薬局実務実習 トラブル対応事例集 指導薬剤師とスタッフ用 日本薬剤師会
本資料の概要 活用方法 【指導薬剤師とスタッフ用】編 日本薬剤師会では、薬局実務実習のトラブル防止策を検討するうえでの参考とするため、平成23年8月に全薬科大学・薬学部及び都道府県薬剤師会を対象にアンケートを実施しました。 本資料は、同アンケートで報告されたトラブル事例を、内容別に分類し、トラブルが起こってしまった際の対応事例集として、作成したもので、【学生と指導薬剤師用】及び【指導薬剤師とスタッフ用】の2種類があります。本資料が有効に活用され、薬局実務実習のトラブル予防の一助となれば幸いです。 活用方法 【指導薬剤師とスタッフ用】編 ◆ 薬局実務実習において、学生を受け入れる“受入薬局”のスタッフ全員で、実習開始前に内容を確認しておきましょう。 ◆ 本編の「○○の時、どうする?」等のタイトルは、指導薬剤師の目線で作成しており、それについての具体的な事例と、原因、その対応例を示しています。 ◆ 実習開始前に、本編を最後まで確認し終えましたら、スタッフそれぞれが「チェックリスト」にて内容をチェックしましょう。 ※本資料については、他に【学生と指導薬剤師】編も作成しております。併せてご活用ください。 なお、日本薬剤師会ホームページでは、パワーポイントデータで本資料を掲載しておりますので、ご利用ください。
「学生が精神的に落ちこんでいる」と感じた時、どうする? 事 例 実習が上手くこなせないことから 精神的な落ち込みで睡眠も取れなくなった 過度の緊張で精神的に不安定となった なぜ起こったか? 学生が一人悩んでいるのに気付いたが、声掛けを怠った(他のスタッフは気付いていたが、指導薬剤師がするだろうと放置した) 学生の実習態度から、ついキツイ言葉でアドバイスしてしまった 事故につながると思い、「何してるの!」といきなり怒鳴ってしまった 休憩中なので学生の面倒を見る必要がないと思った どうすればよい? 指導薬剤師、他の薬局のスタッフ全員で注意を払う 「あれっ?」と感じたら、できるだけ早く声かけを行う 怒られた理由を考えさせた上で学生に説明する 皮肉を言う、学生に分かるよう態度を変える、などの行為は慎む 個人的な感情(好む・好まない)で接しない。スタッフ全員で注意しあうこと
実習生と人間関係が築けない時、どうする? 事 例 学生が指導薬剤師の言動や態度に精神的な苦痛を感じた 学生が実習施設に馴染めず次第にストレスを感じた 学生が指導薬剤師の対応が理不尽と感じた なぜ起こったか? 現場の感覚で厳しい指導をした(大学では経験していない) 進捗状況に合わせて指導したつもりが、学生にはストレスとなった 学生に「薬局で実習をする」という心構えができていないので、つい声を荒げた 学生気分のままで、社会性が身についてないので、きつく指導してしまった どうすればよい? 常にPNPでの指導を心掛ける(良いことを見つけて褒める) 常に目の前に患者がいることを認識させること 自身の学生時代を思い出し対応すること 指導薬剤師は普通の指導と思っていても、学生にはきつく感じることもあるので、表情の変化や受け答えの内容から指導の仕方を見直すこと 一方的に話さず学生に意見を述べさせ、考えや精神状態を把握しておくこと
他のスタッフが原因でトラブルが生じた時、どうする? 事 例 指導薬剤師以外の薬剤師とコミュニケーションが取れない 薬剤師でない職員から度々叱責を受けた 施設の雰囲気が悪く感じた 精神的に苦痛を感じた。体調を崩した。緊張の連続であった なぜ起こったか? スタッフが非協力的な対応をした 初顔合わせで、学生の態度に違和感があった(社会人側の評価) コミュニケーションの取り方の理解不足(学生⇔社会人) 学生が「できている」と自信過剰で譲らない 注意しておいたのに、「あ~ぁ!」と思うことを、学生が言ってしまった。やってしまった 注意しても時間ぎりぎりに出社、自発的な行動が見られない どうすればよい? 全スタッフが協力して実習を受け入れる 「両者で何か違和感を感じた」と思ったら、すぐ、何らかの話し合いを持つルールを事前に決めておく 指導薬剤師は他のスタッフが行う指導についても注意を払う 指導薬剤師は他のスタッフからの意見に耳を傾け、改善などの対応をする 実習担当教員に状況を報告し、対策を考える
ハラスメントを防止するために、どうする? 事 例 親しみを持ってつい肩に触れてしまった 熱心さのあまり接近して指導してしまった 「ダメだ!」、「そんなこともできないのか」と、強い口調で指導してしまった なぜ起こったか? 双方の親近感のずれにより不快感を与えた 学生が接近してきたので勘違いをしてしまった 学生を恋愛対象にしてしまった 学生がスタッフを恋愛対象にしてしまった 飲み会で言ったこと、行った行為が原因で不信感を持たれた (アルコールは言い訳にならない) 学生の立場を理解せず、指導者として優越的な態度で接した どうすればよい? ハラスメントの基準は微妙な差があるので、決して自己流の判断基準で対応させないこと(「実務実習におけるハラスメントへの対応:日本薬剤師会編」を用いてハラスメント事例研修を行うこと) 学生を恋愛対象にしてはいけない 他のスタッフの行為がハラスメントにつながると判断された場合、当該者以外のスタッフに報告し至急改善させる 自身の行動を客観的に省みて、嫌がられたと気付いたらすぐにやめて繰り返さない 学生からの行為があれば、威厳をもって指導をすること(複数スタッフ又は指導教員を交える等) それでも改善が見られなければ、当該スタッフと学生を接触させない
実務実習を逸脱すると思われる行為は強制しない 事 例 アルバイトのように扱われて業務をさせられている気がする 実習指導を受けていないと感じる 企業のセミナーへの参加を求められる、食事に誘われる 政治活動や宗教活動に参加させられる なぜ起こったか? ついシフト表に名前を入れてしまった(実習スケジュールのため等) 忙しくて、ほとんどアドバイスができないまま過ごしてしまった 理由を説明せずに企業のセミナーに行くよう強制してしまった 社会では常にある「ノミュニケーション」を学生にも理由を言わず求めた 趣味趣向を他人に押し付けた どうすればよい? どの様な場合でも、相手が理解するまで丁寧に理由を説明する 忙しさで指導できない場合のための対策を予め考えておくこと 時間外のセミナー等を、せっかくの機会と捉えるか否かは、学生の考え次第である。無理な強要をしないこと 政治や宗教は個人の自由である。ましてや実習中の学生への勧誘は、慎まなければならない。これらの活動は、コアカリキュラムに記載されていないことを考慮すること
病気や事故・災害時、就活の時、どうする? 事 例 病気で無断欠席(実習開始時間になっても連絡がない) 持病の悪化の為、実習続行不可能となり実習を中断した 通学中に事故に巻き込まれた 地震発生、台風の接近 会社訪問で度重なる欠席 なぜ起こったか? 病欠や体調変化時の対応策を説明していない トラブル発生時の対応策を説明していない どうすればよい? 実習開始時に、緊急連絡先や緊急時の薬局内のルールを説明しておくこと 持病を申告するかしないかは、本人の自由意志だが、告知せず不幸にも持病が悪化した場合は、実務実習中止となることを説明すること 特に自家用車・バイク等公共交通機関以外の利用による場合、近隣への迷惑駐車、騒音被害等も苦情に繋がることを理解させておくこと 例)天災の場合 実習中であれば、指導薬剤師が指示する 台風など予測出来る場合は、大学の指示に基づく 決して自己判断で行動させないこと(無理な帰宅は事故のもと) 例)事故の場合、必ず連絡させるように指示する 軽微な事故の場合、5W1Hで要点を報告させる 大事故に巻き込まれた場合、大学のマニュアルに従う
チェックリスト 今回の実習で知り得た学生の個人情報(連絡先、履歴など)は、実習に関係なく使用したり、第三者に漏らしたりはしません。 スケジュールの変更や指導薬剤師の変更並びに他の実習施設での学習については、早めに学生及び担当教員に連絡します。 学生の疑問や不安について耳を傾けて、納得して実習に取組めるよう努めます。 実習時間外のセミナーや食事など、学生の意思を尊重し、無理やり誘う事はしません。また、断った事によって評価を下げるなどの行為はしません。