モジュール 8 臨死期のケア End-of-Life Nursing Education Consortium Japan クリティカルケアカリキュラム モジュール 8 臨死期のケア
モジュールの概要 このモジュールでは、臨死期の患者とその家族のケアに焦点を当て、臨死期に最善のケアを提供するために必要なことについて理解する 2
目標 1 2 3 4 5 臨死期にある患者とその家族の身体的、精神的、 社会的、スピリチュアルなニーズについて説明することができる 臨死期にある患者とその家族の準備を整える ために必要なことについて説明することができる 臨死期にある患者によく見られる身体的徴候・症状と必要なケアを説明することができる 看取り時の対応と留意点について理解することができる 臨死期における看護師の役割について理解 することができる 1 2 3 4 5 3 3
講義内容 臨死期とは Ⅰ. 臨死期とは 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ. 4 4
「臨死期」 ELNEC-Jクリティカルケアにおける「臨死期」の定義 ■適切な治療を行ったが効果がなく、死が不可避と 判断されてから、死までの期間(数時間から数日) 死・死にゆくこと ■死は誰にでもいつかは訪れる。しかし、死に対する受け止め方や死への向かい方は一人ひとり異なる。また、同じ疾患にあっても臨死期の状態は異なる。 ■死への過程で、患者や家族は身体的・精神的・ 社会的・スピリチュアルな苦痛を経験する。 5 5
講義内容 臨死期とは 患者・家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ. 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと Ⅱ. 6 6
オープンで誠実なコミュニケーションを心がける ■最期まで「その人らしさ」を尊重したケアを提供 することを保証し、感じたことや思いやりの気持ちを伝える ■分かりやすい言葉で情報を提供する ■患者・家族が死にゆくプロセスを準備できるようにする ■患者のそばに存在しつづけることを保証する 7 7
多職種チームで話し合い、それぞれの時期に 合った適切なケアを提供していくことが重要である 予後予測をケアに活用する ■積極的治療の中止の検討 ■療養の場の検討 ■患者の有意義な時間の過ごし方のサポート ■家族の心の準備のサポート (高橋, 2008) 看護師は、予後予測を参考にしながら、 多職種チームで話し合い、それぞれの時期に 合った適切なケアを提供していくことが重要である 8 8
患者・家族の死への不安が最小限になるよう配慮する ■患者・家族の看取りの経験や死にゆく過程に 対するイメージを確認する ■患者に起こり得る徴候や症状などについて 患者・家族の状況に配慮しながら伝える ■患者・家族に今後どこでどのように過ごしたいかについて確認し、希望を尊重する ■患者・家族が安楽に過ごせるようにすることを 保証する ■患者・家族の不安を取り除くために、そばに 寄り添い、同時に原因を探求する 9 9
講義内容 臨死期とは 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ. 死が近づいた時期(日単位) Ⅲ. 10 10
死亡前の数日間における主な身体症状 呼吸困難 479 (73.0) 浮腫 234 (35.7) 疼痛 198 (30.2) 咳嗽 非悪性腫瘍患者 (慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全)656名 症 状 n (%) 呼吸困難 479 (73.0) 浮腫 234 (35.7) 疼痛 198 (30.2) 咳嗽 194 (29.6) 疲労感 164 (25.0) 食欲不振 133 (20.3) 腸管障害 107 (16.3) 呼吸困難が最も多いものの、様々な身体症状が複合的にみられる (Lau KS. et al., 2010より一部抜粋) 11 11
臨死期の「呼吸困難」に対するケア ■薬物療法 ●モルヒネなどのオピオイドによる鎮痛や鎮静 ■非薬物療法 ●抗不安薬を中心とした抗精神薬 ●モルヒネなどのオピオイドによる鎮痛や鎮静 ●抗不安薬を中心とした抗精神薬 ●ステロイド薬や気管支拡張薬 ■非薬物療法 ●酸素投与 ●安楽な体位を工夫する ●傍に寄り添い、声かけやタッチングを行う (Campbell, 2004; 有田健一, 2010) 12 12
臨死期の「浮腫」に対するケア ■クリティカルケアにおける臨死期にある患者の輸液療法は確立されていない 生命予後1~2週間のがん患者の輸液に関する推奨 ■全身倦怠感の改善を目的とした輸液を行わない ■輸液が真に患者や家族にとって有益と判定され、 患者本人や家族の希望や了承があれば実施の適応 となるが、体液貯留や分泌物の増加による不利益を 生じていないかフォローする必要がある (日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会, 2013) 13 13
臨死期の栄養療法の考え方 終末期症例では、特殊な栄養療法は必ずしも必要ではない ASPEN/SCCMの急性期患者の栄養管理ガイドライン (McClave SA et al., 2009) しかし、「食べること」「栄養をとること」は人間本来の本質的・生理的な欲求である。これらが損なわれると、患者のQOLや満足度は低下する場合があり、また家族には最期まで この欲求を満たしたいというニードがある。 (森, 2013) 患者および家族との十分なコミュニケーションや現実的な 目標に基づいて、継続または中断は決断されるべきである 14 14
精神的、スピリチュアルな側面の変化 ■臨死期の患者は、身体的な変化だけでなく、 精神的,社会的,スピリチュアルな側面において、多くの変化がある (Smith SA, 2006) ●死が近いことを認識する ●死への不安や未知のものに対する恐れを感じる ●コントロール感や機能の喪失に苦悩する ●より内観的になり、周囲への関心がうすれる (Smith SA, 2006; 河野, 1986 ) 15 15
精神的、スピリチュアルな側面に対するケア ■患者との関係を確立する ■現実を受け入れることを援助する ■感情を受け入れることを援助する ■ソーシャルサポートを強化する ■くつろげる環境や方法を提供する ■積極的に症状緩和を行う ■医療チームをコーディネートする (森田 他, 2001)
苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン 2010 年版 臨死期の治療抵抗性の苦痛 苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン 2010 年版 治療抵抗性の苦痛 ①すべての治療が無効である、あるいは②患者の 希望と全身状態から考えて、予測される生命予後 までに有効で、かつ合併症の危険性と侵襲を許容 できる治療手段がないと考えられる場合の苦痛 例) せん妄、呼吸困難、過剰な気道分泌、痛み、嘔気・ 嘔吐、全身倦怠感、痙攣、不安、抑うつ、心理・ 実存的苦痛(希望のなさ、生きる意味のなさ など) (日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会, 2010) 17 17
治療抵抗性の苦痛への対応 ■治療抵抗性の苦痛が生じた場合、苦痛緩和のために鎮静薬を使用することを考慮する ● 深い持続的鎮静 ● 深い持続的鎮静 患者・家族にコミュニケーションをとることが 難しくなることを十分に伝えておく必要がある ● 十分な評価・治療を行わずに治療抵抗性で あると判断してはならない 多職種チームで判断することが重要である (日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会, 2010) 18 18
死が近づいた時期の家族のニーズ ■終末期患者の配偶者の持つニーズ ●患者の状態を知りたい ●患者のそばにいたい ●患者の役に立ちたい ●感情を表出したい ●医療スタッフから受容と支持と慰めを得たい ●患者の安楽を保証してほしい ●家族メンバーより慰めと支持を得たい ●死期が近づいたことを知りたい (Hampe SO, 1977) 19 19
死が近づいた時期の家族に対するケア ■患者の状況を理解できるように情報提供する ■家族がケアに参加できるように配慮する ■精神的苦痛を表出できるように支援する ■充実した時間が持てるように配慮する ■家族メンバーの力を合わせるように勧める ■死に対する準備を勧める (鈴木, 2003) 20 20
講義内容 臨死期とは 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ. 死が差し迫った時期(時間単位) Ⅳ. 21 21
死が差し迫った時期の患者の身体的徴候と症状は?
よく見られる身体的徴候と症状 死亡前48時間以内に見られる徴候 (対象:長期ケア施設で亡くなった患者185名) (対象:長期ケア施設で亡くなった患者185名) (Hall et al., 2002) 23 23
身体症状に対するケア ■呼吸困難緩和のため薬物・非薬物療法を継続する ■苦痛症状の緩和に対するケアを継続する ■死前喘鳴に対するケア ●患者は意識が低下しており、苦しくないこと、必要以上 の吸引は苦痛をもたらすことを説明し、理解を得る ●体位の工夫(側臥位や顔を横に向ける など) ■眼球乾燥に対するケア ●開眼状態では、目の保湿のため点眼薬を使用する (大谷木, 2008) 24 24
死が差し迫った時期の患者に対するケアの留意点 ■最期まで人格を持った1人の人として接する ■安心できるような穏やかな声かけを行う ■患者の苦痛が最小限になるように、必要なケアを 精選し、それらのケアを継続して行う ■患者自身が苦痛を正確に伝えることができない 場合、表情や姿勢などからアセスメントを行う ■使用中の薬剤量の調整や薬剤の変更を検討する ■確実に投与でき、投薬に伴う苦痛が少ない方法を選 択する 25 25
死が差し迫った時期の家族に対するケア ■家族の意向を尊重する ■症状の変化や徴候に関して 家族に説明する ■家族ができることを伝える ■患者の聴覚は最期まで残っていることを説明し、 話しかけるように伝える ■家族が適宜休息がとれるように配慮する ■面会時間・環境の調整をする ■家族に待機してもらうのかを多職種で検討する 26 26
講義内容 臨死期とは 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ. 臨死期にある患者の急変時の対応 Ⅴ. 27 27
蘇生行為中の家族の立ち会い ■心理的要因へ良い影響を与える (心的外傷後ストレス障害症状を抑える、不安やうつ症状の軽減など)*院外心停止患者を対象とした研究 ■肯定意見には、文化などの影響の可能性もある ■家族の不利益となる場合もある (Jabre P et al, 2013) (Colbert Adler, 2013) (Osuagwu, 1991) 立ち会いに対する家族の意思を確認すること、 その場を支えること が大切である 28
患者の意思に沿うために ■患者の意思を尊重する ■急変時に患者の意思決定能力がない場合は、 下記について家族に確認する ■急変時に患者の意思決定能力がない場合は、 下記について家族に確認する ●アドバンス・ディレクティブやリビング・ウィル ●代理意思決定者 ●DNAR ■急変時に患者の意図しない対応がなされない ように、事前に患者・家族と話し合い、調整しておく 必要がある 29 29 29
講義内容 臨死期とは 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ. 死亡時 Ⅵ. 30 30
看取り ■家族の状況 ■家族への対応 ●家族は最期まで奇跡を願っていることが多く、取り乱す ことや医師の言葉の意味を理解できないことがある ●家族は最期まで奇跡を願っていることが多く、取り乱す ことや医師の言葉の意味を理解できないことがある ●臨終を告げられることにより、現実と向き合い、喪失の 悲しみを体感する ■家族への対応 ●現実に起こっていることを落ち着いて伝える ●家族が患者の一番近くにいられるように、機器類の 配置や医療スタッフの立ち位置に配慮する ●患者・家族のこれまでの経過に敬意をはらい、ねぎらう (阿部, 2008) (佐藤, 2008) 31 31
看取り後の対応 ■文化への配慮(例:伝統、しきたり、儀式など) ■家族が患者と過ごす時間の確保 ■家族に死後のケアへの参加意思を確認 ■文化への配慮(例:伝統、しきたり、儀式など) ■家族が患者と過ごす時間の確保 ■家族に死後のケアへの参加意思を確認 ■家族や親類への連絡の支援 ■臓器/組織提供・献体の意思の再確認と 関係機関への連絡 ■関係する医療スタッフへの連絡 ■検死の場合、家族への丁寧な説明と配慮 32 32
臓器/組織提供 ■臓器提供は、「脳死後」あるいは「心臓が停止した死後」にできる ■臓器提供は、「脳死後」あるいは「心臓が停止した死後」にできる ■2009年に「臓器の移植に関する法律」が改正(2010年に施行) ●親族への優先提供意思表示が可能 ●本人の臓器提供に関する拒否の意思がない場合、家族の承諾で臓器提供が可能 ●15歳未満の小児からの臓器提供が可能 改正された臓器の移植に関する法律の要点 (臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律)
臓器提供が開始されるには ■患者の書面による臓器提供の意思表示 ■家族からの希望 ■医療スタッフからの臓器提供への選択肢提示 ■医療スタッフからの臓器提供への選択肢提示 ●臓器提供における選択肢提示は、死後の事柄ではなく、通常の医療に加えて治療経過中の対応である
臓器提供がドナー家族の悲嘆に与える影響 肯定的側面 否定的側面 ●愛他的行為 ●故人の意思尊重 ●生命の永続 ●愛他的行為 ●故人の意思尊重 ●生命の永続 ●移植臓器を受け取った人からの感謝 ●故人の遺体を傷つける ●家族、親族内の葛藤 ●臓器提供の依頼、選択肢提示によるストレス ●手続きに関する問題 ●サンクスレターや報告に対する不満 ●周囲の反応 (中西, 2010)
ドナー家族への支援 ■家族が精神的危機状態に陥らないためのケア ●家族を気にかける、語る場を設けるなど ■家族の合意が得られるよう支援する ●家族を気にかける、語る場を設けるなど ■家族の合意が得られるよう支援する ●必要な情報を適切な時に提供する、意思決定の判断を 中立の立場で支援する ■家族の安寧を保証する ●待機場所の確保、日常生活を整える ■臓器提供時は昇圧剤使用やカニュレーションなど 侵襲的処置を行うこともあることを説明する (藤野, 2011)
講義内容 臨死期とは 患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと 死が近づいた時期(日単位) 死が差し迫った時期(時間単位) 臨死期にある患者の急変時の対応 死亡時 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. Ⅷ. 結論 Ⅶ. 37 37
結論 ■臨死期にある患者・家族の身体的、精神的、 社会的、スピリチュアルなニーズを把握し、 全人的ケアを行う ■臨死期にある患者・家族の身体的、精神的、 社会的、スピリチュアルなニーズを把握し、 全人的ケアを行う ■患者・家族が望む形で安楽と平穏、尊厳を 保って過ごせるように配慮する ■臨死期にある患者・家族のケアは、多職種と 連携して取り組む 38 38
補足スライド これ以降のスライドは、必要に 応じて使用してください 39 39
深い持続的鎮静の治療とケアの実際・1 <苦痛緩和のための鎮静に関する ガイドライン2010年版> 医学的適応の検討 1 ガイドライン2010年版> 1 医学的適応の検討 1) 「耐え難い苦痛」として考えられること せん妄、呼吸困難、過剰な気道分泌、痛み、全身 倦怠感、痙攣、不安、抑うつ、心理・実存的苦痛 2) 治療抵抗性の評価 3) 全身状態・生命予後の評価 患者・家族の希望の確認 1) 意思決定能力の評価 2) 患者と家族の意思が一致することが望ましい 2 (日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会, 2010) 40 40
深い持続的鎮静の治療とケアの実際・2 <苦痛緩和のための鎮静に関する ガイドライン2010年版> 3 鎮静の開始 ガイドライン2010年版> 3 鎮静の開始 1) 鎮静方法:持続的鎮静、あるいは間欠的鎮静 2) 鎮静水準:浅い鎮静、あるいは深い鎮静 第1選択薬は、ミダゾラム 鎮静開始後の患者・家族へのケア 1) 鎮静開始後の評価 2) 患者の尊厳に配慮したケアの継続 3) 家族へのケア 4 (日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会, 2010) 41 41
死が近づいた時期の患者に対するケアの留意点 ■安楽の保持 ●体位の工夫、清潔ケア、定期的な口腔ケア など ■処置・ケアの見直し ●患者の苦痛を最小限にする ■日常生活の援助 ●患者の尊厳を守る ■安全の確保 ●転倒のリスク、誤嚥のリスクに配慮する ●計画外抜去を予防するため、安全面に配慮する (豊田, 2008より一部抜粋) 42 42
死後のケア(エンゼルケア)・1 ■家族が最期のお別れをしてから、死後硬直が 始まる前に行う ■排泄物による汚染を予防し、外観を整える ■患者らしさを表現できるような衣類の着替えを 行う ■死後の儀礼 左前、たて結び、手を組む、末期の水、逆さ水 (佐藤, 2003) 43 43
死後のケア(エンゼルケア)・2 ● 頑張ってきたことを伝える など ■死化粧 ■家族への声かけ ■遺体の変化を予防する ●皮膚の乾燥を予防し、その人らしい表情や髪形 に整える ■家族への声かけ ● 頑張ってきたことを伝える など ■遺体の変化を予防する ●死後4時間以内に、下腹部、上腹部、胸部を 冷却する。腐敗の進行が激しいと予想される 場合は、前側頸部、鼠径部、腋窩部も冷却する (小林, 2011) (伊藤, 2009) 44 44
死後のケア(エンゼルケア)に対する家族の希望 がん患者の遺族435名を対象とした質問紙調査 ■遺族の42.7%が死後のケアの「改善が必要」と回答 ■遺族が考える死亡後の身体の問題 ●顔:浮腫(6%)、綿詰め(2.4%)、不自然な化粧(1.8%) ●身体:血液や排泄物の汚れ(1.8%)、悪臭(0.9%) ■遺族の50%以上が好ましくないと考えるケア ●手を組むための固定、口を閉じるための固定 など ■遺族が好ましいと考えるケア ●適度な化粧、生前の面影に近づける (Shinjo T et al., 2010b) 45 45
看護師が家族と一緒に行う死後のケア(エンゼルケア) がん患者の遺族598名を対象とした質問紙調査 ■遺族の40%(219名)が実際に看護師と一緒に遺体 へのケアを行っていた ■遺体へのケアの内容 ●穏やかな表情にしてくれた ●亡くなった後でも生前と同じような配慮や扱いをして くれた など ■遺族の体験や気持ち ●身体をきれいにすることができてうれしかった ●お化粧をして、穏やかな表情にしてあげられてよかった など (山脇, 2013) 46 46
臨死期のケアプログラム ■臨死期のケアプログラムとして、英国で作成されたリバプール・ケア・パスウェイ(LCP)がある 試用・評価が進められている ■LCPの目標: 患者・家族が、安楽に、安心して、臨死期を過ごすために、必要なケアが確実に受けられること ■看取り前後の時期に、医療スタッフが確認しておくべき事項をチェックリスト形式で確認する (Ellershaw J & Wilkison S, 2003) (茅根, 2007) (LCP日本語版HP) 47 47
リバプール・ケア・パスウェイ(LCP) <使用基準> ●患者が寝たきりの状態である ●半昏睡、意識低下が認められる 多職種チームが予後数日と判断し、かつ、 ●患者が寝たきりの状態である ●半昏睡、意識低下が認められる ●ごく少量の水分しか口にできない ●錠剤の内服が困難である ※ 上記2項目以上が該当する場合に適用できる (茅根, 2007) 48 48
臨終時の法的手続き 死亡届 7日以内 市区町村役場 年金受給停止手続き 10日以内 社会保険事務局 国民健康保険資格喪失届 14日以内 期限 提出先 死亡届 (死亡診断書・死亡検案書) 7日以内 市区町村役場 年金受給停止手続き 10日以内 または 社会保険事務局 国民健康保険資格喪失届 14日以内 介護保険の資格喪失届 世帯主の変更届 49 49
臓器提供の機会があることを伝え、承諾手続きはコーディネーターによる説明があることを伝える 法的脳死判定の際の標準的手順 治療/虐待でない 虐待の疑いがないことの確認 (18歳未満) 臓器提供はしない no yes 脳死とされうる状態 深昏睡、瞳孔散大/固定 脳幹反射、平坦脳波を確認 no yes 臓器提供の機会があることを伝え、承諾手続きはコーディネーターによる説明があることを伝える 家族へのオプション提示 no yes コーディネーターの 家族への説明 臓器提供及び脳死判定を 拒否する意思がないことを確認 no yes 承諾 成人、小児脳死判定基準 (生後12週以上6歳未満) 判定間隔24時間以上 no yes 法的脳死判定(2回) (横田裕行, 2011)
臓器移植における国内の現状 ■2010年(平成22年)改正法施行後、脳死下臓器提供の件数は上昇しているが、臓器移植総数には大きな増加は みられていない (厚生労働省HP臓器移植の現状より抜粋)