2013/07/31 金融リテラシー連続講義 第9回 お金をふやす①
本日の講義のポイント 本日の講義のポイント ① 貯蓄と投資の意義について考えよう。 ② 債券・株式・投資信託などの金融商品を知ろう。 ③ 「リスクとリターンの関係」を理解しよう。 ④ 「分散投資」や「長期投資」を知ろう。
1. はじめに
Q;とうしくんからの質問 「投資」にどのような印象を持っていますか?
(1)投資に対するイメージ (出所)日本証券業協会「平成27年度 証券投資に関する全国調査」
(2)貯蓄、投資、ギャンブルの違い 貯蓄 投 資 ギャンブル 掛け金を分け合うため、 投 資 ギャンブル 株式や債券等でお金を運用すること 掛け金を分け合うため、 一部の人が利益を得て、大多数の人は損失を被ることになります。 貯めることよりふやすことを重視 一時的に資産が増えることはあっても、ライフプランに必要なお金を得る手段としては適当ではありません。 安全性や流動性を重視 全体のパイを増やそうとする 主な金融商品 主な金融商品 普通預金 定期預金 積立 株式 投資信託 債券
(3)投資の意義 投資には、家計のお金(資産)を増やす目的のほか、「経済成長を支える」という意義があります。 ・保有資産をふやすことが期待できます。 ・売買注文が集中することで、 流通性の向上や適正な価格 形成が期待できます。 ・株式の売買は主に証券取引所を介して行われます。 ・企業や国の競争力の強化が期待されます。 ・事業の拡大により、持続的な経済成長が望まれます。
2.主な金融商品・リスクとリターンの関係
Q;とうしくんからの質問 「金融商品」と聞いて何を思い浮かべますか?
(1)預貯金 利子や元金の払い戻しが確実です(預金保険制度により、元金1,000万円までとその利息が保証されます)。 換金が比較的容易です。 預貯金の タイプ 流動性預貯金 (普通預金など) 定期性預貯金 (定期預金など) 期 間 期間の定めがない いつでも自由に引出せる 預入期間が定められている 適用金利 定期性預貯金よりも低い 流動性預貯金よりも高い 預ける 資金の例 日常の生活資金 いざというときの準備資金 すぐには使わない資金 将来の支出に備える資金 利子や元金の払い戻しが確実です(預金保険制度により、元金1,000万円までとその利息が保証されます)。 換金が比較的容易です。 物価上昇率が預貯金金利よりも高くなると、預貯金の実質価値(モノやサービスの購買力)がマイナスになります。
(2)債券①・・・債券のしくみ 債券とは、国や地方公共団体、会社等がお金を借りるときに発行する借用証書のようなものです。 債券とは、国や地方公共団体、会社等がお金を借りるときに発行する借用証書のようなものです。 債券を購入した個人や会社等は、債券を保有している間は利子が定期的に受け取れるほか、満期になれば額面金額を受け取ることができます。 投資家は、証券会社や銀行等を通じて債券の売買を行ったり、利子や償還金の受取りをします。 10
(2)債券②・・・主な債券の種類 ▽国債 ⇒ 国が発行する債券です。 ▽社債(事業債)⇒ 会社が発行する債券で、事業債 とも呼ばれます。 国が元本を保証しており安全性が高いため、 金利は事業会社の債券に比べて低くなります。 ※ 個人向け国債 = 3年・5年・10年 ▽社債(事業債)⇒ 会社が発行する債券で、事業債 とも呼ばれます。 満期までの期間はさまざまで、金利は発行時点の市場金利 水準をベースに発行体の信用度に応じて決められます。 ▽外国債券 ⇒ 国際機関や外国の政府、 法人が発行する債券です。 日本円(円建て)や外国通貨(外貨建て)で 発行されます。
(2)債券③・・・債券投資の魅力とリスク 途中で売却可能 額面金額 利 子 価格変動リスク 信用リスク 債券投資の魅力 満期時に受け取れる 満期時に額面金額を受け取れる。 定期的に受け取れる 利 子 保有期間中、定期的に利子を受け取れる。 ※一部異なる商品があります。 途中で売却可能 満期までの途中で売却することができる。 債券投資のリスク ※外国債券の場合は、為替変動リスクやカントリーリスクもあります。 価格変動リスク 信用リスク 取引価格が日々変化する。 購入した債券の発行体が破たんする可能性がある。
(参考)債券の格付け 「格付け」とは、債券の信用力を示すために用いられる、債券のデフォルト(利子や額面金額の支払いができなくなること)の可能性を示す指標です。 債券の格付けとは、債券の元利金支払い の確実性を格付会社が評価し、その信用 度をランク付けしたものです。 一般的に、格付けの高い債券ほど利回りは 低く、格付けの低い債券ほど利回りは高く なっています。 格付けは債券の信用度をチェックする際の 目安となりますが、あくまで格付会社の意 見であり、絶対的な投資尺度ではないこと に注意が必要です。
(3)株式①・・・株式のしくみ 株式投資には、会社に出資して資金面で応援するという楽しみがあります。 また、会社を育てて経済や社会の発展に寄与するという社会的な意義もあります。
(3)株式②・・・株式投資の魅力とリスク 株主優待 値上がり益 配当金 価格変動リスク 信用リスク 株式投資の魅力 (キャピタル・ゲイン) 買ったときよりも高く売れれば、譲渡益が得られる。 会社が得た利益を株主に還元する配当金が受け取れる。 株主優待 会社の製品やサービス等の優待を受けられる。 配当金 (インカム・ゲイン) 株式投資のリスク 価格変動リスク 信用リスク 取引価格が日々変化する。 投資した会社が破たんする可能性がある。
Q;とうしくんからの質問 株価はどのような要因で変動するのでしょうか?
(3)株式③・・・株価の変動要因 株価は、需要(買いたい量)と供給(売りたい量)のバランスで日々変動します。 売り・買いの判断の基本となるのは会社の業績です。個々の会社の業績は、さまざまな要因で変化します。 これが 基本! 17
(参考)日本の株価の推移 2010~2015 2010~2015 バブル崩壊 アベノミクス リーマン・ショック (円) (ポイント) 2010~2015 2010~2015 バブル崩壊 リーマン・ショック アベノミクス 日経平均株価・・・東京証券取引所第一部に上場されている銘柄から代表的な225銘柄を選んで算出している平均株価のこと。 東証株価指数・・・東京証券取引所第一部に上場されている全銘柄の時価総額を指数化したもの(昭和43年1月4日の時価総額を100として算出)。 (TOPIX)
(参考)証券取引所の役割 売買注文が取引所に集中すること で、以下の点が期待できます。 ①株式等の流通性が高まる ②適正な価格がつきやすくなる ~企業が上場するメリット~ ①資金調達がしやすくなる ⇒会社の財務体質の強化に繋がります。 ②会社の知名度や社会的信用が高まる ⇒有能な人材確保や業務の拡大に繋がります。 証券取引所で売買できるのは、一定の基準を満たした会社の株式等に限られます(投資適格性の確保)。
(4)投資信託①・・・投資信託のしくみ 投資信託では、運用の専門家が投資家から集めた資金を運用しています。 運用会社が投資信託の運用方針を決め、信託銀行に株式や債券などの売買を指図します。 ※ ※ 信託銀行では、投資家から預かった資金を自社の財産とは区別して保管・管理しています。
(4)投資信託②・・・投資信託の魅力とリスク 専門家が運用 少額で投資可能 分散投資でリスクを軽減 投資の専門家が、投資家に代わって運用する。 投資のために多額の資金を準備する必要がない。 分散投資をする仕組みのため、リスクの軽減に繋がる。 投資信託のリスク ※外国の株式や債券に投資する投資信託の場合、カントリーリスクもあります。 価格変動リスク 投資信託に組み入れられている株式や債券の価格が日々変化する。 信用リスク 投資信託に組み入れられている株式や債券の発行体が破たんする可能性がある。 為替変動リスク 為替の変動により基準価額(投資信託の値段)が変化する可能性がある。
(参考)いろいろな投資信託 投資信託のうち、証券取引所に上場したもの。 イーティーエフ ETF(上場投資信託) 投資信託のうち、証券取引所に上場したもの。 TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価などの指数と連動するように設定されたものもあります。 海外の株価指数や、金などの商品価格に連動するように設定されたものもあります。 ETF 一般的な投資信託 購入窓口 証券会社 証券会社、銀行等 購入価格 時価(取引価格) 基準価額 信託報酬 一般的な投資信託よりも低い ETFよりも高い 最低投資金額 多くは10万円程度から 1万円程度から リート REIT(不動産投資信託) 投資家から集めた資金で不動産を保有し、その賃貸料や売却益を投資家に分配する投資信託のこと。証券取引所に上場しているものもある。 不動産市場の活性化や個人の資産運用の多様化に繋がるとされています。 分配は、投資物件の収益性の変化(競合物件の登場、経年劣化等)のほか、不動産市況などの影響を受けます。
(5)金融商品を評価する3つのポイント 3つ 金融商品を みるポイント 3つの観点からみた 金融商品の比較 3つとも◎の 商品はない 収益性は低いが、安全性、流動性は高い 安全性は低いが、高い 収益性が期待できる 収益性も少しありつつ 安全性も高い ※上記は一般的な比較例であり、個別の金融商品全てにあてはまるものではありません。
(参考)投資をする目的を考えてみよう 個人の資産形成のため 共感できる企業・ 金融商品に投資 応援したい企業に投資 ・収益性/安全性を判断 ・ライフステージに合わせた 長期投資 等 ・応援したい会社の株を買う ・クラウドファンディング ・社会的責任投資(SRI) 等 ファイナンシャル・リターン (資産の増加) ソーシャル・リターン (企業の成長、CSRの向上等)
共感できる企業・応援したい企業への投資例 (参考)投資をする目的を考えてみよう 共感できる企業・応援したい企業への投資例 ・好きな商品を作っている会社、応援したい会社の株式を買う どの銘柄を買うか迷ったら、まずは好きな食べ物や良く使う文房具など、身の回りにある商品から会社を探して選ぶのも一案です。一から調べるよりも、特徴や業績などを理解しやすいでしょう。 ・クラウドファンディング 資金を集めようとする事業体等がインターネットを通じて、多くの人から少額ずつ資金を集めるしくみです。 一般に、そのスキームによって、①「寄付型」(寄付として資金を提供するのみ)、②「購入型」(製品やサービスを受け取る)、③「投資型」(株式※やファンドを取得する)、④「融資型/貸付型」(資金を貸し付ける) に大別されます。 ※ 発行総額1億円未満かつ投資家一人当たり投資額50万円以下という条件。 ・社会的責任投資(SRI) 企業業績等の財務的要素に加えて、企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)等に対する取組み姿勢を考慮に入れて投資対象を選定する投資のこと。企業の社会的責任(CSR)に注目して投資対象を限定する投資信託もあります。 Environmental Social Governance 二酸化炭素や廃棄物の排出量、エネルギーの使用量の削減など、環境に配慮した取組みを行っているか 働きやすさ、ダイバーシティ、地域社会への貢献など、労働環境の改善や地域・社会への貢献に取り組んでいるか 情報開示、説明責任など、適切に企業統治(コーポレートガバナンス)を行っているか
Q;とうしくんからの質問 金融商品には、ローリスク・ハイリターンの (少ないお金で一攫千金出来る)ものもある。 ○か×か?
(6)リスクとリターンの関係 ※ 上記の図は、イメージであり、全ての金融商品に当てはまるものではありません。特に、投資信託は組み入れる商品の内容によって、債券や株式のリスク・リターンと同水準であるものも存在します。
(7)「リスク」と「リターン」の意味 ①「リターン」とは、「お金を運用した結果得られるもの」をいいます ⇒100円の利益も、100円の損失も「リターン」と考えます。 ②「リスク」とは、「リターンの不確実性の度合い」をいいます ⇒「リスクが小さい」とは、「元本が割れる可能性が低い」ではなく、 「リターンの不確実性が小さい」ことを意味します。 ⇒「リスクが大きい」とは、「元本が割れる可能性が高い」ではなく、 「リターンの不確実性が大きい」ことを意味します。 ③リスクとリターンの間には、一般的に以下の関係があります ・高いリターンを得ようすると、リスクも高まる。 ・リスクを低く抑えようとすると、リターンも低下する。 ・リスクを高めれば、必ずリターンが高まるわけではない。 ・リスクなく高いリターンを得られることはない。 ・リスクとリターンは総じて比例的である。
リスク(リターンの不確実性)を過去の平均リターンから計算する方法 (7)「リスク」と「リターン」の意味<続き> リスク(リターンの不確実性)を過去の平均リターンから計算する方法 【例1】1年あたりのリターンがそれぞれ 15%、-20%、20%、25%、-15%だった場合 【例2】1年あたりのリターンがそれぞれ -8%、10%、-2%、4%、6%、だった場合 (リターン) (リターン) 5% 2% リターンの平均…各年のリターンを足して5で割る ⇒{15+(-20)+20+25+(-15)}÷5=5% リターンの平均…各年のリターンを足して5で割る ⇒{(-8)+10+(-2)+4+6}÷5=2% リスク…各年のリターンが、平均のリターンからどの程度 乖離しているかを数値化して計算 ⇒{102+(-25)2+152+202+(-20)2}÷5=350 √350≒18.7 リスク…各年のリターンが、平均のリターンからどの 程度ぶれているかを数値化して計算 ⇒{(-10)2+82+(-4)2+22+42}÷5=40 √40≒6.3 (参考) 上記の計算により求めたリスクは平均値からの広がりを意味するが、統計学では「標準偏差」という。 リターンが正規分布に従う場合、平均値から「±1標準偏差」の範囲に全体のサンプルの約68%が収斂する(上記の例1であれば、リターンが23.7%から-13.7%の間に収まる確率が約68%となる)。
(参考)リスクとリターンの関係 リスクとリターンについて、実際に観察される関係を単純化すると、総じて低いリスクと低いリターン、高いリスクと高いリターンが結びつく比例的な関係がみられる。 (出典)金融広報中央委員会 「大学生のための 人生とお金の知恵」
(8)主なリスクの種類 信用リスク 発行体の〔経営悪化・破たん〕によって発生する、元本や利子の支払い遅延や不能が生じるリスクのこと。デフォルトリスクともいう。 〔価格変動〕リスク 換金する際の受取金額が当初支払った金額より上回ることもあれば、下回る場合もあること。 〔為替変動〕リスク 為替レートの変動により、換金・満期の際、円での手取り額が購入した時の金額を上回る場合もあれば、下回る場合もあること。 〔カントリー〕リスク ある国の株式や債券等への投資を考える場合、その国の政治・経済・社会情勢によって大きな影響を受けること。 流動性リスク 必要な時にすぐに〔換金・売却〕できないこと。 〔インフレ〕リスク 物の値段が上がることにより、お金の価値が相対的に目減りする(実質的な損失となる)こと。 これを上回る運用益を上げないと、お金の価値は下がってしまう。 金利リスク 〔債券〕の価格は市場における金利の動きに影響を受けて変動する。 通常、金利が上昇すれば価格は下がり、低下すれば価格は上がる。
(9)自己責任原則 自己責任原則とは? 情報開示(ディスクロージャー)とは? 「投資は、投資家自身の判断と責任において行うべきである」との考え 方です。 ─ 金融商品に対する正しい知識と理解に基づく投資判断が求められます。 ─ 的確な投資判断を行うには、証券市場の透明性・公正性が確保されている必要があり、そのために法令・規則や情報開示制度が整備されています。 情報開示(ディスクロージャー)とは? 一般投資家が的確な投資判断を行えるようにするため、株式や債券 の発行者(会社)にさまざまな情報開示が義務付けられています。 証券会社等に対しては、投資家に金融商品に関する十分な説明と資料を提供するよう求められています。 〔参考〕有価証券報告書等の閲覧サイト EDINET http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
3. 投資におけるリスクの管理
Q;とうしくんからの質問 「リスク」をコントロールする方法は、 あるのだろうか?
(1)投資に振り向けるお金 (円) 住民税 使えるお金 貯蓄 手取り-貯蓄=使えるお金 投資 計画的に貯蓄して余裕資金の範囲で
(2)お金の整理 お金を整理する
(3)リスク許容度 投資は、「ハイリスク・ハイリターン」または「ローリスク・ローリターン」が大原則です。 (都合の良い「ローリスク・ハイリターン」はない!) 自分が期待するリターンを得るために甘受できるリスクはどれくらいか、その限度(リスク許容度)を予め決めておくことが重要です。リスク許容度は、各人の事情によって異なります(下記の例を参照)。 上図における「保有資産」とは、「当面使う予定のないお金」のことです。食費や光熱費、計画している旅行の費用など、「使い道が決まっているお金」を投資の元手とするのは適当ではありません。 予想以上に価格が動き、許容できるリスクを超えた場合に備えて、「○○円以上の損失が発生し たら、それ以上保有せず、売却する」など、予め売買するタイミングを決めておく方法もあります。
(3)リスク許容度<続き> リスク許容度と投資を具体的に考えてみよう(練習問題) Q1.Aさんは50万円持っているが、万が一の事態に備えて、15万円は絶対に必要と考えている。この場合、Aさんのリスク許容度は35万円となるが、どのような投資方法が考えられるだろうか? Q2.Bさんは70万円の資金を元手に、投資を始めるつもりである。リスク許容度は30万円であるが、投資で発生する損失は50%と予想しているので、60万円で株式を購入することを決めた。これは、リスク許容度内に留めた投資と言えるだろうか?
【練習問題解答例】 リスク許容度と投資を具体的に考えてみよう(練習問題) (Q1解答例) (Q1解答例) 絶対に必要は15万円は定期預金に預け、残りの35万円を株式や債券に投資する。 (Q2解答例) 投資での損失確率を50%とみているため、60万円投資しても最大の損失額は30万円となり、これはリスク許容度の範囲内に留まる。
(3)リスク許容度<続き> 資産配分の見直し 若年世代 現役世代 高齢世代 資産の組み合わせは、ライフプランや現在の生活状況などを考えながら、定期的に見直し、必要に応じて配分を変更することが望ましい。 老後には、安全性と流動性を重視した運用が望ましい。
投資の世界の合言葉!「ひとつのカゴに卵を盛るな」 (4)分散投資 投資の世界の合言葉!「ひとつのカゴに卵を盛るな」 <具体的な分散投資の例> ①100万円のうち、定期預金に 50万円、投資信託に30万円、 株式に20万円といった配分で 投資する(資産の分散)。 ②日本企業だけではなく、アメ リカや欧州企業の株式や外 貨建ての金融商品にも投資 する(地域の分散)。 ③金融商品を購入する資金を一度のタイミングで使い切らず、時間をずらして複数回に分けて投資する(時間の分散)。 41
4. 長期投資の重要性
(1)長期投資の意義 ①短期的な値動きに一喜一憂することなく、「長い目で期待 収益を考える」 ⇒短期的な価格変動が大きくても、長期間でみれば一定のレンジに収斂していく傾向がある。 ②長期に亘って一定金額の投資を継続することで、「時間の 分散効果」が得られる。 ⇒投資金額を一定とすれば、時価によって購入できる数量は変わるが、結果的に平均単価(1単位当たりの購入価格)が相対的に低く抑えられる(ドル・コスト平均法)。 ③投資から生じた利子や配当を再投資して継続的に運用を行うことで効果的な資産形成ができる可能性がある。
(2)ドル・コスト平均法 1株あたりの平均購入価格を低めに抑えることができます。 成長性が見込める場合や、割安だと思われる場合に有効です。 Q.A株式会社の株価がグラフのように変動した場合、毎月1万円ずつ購入していたら、何株買えるだろうか? また、毎月一定の株数を購入する場合と比べて差が生じるか? ※購入に関する手数料は考慮しない A株式会社の株価の推移 1ヶ月目 2ヶ月目 3ヶ月目 4ヶ月目 5ヶ月目 6ヶ月目 1ヶ月目 2ヶ月目 3ヶ月目 4ヶ月目 5ヶ月目 6ヶ月目 合計 1株当たりの 購入金額 株価 1,000円 1,250円 770円 830円 1,110円 毎月10株購入した場合の月次購入金額 10,000円 12,500円 7,700円 8,300円 11,100円 59,600円 59,600円÷60株≒993円 毎月1万円で購入可能な株数 10株 8株 13株 12株 9株 62株 60,000円÷62株≒967円 1株あたりの平均購入価格を低めに抑えることができます。 成長性が見込める場合や、割安だと思われる場合に有効です。
(参考)金融商品のリターンとコスト 定期預金 債券(国債) 投資信託 株式 元本 利率 利子・配当金・ 収益分配金など 税金※5 100万円 利率 0.014%※1 0.1%※2 ※3 利子・配当金・ 収益分配金など 140円 1000円 ※4 税金※5 20% 20%※6 その他のコスト (手数料※7) 無し 購入時手数料 信託報酬 など 売買委託手数料 リスク 1000万円まで元本保証 インフレリスク 価格変動リスク 信用リスク など ※1 預入れ期間1年の場合 (出所:日本銀行 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等 2017年2月9日掲載分) ※2 第345回10年利付国債(発行日:平成29年2月6日)表面利率 ※3、※4 預金や債券と異なり、あらかじめ将来のリターンは約束されていない なお、株式の加重平均利回りは約1.86%である(平成29年1月末時点・東京証券取引所1部上場銘柄) ※5 金融商品の利子・配当・売買益等は復興特別所得税の課税対象であるため平成49年末までは20.315%の 税率が適用される ※6 一定の条件を満たして、NISA口座で取引すれば税金はかからない ※7 売買委託手数料等は消費税の課税対象となる
(参考)コスト込のリターンの計算例① 投資金額 株式の例 (問) ※利益の20%課税 (譲渡益税) ※配当による利益が得られる場合もある 売買委託手数料 (問) 1株当たり1,000円の株式を1,000株購入し、1株当たり1,035円に値上がりしたところで1,000株売却した。売買手数料は約定金額の1.2%(税込)。収益はいくらでしょう? (答) 値上がり分(譲渡所得)は35,000円。 購入時の手数料は12,000円。 売却時の手数料は12,420円。 税金は利益から手数料を引いた額に対して課税(20%)されるので、 (35,000円-12,000円-12,420円)×80% =8,464円が手取りの利益になる。 必要なコスト 税 金 売買手数料は取引形態で違う 例)100万円の国内株取引の場合 A社(インターネット): 762円 B社(店頭窓口): 11,679円 (キャピタルゲイン) 値上がり益 純利益 売買委託手数料 実際に得られる金額 実際に支払う金額 投資金額 購入金額 + 売買手数料 売却金額 - (売買手数料+税金※) ※税金は利益にのみかかる
(参考)コスト込のリターンの計算例② 売 購 却 入 額 額 <利回りの計算方法> 購入価格 償還価格-購入価格 年利子+ 債券の例 ※利子の20%課税 満期まで保有した場合は、額面金額が受け取れる 債券は基本的に購入手数料がかからない 税金 ※債券価格によっては必ずしも購入額=売却額ではない 純利益 購 入 額 売 却 額 保有中はあらかじめ決められた条件の下、利子が受け取れる 実際に得られる金額 実際に支払う金額 ※利子には税金がかかる 税金 利子 税金 利子 税金 利子 税金 利子 税金 利子 税金 利子 (問)額面金額100万円、年利率0.4%の国債を額面100円あたり99円で購入 しました。5年間保有して、額面100円あたり100円で売却したとすると、収 益はいくらでしょうか。※利子への課税は20%、譲渡益課税は20%とする (答)毎年の利子は100万円×0.4%=4,000円。20%課税されるため、一年あたりの収益は4,000円×80%=3,200円。5年間では3,200×5=16,000円。 また、購入額99万円に対して売却額は100万円であるから、売却益は100万円-99万円=1万円。利子と同様に20%課税されるため、税引き後は10,000円×80%=8,000円。したがって収益の合計は16,000円+8,000円=24,000円。 <利回りの計算方法> 償還価格-購入価格 年利子+ 保有期間(残存年数) 利回り(%) = ×100 購入価格
5. 金融商品購入時の留意点
金融商品を購入する際に気を付けたいこと 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければならない。 金融庁のHPから、一覧を確認することができるので、不審な業者ではないかチェックする習慣を身に付けたい。 金融商品取引業者は、取引の概要や手数料、想定されるリスクなどを記載した「契約締結前交付書面」を投資家に交付し、説明しなければなりません。 商品を購入する前に内容をしっかり確認しよう。 取引の相手方(業者)の確認 契約締結前交付書面の確認 証券会社に口座を開設する際には、マイナンバー(個人番号)確認書類や本人確認書類(有効期限内の運転免許証やパスポート、住民票の写し等)が必要です。 金融商品は多くの種類がある。商品の特徴を見極め、よく理解できない場合は、安易に購入しないようにしよう。 また、目論見書や運用報告書を定期的にチェックしよう。 本人確認等 その他
6. NISAを知ろう!
「新規投資の株式などの配当、譲渡益が非課税になる制度」 (1)制度の概要 少額投資非課税制度(NISA)とは 「新規投資の株式などの配当、譲渡益が非課税になる制度」 ・通常、株式や投資信託等から得られた配当金や譲渡益は、所得税や地方税の 課税対象(20%※)となる。 ・NISAは、毎年120万円(2016年1月から)を上限とする 新規購入分を対象に、その配当金や譲渡益を最長5年間非課税にする制度。 ・その年の1月1日現在で満20歳以上の日本居住者等であれば、 学生でも利用することができる。 ※ 2016年4月からは、20歳未満の日本居住者(の親権者)は、ジュニアNISAを 利用できるようになった。 ・NISAを利用するには、専用の投資用口座を開設する必要がある。 ※ 上場株式等の譲渡益・配当金・分配金は復興特別所得税の課税対象となるため、 平成49年末までは20.315%の税率が適用される。 51
(1)制度の概要<続き> NISA専用口座を開設できるのは、1人1金融機関だけ ──平成27年1月からは、年単位で開設金融機関の変更ができるようになった NISA口座で購入・利用できる金融商品は銀行と証券会社で異なるが、同時に両方の金融機関でNISA専用口座を開設することはできない 預金や国債、公社債投資 信託などは対象外 その他に注意したいNISAのポイント ・非課税枠は「使い切り」なので購入した商品を売却した場合でも、売却した部分の非課税枠は復活しない ・非課税の枠に未使用分があっても、翌年への繰り越しは認められない ・NISA口座とその他に保有している特定口座・一般口座との損益通算は認められない (上記ポイントは、NISAの全てを表すものではない)
(1)制度の概要<続き> NISA口座は1人1口座 利用できるのは20歳以上 対象商品は上場株式・株式投資信託等 NISAの7つのポイント NISA口座は1人1口座 1 利用できるのは20歳以上 2 対象商品は上場株式・株式投資信託等 3 非課税となるのは売買益・配当金等 4 年間拠出限度額は毎年120万円 5 非課税期間は5年間 6 投資が開始できるのは、2014年~2023年の10年間 7 上記ポイントは、NISAの全てを表すものではありません。 制度は今後、変更となる可能性があります。
(2)ジュニアNISAの概要 ジュニアNISA 2016年4月からジュニアNISAがスタート! ジュニアNISAの使い道いろいろ 利用者 0~19歳の居住者 非課税対象 <成人NISAに準ずる> 年間投資上限額 80万円 非課税期間 運用管理 ・原則として、親権者等。 ・18歳まで払出し制限。※ 投資可能期間 ジュニアNISAの使い道いろいろ 子どもの教育資金として 18歳※になれば払出しができるので、大学進学時にかかる入学金や学費などに使用することができます。 ※ 3月31日時点で18歳である年の前年の12月31日 子どもが独り立ちする 子どもが、引き続きNISA口座で運用するための資金づくりや、結婚を決めたり、留学を希望したりするときなどのために、資金を準備してあげられます。 おじいちゃんおばあちゃん からの贈り物として 毎年80万円を上限に積み立てていくことで、 将来のための資金を遺してあげることが できます。 子どもが資産運用を 学ぶきっかけとして 子どもに自分の口座を持たせることで、投資への関心を促します。金融・経済の知識を身につけさせるきっかけになります。
NISA の2つのねらい (3)制度創設のねらい (1)自助努力による個人金融資産形成の支援・促進 NISAをきっかけとして、若い世代をはじめとする人々に、 将来に向けた資産形成に取り組んでもらう。 (2)経済成長に必要不可欠な成長マネーの供給 家計から企業への資金供給が拡大することで、結果として 経済成長と家計の豊かさの循環の実現を目指す。
7. まとめ
(1)資金運用手順のおさらい 行動 チェックポイント 定期的に状況をチェックし、必要に応じて商品を売買する 適切な収支管理を行い、毎月一定額を貯蓄 するとともに、ライフイベントに必要な金額に ついて、現実的なイメージを持つ 手順1 まずは毎月の収支を安定させる ところから始めよう 投資をする目的・目標を決めて、月々の遣り繰りの中から投資に充てる金額を決める 「○○のために●円増やしたい」のように、具体的な目標を決めると良い 手順2 金融商品の特徴を理解する よく分からない商品は選択しないようにしよう 手順3 手順4 自分の「リスク許容度」をもとに「資産配分」を決める 将来にわたるライフプランを勘案した内容か、良く考えよう 手順5 証券会社や銀行に、口座を開設し、売買を行う 口座開設には本人確認書類が必要 NISAは1人1口座のため注意! 手順6 定期的に状況をチェックし、必要に応じて商品を売買する 当初決めた資産配分が崩れていないか? 考え方や状況等の変化により、自分のリスク 許容度は変わっていないか?
1 2 3 (2)本日の講義のまとめ 主な金融商品の仕組みを理解し、金融経済情勢に 応じて利用選択できるようにする 「金融商品を知る」 キーワード : 「投資は余裕資金で」 「投資の社会的な意義」 主な金融商品の仕組みを理解し、金融経済情勢に 応じて利用選択できるようにする 1 資産運用は、無理のない範囲の資金で、リスクと リターンの関係等を踏まえながら自己責任で行う 2 投資は自分のためだけでなく、社会のためにもなる 3
是非アクセスしてね! (参考)本日の講義に関連する参考サイト ・日本証券業協会「学ぶ」HP (http://www.jsda.or.jp/manabu) ・日本取引所グループ「セミナー・学習」HP (http://www.jpx.co.jp/learning/index.html) ・投資信託協会 「投資信託を学ぼう」 (http://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/what/) ・全国銀行協会「教えて!くらしと銀行」HP (http://www.zenginkyo.or.jp/article/) ・金融広報中央委員会「知るぽると」HP (http://www.shiruporuto.jp) ・金融庁「金融の仕組みや金融商品などの解説」HP (http://www.fsa.go.jp/ordinary/index.html#yakudatu) 是非アクセスしてね! Disclaimer 本資料は、日本証券業協会(以下、日証協)が作成したものです。本資料は、金融知識習得の一助となる事を目的とし、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。日証協は、インターネットを通じて提供されている情報を含め、信頼性が高いとみなす情報等に基づいて本資料を作成しておりますが、当該情報が正確である事を保証するものではなく、日証協は、本資料に記載された情報を使用する事により、投資運用を行った結果被った損害を補償いたしません。また、当該意見・見通しは、将来予告なしに変更される事があります。