水害被災時の家計の 流動性制約に関する一考察

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Presentation transcript:

水害被災時の家計の 流動性制約に関する一考察 京都大学大学院  学生会員 ○関川 裕己 京都大学大学院  正会員    大西 正光 京都大学大学院  正会員    横松 宗太 京都大学大学院  フェロー    小林 潔司

出典:国土交通省近畿地方整備局

被災時に復旧資金を 十分調達できない場合 被災 復旧完了 必要調達額≠被害額 不足額 流動性制約 調達可能額<必要調達額 流動性被害 被災時に復旧資金を        十分調達できない場合 資産額 被災 復旧完了 被災前水準 必要調達額≠被害額 復旧水準 不足額 被害額 被災直後水準      流動性制約   調達可能額<必要調達額 調達可能額 必要調達額 被災時水準      流動性被害 復旧期間 Z 時間

研究の目的 流動性被害の正確な評価 第1段階 流動性制約に直面する世帯が存在 することを明らかにする 必要調達額 調達可能額 どのように決定されるのか?

アンケート調査概要 調査目的: H16台風23号による被害状況、 及び復旧状況の実態調査 調査時期: H17.3月 調査地域: 兵庫県豊岡市 調査地域: 兵庫県豊岡市 調査主体: 京都大学大学院小林研究室 調査方法: 事前配布した調査票の直接回収、         及びヒヤリング調査

被害額と調達額 必要調達額≠被害額 「まかなえた」 被害額 3500万円 調達資金 1000万円 賄えない 賄えた 被害額  3500万円 調達資金 1000万円 必要調達額≠被害額 図.一般資産被害額と復旧資金調達額 N=266

復旧資金過不足

世帯の資金調達 (家屋損保加入、保険金給付済) 30世帯 賄えた 賄えない 調達先別調達資金(保険金給付世帯のみ) N=145

世帯の資金調達(保険金非給付) 83世帯 賄えた 賄えた 図.調達先別調達資金(保険金非給付世帯のみ) N=129 まかなえた 賄えない

定式化の前提条件 必要調達額 、調達可能額 と置く 必要調達額 が被害額に一致する保証はない 世帯が調達した資金額 必要調達額    、調達可能額    と置く 必要調達額    が被害額に一致する保証はない 世帯が調達した資金額 流動性制約有無(外的基準) 質問:「調達した資金で被害の復旧をまかなえたか」 まかなえた =流動性制約直面せず(δ=0) まかなえない=流動性制約に直面(δ=1) の時(δ=0) の時(δ=1)

モデルの定式化 必要調達額 調達可能額 確率誤差項  、 は平均0、分散σ1、σ2の 2次元正規確率密度に従うと仮定 :世帯属性 :世帯属性

モデルの定式化 世帯 について、 尤度関数 ただし、

モデルの定式化 説明変数 必要調達額モデル 調達可能額モデル 定数項 定数項 一般資産被害額(対数値) 保険金給付額 保険金給付額  説明変数 必要調達額モデル 定数項 一般資産被害額(対数値) 保険金給付額 世帯人数(対数値) 調達可能額モデル 定数項 保険金給付額 金融資産残高(対数値) 土地資産額(対数値) 負債額

結論 流動性制約に直面し、 流動性被害を被っている世帯が存在 流動性制約を回避するために保険が有効 保険だけでなく純金融資産、土地資産の保有が 流動性制約回避に有効 物的資産:復旧水準≠被災前水準

今後の課題 流動性被害の計測 流動性制約に関する理論的研究