経営学I Human Resource.

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第1章 企業経営と人事労務管理 人事労務管理の機能と担い手
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経営学I Human Resource

人的資源管理 問題 サービス企業大手でマーケッティングを務めるヘーザーにとってジョンは扱いにくい部下だった。彼は他の社員と一緒になってしきりに彼女の足を引っ張ろうとした。彼女の決定を批判する電子メールを、彼女の上司やそれ以外の彼の裏の人脈に流すこともたびたびあった。ジョンは勤続年数も長く、市場調査の専門家グループを管理していた。このグループは、組織再編に伴いヘーザーが監督するようになるまで、数年好き放題にやってきた。ジョンはヘーザーの地位を志願したのだが、上が認めなかったのだ。グループとしてはいい仕事をすることも多かったが、まったくといていいほど期限がまもれず、社内でも対応の悪さは有名だった。ジョンが気まぐれで、ふさぎ込んだりひねくれたりすることが多く、「ワールドクラスのサービス提供」という会社の使命にしっかり打ち込めないのはヘーザーにもわかった。このグループを変革する必要があるのは明らかだったが、さて、どこから手をつけるかになると自信が無い・・・。 ヒント ヘーザーは、少なくとも四つのレベルで分析に取り組む必要がある。1)ジョン自身、そしてジョンに今のような行動をとらせている理由を理解する。2)彼女自身と彼を取り巻く関係を、職務権限の関係を中心に理解する。3)グループ内でどのような力学が働いているか理解する。4)組織全体、2人の関係、2人が働くグループに影響を与えている企業文化、プロセス、物事の進め方を理解する。

モチベーション ある会社の社長が以下の問題についての選択をする局面にいます。 11億円をかけて水質浄化装置を購入し会社の工場で使用する。これにより工場の横を流れる川が汚染されることを防ぐ。 水質浄化装置は買わず、何もしない。これにより彼は10パーセントの確率で当局に摘発され1億の罰金とその時点で水質浄化装置を購入する。 この社長は株主や債権者から企業の業績を上げるように強い圧力をかけられています。

人的資源管理 企業がその事業活動を営む上で欠くことができない資源がヒトである。経営学ではこのヒトに関わる問題について調査・研究する。ここでは、大きく3つの領域に分けて「ヒトに関する問題」を見てみる。 労働力の調達 募集・選考・採用の施策 労働時間の管理・休日・休暇管理 労働力の活用 職務内容ー労働能力バランス管理 (配置、昇進・昇格・異勤、出向、退職、職務分析・職務評価、人事考課、職務設計) 能力の育成・開発の施政 (教育訓練制度、CDP、OJC、Off-JT、自己啓発、QCサークル) 外発的報酬(賃金、労働時間、昇進、福利厚生) 労働への報酬 内発的報酬(個人的達成感、個人的成長感、モチベーション)

人的資源管理 労働力の調達 「労働力の調達」とは基本的にはその企業や必要とするヒトを「募集」し、「選考」し、「採用」するという一連の業務・活動をどう進めるかという問題である。 要員計画・採用計画 経営戦略や事業計画に基づいて、その企業全体の業務量に見合って必要となる必要要員数を算定する。これが要員計画書である。一般的に日本の大企業は、3~5年の中・長期の要員計画を元に毎年の採用人数を決定する。さらにその採用要員の質を考慮して「採用時期別」、「学歴別」、「職種別」、「経験年齢別」、「雇用形態別」の要員数を算定する。 採用計画に基づき採用者数が具体的に決定すれば、その必要な人材を労働者市場から採用するための活動に移る。「募集」に関しては、様々な方法がある。例として、公共職業安定所、民間職業紹介業者、学校、求人情報誌、インターネット等により基本的に企業は自由に募集出来る。しかし、労働者保護と職業安定に関わる幾つかの法的規制に配慮する必要がある。例えば「中間詐取の禁止」を定めた労働基準法6条および39条、「労働条件の明示義務」を定めた5条、さらに、職業安定法は「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由に、差別的取扱いを受けることがない」との均等待遇原則を定めている3条、女性差別の禁止を定めている5条等は重要である。 選考に関しては、企業ごとさらに職種ごとに様々な方法がとられているが。一般的に、書類選考、一般常識・基礎学力、専門能力、志願理由、意欲、態度、等により選考される。特に最近では面接重視の傾向が見られる。 最近の選考基準として考え方に「組織的選考の2重適合プロセス」というものがある。これは、単に、企業側のニーズにあった人材かどうかの適合性だけでなく、応募者の個人的欲求や期待に企業側が提供できるかの適合性も考慮するという考え方である。 戦後の日本経済成長を支えてきた日本的人事管理とも言われる「終身雇用制」や「年功序列制」が見直され多様化されてきている。その表れとして、派遣労働者、アルバイト、契約社員といった非正規従業員が増加している。厚生労働省の2003年の調査では非正社員比率は全労働者の34.6%に達している。これに伴い、日本独自の雇用システムである新規学卒者の定期採用は、1)技術革新による労働力の質の変化、2)非正規労働者の活用の増加、3)定年後の再雇用や選択定年制などの影響で従来型の雇用システムは修正されつつある。

人的資源管理 労働力の活用・労働への報酬 経営学で「労働力の活用」とは、「労働時間管理」や「職務内容ー労働能力バランス管理」(職務を明確にし、従業員の能力を把握し、両者の適合を図る施策)、「能力の育成・開発の施政」を通じて、従業員の労働生産性とりわけその付加価値生産性が増大するように従業員の労働能力を活用する施策である。そして、結果として企業には利益の拡大の可能性を、また従業員には高い報酬の実現の可能性を高める効果を期待できる。 「労働への報酬」に関しては、労働者が自己の労働への見返りとして企業から与えられる賃金や昇給、昇進、職場環境などの「外発的報酬」と、仕事の個人的達成感など個人の内部で発生し・得られる「内発的報酬」とに区別して考えることが経営学を学ぶ上で重要である。 経営学では「労働への報酬」を従業員のモチベーションを引き出す「インセンティブとしての報酬」と捉えるという視点をとる。つまり、企業がその目的達成のため従業員が意欲を持って仕事に取り組むようにする「動機付けの要因」としてどのような報酬が与えられなくてはならないかという問題である。つまり、企業はその「労働力の活用」により得た付加価値生産性から獲得した利益を従業員に対し分配するとき、広く外発的報酬と内発的報酬を考慮して、将来の従業員の労働生産性が好循環的に増大するよう「従業員の高いモチベーションを引き出し・労働能力を有効に活用することが可能となるようなもの」にしていくことが重要な課題である。

シスコのケース

モチベーションとは モチベーションとは人間の内的な状態であり、個人をあるゴールに向けて行動させる。 モチベーションの研究は大きく2つに分類できる。プロセス・モチベーションの研究ではどのように個人が動機付けられるかに注目し、コンテント・モチベーションの研究では個人の内的資質に注目してモチベーションの研究がされている。

プロセス・モチベーションの理論 プロセス・モチベーションの研究ではNeeds-Goal理論とVroomの予測の理論が有名である。この2つの理論は比較的単純にモチベーションを表現しているので、現実の世界でのモチベーションを表現するには限界があるといった批判もあるが。この2つの理論が基礎となってより高度な理論が開発されてきたといえるであろう。 Needs-Goal理論 Varoomの予測の理論 ニーズの発生 フィードバック ゴールの為の補助的行動 ゴールの為の行動 モチベーションの度合い = 行動によって得られると予測される主観的な価値 X 行動が成功する主観的な確率予測 Intrinsic Rewards 内的報酬 Perceived Equitable Rewards 報酬の衡平感 Performance (Accomplishment) パフォーマンス・結果 Satisfaction 満足度 Extrinsic Rewords 外的報酬

コンテント・モチベーション理論 コンテント・モチベーション理論では、個人はどのような要求(ニーズ)を持っているのか、そしてどのようにこの要求を満たしているのかと言う点に注目して研究が進められている。 コンテント・モチベーション理論では、マズローの「欲求階層」、 ERG理論、マック・クレーランドの欲求の取得理論などが広く利用されている。

コンテント・モチベーション理論 企業はヒトの集まりである。どうすれば個々のヒトを組織に有利なように動かすことが出来るか理解するという問題は「Problem of Motivation」と呼ばれ、多くの組織では、この問題に多大なエネルギーを費やしている。この動機づけ問題を理解するうえで、欲求理論(Needs Theory)と衡平理論(Equity Theory)が役に立つ。 マズローの「欲求階層」は人間の欲求を5段階に分類している。彼の理論では人間は低次の欲求が充足されると、ひとつ高次の欲求が人格を支配するという欲求の階層性である。この欲求階層説は経営学の人間観を大きく変革した。 この理論では、低次の欲求は「欠乏欲求」と呼ばれ、欠乏の解消が動機ずけになり、欠乏が解消した時点でその満足度の緊張は解消する。それに対し、高次の欲求は、「成長欲求」と呼ばれ、人間は欲求充足に向け、環境に積極的に働きかけ、その対象に関しても自律的に選択し、さらに欲求が充足されてもさらなる衝動が出てくる終わりの無い欲求である。 この理論をもとに、人間の自律性を尊重する人的資源管理が近年多く使用されている。簡単に述べると、個々の人間の活動のなかで、自分自身が環境に影響を及ぼしたとする達成感と、その職務については自分が自身をもってなしえるという自信をあたえるような職務を従業員に与える手法である。 自己実現欲求 高次 承認欲求 愛情欲求・所属欲求 安全欲求 生理的欲求 低次

ERG理論・欲求の取得理論 クレイ・アルダーファーは、マズローの「欲求階層」をベースに、より現代的・効果的な「ERG理論」と称する欲求理論を考案した。「E」「R」「G」は、この理論で扱う3種類の欲求の頭文字をとったものである。存在(Existence)欲求は十分な身体的快適さを求めるといった欲求である。関連(Relatedness)欲求は、他者との密接に関連し個人間の関係を持ちたいといった欲求である。成長(Growth)欲求は、創造的でありたい、仕事を通して自分を表現したい、生産的でありたい、などである。この3つの欲求が、状況に応じて人々に様々な動機づけを与えている。身体欲求から自己実現までの階層をあがるのは簡単なことではない、また、複数の欲求は同時に働くこともある。そのために、各個人が職場で必要としているのは本当は何かを理解するのは非常に複雑であるといえる。 ERG理論が、実際の職場でどう役立つか例を使って説明すると。ある社員が仕事仲間とうまくやっていけない状況では、この社員の「関連欲求」が満たされていない状態である。たぶん、この従業員の欲求を満たすには人間関係のスキルを向上するようなトレーニングが有効かも知れない。 マック・クレーランドの欲求の取得理論では、人間はその成長過程で3つの大きな欲求を満たそうとすると考える。3つの欲求は達成感を得る欲求、パワーを得る欲求、人間関係に関する欲求である。

人的資源管理 動機づけ問題 欲求を理解することは重要であるが、より直接的に動機ずけに影響を与えるものは、報奨制度等の基本的な公平性について従業員がどう感じるかであると衡平理論では仮定している。公平さの判断は「個人のインプット(仕事に対する努力水準)と結果(賃金など)との比率を、関連する「他者」の同様な比率と比較することで出来る。衡平理論を支えるものは「労働は社会環境である」という考え方である。うまり、「人間の性質を理解するには、私たちが常に他者とのかかわりを持つ社会的な生き物であるという事実を考慮する必要がある」という考えである。 衡平理論によれば、動機づけ問題の大半は、職場での不公平感の軽減・排除に関連している。不公平感の生まれる要因として、仕事の割り当てや報酬、勤務評定や昇進といったプロセスに至るまで,多種多様である。

人的資源管理 権限関係 衡平理論が注視しているところは、企業内の人間の関連性である。この関連性に関してみると、企業内では「権限」(Authority)の関連が非常に重要である。この「権限」には様々な種類がある。強制的な権限、また、正当な権限、Referent(シンボル)、専門性の権限等などであるが、企業がうまく機能するのは、多くの場合、権限関係を重視しているおかげである。安定した世界では、マネージャーは一般社員より、経営幹部は中間管理職より、またCEO(代表取締)は他の経営幹部より事態をよく把握しているという考えが支配的で、正当な権限は階層の上から下へと次々と降りていく。この権限関係が円滑な組織運営につながる。だが、こうした権限への服従に従っていれば全てがOKかというと、そうではない。 エール大学で行はれた有名な事件を通じて、スタンレー・ミルグラム教授が突き止めようとしたのは、人々はなぜ従うのかという問題だった。彼が突き止めた結果は「ヒトは状況に応じて権限に従うという傾向」があり、時に安易に不当な権限をも受け入れるということであり、この権限関係に伴う力は非常に強力な行動の動機づけになる。

人的資源管理 動機づけ問題 企業の中で人々を動機付けることは、時にその企業の将来を左右することもあり非常に重要である。その為、幾つかの手法が開発され現在でも多数の企業では使用されている。これらの手法の中で幾つかをここで紹介しておく。 マネジメント・コミュニケーション X理論・Y理論 Job・Design - ローテーション、 Enlargement(拡張), Enrichment(高価値化)、フレックス・タイム Behavior Modification(行動修正) - ポジティブ・ネガティブ修正要因 金銭的報酬 非金銭的報酬

人的資源管理 動機づけ問題 リカートのマネージメント・システム リカートはその動機の研究から、部下への信頼、コミュニケーションの度合いと方向、組織の意思決定の所在により、4つのマネージメント・システムがあることを明らかにした。一番低位のシステムでは部下への信頼はまったく無く、コミュニケーションは上から下位の従業員に対する指示のみで意思決定はトップが全て行う。一番上位のシステムでは部下は完全に信頼され、コミュニケーションは全ての方向にフリーに行はれ、意思決定にも参加することができる。動機付けの手法もそれぞれのシステムで大きく変える必要があることを彼の研究で明らかにした。

モチベーションの文化的影響 パワー・アクセプタンス 不確定への容認度 個人主義・集団主義 男性的・女性的 社会がどれだけ権力の違いを許容するか 不確定への容認度 社会がどれだけ不確定な状況や不明瞭さを許容できるか 個人主義・集団主義 男性的・女性的 独断的、結果重視 寛容性