「生きがいについて」 -H・R活動の中でのとりくみ- その2

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「生きがいについて」 -H・R活動の中でのとりくみ- その2 京都教育大学教育実践研究年報 第13号 1997 「生きがいについて」 -H・R活動の中でのとりくみ- その2 京都教育大学附属高校 川村康文 C114614 倉田亮輔 1996年9月30日受理

はじめに 約10年 「生きがいについて」-H・R活動の中での とりくみ-その1(川村、1988a) とりくみ-その2 学習の結果

「いじめ」、「自殺」、「不登校」、「若者の科学離れ」 論文が書かれた当時の状況 ・論文が書かれた当時の教育現場 「いじめ」、「自殺」、「不登校」、「若者の科学離れ」 ・高校理科の内容 物理 化学 地学 生物 枠組み・内容ともに 変化なし 意識の差 ・生徒が理科学習で学びたいと思う内容               ・・・「地球環境問題について」

HR活動の中で行った「生きがい」についての学習の報告   構成主義学習論・・・生徒は学習前から個々の                考え方を構成しており、その 考え方を判断基準として次の 学習を行っている ・理科の授業・学習理論(川村、1996) HR活動でも構成主義 学習理論を授業理論に  HR活動の中で行った「生きがい」についての学習の報告

「生きがいについて」 -H・R活動の中でのとりくみ-その1 より ・1987年当時の高校生の状況 「高校に入れたんだから、楽しく過ごしたい。けれど、日々の勉強とか、大学入試とかで不安だらけで、どうしていいのか悩んでしまう。」 ・自立ができていない ・将来の展望がない ・職業観がない ・テストの点が第一 ・塾や予備校に ⇒ 生命保険のように 1976年頃(川村先生が高校生の頃)や1995年頃 (論文執筆の頃)、そして今になっても変化なし

2つの観点 高校生が学校社会でのびのびと過ごすために必要なもの・・・学力 ・①なぜ学力が切り札か ・②どうすれば学力をつけさせる ことができるのか 2つの観点 ①の観点 学力不振から学校社会への帰属意識が希薄に 授業を理解でき、学習を継続できる学力 ②の観点 生徒は教師の授業を評価して行動 生徒が積極的に授業に参加しようと思う授業をする必要性

「生きがい」についてのとりくみ 生徒との面談資料、保護者との面談資料としての役割 ・生活時間割表の利用     ・・・家庭での学習状況の把握やアドバイス 学習支援と生徒の学力保障 ・生活時間割表の運用 生活時間割表を2部作成 担任用・・・クラス作りに利用 生徒用・・・本人が利用 生徒との面談資料、保護者との面談資料としての役割

平成6年度(1994年)のクラス ・・・健全で普通のクラス 生徒の自治能力を高めるのに効果的           ・・・健全で普通のクラス 生徒の自治能力を高めるのに効果的 平成7年度(1995年)のクラス・・・理科系の大学進学                      希望者が多数で余 裕がない状態 2学期に入り飲酒事件 ・生活時間割表を活用してクラスの立て直し ・「生きがいさがし」、「自分さがし」に積極的な指導

HR討議によってクラスの連帯と個人の自立を目指す 「生きがいさがし」のカリキュラム計画 第1回:「生きがい」についての調査(事前調査) 第2回:「生活時間割表」の作成 第3回:クラス討議「いまどきのまじめとは」 第4回:クラス討議「自分にとっての職業とは」 第5回:クラス討議「自分は大学で何をしたいのか」 第6回:クラス討議「死ぬときに自分は何を語るだろうか」 第7回:クラス討議「自分の子供にはどのような人生を歩ませたいか」 第8回:クラス討議「自分の親を見て何を感じるか」 第9回:クラス討議「まわりの大人たちへの要望」 第10回:「生きがい」についての再調査(事後調査) HR討議によってクラスの連帯と個人の自立を目指す

「生きがい」についての調査(事前調査) 実験群 ・男子20名、女子24名 計44名(1つのHRに所属) ・理科系に進学希望 調査対象:京都教育大学附属高校の2年生78名 (男子41名、女子37名) 調査時期:1995年9月19日~9月28日 調査方法:「「生きがいについて」-H・R活動の中でのとりくみ-その1」 を読んで        3つのテーマに対して自由記述        ①自分にとっての「生きがい」について述べよ        ②「高校生とは」について述べよ        ③「「生きがいについて」-H・R活動の中でのとりくみ -その1」 を読んでの雑感 実験群 ・男子20名、女子24名  計44名(1つのHRに所属) ・理科系に進学希望 ・理科系物理の選択履修者 統制群 ・男子21名、女子13名  計34名(4つのHRに所属) ・非理科系に進学希望 ・文科系物理の選択履修者

「生きがい」についての事前調査結果 項目 男・実 女・実 男・統 女・統 必要でない 必要であるがもっていない または、見つからないでいる 10.0(2) 12.5(3) 4.8(1) 0.0(0) 必要であるがもっていない または、見つからないでいる 15.0(3) 37.5(9) 47.6 (10) 46.2(6) 高校生活の中に見出している 8.3(2) 15.4(2) 高校生活以外の現在の生活の中に見出している 5.0(1) 自己実現の過程の中に見出している 40.0(8) 28.6(6) 将来の職業の中に見出している 25.0(6) わからない 4.2(1) 33.3(7) 自分と関連付けて答えていない または、避けている

いじめにあってきた生徒の事例 事例1:「生きがいとは、その人が生きていてよかった と思えるようなことだと思う」      「高校生とはある定義された年代の集まりである」 事例2:「はっきり言って分かりません」      「いろんな事を経験する時、その他いろいろ、      はめをはずすのは今のうちじゃないですか」 クラスリーダーや成績上位者と比較すると、ドライで 情熱的な文章ではない ⇒ いじめられる生徒に対するフォローの手がかりは   「自己について表現したいという思いの強さに   ある?」

クラス討議 第3回:クラス討議「いまどきのまじめとは」 第4回:クラス討議「自分にとっての職業とは」 班分け:6班(7~8人)      班長:班討議の司会、クラスへの発表      書記:班討議の記録、クラスからのコメント           の整理等 班討議:15分 クラスへの発表:2分 フロアーからの意見:1~2分 第3回:クラス討議「いまどきのまじめとは」 第4回:クラス討議「自分にとっての職業とは」 第5回:クラス討議「自分は大学で何をしたいのか」 第6回:クラス討議「死ぬときに自分は何を             語るだろうか」

生きがいさがし第3回「いまどきのまじめとは」 11月30日 木曜日 生きがいさがし第3回「いまどきのまじめとは」 ・自由討論 3つの観点 ① 授業態度について ② 生活態度について ③ 他人の振り見て我が振り直せ ・「一生懸命授業に臨む」、「遅刻をしない」 ・「授業をさぼらないだけがまじめじゃない」、  「先生のじゃまをしない」、「先生に好かれる」 ⇒教師・生徒間の関係を構築する取り組みの必要性

生きがいさがし第4回 「自分にとっての職業とは何か」 「生きがい」をテーマとして意識 1月25日 木曜日 ・「生きていく手段」 1月25日 木曜日 生きがいさがし第4回 「自分にとっての職業とは何か」 ・「生きていく手段」 ・「いやいややるんじゃなくって、自分の好きなことや他  の人に誇れることをしたい」 ・「自分の能力を生かす」 ・「個性を生かす」 ・「人生を決めるもの」 ・「どんなにお金があって一生働かないで暮らせるほど   裕福でも仕事はつきたい」 etc… 「生きがい」をテーマとして意識

生きがいさがし第5回 「死ぬときに自分は何を語るだろうか」 生物学的な生死の話にとどまり、「人として」の生死には意識が向かなかった 2月8日 木曜日 生きがいさがし第5回 「死ぬときに自分は何を語るだろうか」 ・死に方も含めた自分の死について ・「残った家族の健康を祈って死ぬ」 ・「遺産をきちんと分けるようにいう」 ・「事故死では語れない」 ・「ずっと愛していた・・・・・・」と言う ・「痛くなく死にたい」 ・「老衰で死にたい」 etc… 生物学的な生死の話にとどまり、「人として」の生死には意識が向かなかった

「生きがい」についての調査(事後調査) 事前・事後、および実験群・統制群での 差をカイ自乗型要因分析によって確認 調査対象:事前調査と同じ 調査時期:1996年3月15日~3月18日 調査方法:自由記述        「これまでの生活を振り返って、自分にとっての生きがいについて        記述して下さい」        実験群 ・HRで3回「生きがい」に ついてクラス討議を行った 統制群 ・HRで「生きがい」について  討論等をしていない 事前・事後、および実験群・統制群での 差をカイ自乗型要因分析によって確認

「生きがい」についての事前調査結果 事前・事後、群間で有意差なし 項目 男・実 女・実 男・統 女・統 必要でない 必要であるがもっていない 0.0(0) 4.8(1) 7.7(1) 必要であるがもっていない または、見つからないでいる 25.0(5) 25.0(6) 38.1(8) 15.4(2) 高校生活の中に見出している 5.0(1) 29.2(7) 23.1(3) 高校生活以外の現在の生活の中に見出している 4.2(1) 自己実現の過程の中に見出している 70.0(14) 54.2(13) 42.9(9) 69.2(9) 将来の職業の中に見出している 12.5(3) わからない 自分と関連付けて答えていない または、避けている 事前・事後、群間で有意差なし

おわりに 教育も自然になされるのが一番 自然とは ⇒放任でもなく管理も しない ・農法だけではなく、教育や 人生への考え方まで 自然農法わら一本の革命 (福岡正信、1983) http://www.amazon.co.jp/gp/product/images/4393741412/ref=dp_image_0?ie=UTF8&n=465392&s=books

今後の展望 「生きがい」・・・生徒が学校を卒業してからも、 人生を自分で決定していくため に必要なもの 自分の生きがいとはなにか           人生を自分で決定していくため に必要なもの 自分の生きがいとはなにか ⇒教師としての職務を全うすること   ・教科指導   ・生徒指導   ・校務etc… 生徒が自立し、人生について深く考えられるような指導ができる教師を目指す

参考文献 ・川村康文 「生きがいについて-H・R活動の中でのとりくみ-その1」、京都教育大学教育実践研究年報、1988a、pp.181-196 ・川村康文 「生活時間割表を利用しての家庭学習指導について」、京都教育大学附属高校研究紀要第44号、1988a、pp-141-158 ・川村康文 「構成主義的アプローチをふまえた理科の教授・学習過程に関する一考察」、京都教育大学附属高校研究紀要、1966、pp51-69 ・倉智佐一 「教育統計法要説」協同出版社、1973、pp148-149 ・福岡正信 「自然農法わら一本の革命」春秋社、1983、pp260-261

ご清聴ありがとうございました