大気球を利用した展開型柔構造エアロシェルの実証試験 P5-21 大気球を利用した展開型柔構造エアロシェルの実証試験 山田和彦、廣谷智成、安部隆士(ISAS/JAXA) 秋田大輔、佐藤英司、石田智樹、古川宗孝(東大院) 鈴木宏二郎(東大新領域) 堤裕樹、若月一彦(東海大学) 鳴海智博、桜井晃(九州大学) 松坂幸彦、山上隆正、斎藤芳隆、井筒直樹 福家英之、並木道義、瀬尾基治 鳥海道彦、飯嶋一征(ISAS/JAXA) 概 要 2004年度に大気球を利用して行った柔構造機体の飛翔性能試験の結果報告と、その結果を踏まえて現在計画している大気球を利用した展開型柔構造エアロシェルを利用した回収システムの展開、飛行、回収実証試験の概要を紹介する。
BACKGROUND シンプルかつ安全なカプセル型の大気突入、回収システムの開発 従来型システム 提案するシステム 避ける 耐える 大気突入前に大面積のエアロシェルを展開し、空力加熱を 避ける アブレータや高温材料で1500℃以上にもなる高温環境に 耐える 減速用の別のパラシュートを展開し、減速して軟着陸 低弾道係数を利して、 そのまま緩降下&軟着陸 (+海上浮揚) APPLLO の時代から採用されている MUSES-C, USERS などでも実用 高温環境にさらされない →安全 大気圏突入前に展開完了 →信頼性上昇
TENSION-SHELL-TYPE MENBRANE AEROSHELL CONCEPT TENSION-SHELL-TYPE MENBRANE AEROSHELL 円錐形状の 薄膜エアロシェル 大気圏突入前に エアロシェルを展開 エアロシェルには張力しか働かないので非常に薄い膜面でも強度は十分 展開機構を有する外枠 エアロシェルに働く空気力を、最終的に圧縮力として支える 打ち上げ時はフェアリング内にコンパクトに収納される 機器はすべてこの中に収納するので、重心が前方になり空力的に安定する カプセル形状の本体
AEROSHELL EFFECT 膜面のサイズが空力加熱、終端速度に与える影響 高度200kmに達する 弾道軌道からの再突入 弾道軌道からの再突入 機体重量 50kg カプセル直径 20cm 抵抗係数 1.2 淀み点曲率半径 14cm 金属TPSの限界 大型のエアロシェルをとりつけることにより、空力加熱の大幅な低減が可能である。 大型のエアロシェルにより付加パラシュートなしでも安全な着水速度までの減速が可能になる。 安全な着水速度
PROJECT SCHDULE 1 1st Phase 2nd Phase 基本特性の把握 機体製作&飛行実証 風洞試験による基礎特性の把握 数値シミュレーション技術の構築 システムとしての可能性の調査、検討 実サイズの柔構造機体の製作、試験 展開機構の実証(地上→飛行中) 気球を利用した自由フライト試験
PROJECT SCHDULE 2 3rd Phase Actual Mission 実環境飛行試験 実際のミッションへ利用 回収カプセルへ 観測ロケットや軌道からの大気圏突入 極超音速飛行実証 高空力加熱環境下での飛行 回収カプセルへ 惑星探査衛星へ そして、次世代の宇宙輸送系へ 再使用型宇宙輸送システムへの適用例
PRELIMINARY STUDY 1 風洞実験 スケールモデルを用いた風洞実験により、低速~遷音速~超音速での柔構造エアロシェルの挙動や空力特性を調べる。 低速風洞試験 低速風洞実験装置(Univ. of Tokyo) 低速風洞試験用模型 エアロシェル形状が迎角-抵抗係数特性に与える効果 遷音速風洞試験 遷音速風洞実験装置(ISAS) 遷音速風洞試験用模型 シュリーレン法による流れ場の可視化(マッハ数1.3~0.3)
PRELIMINARY STUDY 2 数値シミュレーション 多粒子系膜モデル、CFD(数値流体力学)などを用いて、柔構造体の高速流中での挙動や空力特性を解析する手法を確立 縦方向に発生する皺 多粒子系膜モデルを用いたフレア型膜面の形状解析 多粒子系膜モデルとCFDを組み合わせた手法による膜面周りの流れ場解析の例(マッハ数3.0) 多粒子系膜モデルの概念図 これらの膜面を解析する手法を用いて、高速流中での柔構造エアロシェルの挙動や空力特性を予測することが可能になった。
DEPLOYMENT TEST AT GROUND フライト試験に先立ってエアロシェルの地上展開試験を実施 収納状態 カーペンターテープヒンジユニット 折りたたんだ状態 展開完了 約2秒でエアロシェルの展開が完了し、ラッチ機構もすべて自動に動作することを実証した。 しかし、展開の過程が複雑であるため信頼性には問題があり、今後、改良してゆく必要がある。
FLIGHT PERFORMACE DEMONSTRAION 2004年8月、大気球を利用した柔構造機体の飛翔性能試験を実施 実験目的 実機サイズの展開型柔構造機体の開発、製作、展開実証 柔構造機体の自由飛行環境下における安定飛行の実証 遷音速~低速領域での柔構造機体の変形と飛行特性の把握 実験概要 フライト機体を高度39kmで気球から切離し自由落下させ、その間のフライトデータをテレメで地上に送信する 実験に使用したB100-10号機と フライト機体の航跡図 放球直前の機体の様子(三陸大気球観測所)
FLIGHT MODEL 総重量 106kg 最大直径 1.45m 弾道係数 約66kg/m2 フレーム 直径25mmのアルミ円管 1辺40cmの正十二角形 重量:2.6kg 機体外観 カーペンターテープを応用した展開機構を有し、耐圧縮荷重は120kg以上 カプセル内部 エアロシェル カプセル 最大径145cm 開き角約45度 重量0.6kg 直径:60cm 重量:102kg 材料:鉄 ZYLON織物(高強度、高耐熱性)を使用し、12枚の台形の布を縫い合わせて製作 測定機器、通信機器、電源などすべて収納
FLIGHT PERFORMACE DEMONSTRAION ゴンドラと機体の搭載されたCCDカメラにより飛行中の機体の様子を観察し、 空気力をうけて変形するエアロシェルの形状を推定した。 ゴンドラ側CCDカメラ 機体側CCDカメラ (魚眼レンズ) 切離し直後の機体の様子 →これらの画像より、機体が遷音速~低速領域におい安定に飛行し、また、エアロシェルは空気を受けて凹面に変形し、縦方向に皺が発生していることが確認された。 画像から推定されたエアロシェル形状
(フライトデータと軌道シミュレーションの比較) FLIGHT PERFORMACE DEMONSTRAION GPSや加速度、角速度センサのデータからフライト機体の飛行軌道や空力特性を決定し、 風洞試験や軌道シミュレーションとの比較を行った。 加速度の時間履歴 (フライトデータと軌道シミュレーションの比較) 抵抗係数とマッハ数の関係 (フライトデータと風洞実験の比較) フライトデータ 風洞試験 フライトデータは、軌道シミュレーション結果や風洞実験の結果とよい一致を示しており、 フレア型柔構造エアロシェルを有するカプセル型機体は、事前に予測したとおりの性能を発揮したことが確認された。
ACCOMPLISHMENT 実用化にむけての次の課題 機体の開発、製作、地上での柔構造エアロシェルの展開 2004年8月に三陸大気球観測所にて、大気球を利用した柔構造体の飛翔性能試験を実施し、高度39kmからのフレア型柔構造エアロシェルを有するカプセル型飛行体の自由落下飛行に成功した。フライト中機体は最大マッハ数0.9に到達し、低速から遷音速域までの飛行を行った。 機体の開発過程やフライト中に取得したデータより以下のことが実証された。 機体の開発、製作、地上での柔構造エアロシェルの展開 遷音速~低速領域での柔構造エアロシェルの安定飛行 柔構造エアロシェルが予測どおりの減速性能を発揮すること 実用化にむけての次の課題 上空でのエアロシェルの展開 エアロシェルのさらなる大型化 海上での確実な回収 これらを実証するための次なるフライト試験を計画する。
DEPLOYMENT PERFORMANCE and RECOVERY DEMOSTRAION 2004年の試験成果を踏まえて、改良型柔構造エアロシェルを開発し、2006年度以降の気球実験にて、その展開、飛行実証試験を予定している。 「展開型柔構造体を用いた回収システム実証試験 」の提案 技術的挑戦 柔構造エアロシェルに、空力加熱低減効果に加え、確実かつ安全な回収に必要な十分な緩降下、軟着陸能力、さらに、海上での浮揚の能力をもたせ、大気突入回収システムの簡素化、信頼性向上を目指す。 フレア型柔構造エアロシェルのフレームとして、2004年度の機体で採用した展開型剛体枠に加え、インフレータブル構造を組み合わせたハイブリッド型の外枠の開発。(着水後はインフレータブル部がフロートとして機能する) 実験目的 柔構造エアロシェルの高真空、無重量環境での展開実証 緩降下、軟着陸に十分な大きさの柔構造エアロシェルの開発と飛行実証 実験機体の確実な回収
FLIGHT MODEL 展開型柔構造体を用いた回収システム実証試験用フライト機体 収納状態 展 開 (ZYLON織物は東洋紡からの提供) 収納状態 エアロシェルは折りたたまれてカプセル背後に収納される 展 開
FLIGHT SEQUENCE 展開型柔構造体を用いた回収システム実証試験シークエンス
CONCLUTIONS 柔構造エアロシェルを利用した大気突入回収システムの開発の一環として大気球を利用したフライト試験を行った。 直径1.5mサイズの柔構造エアロシェルを有するカプセル型機体を製作し、 2004年8月に大気球により高度39kmからの自由落下飛行に成功した。 その結果、機体は遷音速~低速領域において安定に飛行し、事前の風洞試験などで予測されたとおりの減速性能を発揮することが実証された。 そして、実用化にむけて必要な以下の項目を実証するための次なる実験の 提案を行った 柔構造エアロシェルの高真空、無重量環境での展開 緩降下、軟着陸に十分な大きさの柔構造エアロシェルの開発 実験機体の確実な回収