世界金融危機とアジアの通貨・金融協力 日本国際経済学会関東支部研究会2010年1月9日
アジア通貨危機の原因と教訓 [原因・教訓] (1)、グルーバル金融資本主義の世界にあって、各国が資本取引の自由化を急ぎ、短期のドル資金の過剰な流出入に翻弄されたこと(資本収支危機) (2)、ダブル・ミスマッチのような金融システムの脆弱性 (3)、実質ドル・ペッグという為替政策・制度の失敗 ↓ (1)、1国で対応しきれず、地域協力が必要なこと (2)、過剰なドル依存の解消(ドル圏であることへの反省) (図:アジアの対外経済依存と為替政策・制度) (3)、金融システムの強化
アジアの対外経済依存と為替政策・制度 【アジアにとっての日本、米国、EU】 ミス・マッチ ¥ 【アジアの為替政策・制度】 アジア 各国通貨 (億ドル) 日本 米国 EU 貿易 3,045 16% 3,347 17% 2,664 14% 対内直接投資 183 15% 162 240 20% 与信残高 1,825 31% 292 5% 2927 49% 二国間支援 47 69% 1 2% 16 24% 出所)大蔵省・外国為替等審議会資料 ミス・マッチ ¥ 【アジアの為替政策・制度】 アジア 各国通貨 $ 実質ペッグ €
アジアの通貨・金融協力 (1)、経済サーベイランス (2)、チェンマイ・イニシアティブ (3)、アジア債券市場育成イニシアティブ・ア ジア債券基金 (4)、為替政策・制度改革
グローバル金融資本主義の世界 約604兆ドル 世界のデリバティブ取引 (想定元本ベース) 世界の金融 総資産額 167兆ドル <物・サービスの世界> 世界の貿易取引額 約16兆ドル 世界のGDP総額 (2007年) 54兆ドル <お金の世界> 世界のデリバティブ取引 (想定元本ベース) 約604兆ドル 世界の金融 総資産額 167兆ドル 世界の 資本取引 47兆ドル
アメリカにおける金融危機の原因 住宅バブルによる住宅価格上昇 モーゲージ・カンパニーへの監督の不備 証券化によるリスク回避:甘い貸し出し審査 (1)、異常なサブプライム・ローン供与 住宅バブルによる住宅価格上昇 モーゲージ・カンパニーへの監督の不備 証券化によるリスク回避:甘い貸し出し審査 (2)、リスクの所在を不透明にする金融技術による販売促進 優先劣後構造 債務担保証券(CDO) クレジット・デフォルト・スワップ(CDS) CDSを組み込んだ合成CDO (3)、証券投資の水膨れをもたらす仕組みの存在 レバレッジ
¥・$・€ G3共通通貨バスケット制:BBCルール ウォン 人民元 バーツ 中心レート 一定のバンド 内で変動 各国の競争力の変化に応じてクローリング 一定のバンド 内で変動 ウォン 人民元 バーツ
アジア経済圏の自立に向けて <三角貿易構造から自己完結的貿易構造へ> [アメリカ依存・ドル依存のアジア貿易] 最終財 資本財→生産者による資本集積 消費財→家計、政府による消費 米国・EU(最終消費) 最終財を 消費地へ輸出 東アジア域内の工程間分業の進展 中国、ASEAN(組立) 日本、NIEs(部品生産) 中間財を労働集約的な工程に強みを持つ国へ輸出 中間財 加工品 部品 中間財の組立により最終財を生産 最終財 資本財 消費財 中間財 加工品 部品 付加価値の高い中間財を国内で生産 資本集約型工程 労働集約型工程
アジア経済圏の自立に向けて <三角貿易構造から自己完結的貿易構造へ> [ドルの呪縛からの解放・アジアの自立] 米国・EU 最終消費財 最終財 最終財 最終財(普及品) 中国、ASEAN 日本、NIEs 中間財 (汎用部品等) 中間財 (中枢部品等) 中間財・最終財 (労働集約型) 中間財・最終財 (技術・資本集約的) 最終財(高級品) 工程間分業と最終製品の差別化分業の進展