これからの社会福祉士に求められる視点=地域主義 小林正弥(2010) 『友愛革命は可能か 公共哲学から考える』平凡社新書より
身近なところで起こっていること 「空き家」「猫屋敷」の増加 深刻な高齢化と「まちの不活性化」 子どもの貧困や人間関係的貧困 競争主義や成果主義から撤退を強いられる
社会福祉士の専門性 倫理綱領に指針化・具体化 専門職として自らの限界を知ること ≒適任性の理解、アイデンティティの確立 ≒適任性の理解、アイデンティティの確立 日本型ソーシャルワーカー=社会福祉士は、社会システムとして、どのような方向性の中で、必要とされているのか
1つの答えとして「地域主義」 「今、ここで起きていること」へ着目 =ローカルに、地元で 実践のチェック =倫理綱領やグローバルスタンダードで =ローカルに、地元で 実践のチェック =倫理綱領やグローバルスタンダードで * 地域主義をソーシャルワークの思想に
小林の見解を 拠り所に 友愛とは 兄弟の間の情愛 友人に対する親愛の情。 p34 友愛とは 兄弟の間の情愛 友人に対する親愛の情。友情。友誼 博愛とは ひろく愛すること。平等に愛すること。 『広辞苑』第5版 友愛はギリシャの「フィリア」に、博愛はキリスト教の「愛」に近い。
「友愛」が求められる背景 伝統的な公共の領域は衰弱し、人々からお互いの絆が失われ、公共心も薄く弱くなった。 公とは、かっての町内会活動や今のNPO活動のような相互扶助的な活動も含めて、「新しい公共」ととらえられるようになった。 p88 友愛は今日では「グローバル化する現代資本主義の生き過ぎを正し、伝統の中で培われてきた国民経済との調整をめざす理念」である。つまり、ネオ・リベラリズムの強調するグローバリズムの行き過ぎを批判する理念。 国民経済の重要性を認識して、グローバル化する現代資本主義と国民経済との調整をめざす理念が「友愛」である。 グローバリズムによって切り捨てられてきた「経済外的な諸価値に目を向け、人と人との絆の再生、自然や環境への配慮、福祉や医療制度の再構築、教育や子どもを育てる環境の充実、格差の是正」などに取り組むことを、「これからの政治の責任(鳩山)」と指摘。 「伝統的な公共の領域は衰弱し、人々からお互いの絆が失われ、公共心も薄弱になった」。そして、「公はかっての町内会活動や今のNPO活動のような相互扶助的な活動を指し」、今ではNPOなどの非営利活動、公共領域の非営利的活動、市民活動、社会活動が大きな社会的役割を担っており、「共生」の基盤である
国家 VS 市民 フランス革命における「友愛」 鳩山由紀夫首相の所信表明演説 自由 平等 友愛(博愛) p44 国家 VS 市民 フランス革命における「友愛」 自由 平等 友愛(博愛) 鳩山由紀夫首相の所信表明演説 p44 フランス革命における「友愛」という観念 自由 平等 友愛(博愛) 地域主権 主権という概念は、近代の政治学では国家に対して使う言葉であり、国家が唯一絶対なる主権を持っているとされることから、地域主権国家という表現は、通常の主権概念とは違う。 鳩山の所信表明演説全文
リベラリズムの「正義」 と 人間関係の「ケア」 リベラリズムの「正義」 と 人間関係の「ケア」 ケアの倫理は、友愛の倫理、さらには愛の理念と密接不可分である。 ケアとは、愛の実践の表れとすら言える。 友愛の理念=福祉における精神性の重視。 福祉はただ、物質的な福祉だけではなく、 内的な問題、幸福の問題とも関連し、 双方を考慮する。 政治哲学では、リベラリズムの「正義」の倫理だけでは不十分で、人々に配慮して助けるという「ケア」の倫理が注目されている。 「正義」が男性中心的倫理であるのに対し、「ケア」の倫理は人間関係を重視するような女性的倫理である。 ケアの倫理は、友愛の倫理、さらには愛の理念と密接不可分である。 ケアとは、愛の実践の表れとすら言える。 友愛は福祉の公共哲学を支える理念でもある。 友愛の理念では、福祉における精神性が重視され、福祉はただ、物質的な福祉だけではなく、内的な精神性の問題、幸福の問題とも関連し、双方を考慮する必要がある。
相愛扶助 ・ 公共 ・ 共同 1921年、友愛会(鈴木文治)の綱領 1、我等は互いに親睦し、一致協力して相愛扶助の目的を貫徹せんことを期す。 2、我等は公共の理想に従い、識見の開発、徳性の涵養、技術の進歩をはららんことを期す。 3、我等は共同の力に依り、着実なる方法を以て、我等の地位の改善をはからんことを期す。 1921年、友愛会(鈴木文治)の綱領 p112 1921年、友愛会(鈴木文治)の綱領 相愛扶助、公共、共同 1、我等は互いに親睦し、一致協力して相愛扶助の目的を貫徹せんことを期す。 2、我等は公共の理想に従い、識見の開発、徳性の涵養、技術の進歩をはららんことを期す。 3、我等は共同の力に依り、着実なる方法を以て、我等の地位の改善をはからんことを期す。 友愛会の名称の由来は、イギリスのフレンドリー・ソサエティから。 当時、労働組合が団体禁止法で弾圧されていたために、親睦的な共済を目的とする友好・互助団体として結成。
賀川豊彦の「友愛」運動 1、我等農民は知識を養い技術を磨き特性を涵養し、農村生活を享楽し農村文化の完成を期す 2、我等相愛扶助の力に依り相信じ相依り農村生活の向上を期す。 3、我等農民は穏健、着実、合理合法なる方法を以て共同の理想に到達せんことを期す 「友愛公共運動」の特徴:日本農民組合綱領 賀川豊彦 労働組合運動→農業組合運動→協同組合運動 いずれも独特のキリスト教的観点から活動を行う・・・「愛の公共哲学」 日本農民組合綱領 1、我等農民は知識を養い技術を磨き特性を涵養し、農村生活を享楽し農村文化の完成を期す 2、我等相愛扶助の力に依り相信じ相依り農村生活の向上を期す。 3、我等農民は穏健、着実、合理合法なる方法を以て共同の理想に到達せんことを期す 「友愛公共運動」の特徴 友愛・相愛などの愛 公ではない公共 「共に」という共同 徳性・文化 技術・知識
友愛コミュニタリアニズム コミュニタリアニズムは「善」をはじめとする倫理性や共同性を重視する思想 コミュニタリアニズムでは、コミュニティごとに善や美徳などの考え方が違うということを想定して、コミュニティの文脈を重視するので、普遍的な倫理や規範を成立させることができないと批判される。 友愛という観念は、さまざまなコミュニティで広く共有されているから、友愛は普遍的な理念である p198 友愛コミュニタリアニズム リベラリズムが個人主義的で「諸価値に関して政府は中立的であるべきだ」 コミュニタリアニズムは善をはじめとする倫理性や共同性を重視する思想 コミュニタリアニズムは、特定のコミュニティの中で人格形成の目標として善の実現をめざすという人間像を想定している。 このような人間は、伝統・価値などのもとで美徳の会得による人格形成を目指すという点で、「負荷ありき自己」である。 コミュニタリアニズムでは、コミュニティごとに善や美徳などの考え方が違うということを想定して、コミュニティの文脈を重視するので、普遍的な倫理や規範を成立させることができないと批判される。 リベラリズムは、権利やそれを中心とする「正義」を普遍主義的な概念と考え、どのコミュニティにおいても守るべきものとする 友愛コミュニタリアニズムは、友愛という観念はさまざまなコミュニティで広く共有されているから、友愛は普遍的な理念であるという。 「友愛ないし愛の理念は、どのコミュニティにおいても、どの精神的伝統においても存在するから、これに関しては普遍的な理念と考えることができる」 その他のさまざまな理念は、コミュニティの場所、性格、時代などによって変化する。だから、それらは特定のコミュニティの内部において成立している「濃密な倫理」である。
グローカル公共哲学 友愛コミュニタリアニズムは、地球的ないし「グローカル」(グローバルかつローカル)な公共哲学のもとで、グローバル・ナショナル・ローカルというような多層的なコミュニティを想定し、人間は多層的なアイデンティティーをもつべきであると考える。 日本語で「共同体」というと、「同」という言葉が含まれているので、同質性を強調・強制する閉鎖的で抑圧的な前近代的な共同体を連想しやすい。 →「同」を「和」に。「共和体」 友愛コミュニタリアニズムは、地球的ないし「グローカル」(グローバルかつローカル)な公共哲学のもとで、グローバル・ナショナル・ローカルというような多層的なコミュニティを想定し、人間は多層的なアイデンティティーをもつべきであると考える。 かつての近代的共和主義のように、ナショナル(国民的)な友愛だけではなく、グローバルな友愛、されにはローカルな友愛も存在し、「多層的な友愛」を考えることが必要 日本語で「共同体」というと、「同」という言葉が含まれているので、同質性を強調・強制する閉鎖的で抑圧的な前近代的な共同体を連想しやすい。 「共同体」ではなく、解放的で自由な性格を表すために、コミュニティということも多い。
君子は和して同ぜず 論語(子路篇)「君子は和して同ぜず」 =理想として、同質性の強制を伴わない 調和を目指すべきであるという。 =理想として、同質性の強制を伴わない 調和を目指すべきであるという。 「小人は同じて和せず」であり、本当の調和なしに同質性を受け入れるのは好ましくないとされている。 同質性を強制せずに異質性・多様性を尊重する調和としての「和」を「公共的和」と呼ぶ。 論語(子路篇)では「君子は和して同ぜず」とあり、理想としては同質性の強制を伴わない調和を目指すべきであるという。 「小人は同じて和せず」であり、本当の調和なしに同質性を受け入れるのは好ましくないとされている。 同質性を強制せずに異質性・多様性を尊重する調和としての「和」を「公共的和」と呼ぶ 「共同体」ではなく「共和体」 コミュニタリアニズムの観点からすれば、日本に地方主権を実現して、それとともに限定的多文化主義を導入し、さらに多中心主義的にすることが望ましい。 平和問題は日本一国の平和だけを考えるのではなく、「地球的平和」を実現するための方策を考える必要がある。 アフリカをはじめとする世界の人々の貧困問題を考える必要性を主張し、それを「地球的福祉」と呼ぶ。 地球人としてのアイデンティティを育成するためには「地球的教育」が大切である。
友愛と福祉政策 「福祉の基礎づけをどのように考えるのか」 =政治哲学や公共哲学の大きな課題。 まだ決定的な考え方はない。 「友愛」⇒「連帯」 =政治哲学や公共哲学の大きな課題。 まだ決定的な考え方はない。 「友愛」⇒「連帯」 =「連帯による福祉」という根拠付けが今も。 リベラリズム優位の現在、ロールズの「正義」が福祉政策を正当化している。 が、友愛コミュニタリアニズムの観点から、 「友愛による福祉」という考え方のほうが自然!? 福祉-ケアの倫理と地球的友愛 友愛の観念は福祉政策の充実に大きな役割を果たす 「福祉の基礎づけをどのように考えるのか」というのは政治哲学や公共哲学では大きな課題であるが、まだ決定的な考え方はない。 「友愛」という理念は、「連帯」という概念にその後変形され、今でも連帯による福祉という根拠付けがときに使われている。しかし、この論理はもっと人間の愛に基づいて発展させる必要がある。 リベラリズム優位の現在、ロールズの「正義」が福祉政策を正当化しているが、友愛コミュニタリアニズムの観点からすると、友愛による福祉という考え方のほうが自然である。
福祉の原点 同胞である他者を助けようという「愛」であり、「友愛」である。 友愛は、家族や地域コミュニティやNPO・NGOなどを支える理念でもある。 福祉は、国内福祉に限定されるものではなく、地球的観点から考えるべき。 世界の貧困問題は実に深刻であり、飢餓で子どもたちが死んでいる。 福祉の原点 同胞である他者を助けようという愛であり、友愛である。 友愛福祉 福祉に携わる人々や機関が、友愛福祉の理念、愛による福祉という理念を改めて銘記し、そのような福祉を実現するように意識を改革する必要がある。 友愛は、家族や地域コミュニティやNPO・NGOなどを支える理念でもある。 福祉は、国内福祉に限定されるものではなく、地球的観点から考えるべき。 世界の貧困問題は実に深刻であり、飢餓で子どもたちが死んでいる。
市民性の教育 世界で拡大している多文化状況に対する対応として、多文化主義的な教育を行うこと。 少数派の文化に対する尊重の気持ち コミュニタリアニズムにおける多文化主義を、教育に反映するものであり、「地球的友愛」の教育 その際、それぞれの文化の独自性の尊重と、民族や文化を越えて、すべての人が地球人として、同胞であることを教える。 「新しい公共」と関連した「市民性の教育」 世界で拡大している多文化状況に対する対応として、多文化主義的な教育を行うこと。 その基礎は、少数派の文化をはじめ他の文化に対する尊重の気持ちを養うことである。 これは、コミュニタリアニズムにおける多文化主義を教育に反映するものであり、地球的友愛の教育にもなろう。 その際には、それぞれの文化の独自性の尊重と同じに、民族や文化を越えて、すべての人勝ち求人としての同胞であることを教える必要があろう。
公共民教育 人々が自主的に政治に参加して自治を行うことができるようにする教育 共和主義的教育の中心的目的 愛や友愛の理念は、およそあらゆる宗教・倫理やコミュニティにおいて普遍的に存在するから、これは特定の価値観ではなく、万人に適用できる普遍的なものである 「公共民教育」 人々が自主的に政治に参加して自治を行うことができるようにする教育 共和主義的教育の中心的目的 愛や友愛の理念はおよそあらゆる宗教・倫理やコミュニティにおいて普遍的に存在するから、これは特定の価値観ではなく、万人に適用できる普遍的なものである
グローバル・シンキング、 ローカル・アクト グローバル・シンキング、 ローカル・アクト 考える視点や射程、チェックする尺度 =グローバル・シンキング 文化・生活に根ざす問題への対応、効果測定 =ローカル・アクト