱→物理的調節(ラジエーター) 不感蒸泄:発汗していなくても皮膚から蒸発(体温維持のため) 抹消の血管拡張→発汗→熱放散 低温環境 産熱→化学的調節 栄養素の酸化燃焼や分解で熱産生 末梢の血管収縮→熱放散↓ 発汗:熱放散の温熱性発汗と精神的発汗
体温調節中枢 ↓ 視床下部 間脳にある
深部体温が37℃以上になると… 体温調節中枢から皮膚への指令 ① 皮下の静脈血流を増加させよ! ② 汗を出せ! ・体表面の血流増加 ① 皮下の静脈血流を増加させよ! ・体表面の血流増加 ・皮膚からの放熱促進 ② 汗を出せ! 蒸発する際の気化熱=0.58kcal/ml 汗100cc全ての蒸発 ⇒体重58Kg の人の体温が1℃↓ 汗腺の発達は個人差がある ラジエーター機能の発動
熱中症の原因 ① 産熱量>>放熱量 ② 発汗 体温上昇 水分と電解質(塩分など) が失われる。 高温多湿な環境は 汗が蒸発しにくい ① 産熱量>>放熱量 体温上昇 ② 発汗 水分と電解質(塩分など) が失われる。 高温多湿な環境は 汗が蒸発しにくい 汗の放熱作用↓↓
熱中症の種類 1.熱けいれん 2.熱虚脱 3.熱射病(日射病)
1.熱けいれん(塩分不足) 発汗による水分喪失と塩分喪失 水分のみの補給 血液中の塩分濃度の低下 筋肉のけいれん 体温の上昇を押さえるために発汗が起こり、それにより一時的に脳に流れる血流が減少することで上記のような症状を起こす 気絶や失神を起こしている場合は熱射病との区別が困難なことがあるが、基本的な対応の仕方は下記の通りである 1.涼しいところに移動させ、衣服をゆるめる 2.意識があるなら水分を摂らせる (何もなければ水で構わない)が、できれば後述するようなスポーツドリンク類や水と食塩を一緒に摂取させる (お勧めのドリンク類は後述) 3.気絶や失神しているようなら、膝の下に何かを敷いて足を上げ、脳への 血流を増やしてやる 4.症状の大きさに関わらず、熱中症が発生したら上司や医務・産業衛生に連絡する。 熱虚脱: 水分、塩分は欠乏していない。 血圧が低下し、脳の血流が減少する事で症状が出る。 炎天下で立っていて短時間の後に昏倒するケースでは、これが典型的な原因。 熱疲はい: 大量の発汗の後に起こる。水分・塩分の欠乏により血液が濃縮され、脳への血流が不足する事で症状が出る。 一般に血圧に特に異常はない 筋肉のけいれん
2.熱虚脱(脳への血流不足) 脳への血流が減る 発汗による脱水 皮膚の血管拡張 が急激におこる 頭痛、めまい、吐き気、 体温の上昇を押さえるために発汗が起こり、それにより一時的に脳に流れる血流が減少することで上記のような症状を起こす 気絶や失神を起こしている場合は熱射病との区別が困難なことがあるが、基本的な対応の仕方は下記の通りである 1.涼しいところに移動させ、衣服をゆるめる 2.意識があるなら水分を摂らせる (何もなければ水で構わない)が、できれば後述するようなスポーツドリンク類や水と食塩を一緒に摂取させる (お勧めのドリンク類は後述) 3.気絶や失神しているようなら、膝の下に何かを敷いて足を上げ、脳への 血流を増やしてやる 4.症状の大きさに関わらず、熱中症が発生したら上司や医務・産業衛生に連絡する。 熱虚脱: 水分、塩分は欠乏していない。 血圧が低下し、脳の血流が減少する事で症状が出る。 炎天下で立っていて短時間の後に昏倒するケースでは、これが典型的な原因。 熱疲はい: 大量の発汗の後に起こる。水分・塩分の欠乏により血液が濃縮され、脳への血流が不足する事で症状が出る。 一般に血圧に特に異常はない 頭痛、めまい、吐き気、 脱力感、血圧低め、早い脈 原図:映像研
3.熱射病(脳の障害) 体温調節中枢機能が麻痺 体温が40℃を超える 発汗停止・皮膚の乾燥 意識障害(意識レベル↓、錯乱状態) 熱中症の中で、最も危険なもの 持続的な体温の上昇(外気の温度・湿度上昇、作業負荷による体温上昇など)が原因で、脳温が上昇、脳内の体温調節中枢が麻痺し、体温を下げるような反応(主に発汗による熱放散)ができなくなってしまった状態。(この為に皮膚が乾燥する) 上記のような状態で放置すると、先ほど述べたような経過をたどり、最後には死亡することもある非常に重篤な疾患 発見時、意識消失もしくは錯乱状態のことが多いため、異常な体温上昇を感知したらすぐに体温を冷やすとともに、救急車を呼び(可能であれば)医師に連絡することが大切 もちろん可能であれば、水を飲ませることも重要だが、一人では飲水できないことの方が多いため補助が必要となる 冷却方法は、日陰に移動させ洋服の上から水をかけたり、脇の下や股間に氷入りの袋を置いたり、衣服を脱がせて浴槽につけるなどして、とにかく早く体温を下げてやることが肝要 ちなみに、日射病は直射日光の下で発生した熱射病のことをいう 死亡率が高く大変危険 *直ちに救急車を呼ぶ!
環境条件による人体の機能の変化 空気(気圧、成分)
気圧 高圧、低圧 体内における閉鎖腔は中耳腔、副鼻腔、口と鼻を閉じたときの肺
気圧異常時の作用 <直接作用> <間接作用> 加圧 スクイーズ (締め付け) 空気密度増加 成分気体分圧↑ (窒素酔い、酸素中毒) 減圧 破裂 減圧症(潜函病)
成分 酸素 二酸化炭素と一酸化炭素 動脈血中の二酸化炭素は呼吸を促進 一酸化炭素は二酸化炭素の230倍危険 事務所衛生基準規則における供給空気内の管理濃度 空調方式 通常 中央管理方式 一酸化炭素 50 ppm 以下 10 ppm 以下 二酸化炭素 0.5% 以下 0.1% 以下
一酸化炭素は ⇒タバコの煙の中に含まれる ヘモグロビンと強力に結合 酸素の結合能力の200倍以上 ヘモグロビンの酸素運搬能力低下 ⇒タバコの煙の中に含まれる ヘモグロビンと強力に結合 酸素の結合能力の200倍以上 ヘモグロビンの酸素運搬能力低下 酸素欠乏をもたらす 血管内酸素欠乏は ⇒血管内皮を傷つける ⇒動脈硬化をすすめる
呼気中の一酸化炭素濃度 タバコの煙の中には・・・ 非喫煙者 1~15本喫煙者 16~25本喫煙者 26本以上喫煙者 3.9 ± 1.8 ppm 4.4 ± 2.0 ppm 20.3± 5.7 ppm 37.1±10.3 ppm タバコの煙の中には・・・ 一酸化炭素 20,000~60,000 ppm
粒径の小さいものが肺まで到達してしまう クリアランス(粉じんの除去作用のこと) 粘液絨毛クリアランス(鼻くそ) 吸収・非吸収クリアランス(痰)
環境条件による人体の機能の変化 視環境
視環境 網膜 カメラのフィルム <錐状体> 明るい所で働く:明順応 <杆状体> 暗い所で働く :暗順応 錐:とんがり帽子 Cone 色を感じる細胞 杆:こん棒 Rod 光を感じる細胞 視環境 網膜 カメラのフィルム <錐状体> 明るい所で働く:明順応 <杆状体> 暗い所で働く :暗順応 暗順応(30分~1時間)> 明順応(40秒~1分)
虹彩:しぼり 水晶体:レンズ 網膜:フィルム
網膜の機能 光を感じる視細胞 錘状体;700万 杆状体;1億
杆Rod 錐Cone
杆Rod 光を感じる 色を感じる 錐Cone
疲れやすい?
疲れにくい?
環境条件による人体の機能の変化 音環境
騒音とは「好ましくない音」の総称。主観的。 生理面への影響 自律神経系→交感神経緊張 内分泌系→ストレス反応(副腎皮質ホルモン↑) 心理面への影響 不快感、睡眠障害、作業能率の低下 周波数の高い音(キンキンした音)ほど高度な不快感
適度なストレス⇒交感神経系を目覚めさせ、判断力、行動力を高める。爽快感、充実感。 (スポーツ、ゲームの感覚) 労働生理 第3章 労働による人体の機能の変化 ストレスは必要不可欠! 適度なストレス⇒交感神経系を目覚めさせ、判断力、行動力を高める。爽快感、充実感。 (スポーツ、ゲームの感覚) 過度なストレス⇒ストレス反応として自律神経系(アドレナリン等)、内分泌系(副腎皮質ホルモン)に影響 ⇒ストレス関連疾患(喘息、高血圧、狭心症、うつ病、胃潰瘍) 同じストレッサーでもストレス反応には個人差がある
ストレッサーとストレス反応 ストレス反応
ストレッサーの強さ 配偶者の死 離婚 配偶者との別れ 拘禁 親密な家族メンバーの死 怪我や病気 結婚 失職 家族の健康上の変化 性的な障害 日常生活の中で起こるストレスを相対評価すると… (ホームズの社会再適応評価尺度より) 38 37 36 35 31 29 26 23 20 配偶者の死 離婚 配偶者との別れ 拘禁 親密な家族メンバーの死 怪我や病気 結婚 失職 家族の健康上の変化 性的な障害 職業上の再適応 100 73 65 63 53 50 47 44 39 経済上の変化 親密な友人の死 仕事・職業上の方針の変化 配偶者とのトラブル 借金が1万ドル以上に及ぶ 仕事上の責任の変化 息子や娘が家を離れる 法律上のトラブル 妻が働き始める 上役とのトラブル 住居の変化
血圧,血糖値,体温,筋緊張,神経系活動の上昇 ストレスによる心身の状態のメカニズム 第1段階 第2段階 第3段階 ストレス要因への抵抗力大 症状の消失 但し・・・ 抵抗力 血圧,血糖値,体温,筋緊張,神経系活動の上昇 抵抗力上昇 強度のストレス要因 又は慢性化 症状の再発 抵 抗 期 疲 弊 期 警告反応期
ストレスによる心身の状態の変化 元気 生産性 適度なストレスが生産性を上げる 過労・ 疾病状態 ダラダラ 適正ストレス状態 ・ストレスには良いストレス、悪いストレスがあり 多くても少もなくてもいけない ・適度なストレス状況が最も生産性を高める 過労・ 疾病状態 元気 ダラダラ 生産性 適正ストレス状態 適度なストレスが生産性を上げる 47
ストレスと休息のバランス 障害 成長 萎縮 ストレス 休養 ストレス(+)休養(-)→障害 ストレス(-)休養(+)→萎縮 困難な仕事が人の健康を阻害するのではない 適切な休養がないことが健康障害の原因となる ストレス(+)休養(-)→障害 ストレス(-)休養(+)→萎縮 ストレス(+)休養(+)→成長 ストレス 休養 障害 成長 萎縮
メンタルヘルス4つのケア (テキストには載っていないが・・・) ①セルフケア 労働者自身によるストレスへの気づき、対処 ②ラインによるケア 管理監督者による職場環境の改善、個別指導、相談対応など ③ 事業場内産業保健スタッフによるケア 産業医、看護職、衛生管理者、人事労務管理担当者、その他の連携 ④ 事業場外資源によるケア 地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センター、健保組合、医療機関、EAPなど
疲労 労働生理 第4章 疲労およびその予防 行動によって生じる生理的現象のひとつ 心身の休息、休養を得るためのメッセージ 生理機能の低下、作業能率の低下 分類:身体的 < 精神的、動的 < 静的、全身 < 局所 測定:フリッカー検査 、2点弁別閾検査 、RMR 、心拍数 回復:休息 、休養 、睡眠
睡眠 睡眠中は副交感神経優位 ⇒体温↓、代謝↓、血圧↓、心拍数↓など 睡眠不足⇒感覚機能・集中力↓ ⇒作業能率↓、労働災害へ発展 ⇒体温↓、代謝↓、血圧↓、心拍数↓など 睡眠不足⇒感覚機能・集中力↓ ⇒作業能率↓、労働災害へ発展 夜勤の労働者の場合は日中に良質な睡眠を得るため工夫が必要 精神的リフレッシュ、リラックス
労働生理 第5章 職業適性 適正配置 職務分析 配置前健康診断:有害業務開始前は必須 作業者の生理的および心理的特性に適応する作業環境に作業者を配置すること 職務分析 職務特性を明確にし、作業者の特性と照らし合わせ、配置に応用する 「職業適性検査」「心理テスト」「性格検査」など :作業者の特性、能力などを調査 配置前健康診断:有害業務開始前は必須
中高年齢者の心身特性 筋力↓、行動緩慢、聴力・視力↓、記憶力↓、習熟の遅延化 個人差が大きい