すでに 知っているかも 知れないけれど・・・ 相続の知らない話
認定医療法人と 納税猶予制度
(公益性の高い医療サービスを提供する法人) 医療法人制度の現況 地下1階 経過措置法人 (これまでの持分に応じて 払い戻す一般の医療法人。 特に一人医師医療法人) 1階 拠出金制度の医療法人 (これまでの出資額限度法人 +財団および出資持分の 定めの無い医療法人) 2階 社会医療法人 (公益性の高い医療サービスを提供する法人) 合計 215 財団 34 社団 181 (特定医療法人) 375 財団 46 社団 329 一般の持分なし医療法人 7,823 財団 311 社団 7,512 基金拠出型医療法人 6,202 基金なし医療法人 1,310 経過措置型医療法人 出資持分 なし あり 社団 41,476 出資額限度法人 268 一般の医療法人 41,208 83.4% 持分ありの 一人医師医療法人数 約36,973 (H19.3月末) 厚生労働省「医療法人数」 H26.3末現在 3 3
経過措置型医療法人の出資金における問題点 医療法人は営利を目的としないと言う考えから 配当が禁止されている (医療法54条) 【負債の部】 【純資産の部】 出資金 【資産の部】 貸借対照表(B/S) 【負債の部】 【純資産の部】 出資金 利益剰余金 【資産の部】 貸借対照表(B/S) 【負債の部】 【純資産の部】 出資金 利益 剰余金 【資産の部】 財産評価基本通達に よって出資額を評価。 持分に応じた額を 相続財産に加える 出資者(理事長)の死亡 相続財産 が巨額になる 納税・分割問題。納税猶予は「持分なし」移行が前提。 毎年の 利益 出資者が途中で退社 出資額に応じての 持分を時価で払戻し 払い戻し額が巨額になる 毎年の 利益 医業存続問題。金庫株(出資分)の買取りはできない。
「持分あり」→「持分なし」移行 持分あり 持分なし 医療法人 「持分あり」から「持分なし」への移行手続きは定款変更だけで済む。具体的には 既存法人の定款にある財産権の部分を削除し、解散時の財産は国等に帰属する旨、定款を変更。 持分あり 医療法人 持分なし 移行 出資分 含み益部分 課税問題あり! 社員の持分の放棄 により税負担が 不当に減少する ことになる場合は、法人を個人とみなして、贈与税が課税される (相続税法66条4項)
経過型医療法人(持分あり) →持分なし医療法人への移行時の課税問題 社員の持分放棄に伴う、医療法人への贈与税課税の問題 出資持分あり(社団) 出資持分なし(社団) 膨らんだ 出資額(社員の持分) 出資額 移行 法人を個人とみなして 贈与税を課税 相続税法第66条4項 死 亡 移行により 相続税負担が不当に減少 したとみなす 不当に減少したと みなされなければ、 贈与税は課税されない! 一定の要件あり 本来は社員の死亡により相続人に相続税が課税 相続税法第66条4項 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合において、当該贈与又は遺贈により贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の、相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについては、当該法人を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課する
「持分なし」医療法人移行への贈与税課税されない要件 【相続税法施行令第33条3項】 贈与又は遺贈により財産を取得した持分の定めのない法人が、次に掲げる 要件を満たすときは、相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められないものとする 1.寄附行為、定款又は規則において、その役員等のうち親族関係を有する者及びこれらと次に掲げる親族等の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも3分の1以下とする旨の定めがあること -中略- 2.当該法人に財産の贈与若しくは遺贈をした者、当該法人の設立者、社員若しくは役員等又はこれらの者の親族等に対し、特別の利益を与えないこと 3.その寄附行為、定款又は規則において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体等に帰属する旨の定めがあること 4.当該法人につき法令に違反する事実等公益に反する事実がないこと 一人医師医療法人などの小規模な医療法人にとって 実質的に上記要件を満たすことは難しい
平成27年現在の 「経過措置型医療法人」の選択肢は3つ! 【出資持分あり社団医療法人】 持分の払い戻し請求により莫大な支払い 理事長の 死亡により、莫大な相続税課税 ① そのまま経過措置型医療 法人で存続 持分ありのまま ② 定款変更により、「持分なし」医療法人に直ちに移行 ③ 「認定医療法人」になる(H26.10.01~H29.09.30まで) 持分なしへ移行 役員1/3要件・解散時財産の国庫・利益 提供なし等の要件クリアで贈与税課税なし。 認定期間内の持分放棄による贈与税や、相続発生における相続税に対して納税猶予が使える。認定後3年以内に持分放棄により、猶予税額が免除になる。「持分なし」医療法人へ移行するための時間かせぎの手段。 平成26年10月 1日から新しい 制度がスタート
認定医療法人 認定医療法人とは、経過措置型医療法人(「持分あり」医療法人)が、「持分なし」医療法人へ移行するにあたって、厚生労働省に移行計画の申請をおこない、厚生労働省の認定を受けた医療法人のことをいいます。この認定を受けることによって、3年間限定で「税制優遇措置」や「低利の融資」を受けることができるようになります。 (1).移行計画の認定制度の期間・・・平成26年10月1日から平成29年9月30日までの3年間。 (2).移行までの期限・・・認定を受けた医療法人は、認定の日から3年以内に「持分なし」医療法人に移行しないと認定取り消し(利子税も負担) (3).税制優遇措置【納税猶予制度】 移行計画の認定受けた医療法人の社員(出資者)が移行期間中に死亡し、相続人がその医療法人の出資持分を相続した場合は、移行計画の認定を受けた日から3年間は「相続税の納税が猶予」され、その期間内に持分を放棄した場合は、猶予された税額が免除されます。 また、出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分が増加することで贈与を受けたものとみなされ、他の出資者に贈与税が課税される場合も同様に、移行計画の認定を受けた日から3年間は「贈与税の納税が猶予」され、その期間内に持分を放棄した場合は、猶予された税額が免除されます。(なお出資者が持分を放棄する時に、認定医療法人である必要がある点が、相続税の納税猶予等と異なるので注意)。これがいわゆる医療法人の納税猶予制度です。 (4).融資制度・・・認定医療法人において出資者や相続人から払戻請求が生じ、医療法人の自己資金だけでは対応できず資金調達が必要となった場合、独立行政法人福祉医療機構による新たな経営安定化資金の貸し付けを受けることができます。 ● 貸付限度額・・・病院、診療所、介護老人保健施設ともに、2億5,000万円 償還期間:8年(うち据置期間1年以内) ※参考資料「持分なしへの移行に関する手引書(厚労省)」
① ② 相続税の納税猶予制度の流れは2つある! 3年間 平成26年 10月1日 認定制度 開始 平成29年 9月30日 認定制度 終了 相続・贈与の発生 認定から3年以内に持分放棄 免除 ① 移行計画 の認定 相続・贈与の発生 納税猶予 ② 認定から3年以内に持分放棄 免除 移行計画 の認定 10ヶ月以内 移行計画の認定の日から3年以内に出資持分を放棄すれば、猶予税額は免除されます。ただし相続税法施行令第33条3項をクリアしないと贈与税が課税される。持分放棄できないとき、譲渡・合併した時には納税猶予取り消し 認定制度の期間内の相続発生であれば、 申告期限(10ヶ月)までに移行計画の 認定を受けて納税猶予の手続きを行えば適用される 3年間
納税猶予額と実際の納付税額計算 2回目 1回目 C C A A B B -相続人が複数いる場合の納税猶予の計算- 後継者A 後継者A -相続人が複数いる場合の納税猶予の計算- A B C 後継者A 1回目 A B C 後継者A 2回目 後継者Aは、出資分のみを相続したとして、相続税の再計算をおこなう 通常の相続税計算 後継者以外の相続人の税額は確定 出資分のみに対応する税額を計算 =納税猶予額 実際の納付税額= 【1回目の後継者Aの相続税額】 - 【2回目の後継者Aの相続税額【=納税猶予額)】
それぞれの評価額比較 被相続人の財産:3億円。うち出資額評価2億円(出資金部分:1,000万円、利益剰余分:1億9,000万円)、その他財産:1億円。法定相続人は子供1人 ① そのまま経過措置型医療法人で存続した場合の相続税額 1) 課税遺産 3億円-(3,000万円+600万円×1人)=2億6,400万円 2) 税額計算 2億6,400万円×45% -2,700万円= 9,180万円 生命保険での納税資金対策が必要 ② 定款変更により、「持分なし」医療法人に直ちに移行 出資持分評価額を「0円」とする 1) 課税遺産 1億円-(3,000万円+600万円×1人)= 6,400万円 2) 税額計算 6,400万円×30% - 700万円= 1,220万円 ③ 「認定医療法人」期間中に相続が起きた場合 【納税猶予制度を活用】 (H26.10.01~H29.09.30まで) (そのまま全財産を相続したとして計算)-(出資持分のみを相続したとして計算) 1) 課税遺産 2億円-(3,000万円+600万円×1人)=1億6,400万円 2) 税額計算 1 億 6,400 万円×40% -1,700 万円= 4,860 万円(納税猶予額) 3) 実際の納税額 9,180万円- 4,860万円= 4,320万円
経過措置型医療法人の行方 出資持分なし 医療法人 特定医療法人・社会医療法人 基金拠出型医療法人 経過措置型医療法人 出資持分 あり 地下1階 経過措置法人 (これまでの持分に応じて 払い戻す一般の医療法人。 特に一人医師医療法人) 経過措置型医療法人 出資持分 あり 社団 41,476 出資額限度法人 268 一般の医療法人 41,208 持分ありの 一人医師医療法人数 約36,973 (H19.3月末) およそ4,500の医療法人はが 「持分なし」への移行対象か? 大部分の医療法人は経過措置型医療法人のまま 生命保険を活用した 相続対策の重要性 平成19年4月以降は 「持分なし」医療法人のみ設立 厚生労働省「医療法人数」 H26.3末現在 13 13
経過措置型医療法人の理事長への提案 (納税・分割)で生命保険を活用 経過措置型医療法人には出資分における財産権がある⇒相続対策の必要性 出資持分による 評価額 本来の相続財産 + 理事長の相続財産 ステップ1 出資額の概算評価をおこなう ステップ2 他の相続財産の概算評価をおこなう ステップ4 各人の相続税額を計算する ステップ3 相続財産を誰にいくら渡したいかを 理事長に確認する。 ステップ5 納税対策・分割対策として 生命保険を活用する 新・相続対策マスターを活用
医療法人の類似業種比準方式の計算 A × C (C) D (D) 3 + 4 = A × B (B) + C (C) D (D) 3 5 = 0.7(大会社) 0.6(中会社) 0.5(小会社) しんしゃく率 = 評 価 額 類似業種の 株価 1株あたりの 利益金額 一般事業法人 1株あたりの 純資産額 1株あたりの 配当金額 A × B (B) + C (C) D (D) 3 5 0.7(大会社) 0.6(中会社) 0.5(小会社) しんしゃく率 = 評 価 額
医療法人の純資産価額方式の図解 相続税評価上の資産 負債 (資本) 純資産 帳簿上の 資産 貸借対照表(B/S) 純資産 (相続税評価) 1口50円とした 合計口数 ÷ = 1口あたりの 純資産価額 含み益 (土地・保険等) 含み益 (土地等) 土地、生命保険金等(簿外資産) 借地権、営業権 法人税等 40% (平成26年4月~)
評価をどう求めるかについての一つの考え方 経過措置型医療法人の理事長の持分計算 負債 (資本) 純資産 帳簿上の 資産 貸借対照表(B/S) 出資持分による 評価額 本来の相続財産 + 理事長の相続財産 純資産 合計 × 理事長の 出資割合 理事長出資分の 評価をどう求めるかについての一つの考え方 将来の増加分も加味 × 理事長の 平均余命年数 毎年の平均 増加純資産
経過措置型医療法人の理事長への納税資金で提案 契約形態① 保険金額 相続財産完全防衛額(早見表・計算ソフトより) 出資持分による 評価額 本来の相続財産 + 理事長の相続財産 契約者 被保険者 受取人 被相続人 相続人(後継者) 契約形態② 保険金額 相続税額×1.3(所得税・住民税分を加味) 保険料は被相続人からの贈与を活用 契約者 被保険者 受取人 相続人(後継者) 被相続人 ※ この他に死亡退職金として法人契約にて準備することも可。退職金規程の整備が必要。
相続放棄
事例) 「相続分の放棄」 同居 父親が死亡し母親と長男・次男が相続人。 事例) 「相続分の放棄」 父親が死亡し母親と長男・次男が相続人。 自宅は長男が相続し、母親と同居。次男は父親から生前に海外留学もさせてもらっていたから、相続分を放棄しました (家庭裁判所に相続放棄の手続きを行ってはいません。自分の相続分を放棄するため「相続分放棄届出書」※【添付資料参照】を司法書士に渡しました) 財産は母親と長男のふたりで協議し、下記のように分割しました。 問)長男が父親の借入金を返済しなかったとき、債権者は誰に対していくら請求できますか? 父 母 長男 配偶者 次男 父親の相続財産 ・自宅・・・・・1200万円 ・預貯金・・・・600万円 ・その他・・・・300万円 ・借入金・・・1200万円 0 自宅1200万円 ▲1200万円 預貯金・その他 900万円 同居
解説 『相続放棄』と『相続分の放棄』とは違う! 解説 『相続放棄』と『相続分の放棄』とは違う! 相続放棄とは遺産の相続をすべて放棄することをいいます。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったことになります。そのため財産も負債も、承継することはありません。相続放棄は、相続を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申述する方法で行います。 一方、相続分の放棄とは、相続人が単純相続した後に、遺産を取得しないことをいいます。この相続分の放棄をしても、相続人としての地位は失いません。その結果、相続放棄した者はプラス財産もマイナス財産も承継しないのに対し、相続分の放棄をしたとしても、借金などの相続債務を免れることはできません。 父 母 長男 配偶者 同居 次男 次男相続放棄の場合の相続分 母親・・・1/2 長男・・・1/2 次男相続分放棄の場合の相続分 母親・・・5/8 長男・・・3/8 (参考) ▲600万円 ▲300万円
法定単純承認
事例) 法定単純承認(相続放棄ができないケース) 事例) 法定単純承認(相続放棄ができないケース) 次の中で、単純承認したとみなされるケース(相続放棄ができないケース)には○を、単純承認したとはみなされないケース(相続放棄ができるケース)には×を付けてください 1.死亡した父親の預金を引き出して、子供の学費に充てた 2.父親の残した借金の債権者から督促が来たので、父親の財産の中から支払った 3.母親の衣類全てを形見分けとして持ち去った 4.遺産分割協議に参加した 5.遺産から葬式代・火葬費用などを支払った 6.被相続人の契約した生命保険金を受け取った 7.死亡した父親が貸していたお金を取り立てた 8.死亡した父親の自動車を売った
解説) 法定単純承認 【民法】 (法定単純承認) 第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 解説) 法定単純承認 【民法】 (法定単純承認) 第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。 相続人が第915条1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。 第602条(短期賃借権) 処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年 建物の賃貸借 三年 動産の賃貸借 六箇月 第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間=熟慮期間) 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
事例解説) 債務の多い場合は、財産処分等の行為は禁物! 事例解説) 債務の多い場合は、財産処分等の行為は禁物! 1.死亡した父親の預金を引き出して子供の学費に充てた ○財産の処分にあたり単純承認 2.父親の残した借金の債権者から督促が来たので、父親の財産の中から支払った ●○遺産による相続債務の弁済は [保存行為]として認められる (大阪判 昭和12.1.30) ケースごとによって異なる 3.母親の衣類全てを形見分けとして持ち去った ○一般経済価値を有するものについての形見分け、衣類全ての持ち去りは形見分けを超えるため (東京地裁判 平成12.3.21) 4.遺産分割協議に参加した ○そもそも分割協議に参加することは、財産処分を行う行為で単純承認となる 5.遺産から葬式代・火葬費用などを支払った ●遺族として当然の行為だから該当しない(東京控判 昭和11.9.21・大阪高裁判 昭和54.3.22) 6.被相続人の契約した生命保険金を受け取った ●生命保険金は本来の相続財産ではなく受取人の固有の財産(最判昭40.2.2・最判平14.11.5) 7.死亡した父親が貸していたお金を取り立てた ○権利行使にあたる。被相続人の債権の取立ては単純承認 (最高裁判昭和37.6.21) 8.死亡した父親の自動車を売った。○これも財産処分に当たるから単純承認したことになる 「財産の処分」とされる例 ・遺産分割協議 ・権利行使(売掛債権の取立て、株主権の行使など) ・債務の履行 (保存行為に当たらない債務弁済) 「財産の処分」とされない例 ・保存行為及び短期賃借権 ・身の回り品・所持金の受領 ・故人の道具類の無償貸与 ・遺産からの葬式費用・火葬費用・治療費 ・交換価値のないもの、形見分け・僅かな物
寄与分
事例) 寄与分となるか? ならないか? 寄与分とは、「被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与した」相続人が、 相続財産の中から特別にもらうことのできる財産です。次の「寄与分」の記述の中で寄与分として認められるものは○、認められないものは×をつけてください。 1.認知症の症状が顕著に出るようになった親に、毎日3度の食事を取らせ、常時見守りや排便への対応をしていた 2.親の資産を運用して1,000万円の利益が出た 3.被相続人に代わって医療法人の経営に貢献した子 4.相続人が被相続人のために「土地売却にあたり借家人の立退交渉、家屋の取壊し、滅失登記手続、売買契約の締結」等に努力した 5.長男(死亡)の嫁が、義父の遺産の維持管理に多大な貢献をした 6.長男(生存)の嫁が、脳梗塞の義母を死亡まで献身的な介護をした 7.父親の仕事を手伝い、小遣い程度の賃金を得ていた次男
解説) 寄与分 【民法】 (寄与分) 第904条の2 共同相続人中に、①被相続人の事業に関する労務の提供又は ②財産上の給付、 ③被相続人の療養看護 ④その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与※をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない ※ 「特別の寄与」については、最高裁判所事務総局家庭局「改正民法及び家事審判法規の解釈運用について」という通達(家裁月報33巻4号)で、「被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献」は寄与分とはみない。それを「相続分の修正要素である寄与分とすれば、相続分をきわめて可変的なものにすることになり権利関係の安定を著しく害するおそれがあるからである。しかし、相続人に通常期待される程度を超えた貢献や寄与がある場合は、寄与分とみる。なお、「相続人に通常期待される貢献」という場合、相続人による立場の違いも考慮される。例えば、相続人である配偶者と子が同じ程度の家事労働による寄与をしたとしても、配偶者は「協力扶助義務の範囲内のものと認められる」が、「一般的な扶養義務ないしは互助義務を負うに過ぎない子については」特別の寄与になると認めうる場合もある。
事例解説 1.認知症の症状が顕著に出るようになった親に、毎日3度の食事を取らせ、常時見守りや排便への対応をしていた ○ 特別の寄与になり、1日当たり8000円の3年分876万円を寄与分とした(大阪家審平19.2.8) 2.親の資産を運用して1,000万円の利益が出た ●資産運用には利益の可能性とともに,常に損失のリスクを伴う。 損失によるリスクは負担せずに,たまたま利益の生じた場合には寄与と主張することは、相続人間の衡平に資するとは,言いがたい(大阪家審平19.2.26) 3.被相続人に代わって医療法人の経営に貢献した子 ○相続財産の3割の寄与分を認める(大阪高決昭54.8.11) 4.相続人が被相続人のために「土地売却にあたり借家人の立退交渉,家屋の取壊し,滅失登記手続,売買契約の締結等に努力した ○売却価格の増加に対する寄与はあつたものとして、不動産仲介人の手数料基準をも考慮し,300万円と認めるのが相当である(長崎家諫早出張審昭62.9.1) 5.長男(死亡)の嫁が、義父の遺産の維持管理に多大な貢献をした ●相続人が亡くなっておれば、相続人の配偶者には、独自の寄与分というものは認められない(秋田大曲支審昭37.6.13) 子の場合は代襲相続として寄与分が認められる(東京高裁昭和54.2.6) 6.長男(生存)の嫁が、脳梗塞の義母を死亡まで献身的な介護をした ○相続人が存命であれば、相続人が配偶者や子の寄与を自分の寄与として(履行補助者)寄与分を主張できる(東京家審平12.3.8) 7.父親の仕事を手伝い、小遣い程度の賃金を得ていた次男 ○対価を受けていても少額の場合は、「支払われた賃金や報酬等が提供した労務の対価として十分でないときは、報いられていない残余の部分については寄与分と認められる(大阪高決平2.9.19)
【参考】養子縁組
「相続があったときには財産を相続させない」と約束! 節税のための孫養子 相続対策で「養子縁組を活用すると節税になる」と税理士からアドバイスを受け、孫を養子にしました。そのため養子縁組の条件として「相続があったときには財産を相続しない」と当事者間で約束をし、また遺言書も書いています。財産のほとんどが不動産ですが、何か問題はあるでしょうか? 「相続があったときには財産を相続させない」と約束! 孫 被相続人 父 嫁 長男 次男 母 孫養子
節税のための孫養子は否認の危険性あり 養子縁組の解消は? 税の軽減効果のみで安易な養子縁組の提案は避けるべき! 養子縁組を活用すれば、相続税は減ることがあります。しかし人の価値観は月日が経てば変わることがあるので「財産を相続しない」という口約束があっても、また遺言があっても、遺留分の減殺請求をされるおそれがあり将来遺産分割の際に、もめる可能性はあります! 養子縁組が相続税を不当に減少させる場合は否認できる(相続税法63条) 養子縁組の解消は? 養子縁組は当事者同士が合意して「養子離縁届」を市町村に提出 「相続があったときには財産を相続させない」と約束しているということは「租税回避行為」? 当事者間の一方が同意しないときは家庭裁判所に調停申立書を提出 離縁が認められる理由 ・3年以上行方知れず ・親への扶養義務を果たしていない ・縁組を続けられない重大な理由がある 税の軽減効果のみで安易な養子縁組の提案は避けるべき!
養子縁組は相続対策にメリットかデメリットか? 母はすでに亡くなっており相続人は私だけです。相続税の軽減のため私の子(孫)を父の養子とするアドバイスを受けたのですが、孫を養子にすると相続税が 2割加算されると聞きました。養子縁組したほうが軽減効果はあるのでしょうか? 財産は3億円あります。 孫養子 孫 父 被相続人 嫁 長男 母 養子縁組前 相続人は長男のみ 納付税額 9,180万円 養子縁組後 相続人は長男と養子 納付税額 長男 3,460万円 養子 4,152万円 (2割加算) 合計 7,612万円 孫養子は2割加算されるが、税軽減効果は大きい場合が多い
子供のいない夫婦などは、養子がかえって増税に! 被相続人 夫 妻 税軽減効果(財産3億円) 1.相続人が配偶者のみの場合 相続税総額 9,180万円 納付税額 0万円 兄弟 被相続人 夫 妻 税軽減効果(財産3億円) 2.相続人が配偶者と兄弟2人 相続税総額 6,720万円 納付税額 2,016万円(2割加算含) すべて配偶者が相続した場合 納付税額 1,680万円 兄弟 養子 被相続人 夫 妻 税軽減効果(財産3億円) 3.養子縁組した場合 相続税総額 6,920万円 納付税額 3,460万円 養子縁組することですべての場合で税の軽減効果があるわけではありません
後妻の「連れ子」を養子にすると実子とみなされるため、孫等を養子縁組すると 相続税法上の「法定相続人の数」を一人増やすことが出来る 連れ子養子は実子にカウント! 現在の妻と妻の子どもが小さいときに結婚しました。また私たち夫婦には子供が いないので、「連れ子」の3人を養子にしました。養子縁組すると相続対策になると 聞いているのですが、相続人の数は何人になりますか? また他に養子縁組をすることで相続人の数を増やすことが出来ますか? 被相続人 夫 長男 妻 養子 次女 元夫 長女 養子縁組 後妻の「連れ子」を養子にすると実子とみなされるため、孫等を養子縁組すると 相続税法上の「法定相続人の数」を一人増やすことが出来る 35
孫養子の代襲相続は、代襲分と孫の分のダブル! 長男はすでに亡くなっていますが、亡くなる前に相続対策のため長男の子(孫)を父母の養子としています。父が亡くなった場合は、この養子縁組における税の軽減効果はどうなるのでしょうか? 被相続人 父 長女 長男 次男 母 子 養子 相続人と相続割合は 母 1/2 次男 1/8 長女 1/8 長男の子(代襲相続分) 1/8 孫養子 1/8 合計 1/4 法定相続人の数は4人となる 税法による法定相続人の数は 長男の子(代襲相続人)と養子は同一人物のため一人とカウントする(相続税法基本通達15-4) 36
妻が両親の養子に! 相続分はどうなる? 両親の生前に、両親と私の妻(配偶者)とが養子縁組しています。私たちには子供はありません。夫である私が亡くなった場合の法定相続人は誰になりますか? また妻は、配偶者としての相続分と、兄弟としての相続分の両方がありますか? 兄弟分としての相続分はあるか? 被相続人 夫 兄弟 妻 父 母 養子 相続人のなかにその親と養子縁組をすることにより、兄弟姉妹として相続人となっている場合は、妻(配偶者)のみの相続分であり、兄弟姉妹(養子)としての相続分は認められていない。 したがって、相続人は兄弟と妻の2人で、妻(配偶者)3/4 兄弟1/4となる (相続税法基本通達15-5) 37
本来的な特別受益ではないが、公平の見地から持ち戻しが認められる場合がある(平成11年4月神戸家審) 養子縁組前に贈与した財産は特別受益か? ③平成26年死亡 本来的な特別受益ではないが、公平の見地から持ち戻しが認められる場合がある(平成11年4月神戸家審) 孫 被相続人 父 嫁 長男 次男 母 ①平成20年 事業資金として1,000万円贈与 孫養子 ②養子縁組で相続人に 平成25年
『普通養子』と『特別養子』の違い 区分 普通養子 特別養子 養親の制限 成人である者 満25歳以上の夫婦 養子の制限 養親より年少者 『普通養子』と『特別養子』の違い 区分 普通養子 特別養子 養親の制限 成人である者 満25歳以上の夫婦 養子の制限 養親より年少者 原則として6歳未満 縁組の手続き 養子が未成年でなければ当事者の届け出(養子縁組届) 家庭裁判所の審判が必要 親子関係 実親との親族関係は終了しない(相続権あり) 実親との親族関係は終了 (相続権なし) 戸籍の記載 「養子」の記載あり 「長男・長女」等、身分事項に 「○年・・・・民法817条の2による裁判確定」と記載 離縁 当事者間の合意で可能 養親からの請求不可 ・昭和62年の民法改正により「特別養子」を新設 ・養子縁組の届け出をした日から養親の嫡出子としての身分を取得する
民法上(遺産分割)と税法上(相続税)の違い 民 法 上 税 法 上 胎児 ・生まれたものとして相続権 は発生する ・出生により納税義務が発生 する 養子の数 ・養子縁組は何人でも可能 であり、養子は実子と同様 相続人になる ・実子がいる場合は1人まで ・実子がいない場合は2人まで 相続の放棄 ・放棄した者は最初からいな いものとして相続順位と相 続割合を決める ・放棄はなかったものとして 「法定相続人の数」を計算 贈与財産 ・特別受益として年数に関係 なく持ち戻しする ・相続開始時の貨幣価額に 換算して評価する ・相続開始前3年以内に相続 人に贈与した財産を贈与時の 価格で持ち戻す ・相続時精算課税は全額、贈与時の価格で持ち戻す みなし 相続財産 ・寄与分の差引き ・生命保険金・死亡退職金は 原則遺産分割の対象外 ・生命保険金、死亡退職金は 非課税金額を超えた額につき 課税対象となる
MEMO
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