変化の中の雇用システム 仁田道夫著 東京大学出版会2003年 E040064植田慎司
●雇用システムの改革を考えるのに大切なこと 1、雇用システムが企業組織構成員の利害に関わっており、それを無視した理想論がそのまま現実となる可能性に乏しいという事情がある。 2、雇用システムは、利害関心に関わるだけでなく、人々の価値観と深く切り結んでいる。 3、雇用システムの改革にはそれを体系的に裏付ける説得的なイデオロギー、もしくは管理理想が不可欠。 4、雇用システムも全体のシステムの一部であるから、雇用システム改革も雇用の領域に閉じたままでは終わらない。
●「終身雇用」、「年貢賃金」の観念を裏付ける制度、慣行が第二次世界大戦前から徐々に発達してきたことは確か。 定期昇格制度 ↓ 不足していた熟練労働者の足止め策として経営によって案出された労務管理上の施策として始まったことが明らかになっている。 しかし昇給は誰にでも与えられたものではなかった。 年齢と生活費の対応への配慮という意義を与える考え方が出来たということは確か。
●「終身雇用」の観念を最も強く体現した制度は「退職金制度」 第一次大戦後に熟練労働者の金属奨励を目的に作り出された。 ↓ 戦後の人員整理の波が退職金制度の確立、制度化の重要な契機となった。
●戦後直後から始まった労働組合と使用者間の賃金、雇用をめぐる長く激しい争いの、いわば歴史的妥協の観念的表現に他ならないことである。明治期以降の産業化の過程で、さまざまな必要から徐々に形成されてきた日本の雇用システムの構成要素となる諸制度、慣行が戦後の労使紛争のるつぼの中で編成され、今日見るような形に確立した。その画期はおおむね1960年ごろである。
●終身雇用 1、終身雇用を労働契約、就業規則、労働協約で明文にて定めている企業は極めて少ない。 2、企業は解雇しないかというと、しないともいえ、するともいえる。 3、比較的簡単に希望退職を募り、景気がよくなると新規採用で穴埋めするなど、企業によってさまざまでひとくくりにするのは難しい。
●大企業で解雇が少ない理由 ・労働組合の組織率が高く、懲役解雇にたいしても、これを抑制するような労働組合の活動がおこなわれているため。 ・中小企業は「期限の定めのない雇用契約」の実質化を支える労使関係上の支柱が大企業に比べてよわい。
●若者の失業 70%の人が大学、短期大学、専修学校に進学。 ↓ 15~19歳未満で労働市場に参入しているそうは極めて限られている。 ↓ 15~19歳未満で労働市場に参入しているそうは極めて限られている。 男女の計17、7%。「フルタイム労働率」は10,4%にすぎない。 分析対象を20歳以上に。 20歳代の失業者は106万人で全失業者中33,4%、ほぼ3分の1である。
●若者就業問題が世論の関心を集めるようになった背景 急激な若年失業率の上昇 ↓ 20代の前半がひどい。 離職率の上昇。 金融危機と不況にみまわれたとき20代前半の人の離職率が高まるのは珍しいことである。 ここ最近の若年層の失業率は急激に上昇。
●正規雇用の仕事に付いた場合も労働条件面で就業機会の質的低下が起きている可能性が高い。 若年就業対策として経済成長による雇用機会の増大が重要。 不定形な就業形態を通じてしか学校から職業への移行と適職発見の過程をたどれない若者が多数存在する状態を改善する方策を探ることが重要。