第四回 図書館法について 公共サービス論(2014.11.3) ○今回は図書館法について見ていきたいと思います。 ○図書館というのは、教育基本法第12条で、社会教育施設であることが明記されていました。 ○また、社会教育法の第9条において、図書館及び博物館は、社会教育のための機関であること、また、図書館及び博物館に関し必要な事項は、別に法律をもつて定めることが規定されていました。 ○そして、その図書館について別に定めた法律が、この図書館法です。 第四回 図書館法について
図書館法 (昭和25年法律第118号) ○図書館法の条文を見ていきたいと思います。
図書館法 第一章 総則(第一条~第九条) 第二章 公立図書館(第十条~第二十三条) 第三章 私立図書館(第二十四条~第二十九条) 附則 第一章 総則(第一条~第九条) 第二章 公立図書館(第十条~第二十三条) 第三章 私立図書館(第二十四条~第二十九条) 附則 このような構成になっているが、ほとんどが公立図書館の規定である。
第一章 総則
第1条(この法律の目的) (この法律の目的) 第一条 この法律は、社会教育法の精神に基き、 図書館の設置及び運営に関して必要な事項を 定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教 育と文化の発展に寄与することを目的とする。 〇第1条は、図書館法の目的を示す。 ○本条は、図書館法が「社会教育法の精神に基づき」制定されることを示し、次いで、「「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め」ることにより、(これが手段ですね)図書館の「健全な発達を図り(目的その1です)、そして、もって国民の教育と発展に寄与することを目的」としていることを明示している。第一回の授業でも学びましたが、この「もって」以降が高次の目的ということです。 〇ここで、「社会教育法の精神」に基づきとある。何か。
第1条(この法律の目的) 「社会教育法の精神」 社会教育法 第一条 教育基本法の精神に則り、社会教育に 社会教育法 第一条 教育基本法の精神に則り、社会教育に 関する国及び地方公共団体の任務を明らかに することを目的 任務・・・施設の設置及び運営等により、国民が自ら 文化的教養を高め得る環境醸成に努めること (同法第三条) 第九条 図書館は社会教育のための機関 〇「社会教育法の精神」とは、社会教育法第1条で「この法律は、教育基本法の精神に則り、社会教育に関する国及び地方公共団体の任務を明らかにすることを目的とする」としているように、「教育基本法の精神」と「社会教育に関する国及び地方公共団体の任務」を意味している。 ○教育基本法の精神とは、社会において行われる教育が国や地方公共団体によって奨励されなければならないこと、社会教育施設の設置等によって社会教育の振興に努めること。 ○なお、「任務」については、社会教育法第3条で「国及び地方公共団体は、この法律及び他の法令の定めるところにより、社会教育の奨励に必要な施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布その他の方法により、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない」と定められている。任務を明示するとともに、国、地方公共団体が、国民が自ら文化的教養を高め得る環境づくりに取り組みます、というのが社会教育法の精神。 ○そして社会教育法第9条において 「図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする」「図書館及び博物館に関し必要な事項は、別に法律をもつて定める」と、図書館が社会教育施設であることを規定している。これらを踏まえて図書館法を規定しているということを図書館法第一条で明記している。
第2条(定義) 図書館の目的 図書館の設置者 図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、 ※学校図書館、大学図書館、議会図書室などは対象外 その教養、調査研究、レクリエーション等に資すること 図書館の設置者 地方公共団体 一般社団法人・一般財団法人・日本赤十字社 〇第2条では、図書館を「目的」と「設置主体」の側面から定義している。つまり、こういう目的と設置主体によるものを「図書館」と定義している。 〇まず、目的の部分をみると、「・・・」と規定し、前半で資料の収集、整理、保存、一般公衆の利用に供すという図書館の基本的機能を示し、 ○後半では、教養、調査研究、レクリエーション等に資するという図書館の目的を示している。 ○図書館の活動は、趣味の読書のためだけでなく、調査研究のために、つまり仕事や様々な調べ物のためにも資料を提供する施設であるということが、明示されています。 〇また、第2項では、図書館の設置者は、地方公共団体と、一般財団法人・一般社団法人・日本赤十字社であり、 このうち、地方公共団体が設置する図書館を「公立図書館」、一般財団法人・一般社団法人・日本赤十字社が設置するものは「私立図書館」ということを規定しています。 したがって、個人や、法人格を持たない団体、企業、学校法人や社会福祉法人、宗教法人など、さらには国は、図書館法でいう「私立図書館」の設置主体から除かれている。 ○なお、図書館法で規定されている図書館は、「一般公衆の利用に供す」こととあるように、公共図書館を指しており、学校図書館や大学図書館、また、地方議会図書室など特定の機関や組織に付属し、主としてその構成員に対してサービスを提供する図書館あるいは図書室は、図書館法上の図書館には含まれません。 ※(補足・法24条で説明するか?) ○私立図書館は、かつては図書館法第24条で、私立図書館を設置廃止する際には、都道府県への届け出が必要と規定されていたが、1967年の法改正により削除されたため、いまでは、一般社団・財団が設置していれば私立図書館であるといえてしまう。また、社会教育調査でも都道府県教育委員会がきちんと把握し切れていないという問題も出てきている。どのように把握するか、質を担保していくかが課題としてある。
(参考) 「学校図書館」(学校図書館法第2条) 児童又は生徒及び教員の利用に供する 学校の教育課程の展開に寄与 議会図書館(地方自治法第100条18号) 議員の調査研究に資する 官報、公報及び刊行物を保管する 大学図書館(大学設置基準第36条・第38条) 教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備える 〇ちなみに、「学校図書館」は、学校図書館法第2条で「小学校、中学校及び高等学校において、図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料を収集し、整理し、及び保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによつて、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備をいう。」と規定されている。 〇また、議会図書館は、地方自治法第100条18号において、「議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し、官報、公報及び刊行物を保管すること」「図書室を一般に利用させることができること」が規定されている。 〇また、大学図書館では、大学設置基準第36条において、「少なくとも次に掲げる専用の施設を備えた校舎を有するものとする」とし、その施設の一つとして図書館が掲げられている。さらに、第38条で、「図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。」とされています。 ※条文 「図書館」 一般公衆の利用に供する(図書館法第2条) 「学校図書館」 児童又は生徒及び教員の利用に供する(学校図書館法第2条) 「議会図書館」 地方自治法第100条 16号 政府は、都道府県の議会に官報及び政府の刊行物を、市町村の議会に官報及び市町村に特に関係があると認める政府の刊行物を送付しなければならない。 17号 都道府県は、当該都道府県の区域内の市町村の議会及び他の都道府県の議会に、公報及び適当と認める刊行物を送付しなければならない。 18号 議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。 19号 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる。 「大学図書館」 大学設置基準第38条 (文部省令第28号) (図書等の資料及び図書館) 第三十八条 大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。 2 図書館は、前項の資料の収集、整理及び提供を行うほか、情報の処理及び提供のシステムを整備して学術情報の提供に努めるとともに、前項の資料の提供に関し、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする。 3 図書館には、その機能を十分に発揮させるために必要な専門的職員その他の専任の職員を置くものとする。 4 図書館には、大学の教育研究を促進できるような適当な規模の閲覧室、レフアレンス・ルーム、整理室、書庫等を備えるものとする。 5 前項の閲覧室には、学生の学習及び教員の教育研究のために十分な数の座席を備えるものとする。
第3条(図書館奉仕) (図書館奉仕) 第三条 図書館は、図書館奉仕のため、土地 の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学 校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資 することとなるように留意し、おおむね次に掲 げる事項の実施に努めなければならない。 〇第3条では、図書館がどのような活動をするのかを規定している。 〇社会教育法の第3条において、国及び地方公共団体は、「すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない」と規定されていましたが、 ○その社会教育法の理念を、図書館法の中で端的に表現しているのが、この第3条であるといえよう。 〇第3条では、「土地の事情及び一般公衆の希望に沿い」と、地域の人々の要望や、地域社会からの要請を踏まえたサービスを行うこととされています。 ○また、「学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるよう留意」するとあり、 これは、教育基本法(第13条)や社会教育法(第3条3項)で、学校・家庭・地域の連携が規定されていますが、 そういった精神を、図書館法においても明示したものであります。 〇また、「おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない」とし、図書館の活動を例示している。
第3条(図書館奉仕) 「土地の事情及び一般公衆の希望に沿い」 地域住民の要望や、社会からの要請を踏まえたサービスを行う 「学校教育を援助」 地域住民の要望や、社会からの要請を踏まえたサービスを行う 「学校教育を援助」 「家庭教育の向上に資する」 「おおむねに次に抱える事項の実施に努める」 図書館の活動を例示
図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料を収集し、一般公衆の利用に供すること。 図書館資料の分類排列、目録の整備 図書館資料の利用のための相談対応 他の図書館等との連絡、協力、相互貸借の実施 分館等の設置、自動車文庫等の巡回 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等の主催、開催の奨励 時事に関する情報及び参考資料の紹介、提供 学習の成果を活用して行う教育活動の機会の提供、提供の奨励 学校、博物館、公民館、研究所等との連絡・協力 ○ここで掲げられている活動は、あくまでも例示であり、ここで規定されていないことについても、 それが図書館の目的に沿うものであり、図書館サービスを発展させることに役立ち、 地域の要請に応じるものであれば、実施すべきなのは当然であります。 〇第1号では、図書館の収集・提供する資料について述べている。「図書・記録・視聴覚教育の資料その他必要な資料」とあり、図書館サービスに必要なあらゆる資料を収集・提供していくこととされている。留意事項としてあげられている「郷土資料」や「地方行政資料」は、地域の人々が地域のことを知り、自分たちのことは自分たちで決定していくために必要な資料である。美術品やレコードは、文字資料だけで無く、多様な形態の資料も必要であることを示している。 〇また、「電磁的記録」については、平成20年の法改正で新たに加えられた。具体的には,音楽,絵画,映像等をCDやDVD等の媒体で記録した資料などが想定される。従来もこれらの資料の収集・提供が排除されていたわけではないが,今後こうした資料の収集・提供又は展示が重要さを増すと考えられることから今回明示的に規定されました。 〇第2号では、図書館資料を住民に使いやすいように組織化することを述べている。 〇第3号では、図書館資料に十分な知識を持ち、利用者の相談に応じることを図書館職員に求めている。 なお、図書館には、相互貸借という仕組みがあるため、「資料の知識や相談対応」は、自館が有する資料に対するものだけで無く、 総合検索システムなどを用いて、他館の資料について相談に応じることも求められます。 〇例えば、愛知県立図書館では、県内市町村立図書館と中部北陸地区の各県立図書館(除:福井県)の間に、資料搬送のための定期便(佐川急便を活用)を県の予算で運行。県内の相互貸借の中核として機能している。 また、神奈川県の川崎市と、東京都町田市では、・・・ 利便性を考慮するとともに、利用者増を図るため、取り組みが行われている。 〇第4号では、その相互貸借について述べている。 人々の要求が多様化している中で、その要求に応えるためには、都道府県立図書館レベルでないと、そのすべてに応えることは難しく、 他の図書館とのネットワークが必要不可欠である。このため、相互貸借を行うことについて規定している。 なお、「全国公共図書館協議会」では、相互貸借の指針「公共図書館間資料相互貸借指針」を制定している。 〇第5号では、図書館サービスのサービスポイントを設けることを述べている。 全ての国民が図書館サービスを受けられるよう、全域サービスを実現することが必要であり、そのための方法を示している。 〇第6号では、…こういった活動により、地域住民は、図書館にはどのような資料が有り、 資料をどのように使えるのか知ることができ、図書館利用教育にもつながると考えられる。 〇第7号では、時事に関する情報や参考資料を図書館が提供することを述べている。 官報や各種行政資料、新聞、雑誌など,社会の動きを知るために必要な資料を指している。 図書館法第2条で、図書館は利用者の調査研究の用に資することが規定されていたが、 これらの資料は、そのために欠かせない資料であります。 また、国民が「参政権」を行使するためにも、欠かせない資料であります。 〇第8号は、2008年の図書館法改正によって新たに追加された項目。 教育基本法で生涯学習社会を「国民一人一人が,自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に活かすことのできる社会の実現が図られなければならない」と規定されたことを受け、この「学習の成果を適切に活かす」ための機会を提供することが、図書館にも求められたものである。社会教育法にも、同じ趣旨の条文がありましたよね。 ○ちなみに、第8号については、「図書館奉仕(サービス)は、資料の提供を通じて行われるものであり、ボランティア活動の場を提供することでは無い」という意見が、図書館関係団体から出されるなど、批判がある部分である。また、地域の人々(必ずしも図書館のことを大切に思っていない人々)が、この条文を根拠として、図書館でボランティア活動を行うことを強要してくる可能性があるという懸念も指摘されていた。 ○文部科学省は、こういった意見も踏まえ、法改正が行われたことを通知する文書「社会教育法等の一部を改正する法律等の施行について(平成21年6月11日)」において、「このような活動の機会を提供する事業の実施については,社会の要請や地方公共団体や各教育機関における必要性などの観点から,最終的には教育委員会が,学校長や社会教育施設の長の判断を尊重しつつ,判断するものである」「したがって、学校,社会教育施設及び教育委員会は,このような活動の機会の提供に関する地域住民等の要望についても,これを受け入れるか否かを適切に判断することに留意すること。」と述べている。 〇第9号は、地域の学校や社会教育施設、研究機関などとの連携について述べたもの。 人々の高度化・多様化する学習要求に適切に応えていくためには、単独の施設のみで対応するには限界が有る。 図書館間の連携だけにとどまらず、学校、研究所、また、商工労働関係の機関や福祉関係の機関などとも幅広く連携することによって、 活動の幅を広げることができ、相互にとって有意義なことであります。「これからの図書館像」でも連携については重要視されている。
第4条(司書及び司書補) (司書及び司書補) 第四条 図書館に置かれる専門的職員を司書 及び司書補と称する。 2 司書は、図書館の専門的事務に従事する。 3 司書補は、司書の職務を助ける。 〇図書館に置かれる専門的職員を司書、及び司書補と称すること。司書は専門的事務に従事し、司書補は司書の職務を助けることが規定されている。
第5条(司書及び司書補の資格) 司書資格を得るには 大学(短大を含む)で「図書館に関する科目」を履修し卒業。 大学(短大を含む)又は高等専門学校卒業生が司書講習を修了。 3年以上司書補(又は司書補と同等以上以上の職)としての勤務経験者が司書講習を修了。 〇第5条では、司書と司書補の資格について定めている。 ①大学を卒業した者で大学において文部科学省令で定める図書館に関する科目を履修したもの ②大学又は高等専門学校を卒業した者で、司書講習を修了したもの ③通算して3年以上の期間、司書補、または司書補と同等以上の職としての勤務経験がある者で、司書講習を修了したもの ※司書補と同等以上の職 イ 司書補 ロ 国立国会図書館又は大学若しくは高等専門学校の附属図書館における職で司書補の職に相当するもの ハ ロに掲げるもののほか、官公署、学校又は社会教育施設で、社会教育主事、学芸員などとして勤務していた者(文科大臣が認める必要有り) (次スライドで司書補説明)→このスライドに戻って 〇なお、司書資格に関する規定は、平成20年の法改正によって改正された部分。 ○改正前は、司書講習を修了することが第一の条件で、 それ以外に、大学で開講する「司書講習相当科目」の単位を取得した人も資格を得ることができるとされていた。 〇法改正により、文科省が「図書館に関する科目」を定めることとされ、 資格取得のためのまず第一の方法として、大学でそれを履修することとされた。 〇なぜこのような改正が行われたのか、背景を説明すると、(スライド⑱へ)
大学に入学できる者で司書補講習を修了した者。 司書補資格を得るには 司書の資格を得る 大学に入学できる者で司書補講習を修了した者。 ○一方、司書補については、①、②の方法があります。 ○大学に入学できる者には、高等学校を卒業した者、中等教育学校を卒業した者など、12年の学校教育を修了した者のほか、高等学校卒業程度認定試験を終了した人などが含まれます。 --------
大学(短大) 司書資格 司書 講習 卒業 大学(短大)※又は高等専門学校卒業生 修了 3年以上司書補(同等以上の職) として勤務 「図書館に関する科目」履修 卒業 大学(短大)※又は高等専門学校卒業生 司書 講習 修了 3年以上司書補(同等以上の職) として勤務 ※ 大学(短大)卒業後に大学で科目等履修により資格を取得することもできる。 詳しくは文部科学省HP参照。http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/shisyo/
司書養成課程の見直しについて 平成20年の図書館法の改正により、図書館法第5条第1項第1号におい て、「大学において文部科学省令で定める図書館に関する科目を履修し たもの」が司書となる資格を有する者となることが新たに定められた。 ○ 図書館法第5条第1項第1号「大学において文部科学省令で定める図書館に関する科目」を履修した者が司書となる資格を有する者となることが新たに定められた。 ○ 司書の資格については、大学で「図書館に関する科目」を修得する方法と、司書講習を修了する方法があるが、従来は大学において修得する「図書館に関する科目」についての規定がなかった。このため、司書講習の科目を大学の科目と読み替えて運用していたが、法律で文部科学省令で定めることとなり、22年4月に図書館法施行規則の改正を行った。 背 景 司書の資格については、大学で「図書館に関する科目」を修得する方法と、 司書講習を修了する方法があるが、従来は大学において修得する「図書館 に関する科目」についての規定がなかった。 このため、従前は、司書講習の科目を大学の科目と読み替えて運用していたが、 法律(文部科学省令)で定めることとなり、平成22年4月に図書館法施行規則の 改正を行った。 大学における図書館に関する科目が初めて省令に規定! 文部科学省作成 16
図書館法第5条改正の背景① 司書資格取得者数(平成19年度) ○大学において図書館に関する 科目を修得した者 9,076人 図書館情報法制度論 図書館法第5条改正の背景① 司書資格取得者数(平成19年度) ○大学において図書館に関する 科目を修得した者 9,076人 〇平成19年度館に司書資格取得した人の約9割が、大学で図書館に関する科目を履修して資格取得したという実態があります。 〇また、(次スライド) ○司書の講習を修了した者 1,209人 (19年度司書講習実施大学 13大学) 計 10,285人 (平成20年3月文部科学省社会教育課調べ) ※司書講習相当科目の単位認定大学数 237大学 (平成21年4月現在) 17
司書の資格取得方法 全体 大学 課程 短大 通信 司書 講習 不明 人数 5,792 1,952 911 519 1,329 1,081 % 100.0 33.7 15.7 9.0 22.9 18.7 少し古いデータだが、 図書館の正職員(現職)の司書資格取得の方法は、大学(大学、短大、通信)における課程で取得した者が約6割となっている。 ※都道府県・市区町村の中央館の正職員を対象とした調査 出典:図書館及び図書館司書の実態に関する調査研究報告書(平成15年度社会教育活動の実態に関する基本調査事業、国立教育政策研究所社会教育実践研究センター)
図書館法第5条改正の背景② 図書館関係者からの指摘 図書館情報法制度論 図書館法第5条改正の背景② 図書館関係者からの指摘 司書講習は、現職者を対象として設定されたもの。修得すべき科目・単位数は、必ずしも大学の教育課程にふさわしいものとなっていない 講習科目を大学の課程に適用することに対する強い抵抗感 「図書館に関する科目」を明確化することについて、図書館関係団体や大学教員等からの強い要望 〇司書講習科目を、大学で履修する『図書館に関する科目」に適用していることに対して、 〇司書講習は、現職者を対象として設定されたものであり、修得すべき科目・単位数については、必ずしも大学の教育課程において行うにふさわしいものとなっていないという指摘や、 〇講習科目を大学の課程に適用することに対して、非常に強い抵抗感があるという指摘もあった。 〇また、図書館関係団体や大学教員等から、「図書館に関する科目」を明確化することについての強い要望が出されていました。 これからの図書館の在り方検討協力者会議『司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について(報告)』(平成21年2月)より引用
社会教育主事、学芸員養成に関する規定との並び 図書館情報法制度論 図書館法第5条改正の背景③ 社会教育主事、学芸員養成に関する規定との並び 社会教育法第9条の4第3号 大学を卒業した者で大学において文部科学省 令で定める社会教育に関する科目を履修した もの 博物館法第5条第1号 令で定める博物館に関する科目を履修したもの 〇背景の3点目として、 〇社会教育主事、学芸員については、それぞれ社会教育法、博物館法で、「省令で科目を制定すること」が定められており、これらに基づいて、文部科学省令で、大学で履修すべき科目が定められています。 〇つまり、社会教育指導者の資格のうち、司書だけが、異質なものとなっていました。
これからの図書館の在り方検討協力者会議『これからの図書館像』(平成18年3月) 図書館情報法制度論 図書館法第5条改正の背景④ 司書の資質向上の必要性についての指摘 これからの図書館の在り方検討協力者会議『これからの図書館像』(平成18年3月) 中央教育審議会答申『新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について』(平成20年2月) 教育振興基本計画(平成20年7月閣議決定) 〇これからの図書館の在り方検討協力者会議『これからの図書館像~地域を支える情報拠点をめざして~(報告)』(2006年3月)において、図書館のあるべき姿が示され、その実現のための課題の一つとして、司書の資質向上の必要性について指摘された。 〇また、司書の資質の向上を図るため、その履修すべき科目の見直しなど、養成課程の改善を図ることが、中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」(2008年2月)で改めて指摘されたほか、教育振興基本計画(2008年7月閣議決定)にも盛り込まれました。 〇こういったことを主な背景として、図書館法第5条は改正されました。
第6条(司書及び司書補の講習) (司書及び司書補の講習) 第六条 司書及び司書補の講習は、大学が、 文部科学大臣の委嘱を受けて行う。 第六条 司書及び司書補の講習は、大学が、 文部科学大臣の委嘱を受けて行う。 司書及び司書補の講習に関し、履修すべき 科目、単位その他必要な事項は、文部科学 省令で定める。(後略) 司書講習実施大学 〇第6条は。司書講習について規定している。 ○講習は、文科大臣からの委嘱をうけて行うこととされておりまして、 平成25年度は、司書講習は、13大学で、司書補講習は、6大学で実施しています。 ○また、講習で履修すべき科目と単位数は、文部科学省令である「図書館法施行規則」で定められています。 ちなみに、司書講習科目と、大学で履修すべき「図書館に関する科目」は、同じ科目とされています。
第7条(司書及び司書補の研修) (司書及び司書補の研修) 第七条 文部科学大臣及び都道府県の教育 委員会は、司書及び司書補に対し、その資質 第七条 文部科学大臣及び都道府県の教育 委員会は、司書及び司書補に対し、その資質 の向上のために必要な研修を行うよう努める ものとする。 〇第7条では、図書館の専門的職員である司書及び司書補の資質向上のため、 国と都道府県教育委員会に必要な研修を行うよう努めることを義務づけている。
各種研修事業 a. 図書館司書専門講座 b. 新任図書館長研修 c. 図書館地区別研修
a. 図書館司書専門講座 b. 新任図書館長研修 【対象】 公共図書館に就任して1年未満の図書館長 【対象】 公共図書館の勤務経験が概ね7年以上で 指導的な立場にある司書 【主催】 文部科学省、国立教育政策研究所 【期日】 平成26年6月16日(月)~6月27日(金) a. 全国から約50名の司書(指導的立場にある者)が社研に集まり研修を受講 b. 今年度も「筑波大学」が受託。 本会場は社研。その他、全国の県立図書館等でのインターネット配信による受講も可(ライブ配信)。 25年度は主会場34名、副会場合わせて228名受講。 b. 新任図書館長研修 【対象】 公共図書館に就任して1年未満の図書館長 【主催】 文部科学省、国立教育政策研究所、 日本図書館協会 ほか 【期日】 平成26年9月2日(火)~9月5日(金)
c. 図書館地区別研修 ブロック 【対象】 公共図書館の勤務経験が概ね3年以上の中堅司書 【対象】 公共図書館の勤務経験が概ね3年以上の中堅司書 【主催】 文部科学省、開催都道府県・指定都市教育委員会 【期日】 11月~2月において、全国6ブロックで開催(4日間) c. 本年度は、11月から来年2月にかけて全国6ブロックで開催。H26予定 開催県の県立図書館を中心に実施。 ブロック 開催県・指定都市 開催月 北海道・東北 福島県 11月 関東・甲信越静 栃木県 12月 東海・北陸 石川県 近 畿 大阪府 2月 中国・四国 島根県 九州・沖縄 福岡県 1月
司書等の研修体系について これからの図書館の在り方検討協力者会議 「図書館職員の研修の充実方策について(報告)」(平成20年6月)より http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/teigen/08073040/004.htm ○これからの図書館の在り方検討協力者会議「図書館職員の研修の充実方策について(報告)」(平成20年6月) ○本協力者会議では、市町村、都道府県、国(図書館関係機関を含む)で実施されている研修について、研修の体系化の観点から整理するとともに、国立国会図書館、大学、民間団体等の研修についても要望として提示した。 ○国では、管理職や中堅の司書等の指導的立場にある者を対象に、 ・高度かつ専門的な内容の研修(レファレンスサービス、児童サービス等)、 ・全国的・国際的動向の理解など広い視野から職務を遂行するための研修(情報化と図書館、図書館関係施策等)、 ・図書館経営に関する高度な研修(サービス計画、マネジメント等)、 ・新たなニーズに対応した研修などを行うことが求められる。 ・また、地方公共団体が行う研修を支援するため、新たな研修プログラムや研修手法の開発、研修に関する情報の収集・提供、評価方法の開発・普及等を行うことも重要である。 <国の研修> 対象:指導的立場にある者 内容:高度かつ専門的内容 全国的・国際的動向 図書館経営に関する高度な内容 新たなニーズへの対応
<都道府県の研修> 対象:管理職、都道府県内の司書・司書補 内容:初任者・中堅等の経験別の実務全般 地域社会の動向 <市町村の研修> 対象:図書館職員全般 社会教育施設等の図書室等の職員 内容:図書館の意義・役割 図書館業務全般 関係機関との連携 ○都道府県では、初任者・中堅等の経験年数に対応して ・実務上必要な事項についての研修(事業計画、各種サービス、図書館間協力等)、 ・地域社会の動向に対応した図書館運営に関する研修(ニーズの把握、学校や社会教育施設など関係機関との連携等) 等を実施することが求められる。 ・また、都道府県内の研修に関する情報の収集・提供、域内市町村への講師の派遣など通じて、市町村の支援を行うことも重要である。 ○市町村では、職員全般(短期雇用者、事務職員、社会教育施設等の図書室等の職員を含む)を対象に、 ・図書館の意義や役割を理解するための研修、 ・日常業務に係わる実務研修等を行うことが重要である。 国・都道府県・市町村の研修大気について、このように整理しています。
研修への参加促進の方策 インターネット等を活用した遠隔教育による研修の導入 設置者や管理職に対して、職員の能力育成の必要性について理解促進を図る 研修参加者による職場への研修内容の周知・普及 研修歴を記録し評価する仕組みづくり ○国、都道府県で様々な研修が実施されていますが、 ○自治体の財政状況の悪化により、旅費を出せない、また、職員数が減少しているため、 人員に穴があけられないといった理由により、研修への参加が困難になっているという。 ○協力者会議報告では、大都市圏と地方では、研修の機会に格差があること、また、職員が多忙で研修に参加しずらいといった現状を踏まえて、 研修実施に当たっては、多くの人が参加できるよう研修方法に工夫が必要なことや、一方、各自治体においても、研修に参加しやすい環境づくりを行うことが重要であることを述べ、その具体的な方法についても提言しています。 ○研修方法としては、インターネット等を活用した遠隔教育による研修を導入すること ○職員が研修に参加しやすい環境を整備するため、研修の必要性について理解促進をはかること ○また、研修参加に対するインセンティブとして、研修歴を記録し評価する仕組みを作ること ○こういった取り組みを通じて、研修への参加が進み、図書館サービスの一層の充実が図られていくことを期待
第7条の2 (設置及び運営上望ましい基準) (設置及び運営上望ましい基準) 第七条の二 文部科学大臣は、図書館の健全な 発達を図るために、図書館の設置及び運営上 望ましい基準を定め、これを公表するものとする。 (設置及び運営上望ましい基準) 第7条の2では、「図書館の設置及び運営上望ましい基準」を定め、公表することが定められている。 目的・・・図書館に求められる役割を明確なものとし、 図書館運営の質の向上を図る。 ⇒平成13年7月告示・施行 「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」
第7条の2 (設置及び運営上望ましい基準) 改正前 図書館法第18条 「公立図書館の設置及び運営上望ましい基準」 改正後 図書館法第7条の2 「図書館の設置及び運営上望ましい基準」 〇平成20年に法改正された部分で、改正前は、「公立図書館の設置及び運営上望ましい基準」であったが、改正後は、私立図書館も含む図書館の健全な発達を図るために、新しい「望ましい基準」を定め、公表することとされた。文部科学省の説明では、基準を定めることによって運営改善に努めてもらう場合、利用者の立場からすると公立、私立の別はないと考えられ、私立図書館もその基準の対象と考えるべきという認識にたっているとのこと。私立図書館は、設置する公益法人が主体として認められるが、税法上の観点であるが固定資産税等の税制上の優遇措置が講じられているのであり、公益上の観点からの一定の図書館サービス、図書館奉仕に期待をしながら基準の適用があることも考え方に合理性があるのではないか、との見解を示している(法改正の国会審議) 図書館法改正 私立図書館も対象に
②社会の変化や新たな課題への対応の必要性 ・図書館に対するニーズや地域課題の複雑化・多様化 〇平成24年12月 新しい「望ましい基準」へ改正 ≪背景≫ 図書館法改正への対応(平成20年) ・「望ましい基準」の対象拡大 ・評価・改善・情報提供の努力規定 ・研修実施の努力義務 ②社会の変化や新たな課題への対応の必要性 ・図書館に対するニーズや地域課題の複雑化・多様化 ・指定管理者制度の導入等、図書館の運営環境の変化 ・ ○ちなみに、新しい「望ましい基準」については次回の講義で説明しますが、 ○改正の視点としては、 図書館法改正によって、18条で規定されていた公立図書館のみを対象としていた 「望ましい基準」の対象が私立図書館に拡大 図書館の運営状況に関し、評価・改善、情報提供等に努めることを新たに規定 都道府県教育委員会は、司書・司書補の資質向上を図るため必要な研修を行うよう努めることを新たに規定
○図書館の設置及び運営上望ましい基準 (平成24年告示) ○図書館の設置及び運営上望ましい基準 (平成24年告示) 第一 総則 一 趣旨 二 設置の基本 三 運営の基本 四 連携・協力 五 著作権等の権利の保護 六 危機管理 第二 公立図書館 一 市町村立図書館 1 管理運営 2 図書館資料 3 図書館サービス 4 職員 二 都道府県立図書館 1 域内の図書館への支援 2 施設・設備 3 調査研究 4 図書館資料 5 職員 6 準用
○図書館の設置及び運営上望ましい基準 (平成24年告示) ○図書館の設置及び運営上望ましい基準 (平成24年告示) 第三 私立図書館 一 管理運営 1 運営の状況に関する点検及び評価等 2 広報活動及び情報公開 3 開館日時 4 施設・設備 二 図書館資料 三 図書館サービス 四 職員
評価項目例: 来館者数、利用者数、貸出点数 第7条の3(運営の状況に関する評価等) 第七条の三 図書館は、当該図書館の 運営の状況について評価を行うとともに、 その結果に基づき図書館の運営の改善 を図るため必要な措置を講ずるよう努め なければならない。 ○第7条の3と、後で説明する第7条の4において、図書館はその運営状況について評価し、その結果に基づき及び改善をはかること、また、その運営に関する地域住民等関係者への情報提供に努めることが規定されている。 ○この規定は、平成20年の法改正によって新たに追加された条文であり、社会教育法(公民館)にも同じ趣旨の条文が追加されてたことは、記憶にあるかと思います。 ○なお、評価について、評価主体は図書館(自ら評価すること)であり、評価の具体的な内容については、評価主体である図書館が判断することとしています。 ○評価項目としては、一般的に考えられるものとしては、来館者数、利用者数、貸出点数やHPアクセス数といった利用状況などがありますが、 このほかにも、例えば住民の利用状況、所蔵資料、図書館サービス、図書館資料のレイアウト、施設、職員等について それぞれ点検項目を設定し、定量的または定性的に評価を行うこと」や ○「利用者、住民の満足度についても調査を行うといった、 多面的、多角的な評価を行うことが考えられます。ただ、満足度調査については、常連の利用者を対象に実施しても高い満足度で回答されることが想定されるので、未利用者の意見や考え方など参考にできる方法なども併せて考えていく必要がある。 ○また、評価について、「図書館同士で連携をするということ」も想定しておりまして、 例えば、図書館関係の団体が、評価のガイドラインを自主的に定め、情報提供することにより、 各図書館での取り組みを支援をするといったことも視野に入れながら、 国としては、図書館における評価・情報提供の取り組みを支援していくという立場をとっています。 つまり、国は、評価に直接関与することはなく、図書館関係団体などによる評価項目やガイドラインの策定を期待し、 そのことを支援するという考えであります。 ○なお、この法改正を受けて、日本図書館協会で評価のガイドラインを現在作成していると聞いている。 ※なお、この評価については、(参議院文教科学委員会の採決に際しつけられた付帯決議において、) 「評価の透明性、客観性を確保するという観点から、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、 国が関係団体による評価指標の作成等に対して支援する等、適切な措置を講じる」ことや、 「公民館運営審議会や図書館協議会などを通じて、地域住民の意見が反映されるよう十分配慮すること」 などの意見が付されました。 評価項目例: 来館者数、利用者数、貸出点数 HPアクセス数、蔵書数 ・・・
第7条の4 (運営の状況に関する情報の提供) (運営の状況に関する情報の提供) 第七条の四 図書館は、当該図書館の図書館奉仕 第7条の4 (運営の状況に関する情報の提供) (運営の状況に関する情報の提供) 第七条の四 図書館は、当該図書館の図書館奉仕 に関する地域住民その他の関係者の理解を深める とともに、これらの者との連携及び協力の推進に 資するため、当該図書館の運営の状況に関する 情報を積極的に提供するよう努めなければならない。 ○第7条の3に続き、第7条の4において、図書館はその運営状況について評価し、その結果に基づき及び改善をはかるだけでなく、また、その運営に関する地域住民等関係者への情報提供に努めることが規定されている。 実際、情報提供はどのようにされているのか、平成21年にみずほ情報総研が行ったアンケート(1902館・6割回答)では、情報提供の方法としては、ホームページを活用しているところが8割、続いて掲示と閲覧が6割、広報誌が6割。内容としては、概要が最も多く9割、統計が75%、約8割程度です。こういう情報提供の取組を今後も強化していると答えた図書館が6割近くあったようであるが、情報提供に関する課題としては予算や人員面での制約がある中で、いかに効果的に情報を伝えるのか、またそのために司書がより高い専門性を身に付けていくこと等がインタビューで指摘されていたとのことで、情報発信手段の多様化・高度化に伴い情報を作る司書の育成が重要となっているとみられている。 ○また、第7条の4の情報の提供については、 「運営状況が情報公開されることによって、住民がその図書館の内容について知ることができ、 それによって住民の意見(図書館が必要だという意見)が出てくる」ことを期待し、 そのことによって「自治体が図書館をないがしろにできなくなること」を期待しているという意図もあります。 情報提供の方法(例):HPを活用、図書館内での掲示、 関連資料の閲覧、図書館の広報誌 情報提供の内容(例):概要、利用状況等に関する統計数値
第8条(協力の依頼) 都道府県教育委員会は、市町村の教育委員会に対し、総合目録の作製、貸出文庫の巡回、図書館資料の相互貸借等に関して協力を求めることができる。 ○第8条では、「・・・・」ことが規定されており、 ○都道府県教育委員会が、市町村教育委員会に対して、図書館サービスの充実のための協力を求めることができることを規定している。第3条第4号や、この第8条によって、市区町村を越えて、総合目録や相互貸借などのネットワークを拡げることが推奨されているといえる。
第9条(公の出版物の収集) 政府は、都道府県立図書館に対し、官報や刊行物を二部提供する。 国及び地方公共団体の機関は、公立図書館の求めに応じて、発行する刊行物等を無償で提供することができる。 ○第9条『公の出版物の収集」 ○第1項では、政府は、都道府県の図書館に対して、刊行物を2部提供すること。 ○第2項では、国及び地方公共団体は、公立図書館の求めに応じて、刊行物などを無償で提供することができることを規定している。 ○この規定は、公の出版物を優先的に公共図書館に提供して、一般国民の広報に供しようとするものである。 特に都道府県立図書館は当該都道府県内の図書館奉仕の中心とならなければならない関係上、 第1項をおいて、その充実を図ろうとしたものである。 ○第2項では、無償とあるが、第1項では有償とも無償ともされていない。 これは、両方あり得ると言うこと。なぜ無償となっていないかというと、印刷局が独立採算制でやっているため、 無償と義務付けることが困難であったため、無償とは規定できなかったことによる。 しかし、実際にはできるだけ無料で行うよう努力することになっている(『図書館法』西崎恵、日本図書館協会) ○なお、2008年(平成20年)の法改正の際に、この部分の改正はなかったが、国会審議で取り上げられた。(植松議員) 議員が、「当然無料だと解釈してよろしいでしょうか」、 これに対し 局長「第二項で、無償で提供することができると書いてあり、無償提供が想定されている」、 植松議員「政府刊行物の納本について遵守すべきであると思いますが、文科省から各省庁への要請を徹底していただけるでしょうか、 局長「まず実態把握に努めたい。九条の条文の趣旨を関係方面にまず働きかけたい。」と答弁している。 ○文科省では、この答弁を踏まえて、各省庁に対し文書を送付し、「図書館法第9条第1項の趣旨をご理解いただき、都道府県立図書館への資料の提供が適切に行われるようお取りはからいいただきますようお願い申し上げます」と依頼している。
第2章 公立図書館
第10条(設置) 公立図書館の設置に関する事項は、条例で定めなければならない 公立図書館の設置に関する事項は、条例で定めなければならない (設置) 第十条 公立図書館の設置に関する事項は、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。 ○第10条では、公立図書館の設置について、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならないと規定している。 ○社会教育法の公民館の規定の際にも触れましたが、地方自治法第244条の2にあるように、「公の施設」の設置及び管理については、法律や政令に特別な定めがある場合を除いて、条例で定めなければなりません。 〇ただ、図書館については、図書館法において、「設置」についてのみ、条例で定めることとされており、 参考:教育機関の設置・管理について 地方自治法第244条の2・・・普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)第33条第1項 ・・・教育委員会は、法令又は条例に違反しない限度において、その所管に属する教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする 〇さらに、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」において、 「教育委員会は、法令又は条例に違反しない限度において、その所管に属する教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする」 とされています。 〇つまり、教育機関の管理運営の基本的事項については、条例では無くて、教育委員会が定める「教育委員会規則」で規定することとされています。 〇これらのことから、図書館の管理については、教育委員会規則で定められている。 (つくば市の事例) 〇ちなみに、公民館では、社会教育法第24条で「公民館の設置・管理について条例で定める」となっていたので、管理についても条例で定めなければならない。 ○なお、図書館法第10条は、図書館の設置について条例で定めることを規定するものであり、 図書館の設置を地方公共団体に義務付けるという規定ではありません。 図書館の設置を義務づける規定は、図書館法には存在しない。 〇このことについて、昭和25年の図書館法制定当時に、 義務設置について議論はあったのだが、当時、国も、地方も、 義務教育の経費負担に奔走しており、その上図書館まで義務設置とすることは、 地方公共団体に過度な負担をかけることになってしまうこと、また、国としても、 財政的な裏付けがなかったことから、義務付けることは困難と判断し、 地域の自主性によって実状に応じて図書館を設置することとしたと、 制定当時の文部省の局長の著書に記されている。
第13条(職員) (職員) 第十三条 公立図書館に館長並びに当該図書館を設置 する地方公共団体の教育委員会が必要と認める専門的 第十三条 公立図書館に館長並びに当該図書館を設置 する地方公共団体の教育委員会が必要と認める専門的 職員、事務職員及び技術職員を置く。 館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、図書館 奉仕の機能の達成に努めなければならない。 (職員) 第十三条 公立図書館に館長並びに当該図書館を設置する地方公共団体の教育委員会が必要と認める専門的職員、事務職員及び技術職員を置く。 2 館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、図書館奉仕の機能の達成に努めなければならない。 ○図書館には、館長と、教育委員会が必要と認める専門的職員、事務職員、技術職員がおかれることが規定されている。 ○なお、図書館法第4条第1項で、「図書館におかれる専門的職員を司書及び司書補と称する」と規定していることから、この条文にある「専門的職員」というのは、司書及び司書補を指している。 ○条文には、「教育委員会が必要と認める」とある。このため、教育委員会が必要と認めなければ、司書・司書補をおかなくてもよいのか、ということであるが、図書館に司書を置くのは当然のことという前提の下で、この法律は構成されている。 〇平成20年の法改正における国会審議では、司書の配置について明文化すべきではないかという議論があった。 〇そのときの、生涯学習政策局長の答弁では、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準では、専門的なサービスを実施するに足る必要な数の専門的職員を確保することを促している」ことを述べたうえで、「それぞれの地域の実情あるいは財政状況等を勘案して、必要な数の職員を配置して運営の適正化、特に利用者のサービス向上に努めることが求められる」こと、「法律に明記することについては、地方の判断を尊重する、あるいは地方の財政負担といった観点から現時点においては慎重に検討する必要がある課題ではないかと思っている」と答弁しています。 ○館長については、13条第2項で「図書館奉仕の機能の達成に努めなければならない」とされ、教育機関の長としての図書館長の在り方が示されている。
図書館の設置及び運営上望ましい基準 専門的なサービスを実施するために必要な数の司書及び司書補を確保するよう努める。 ・ 館長として、図書館の運営及び行政に必要な 知識・経験、司書資格を有する者を任命する ことが望ましい。 〇また、「図書館の設置及び運営上望ましい基準」において教育委員会は、図書館が専門的なサービスを実施するために必要な数の司書及び司書補を確保するよう、その積極的な採用及び処遇改善に努める旨規定。 〇旧図書館法第13条第3項では、国庫補助を受ける際の要件として、図書館長が司書有資格者であること、 このうち、都道府県立図書館と市立図書館の館長は、3年以上、図書館長または司書として勤務した経験があることが、定められていた。 〇しかし、生涯学習審議会答申で、指摘を受け、 〇平成11年の法改正(地方分権推進一括法による法改正)で、「規制緩和」の観点からこの条文は削除された。 ○とはいえ、決して、図書館長が司書有資格者でなくてもいいということではない。 〇あくまでも、国から地方公共団体に補助金を交付するために、国が地方に様々な条件をつける(規制をかける)ことが、地方分権の観点から適切ではないということから、削除されたもの。「望ましい基準」には、「館長となる者は司書の資格を有する者が望ましい」と述べられている。 ○平成20年現在の有資格館長の配置率は・・・618/2970 2割
第14条・15条・16条(図書館協議会) (図書館協議会) 第十四条 公立図書館に図書館協議会を置くこと ができる。 第十四条 公立図書館に図書館協議会を置くこと ができる。 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の 諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕 につき、館長に対して意見を述べる機関とする。 第十五条 図書館協議会の委員は、当該図書館 を設置する地方公共団体の教育委員会が任命 する。 (図書館協議会) 第十四条 公立図書館に図書館協議会を置くことができる。 2 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。 第十五条 図書館協議会の委員は、学校教育及び社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者並びに学識経験のある者の中から、教育委員会が任命する。 第十六条 図書館協議会の設置、その委員の定数、任期その他必要な事項については、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。 ○第14条から第16条では、図書館協議会について定めている。 ○図書館法第3条で、図書館サービスの活動が「土地の事情及び一般講習の希望に添って」なされることが求められている。これを保証し、住民の意思を反映させるための仕組みとして、図書館協議会を置くことができることが規定されている。 ○第15条・第16条では、委員の構成について規定されている。 〇しかし、この15条・16条については、平成23年8月26日に成立した「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」によって、改正され、平成24年4月1日に施行される予定。 (配布資料には、現行の条文を載せている)
地域主権戦略大綱(抜粋) (平成22年6月22日閣議決定) 義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大の具体的措置(第2次見直し) (5)図書館法 図書館協議会委員の任命基準(15条)を、条例に委任。 条例制定の基準を「参酌すべき基準」に。 ○図書館協議会の委員は今は、とてもあっさり「教育委員会が任命する」としか規定されていないが、これは最近法律を改正してこのようにあっさりした。改正前は、どのような人の中から任命するか、具体的に例示していた。しかし、平成21年に内閣府に設置された地域主権戦略会議がまとめた大綱によって、この基準は法律ではなく条例に委任すべきと指摘された。「地域主権戦略大綱」とは、国と地方公共団体の関係を、国が地方に優越する上下の関係から、 対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップの関係へと根本的に転換し、地域主権の立場から関係する施策を見直していくもので、そのための様々な具体的措置について示したものであります。 ○その中で、 地方公共団体の自治事務にもかかわらず、国が法令で事務の実施やその方法を縛っている「義務付け・枠付け」を見直して、条例制定権の拡大を進めること。 つまり、地域の住民を代表する議会の審議を通じ、地方公共団体自らの判断と責任において行政を実施する仕組みに改めていくことが掲げられ、 図書館法についても、第15条の図書館協議会についての規定を見直すことが明確に示されました。 ○この大綱を受けて、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第2次)」という法律が制定されて、これによって図書館法も一緒に整備、改正された。 ⇒地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための 関係法律の整備に関する法律(第2次)により改正 (平成24年4月1日施行)
図書館協議会の委員は、当該図書館を設 置する地方公共団体の教育委員会が任命す る。 第15条 (改正前) 図書館協議会の委員は、学校教育及び社会 教育の関係者、家庭教育の向上に資する活 動を行う者並びに学識経験のある者の中か ら、教育委員会が任命する。 ○具体的に図書館法がどのように改正されるかといいますと、 ○現行法では、第15条で、「図書館協議会の委員は、学校教育及び社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者、並びに学識経験のある者の中から教育委員会が任命」することが規定されていましたが、 ○改正後は、教育委員会が任命することだけが規定されました。 (次スライド) (スライド43から戻って) ○なお、この第15条ですが、 ○図書館法制定当初は、「区域内の学校の代表者」「社会教育団体の代表者」 「社会教育委員」「公民館運営審議会の委員」などと具体的に指定されていた。 しかし、職指定とすることにより、 -同じ人が長い間委員に委嘱されることになり -それによって、住民の意思を反映させることが困難になるといったことなどの弊害が生じている ○そこで、地域の実状に応じて多様な人材を図書館協議会の委員に登用できるよう、委員構成を弾力化するため、平成11年の法改正において、大枠(学校教育・社会教育の関係者といったように)だけ示すよう改正がなされた。 ○また、平成18年に教育基本法が改正され家庭教育が定義されたことを踏まえて、平成20年の図書館法改正時に、「家庭教育の向上に視する活動を行う者」が追加されたばかりでありましたが、今回、このように改正され、一層の弾力化が図られ、地域の主体性により決めることとされた。 ○なお、社会教育法の公民館運営審議会にかかる条文、博物館法の博物館協議会にかかる条文についても、同様の改正が行われ、平成24年4月1日に施行されることとなっています。 (改正後) 図書館協議会の委員は、当該図書館を設 置する地方公共団体の教育委員会が任命す る。
図書館協議会の設置、その委員の定数及び任期そ の他必要な事項については、当該図書館を設置する 地方公共団体の条例で定めなければならない。 第16条 (改正前) 図書館協議会の設置、その委員の定数及び任期そ の他必要な事項については、当該図書館を設置する 地方公共団体の条例で定めなければならない。 ○また、第16条では、「図書館協議会の設置、委員の定数、人気、その他必要な事項について、条例で定める」ことが規定されていた。 ○合わせて、第15条で、任命の範囲が削除されたことを踏まえて、任命の基準についても、条例で定めることと、 条例制定の際に、委員の任命の基準については、文科省で定める基準を参酌することが新たに規定された。 ○このような改正がなされたことにより、「文科省令で定める基準」というのを、 新たに策定する必要が出てきました。 ※図書館協議会等の設置状況 都道府県 50館(79.3%)、市 1497館(60.8%)、町356館(62.6%)、村32館(71.1%)、組合- (図書館数) 63 2462 569 45 1 (図有自治体数) 790 481 43 (改正後) 図書館協議会の設置、その委員の任命の基準、定数 及び任期その他図書館協議会に関し必要な事項は、 当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定め なければならない。この場合において、委員の任命の 基準については、文部科学省令で定める基準を参酌 するものとする。
文部科学省令で定める基準 図書館法施行規則第3章第12条の新設 文部科学省令で定める基準 図書館法施行規則第3章第12条の新設 (平成23年12月1日改正・平成24年4月1日施行) 第三章 図書館協議会の委員の任命の基準を条例で定めるに当たって参酌すべき基準 第十二条 法第十六条の文部科学省令で定める基準は、学校教育及び社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者並びに学識経験のある者の中から任命することとする。 ○図書館に関する文科省令には、従来より「図書館法施行規則」というものがあります。 ○図書館法施行規則では、司書資格取得のために修得すべき「図書館に関する科目」や、 司書・司書補講習などについて規定しているものでありますが、 これを平成23年12月1日に改正し、新たに、この章が追加されました。 ○今後、各地方公共団体では、この基準を参酌しつつ、地域の実状に合わせて条例を制定することになります。 ○ちなみに、文科省令で定める基準は、「参酌すべき基準」なので、 地方公共団体が十分参照した結果としてであれば、地域の実情に応じて、異なる内容を定めることが許容されるものであります。
第17条(入館料等) (入館料等) 第十七条 公立図書館は、入館料その他図書館 資料の利用に対するいかなる対価をも徴収して はならない。 「無料の原則」 ○「図書館協議会」の規定とともに、図書館の公共性を担保するものとして、17条の「無料の原則」がある。 ○「無料の原則」は、昭和25年に図書館法が制定されたときに確立した制度で、 戦前に制定された「旧図書館令」では、入館料や閲覧料を徴収することが認められており、 多くの公立図書館で徴収されていた。
「書物を調べたり借りたりするのに料金が課されてはならぬ。経費は政府が負担すべきである。」 米国教育使節団報告書(昭和21年3月) 第5章 成人教育公立図書館 「書物を調べたり借りたりするのに料金が課されてはならぬ。経費は政府が負担すべきである。」 ユネスコ公共図書館宣言 1994年 「公共図書館は原則として無料とし、地方および国の行政機関が責任を持つものとする。・・・」 ○しかし、戦後、昭和21年3月に米国から派遣された教育使節団が公表した報告書において、日本の公立図書館の現状に関して、「書物を調べたり借りたりするのに料金が課されてはならぬ。経費は政府が負担すべきである。」と、鋭く批判され、公立図書館は無料公開を原則とすべきで、公費によってすべて賄われなければならない」と指摘されている。 ○こういった指摘も踏まえつつ、国は、「公立図書館が真に住民全部のためのものであり、利用しようとする人に常に公開さるべきものであるためには、無料公開にさるべきは当然である」という原則を掲げ、この第17条を規定した。と、されている。 ○なお、無料の原則については、ユネスコ公共図書館宣言においても、「公共図書館は原則として無料とし、地方および国の行政機関が責任を持つものとする。」 (公共図書館は原則として無料とし、地方および国の行政機関が責任を持つものとする。それは特定の法令によって維持され、国および地方自治体により経費が調達されなければならない。公共図書館は、文化、情報提供、識字および教育のためのいかなる長期政策においても、主要な構成要素でなければならない。) と掲げられている。
「図書館サービスの多様化・高度化と負担の在り方についての議論 (別紙参照 (略)) 「図書館サービスの多様化・高度化と負担の在り方についての議論 (別紙参照 (略)) 生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」(平成10年) 生涯学習審議会社会教育分科審議会計画部会図書館専門委員会「図書館の情報化の必要性とその推進方策について-地域の情報化推進拠点として-(報告)」(平成10年) ○で、この無料の原則であるが、「生涯学習審議会」の平成10年(1998年)の答申において、 「今後公立図書館が高度情報化時代に応じた多様かつ高度な図書館サービスを行っていくためには、電子情報等へのアクセスに係る経費の適切な負担の在り方の観点から、サービスを受ける者に一定の負担を求めることが必要となる可能性も予想される。このようなことから、地方公共団体の自主的な判断の下、対価不徴収の原則を維持しつつ、一定の場合に受益者の負担を求めることについて、その適否を検討する必要がある。」 と、無料制度を維持しつつも、その範囲を見直すことについて、指摘された。 ○これを受け、生涯学習審議会の下に設置された「図書館専門委員会」で議論がなされ、「図書館の情報化の必要性とその推進方策について-地域の情報化推進拠点として-」報告がなされた。この報告では、「図書館資料」を、「図書館によって主体的に選択、収集、整理、保存され、地域住民の利用に供されている資料」ととらえ、「したがって、図書館においてインターネットや商用オンラインデータベースといった外部の情報源へアクセスしてその情報を利用することは、図書館法第17条にいう「図書館資料の利用」にはあたらないと考えるのが妥当」とし、「電子化情報サービス通信料金やデータベースの使用料などの大家徴収については、それぞれのサービスの態様に即して、図書館の設置者である地方公共団体の自主的な裁量にゆだねられるべき問題と思われる」と、17条の解釈を示した。 ○この考え方は、今でも踏襲されている。平成20年の法改正において、第3条第1号に「電磁的記録」を追加したが、これについてもCDやDVDなどのいわゆる「パッケージ系メディア」を対象としたものであり、改正法の施行通知においても、「図書館資料における電磁的記録については,図書館法第17条の規定に関し,従前の取扱を変更するものではないこと。」と記しています。 ○米国教育使節団(報告書は中央図書館にある) http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpbz198102/hpbz198102_2_034.html
第20条、第23条(図書館の補助) (図書館の補助) 第二十条 国は、図書館を設置する地方公共 団体に対し、予算の範囲内において、図書館 第二十条 国は、図書館を設置する地方公共 団体に対し、予算の範囲内において、図書館 の施設、設備に要する経費その他必要な経 費の一部を補助することができる。 前項の補助金の交付に関し必要な事項は、 政令で定める。 ○20条で、国は、図書館を設置する地方公共団体に対して、補助金を交付することができることとされています。 第二十三条は、補助金を交付した場合で法令に違反した際の扱い等を規定。
図書館法施行令 図書館法第二十条第一項に規定する図書館の施設、設備に要する経費の範囲は、次に掲げるものとする。 一 施設費 施設の建築に要する本工事費、附帯工 事費及び事務費 二 設備費 図書館に備え付ける図書館資料及び その利用のための器材器具の購入に要する 経費 ちなみに図書館法施行令には、このように定められている。これが内容の全て。第一回の法令の読み方で説明したが、法律のうち財政的なことに関する内容は、政令に委任されていることが多いがこれもその例。この他のことは全て施行規則に委任されている。
施設整備補助金 昭和25年 図書館法制定 昭和26年 施設費補助金交付開始 公立図書館施設を整備する事業 建築に要する本工事費及び附帯工事費 昭和25年 図書館法制定 昭和26年 施設費補助金交付開始 補助事業の内容 公立図書館施設を整備する事業 交付の対象 都道府県・市町村(一部事務組合を含む) 補助対象経費 建築に要する本工事費及び附帯工事費 〇昭和25年の図書館法制定以降平成15年度(2003年度)まで、国の図書館政策は、国庫補助金の交付を中心に展開されていた。 〇ここでちょっと、補助金の歴史を振り返りたい。 〇1951年,公立図書館の施設整備に係る国庫補助金の交付が開始された。 〇以来,施設整備や設備整備にかかる経費の一部を国庫負担することによって、国は、公立図書館の整備を奨励してきた。 〇施設整備補助金は、図書館法2条に定める公立図書館施設を整備する事業に対して、補助を行うもので、 〇交付の対象は、都道府県・市町村(市町村の一部事務組合を含む) 〇補助対象経費は、建築に要する本工事費(建物の基礎、く体、屋根、造作及び仕上部分)及び附帯工事費(電気、ガス、給排水、冷暖房等) でありました。
補助金交付条件 館長が司書有資格者であること 補助金交付の最低基準を満たすこと (旧図書館法第13条第3項) (旧図書館法第19条・21条) 補助金交付条件 館長が司書有資格者であること (旧図書館法第13条第3項) 補助金交付の最低基準を満たすこと (旧図書館法第19条・21条) 年間増加図書冊数、司書・司書補数、 延べ床面積 〇この国庫補助金を受けるための条件というのが、当時定められていまして、 〇まず、図書館長が司書有資格者であること・・・これは、当時図書館法第13条で規定されていました・・・ 〇そして、国庫補助を受ける場合の図書館の最低基準に関する規定が第19条・第21条に設けられていました。 〇最低基準の具体的な内容は、文部科学省令である「図書館法施行規則」で規定されており、「年間増加図書冊数」「司書・司書補数」「延べ床面積」について、図書館の規模等に応じて、具体的な数値が示されていました。
公立社会教育施設整備費廃止 平成10年(平成9年度限り) (理由) ・全国的な整備が進んでいること ・起債により地方単独で整備が可能なこと 平成10年(平成9年度限り) 公立社会教育施設整備費廃止 (理由) ・全国的な整備が進んでいること ・起債により地方単独で整備が可能なこと ・地方分権推進委員会から本補助金廃止の指摘 国の補助金の整理合理化についても勧告 〇施設整備にかかる補助金については、平成9年度限りで廃止されました(沖縄県については平成10年度まで補助) 〇その理由は、 〇制度創設から約45年が経過し、その結果社会教育施設の全国的な整備が相当進んでいる現状にあること 〇これらの施設の整備に当たって、本補助金に寄らず、起債を活用して地方単独で整備する地方公共団体が多くなったこと 〇地方6団体(全国知事会、全国市長会、全国町村長会、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会)より地方分権推進委員会へ、本補助金を廃止すべきであるとの意見が出され、同委員会においても廃止すべきとの指摘がなされたこと 〇1997年7月の地方分権推進委員会の勧告により、地方公共団体の自主性・自立性を高める観点から、国全体の補助金の整理合理化を図ることとされたこと 国としては、こういった理由により、廃止することとなりました。
平成11年7月 地方分権一括法成立 ⇒ 図書館法改正 国庫補助を受ける場合の要件を削除 ・図書館長の司書資格要件に関する規定 平成11年7月 地方分権一括法成立 ⇒ 図書館法改正 国庫補助を受ける場合の要件を削除 ・図書館長の司書資格要件に関する規定 (図書館法第13条第3項削除) ・図書館の最低基準に関する規定 (図書館法第19条・21条の削除) など ○そして、平成11年には、地方分権一括法によって図書館法が改正され、補助金交付条件に係る条項が削除されました ○ちなみに、平成20年6月の改正以前の図書館法には、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準を定めることが規定されていることを、先ほど述べましたが、 〇「公立図書館」の「望ましい基準」を定めるという規定ことは、昭和25年の図書館法制定当時から存在したが、実際に国として策定したのは平成13年であった。 それまで、4回(1967年、1972~73年、1992年、2000年)にわたり検討が行われ、1992年の検討結果は、「生涯学習審議会社会教育分科審議会施設部会図書館専門委員会報告」として公表され、文科省から教育委員会に送付しているが、告示には至らなかったと言われている。 ○その理由としては、当時、図書館法第19条で、国庫補助を受けるための最低基準について規定されていた。『望ましい基準』は、19条の最低基準を超えるものが当然期待されるわけだが、当時はまだ図書館の設置率が高くないという状況において高い数値を示しても、それは非現実的であった。 ○従って、その基準は,中間的なものを示すかということになるが、その場合、整備の進んだ図書館にとっては、財政当局からこの基準を盾に,予算カットを迫られることにもつながりかねない。このように、まだ設置さえ十分進んでいない状況下で望ましい基準を策定することは時期尚早との意見もあり、進まなかったと言われている。 ○しかし、平成11年(1999年)に地方分権一括法によって図書館法が改正され、国庫補助を受けるための最低基準に関する規定が削除され、あわせて、同じく国庫補助を受けるための要件であった図書館長の資格についての規定が削除され、さらに図書館協議会の委員構成が弾力化された。こういった中、改めて「望ましい基準」についての検討が、生涯学習審議会社会教育分科審議会計画部会図書館専門委員会で行われ、平成12年12月に報告をだし、平成13年7月に告示に至ったものである。 ~生涯学習審議会答申(H10)抜粋~ ○ 国庫補助を受ける場合の図書館長の司書資格要件等の廃止 図書館法第13条第3項に、国庫補助を受ける図書館においては、当該図書館長は司書となる資格等を有する者でなければならないと規定されている。また、同法第19条の規定により、国庫補助を受けるための最低の基準を文部省令(図書館法施行規則)で定めることとされており、同施行規則第2章において、図書館長の専任・有給要件、人口等に応じた図書の増加冊数、司書及び司書補の配置基準、建物の延べ面積基準が規定されている。 図書館長は図書館についての高い識見を持つことが求められるのはもとより当然であるものの、司書の資格は有していないが識見、能力から図書館長にふさわしいと言える人材を登用する場合も考えられる。また、館長の専任・有給要件、人口等に応じた図書の増加冊数、司書及び司書補の配置基準、建物の延べ面積基準については、国庫補助を受けるための最低の基準として規定されたものであるが、図書館の情報化や他の施設との連携、地域の実情に応じた多様な図書館サービスの推進等が求められていることなどから、法律に基づく一定の基準を設け、それに適合しなければ補助対象とすることができないとする制度は今日必ずしも適当とは言えない。以上の観点から、同法第13条第3項及び第19条、同施行規則第2章の規定は廃止することが適当である。 なお、同法第19条の規定を廃止することとの関連で、同法第18条に基づく公立図書館の望ましい基準の取扱いについて検討することが必要である。
活動等に対する補助金 平成15年度限りで廃止 地域社会教育活動総合事業(平成7~11年) 図書館の地域IT学習活動(平成14年) 学習活動支援設備整備事業(平成9~13年) 学習拠点施設等情報化等推進事業 (平成14~15年) 社会教育研修支援事業(平成7~11年)など 「三位一体改革」の一環として、 平成15年度限りで廃止 〇一方、公立社会教育施設に対する支援策には、活動に対する補助金や、設備整備にかかる補助金もあった。 〇学習機会の提供の充実を図るための事業への補助事業 〇施設の機能の高度化を図るための設備整備への補助事業 〇社会教育の専門職員の研修事業への補助 などの補助事業を行っていた。 〇しかし、小泉内閣の下で進められた「三位一体改革」の一環として、平成15年度限りで廃止されています ※三位一体改革・・・平成14年(2002)6月に閣議決定された「骨太の方針第2弾(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002)」において示された方針。 税源配分の在り方について、①国庫補助負担金の改革(削減)、②税源の移譲(国税から地方税へ)、③地方交付税の見直しという、 3点について、三位一体で検討していくというもの。 ※翌年閣議決定された「基本方針2003」の中で、「国庫補助負担金等整理合理化方針」が示され、16年度予算から厳しく見直しを実施することがもりこまれ、社会教育関係の補助金についても、この方針に基づいて、平成15年度限りで終了とされました。
第3章 私立図書館
第25条 (都道府県の教育委員会との関係) 都道府県教育委員会は、私立図書館に対して必要な報告を求めることができることを規定(25条1項) 都道府県の教育委員会は、私立図書館に対し、その求めに応じて、指導・助言を与えることができることを規定(25条2項) (都道府県の教育委員会との関係) 第二十五条 都道府県の教育委員会は、私立図書館に対し、指導資料の作製及び調査研究のために必要な報告を求めることができる。 2 都道府県の教育委員会は、私立図書館に対し、その求めに応じて、私立図書館の設置及び運営に関して、専門的、技術的の指導又は助言を与えることができる。 ○私立図書館の設置主体については、第2条で述べたとおり、 一般財団法人、一般社団法人と、日本赤十字であります。 ○法人が私立図書館を設置したり、廃止する場合には、都道府県教育委員会へ 報告又は届け出をしなければならないということが、図書館法第24条で規定されていましたが、 1967年(昭和42年)に、「許可、認可等の整理に関する法律」によって、廃止されました。 ○で、25条では、都道府県の教育委員会と私立図書館の関係について規定しており、 私立図書館からの求めに応じて、指導や助言を行うことができること、 また、都道府県教育委員会は、指導や助言をおこなうためにも、 必要な報告を求めることができることが規定されています。
第26条・第27条 (国及び地方公共団体との関係) 以下の事項を禁止(第26条) 私立図書館の事業に干渉を加える 図書館を設置する法人に補助金を交付 ノーサポート・ノーコントロールの原則 私立図書館からの求めに応じて、物資の確保について援助できる(第27条) (国及び地方公共団体との関係) 第二十六条 国及び地方公共団体は、私立図書館の事業に干渉を加え、又は図書館を設置する法人に対し、補助金を交付してはならない。 第二十七条 国及び地方公共団体は、私立図書館に対し、その求めに応じて、必要な物資の確保につき、援助を与えることができる。 ○私立図書館については、ノーコントロール・ノーサポートの原則が、その根拠となっている。 つまり、国や地方公共団体は、私立図書館の自主性と自由を尊重して、 その活動に深入りしてはならないという原則である。 ○とはいえ、私立図書館に対して全く無関心である・・・ということではなく、 先ほどの第25条に規定されているとおり、私立図書館に対して 「指導資料の作製及び調査研究のために必要な報告を求めることができる」こととしている。 ○また、27条では、私立図書館からの求めに応じて、物資の確保について援助できることが 規定されている。物資ってなんなんだということですが、 「戦後の統制経済の時代のなかで、入手困難な物資について、 その入手について援助するという意味のものであった。経済的に豊かになった今日では、 おそらく何の効用もない規定となってしまった」と述べられています。
第28条(入館料等) 私立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対する対価を徴取することができる ○また、第28条では、入館料などの対価を徴収することができるとされ、設置法人の自主性に任されている。 ○なお、一般社団法人・一般財団法人についてですが、 〇この一般社団法人・一般財団法人の中でも、公益目的事業を行うことを主たる目的とする法人は、 内閣総理大臣又は都道府県知事に申請することにより、 「公益社団法人」「公益財団法人」の認定を受けることができるとされている。 ○「公益目的事業」というのは、 学術、科学技術、福祉、教育などの(公益法人認定法別表(第2条関係)で掲げられる) 事業で、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの とされています。 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号) 第2条第4号 公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。
公益目的事業を行うことを主たる目的としているか 公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正費用を超えることはないか 一般社団法人・一般財団法人 公益社団法人・公益財団法人 【認定の基準】(公益法人認定法第5条) 公益目的事業を行うことを主たる目的としているか 公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正費用を超えることはないか 公益目的事業比率が50/100以上の見込みか など ○公益社団法人・公益財団法人に認定されるには、 ・公益目的事業を行うことを主たる目的としているか ・公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正費用を超えることはないか ・公益目的事業比率が50/100以上の見込みか などの認定基準を満たすことが要件となっています。 ○一方、公益社団や公益財団の認定を受けない一般社団・一般財団は、 その事業の公益性は問われません。 ○一般社団や一般財団法人が、仮に「実施に要する適正費用を超え」た収入を得る料金設定を して、図書館を運営している場合でも、これを私立図書館と言っていいのか、 個人的には、疑問が残るところ(市川さんコメント)。
第29条(図書館同種施設) 図書館と同種の施設は、何人もこれを設置することができる。 第29条(図書館同種施設) 図書館と同種の施設は、何人もこれを設置することができる。 文部科学大臣及び都道府県教育委員会は、図書館類似施設からの求めに応じて、指導・助言できる。 (図書館同種施設) 第二十九条 図書館と同種の施設は、何人もこれを設置することができる。 2 第二十五条第二項の規定は、前項の施設について準用する。 ○図書館法第29条では、図書館同種施設について規定している。 ○西崎恵(めぐむ)の著書によれば、戦前の「図書館令」では、公益法人でなくても私立図書館を設置できることとされていたが、図書館法制定によりその範囲が狭められたため、旧図書館令では、私立図書館とされながら、図書館法においては、私立図書館として扱われなくなった施設を主たる対象として図書館同種施設という範囲を新たに認めたと、解説されている。 ○また、第25条で私立図書館に対して規定していたのと同様に、都道府県の教育委員会は、図書館同種施設に対し、その求めに応じて、指導・助言を与えることができることとされています。 ○ちなみに、教育機関というのは、教育委員会が所管することとなっています。(次ページ以降スライドで補足)しかし、近年、教育委員会でない部局が所管している図書館が出てきています。 ○平成23年度の調査では、106館あり、県立が3館、市区立が99館、町立が4館。20年度調査では6館だったが増加した。 ○ 静岡市では社会教育部を廃止し、スポーツ振興や文化振興、生涯学習はすべて市民生活に一番関わりの深い首長部局に移管した。施設もできるだけ首長部局の方針で運営されるようにしている。 ○愛知県立図書館は、「愛知芸術文化センター」を構成する施設の一部であり、県の県民生活部という部署が、文化振興と併せて所管している。 ○奈良県立図書館は、地域振興部が所管している。文化などと一緒に、図書館も所管している。 ○地方教育行政の組織及び運営に関する法律で、図書館は教育委員会が所管することとされている。したがって、これらは図書館法上の図書館とは言えず、分類的には図書館同種施設となります。 ○まとめ 以上、図書館法についてみてきたが、図書館法はサービスの大枠を規定したものであり、地方分権の流れもあり、その具体的なレベルなど、地方自治体にゆだねられている。地域の特性を生かしたサービスが展開できるよう、図書館が、自治体が、主体的に動きことが求められている。