技術経営戦略学専攻教授 システム創成学科(知能社会システム) 元橋一之

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技術経営戦略学専攻教授 システム創成学科(知能社会システム) 元橋一之 http://www.mo.t.u-tokyo.ac.jp/ なぜ戦略が必要か? 技術経営戦略学専攻教授 システム創成学科(知能社会システム) 元橋一之 http://www.mo.t.u-tokyo.ac.jp/

目次 日本の産業競争力の現状 サイエンス経済時代の到来と特徴 日本のイノベーションシステムの特徴と動向 企業におけるオープンイノベーションの動き イノベーションエコシステムの重要性 イノベーション政策のあり方

日本の競争力低下?(IMDの世界競争力指標) 評価軸の変化: 「製品の質」、「友好的な労使関係」、「自動化技術」、「官民連携」          →「従業員の国際経験」、「グローバル化態度」、「シニアマネジャーの質」           「政府機関の透明性」、「経済社会の改革」

製品別に見た貿易特化指数 (貿易黒字額/総貿易額)

経済発展の国際比較(GDPシェア) (1990年購買力平価ドル) (Angus Maddison, Long term economic growth database)

一人当たりGDP(1000ドル・対数スケール) 米国 英国、スペイン 日本 韓国、ブラジル タイ、エジプト 中国、インド

新興国経済シェアの高まり 元橋一之『日はまた高く 産業競争力の再生』(日本経済新聞社)

グローバル経済への対応 元橋一之『グローバル経営戦略』(東京大学出版社)

競争力の源泉(生産要素)と経済の特徴 農耕経済 (17世紀まで) 工業経済 (18世紀~20世紀) サイエンス経済(*) (21世紀) 競争力の源泉となる生産要素=経済成長の源泉 労働力・土地 資本設備・工業技術・輸送インフラ 高度知識人材・サイエンス(汎用技術)・ITインフラ 外的要因 産業革命によって、機械(資本)が人力を代替 サイエンス革命(IT,バイオ、ナノテク)、新興国のキャッチアップ 一人当たりGDPのパターン 国間格差なし: 人口=GDP 国間格差の拡大:工業技術、インフラ整備の普及プロセスの差 国間格差の収斂 サイエンス経済、投資貿易レジーム(WTO等)→キャッチアップ速度の上昇 (*)自然科学に関する科学的知見だけでなく、社会現象を科学的に究明し、それを 経済価値化していく活動がベースになる経済社会システム

イノベーションプロセスの変化 ユーザー・社会 ユーザー・社会 科学的発見 (IT、バイオ、ナノ) 製品・技術(知財) 技術的発見(発明) ビジネスイノベーション プロセスイノベーション 製品・技術(知財) 技術プラットフォーム(製品・技術群) プロダクトイノベーション サイエンスベースイノベーション 技術的発見(発明) (蒸気機関、鉄道、電力システム) 科学的発見 (IT、バイオ、ナノ)

モノづくり→ビジネスモデル構築 ソリューション 顧客ニーズ 顧客ニーズ 顧客ニーズ 顧客ニーズ モノ モノ モノ 技術プラットフォーム(自社+他社) 自社技術 サイエンス基盤

ビジネスイノベーション:顧客(企業)との協業 サイエンス経済のイノベーションの特徴 工業経済時代 サイエンス経済時代 プロダクト+プロセス サイエンス+ビジネス 技術プッシュor市場プル ビジネスモデル設計(価値デザイン) (技術に裏付けされた)モノづくり (サイエンスに裏付けられた)コトづくり 自前主義(自主開発) オープンイノベーション サイエンスイノベーション:産学連携 ビジネスイノベーション:顧客(企業)との協業 事例 ・ コマツのコムトラックス(ビッグデータの活用) ・ アパレル分野におけるユニクロと東レの協業 顧客にとっても「価値(意味)」を科学的に分析(データサイエンス)+先進技術(サイエンス)による差別化

コマツのビッグデータ活用

工業経済時代の技術経営(MOT、TM) 市場(現状の消費者ニーズ) 市場(現状の消費者ニーズ) 技術プッシュ 市場プル 自社内技術(知財、ノウハウ) 自社内技術(知財、ノウハウ)

サイエンス経済時代の技術経営戦略(TMS) 経済・社会(顧客ニーズ)の変化と不確実性の増大 ビジネスイノベーター (B2Cキーストーン企業) 顧客価値の把握(製品機能→意味的価値、Unmet Needs) 収益モデル(モノ→ソリューション) Key Stone(B2C) Key Stone (B2B) 技術プラットフォーマー (B2Bキーストーン企業) 技術シーズドリブン→事業ドリブン(リードカスタマーの動向)を 固有技術→オープンイノベーションも活用した技術プラットフォーム

まとめ サイエンス経済→非連続的イノベーションの位置づけが上昇 資本主義の多様性:日本は経済取引における関係重視型(市場メカニズム+α)→イノベーションの比較優位:漸進的(例:自動車)>非連続的(例:エレクトロニクス、製薬) 日本企業の戦略転換:自前主義・モノ中心モデル→オープンイノベーション・顧客価値(ソリューション)モデル エコシステムを前提としたイノベーション戦略の重要性 民間企業のエコシステムを生成支援を目指したイノベーション政策のあり方

工業経済モデル→サイエンス経済モデル、その中でのビジネスイノベーションに関するオープンイノベーション、技術経営戦略にあり方については、拙著(2014年2月刊行)も参考にしてください。