文化行政のあり方 〜大阪市文楽補助金問題を例に〜

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文化行政のあり方 〜大阪市文楽補助金問題を例に〜 国際文化学部 情報コミュニケーション論講座 1026607c  林 優紀

目次 1・文楽、文楽協会について 2・文楽を取り巻く2つの軸 3・文化改革の二本柱と協会側の対応 4・考察、提言、論点

文楽とは… ・江戸時代初期から伝わる伝統芸能 ・太夫、三味線、人形が一体となった総合芸術 ・人形浄瑠璃の代名詞 人形浄瑠璃文楽は、江戸時代から伝わる日本を代表する伝統芸能の一つで、義太夫節で語る太夫・物語をリードする三味線・人形が一体となった総合芸術です。 その成立ちは江戸時代初期にさかのぼり、古くはあやつり人形、そののち人形浄瑠璃と呼ばれています。 竹本義太夫の義太夫節と脚本家・近松門左衛門の作品により、人形浄瑠璃は大人気を得て全盛期を迎え、竹本座が創設されました。 この後豊竹(とよたけ)座をはじめいくつかの人形浄瑠璃座が盛衰を繰り返し、幕末、淡路の植村文楽軒が大阪ではじめた一座が最も有力で中心的な存在となり、 やがて「文楽」が人形浄瑠璃の代名詞となり今日に至っています。

文楽協会とは… 1963年 文楽協会設立 公演プロデュース、技芸員マネジメント・育成、 舞台技術の保持・育成など公演全般を受け持つ。 1963年 文楽協会設立 公演プロデュース、技芸員マネジメント・育成、 舞台技術の保持・育成など公演全般を受け持つ。 1984年 国立文楽劇場完成(大阪) 明治の終わり頃からは歌舞伎と同じように松竹が文楽の経営権を持ちました。 が、戦後の経営難により1962年に運営を手放します。 国、大阪府、大阪市、NHKなどが相談して1963年に文学協会が設立されました。 当初は、文学の公演全般にかかわる機能を持っていました。 公演のプロデュース、大夫や三味線、人形を担当する技芸員のマネジメントや育成、舞台技術の保持・育成などです。 そして1984年に大阪市の中央区に国立文学劇場が完成し、それを機に、東京大阪で上演する本公演のプロデュースや舞台技術の保持育成の機能は 劇場を運営する独立行政法人の日本文化振興会に移りました。 文楽協会の機能は縮小化し、地方公演や特別講演のプロデュース、技芸員の報酬管理などにとどまっています。 地方公演や特別公演の割合は全体の2割ほどで、しかも地方の劇場側が企画するケースが多いです。 日本芸術文化振興会 東京・大阪公演のプロデュース、 舞台技術の保持・育成 文楽協会 地方・特別公演のプロデュース、 技芸員の報酬管理など

文楽協会の収支 2011年度補助金 公演ごとの収入 国:8.000万円 大阪府:2,070万円 大阪市:5,200万円 本公演 特別公演 地方公演 芸術文化振興会 報酬には関係ない 1億円弱の収入 1,000万円の黒字 文学には大きく分けて、本公演・地方公演・特別公演の3種類があって 年間230日程度公演しており、約25万人を集客しています。 本公演には文楽劇場で公演する大阪公演と東京都の国立劇場で上演する東京公演があります。 本公演は国の独立行政法人の日本芸術文化振興会が興行主です。 本公演での文楽業界の役割は劇場から技芸員の報酬を受け取って、各自に渡すだけで 企画や集客などの工夫はいっさいしません。 また、本公演の収支状況や観客動員数と,82人いる技芸員の報酬は無関係です。 一方で、地方公演と特別公演は文楽協会がプロデュースしています。 人気公演を集めた特別公演からは1,000万円程度の黒字がでています。 地方公演は3,000万円ほどの赤字です。 この赤字分は芸術文化振興基金助成金、放送文化基金助成金で補償されます。 技芸員の養成費や、文楽協会の職員の人件費などの経費が、特別講演からの利益、国・府・市の補助金で補っています。 1億円強の収入 3,000万円の赤字 →技芸員の養成費や人件費、 劇場費用などに使われる。 計 1億5,000万円

両者の軸の違い 芸術文化振興会 文化庁 大阪府 大阪市 「伝統文化を保護・保全すること」を最大の使命とする 大阪を代表する文化として文楽を「都市魅力の創造」に結びつけたい 芸術文化振興会や文化庁は、伝統文化を保護・保全することを最大の使命と考えている。 その手段として「活用」、「上演」があるので少々空席があっても淡々と現状通り続けられたらそれでよい。 また、大衆向けしない演目などもやっていく。 大阪府や大阪市は文楽にも都市魅力の創造に貢献してもらいたいので 文楽劇場がガラガラだと困る。

橋下氏の文楽改革の二本柱 1・補助金の見える化(透明化) 2・インセンティブの導入(意欲刺激) 「養成費」から「経費補助」へ(上限〜2,000万円) +:用途の明確化 —:事務作業の増加、制作力&広報活動さえも疎かに、立て替え費 2・インセンティブの導入(意欲刺激) 集客に連動して補助金を毎年変動させる仕組み(上限〜1,900万 円) +:制作力の強化 —:集客力の指標の問題、集客力弱くても保存・継承する必要は? 「見える化」では、芸歴や年齢に応じて定額が払われていた現行の「養成費」に代わり、 三味線などを購入した際の領収書を提出させ、その一部を助成する経費補助への移行を目指す。 上限は2,000万まで。 演者82人分の領収書チェックなどの事務作業が増えて、市が本来求めている制作力の強化や宣伝活動がおろそかになる可能性もある。 また、若手にとっては立て替えで払う自己資金も必要になる。 月給が10万円しかない若手技芸員もいたりして舞台に専念するのが難しい人もいるくらいだ。 インセンティブ方式は補助金を集客力に連動して、毎年変動させる仕組みで意欲向上を狙う。 上限は1900万円までだ。 市が提案している指標は協会が宣伝・主催していない大阪・国立文楽劇場の年間入場者数である。 例年9万人前後で推移しているが市は10万人というラインを検討しており、 満たなかったらら翌年度の運営補助を減額するつもりだ。

文楽協会側の対応 協会の機能向上について 新たな公演等の試み 広報担当者の配置 技芸員とのコミュニケーション 街角文楽 文楽出前公演の充実 1・ ・協会内に広報担当者を配置して、文楽の積極的な売り込みやメディアへの露出増大を目指した広報活動に精力的に取り組む ・協会側と技芸員から選ばれた代表者とのコミュニケーションを密に双方協力して文楽の新たな普及活動について取り組む。また、協会、技芸員、劇場で 文楽の振興について話し合う場を設ける 2・ ・公共施設のエントランス等での見に公演の実施 公共交通機関に協力いただき電車の中で文楽PR / 各種イベント(式典、楽典、セレモニー、パーティー、結婚式など)でご利用いただきやすいように 出前公演のパッケージ料金を設定しHP上でPRを行う。

考察・提言 具体的な提言は…→ 府・市側と文化庁・協会側の持つ軸の違いが見られる。 「伝統文化の保全」と「都市魅力創造の貢献」は両立する のであろうか? ムダはなくした上で…、文楽を残す為には、演者など 「人」を大切にする必要があるのではないだろうか。 技芸員の月給増・支援 具体的な提言は…→

提言 支持層 普通層 不明層 →現状のまま →取り込む工夫 「難しい」を「易しく」 →関心をもたせる 市民をカテゴリーに分けて考える必要がある。 既に劇場に通うような支持層は、来るので値段設定が4000〜6000円と安いチケット代のままであれば今後も来てくれるだろう。 行きたいな、と思っていてもハードルを感じている人には、字幕つきであったりと難しいものをやさしくできるように工夫がいるが、 ただエンターテイメント性だけを強くするだけにはしないようにするべきである。 文楽についてよく分からない、という層には、若者が多いと思うが無理に来させようとするのではなく こういう文化があるんだ、と意識を持たせるように、遠足などで館内案内サービスをしたり、興味の出そうな部分だけをピックアップして 関心を持たせてもよいであろう。その子たちが大人になった時にまた、観に行きたいと思えたらいいと思う。 →関心をもたせる

論点 税金は、伝統芸能・分かりやすい芸術(ミュージカルな ど)などどのような文化・芸術に使われるべきか。 文化(特にハイカルチャー)を保存する意義、税金をそ こに投入する意味とは何か。 都市ブランドの構築に芸術を利用することはできるのか。