意識調査における若年層の 回収率の季節変動について 意識調査における若年層の 回収率の季節変動について 山田 茂(国士舘大学) 日本行動計量学会 2015年9月4日
はじめに 回収率低下 特に若年層 10代>20代<30代<・・・ 若年層の転居に注目 仮説「転居の増減⇒20代の回収率の季節変動」 回収率低下 特に若年層 10代>20代<30代<・・・ 若年層の転居に注目 仮説「転居の増減⇒20代の回収率の季節変動」 季節以外の要因⇒回収率 面接法と郵送法 ・標本規模 ・抽出後・実査の期間 主題 広報室調査「面接前に告げず」 佐藤(2013) 委託先 調査員の6割が複数社登録 JMRA(2011)
考察の範囲と注目点 ・面接法 1987年度以降実施分 3期に分けて ①内閣府政府広報室:毎年度各四半期に1~5件 ・ほぼ同一方法・対象 ・月・3か月毎 長期実施 ・面接法 1987年度以降実施分 3期に分けて ①内閣府政府広報室:毎年度各四半期に1~5件 3~5月は少数 2011年度前半なし 11~18日間 ②時事通信社「時事世論調査」: 毎月土日を含む上旬4日間 ・郵送法 ③日本銀行「生活意識に関するアンケート」 :2007年以降 3か月周期で約4週間 ・注目:不能・回収率←抽出からの期間(⇒転居など)
調査方法の変更 ①政府広報室 1987年度~:実地調査の期間延長(木曜開始維持) 計画標本 3000/5000 7日⇒11日 10000 10日⇒14日 (2002年度~:14日⇒11日) 2006年度~ *主体名を告げる *事前依頼はがき *期間延長:計画標本 5000/10000 11日⇒18日 *謝礼品:「筆記具」→「図書券」 ②時事通信社 同日程維持 「クオカ―ド」300円 ③日本銀行 2006年8月~ 訪問留置⇒往復郵送
調査の主題と利用できるデータ ①政府広報室: 主題は大部分毎回異なる 年次調査3件など例外 性別年齢層別抽出回収実数 全体不能の理由 ②時事通信社:冒頭の8問だけ共通・残りは毎月別主題 20歳以上計の回収率 年齢別回収実数 ③日銀 ほぼ共通の質問・分量 末尾約5分の1は変動 抽出標本・回収標本の年齢構成比率 ①③市区町村での抽出作業:住基台帳閲覧日
標準的な抽出調査の手順 ①本人が転出届・転入届を提出 ②役場で住基台帳から抽出 ③依頼状発送 ⑤有効回収⇒集計 転居を 未届出 拒否 ④実地調査 拒否 転居を 未届出 (義務:2週間以内) ④から 除外 調査不能(拒否・不在・転居など) ⑤有効回収⇒集計
①20代が低回収率 主題:2006年度~14年度 男性 子供の安全・尖閣C 3000人 2013年7月 33.0% 家族の法制S 5000人 2006年11月 32.2% 社会意識C 10000人 2007年1月 31.1% 自殺・投資C 3000人 2007年 5月 30.7% 科学・地方再生S 3000人 2007年11月 29.9% 女性 消費者行政・観光C 3000人 2008年10月 38.8% 交通・社会保障C 3000人 2008年7月 38.4% 社会意識C 10000人 2007年1月 38.4% 社会意識S 10000人 2008年2月 38.1% 自殺・投資C 3000人 2007年5月 36.9%
①拒否が多い主題:2006年度~ (対 20歳以上計画標本総数) 3000人標本は60件中54件がオムニバス (対 20歳以上計画標本総数) 3000人標本は60件中54件がオムニバス 2006年10月 外交・交通安全C 3000人×22.7% 2006年11月 家族の法制S 5000人×22.3% 同年同月 臓器移植・食料C 3000人×21.7% 2007年11月 科学・地方再生S 3000 人×20.0% 2008年2月 社会意識S 10000人×19.8% 2009年度以降:18%を超える例はない
①対計画標本不能の理由 レインジ上昇 %
①の例 環境問題に関する世論調査 の日程 ・抽出 7月1日現在20歳以上 3000人を抽出 2014年6月26日 堺市中区 ①の例 環境問題に関する世論調査 の日程 ・抽出 7月1日現在20歳以上 3000人を抽出 2014年6月26日 堺市中区 ~2014年7月17日 袖ヶ浦市 依頼はがき発送 210地点のうち 64地点の抽出日判明(うち57件が7月1日以降) (ネット公表分のみ) 実地調査 2014年7月24日~8月3日 政府広報室の他の調査も抽出期間最終日と接近
年齢構成:住基台帳と①抽出標本 住基台帳の年齢構成 抽出日が最も近い抽出標本の年齢構成と比較 抽出日が最も近い抽出標本の年齢構成と比較 *3月末集計 2010年・2012年・2013年 (対象者:台帳の2ヶ月後現在での年齢) *1月1日集計 2014年・2015年(対象者の年齢:同日) ⇒抽出標本は20代の比率が低い:転入届の遅れなど
年齢別回収率の代用 1 ○歳代の回収率 = ○歳代の回収標本/ ○歳代の抽出標本 = ○歳代の回収標本/全年齢の回収標本 年齢別回収率の代用 1 ○歳代の回収率 = ○歳代の回収標本/ ○歳代の抽出標本 = ○歳代の回収標本/全年齢の回収標本 ×(全年齢の回収標本/全年齢の抽出標本) ×(全年齢の抽出標本/ ○歳代の抽出標本)
年齢別回収率の代用 2 ○歳代の回収標本/ ○歳代の抽出標本 = ○歳代の回収標本での比率 ×全年齢の回収率 × ○歳代の抽出標本での比率の逆数 *抽出標本の年齢構成を住基台帳の比率で代用
③の例 59回生活意識アンケート日程 8月1日現在で20歳以上 4000人を抽出 ・抽出日 2014年5月21日 都城市 ③の例 59回生活意識アンケート日程 8月1日現在で20歳以上 4000人を抽出 ・抽出日 2014年5月21日 都城市 ~6月27日 東村山市 依頼状発送 約260地点のうち85地点の抽出日判明 (1地点15人) ネット公表分のみ把握 実地調査(対象者宅着) 2014年8月8日~9月3日 抽出期間との間に 約1ヶ月半(52地点が2か月前) その後転出発生の可能性
③調査:8月の回収率が低い *推測される原因(質問数はほぼ同一) ・郵便局の転送期限切れ 1年間 前年3・4月に転居し、役場には未届出 ・抽出日の後で転出届 ・他の時期より非協力発生? ②調査の20代も *③8月調査以外も 抽出の約2か月後発送
むすび 回収率の季節変動 全体の低下傾向と比べて小 ①②:面接調査では季節変動縮小 いつも低率 「転居」による不能:届出は減っているのに増加 回収率の季節変動 全体の低下傾向と比べて小 ①②:面接調査では季節変動縮小 いつも低率 「転居」による不能:届出は減っているのに増加 本人以外からの不能理由の聴取の困難化 ③:郵送調査では8月に低下 11月に回復 原因:郵便の転送期限切れと転出届提出遅れ 転送依頼は世帯全体が転居した場合 1人だけ転出:実家に配達され、本人には届かず 抽出標本での若年層の比率:住基台帳より低い
日経RDD調査の回収標本の20代比率
NHK RDD調査・回収標本の20代比率
抽出のための住基台帳閲覧状況の公表例 広島市 スライド複製分以外の配布 抽出のための住基台帳閲覧状況の公表例 広島市 政府広報室 実施結果の公表例 日本銀行 実施結果の公表例 引用文献 有坂 路子( 2010) 「面接調査の訪問状況記録の検証」『新情報』98 JMRA(2011)『「調査員実態調査」報告書』 佐藤 寧(2013)「内閣府政府広報室の世論調査」 『中央調査報』No.671