セラミック化学 無機固体化合物の構造と特性
拡散(金属酸化反応) 酸化層の厚さ:x 時間:t 拡散律速の場合 生成速度が厚さに逆比例する場合(dx/dt∝1/x) 表面律速の場合 問 上の二通りの場合に関する酸化層の生成速度式を求めなさい。
バンド理論 バンド構造 考え方(ダイヤモンドの例): 孤立原子同士が集まって結合性軌道と反結合性軌道を形成 ある原子に属する電子は、通常、結合軌道に存在 孤立原子は集合して分子に 集合分子の結合軌道は帯状になる 電子が存在する帯(価電子帯)と存在しない帯(伝導帯) 帯と帯の間の電子が存在し得ない部分がバンドギャップ
エネルギー帯の例(ダイヤモンド) 伝導帯 2p量子状態 エネルギー 2s量子状態 価電子帯 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 格子定数(nm)
バンド構造 伝導帯 バンドギャップ 価電子帯 絶縁体 半導体 金属 (真性半導体)
半導体(不純物半導体) アクセプター順位 真性半導体 不純物半導体 ドナー順位 n型半導体 p型半導体 フェルミ順位
不純物半導体における順位 ― ― ― ― ― 電子の移動 ― 正孔の移動 n型半導体 p型半導体
不純物半導体 n型半導体 p型半導体 導電担体は電子(electron) ドナー順位:電子を与える順位 導電担体は正孔(hole) アクセプター順位:電子を受け入れる順位
pn接合 接合 p型 p型 n型 n型 EFが同レベルに
pn接合 空間電荷層 n型 p型 ― +
pn接合 + ― -V p型 n型 p型 n型 電子は流れやすい (順方向)
pn接合 + ― V p型 n型 p型 n型 電子は流れにくい (逆方向)
pn接合部にエネルギーが与えられると・・・ 電子はn型部に移動して負に帯電 正孔はp型部に移動して正に帯電 つまり、起電力が発生 光起電力 太陽光発電
pn接合の特性ー整流性 トランジスタ(半導体産業の要) npn接合 pnp接合 n型 p型 p型 n型
格子欠陥 点欠陥 点欠陥の例 化学量論組成と非化学量論組成 体積欠陥 (空孔、粒界など) 線欠陥 面欠陥 空孔 格子間原子(イオン) 不純物原子(イオン) 点欠陥の例 ショットキー欠陥 フレンケル欠陥 化学量論組成と非化学量論組成 線欠陥 面欠陥 体積欠陥 (空孔、粒界など)
欠陥の表記法(Kröger-Vink notation) 電子、正孔:e-、h・ 空孔:V 格子間位置:i 不純物原子(イオン):M A:原子記号 a a: 相対価電子数 (通常状態からの変位) A b b:位置
欠陥表記の練習 塩化ナトリウム中のNaイオン、およびClイオン 塩化ナトリウム中のNa位置に入っているKイオン ZnOの格子間位置に存在するZnイオン Znの格子間イオンのそばに見い出だされる欠陥 NiOのNi位置に固溶しているLi Ni位置にLiが固溶しているそばに見い出される欠陥 NiOのNi位置にNiがない欠陥
欠陥表記の考え方 NiOは酸素過剰:Ni1-δO or NiO1+δ この表記の意味は同じ? ZnOは酸素不足:Zn1+δO or ZnO1-δ この場合は? いずれも非化学量論組成 (しかし)電荷の総和はゼロ
原子価制御 電荷の補償 遷移金属イオンの価数を変える 空孔を生成させる ホスト:複数の原子価を有する ゲスト:固有の原子価を有する 方法:原子価が不変のイオンを添加(または置換) ホスト:複数の原子価を有する ゲスト:固有の原子価を有する
原子価制御の例(p型) Li2O→2Li´+O + V‥ NiOにLi2Oを固溶させる場合 2個のLiが2個のNiを置換 Oが1個不足 それらを式で表すと 上式は雰囲気から酸素を取り込まない場合 Li2O→2Li´+O + V‥ Ni × O
p型半導体であるため、 電子ではなく、正孔(ホール)を考える 酸素を取り込む場合: 電気伝導性は向上 Li2O+1/2O2→2Li´+2O +2h Ni ・ × O p型半導体であるため、 電子ではなく、正孔(ホール)を考える
原子価制御の例(n型) Li2O + 1/2O2 + 2e- →2Li´+2O ZnOにLi2Oが固溶する場合 2個のLiが2個のZnを置換 それらを式で表すと 雰囲気から酸素を取り込む場合 Li2O + 1/2O2 + 2e- →2Li´+2O Zn O ×
原子価制御に関する問題 Al2O3 →2Al・+2O + 2e- + 1/2O2 Al2O3 +2h・ →2Al・+2O + 1/2O2 ZnOにAl2O3が固溶する場合 NiOにAl2O3が固溶する場合 Al2O3 →2Al・+2O + 2e- + 1/2O2 Zn O × Al2O3 +2h・ →2Al・+2O + 1/2O2 Ni O ×
原子価制御の応用例 ZnOにAl2O3を加えると焼結性は悪くなる 導電性は向上 ガスセンサや湿度センサ用材料として利用できる
イオン伝導とは? 電解質溶液の場合(例:NaCl水溶液) その他の例:乾電池、自動車用バッテリー 電 極 Cl- Na+
イオン導電体(固体電解質) NaCl水溶液は電解質。しかし、固体のNaClはイオン伝導性を示さない 固体電解質:固体内をイオンが移動する 緻密構造であれば、イオンは移動不可能 高温で格子欠陥が増えればイオンは移動可能 意識的に格子欠陥を導入しても同様
O2-イオン導電体 ZrO2にY2O3 、またはCaOを固溶させたもの (安定化ジルコニア) 左図において CaをZr4+、FをO2-とする 構造の概要: Zr4+の周りには8個のO2-、 O2-の周りには4個のZr4+ 固溶の概要: Ca2+がZr4+位置に置換すると、電荷保存のために酸素が1個余分になり、系外に放出される → 酸素空孔が生成
安定化ジルコニア中の伝導 組成式:Zr1-XCaXO2-X(VO・・ ) X { (1-X)ZrO2 + XCaO→上式 }
酸素空孔移動の様子 酸素空孔が左方向へ移動する様子 抵抗率:約102cm(1000℃)(室温では高抵抗) 実際には、酸素イオンが右方向へ移動している! 問 ZrO2にY2O3を固溶させた場合の反応式を記しなさい。
酸素濃淡電池 酸素分圧の違いを利用した発電 PO2 ›PO1 O2- PO2 PO1 O2 +4e- →2O2- 2O2-→O2 +4e- V 起電力
起電力の計算 起電力Δ= (RT/4F)ln(PO2/PO1) ln X = 2.303 log X (e:2.718・・・) lnX=A×logX→(logX/loge)=A×logX→A=1/loge →A=log10/loge=ln10 Δ=2.3038.314T/496500log(PO2/PO1) ≑ 5.010-5T log(PO2/PO1) (V) 問 酸素分圧が一桁異なる酸素濃淡電池がある。この電池の1000Kにおける起電力を求めなさい。
燃料電池 酸素濃淡電池の応用例 片側を酸素(空気)、片側を水素とする (固体電解質:酸素イオン導電体の場合) O2 H2 2H2+2O2- →2H2O +4e- O2 +4e- →2O2- O2- V 起電力 教科書(図Ⅰ-16)は、プロトン導電体を電解質として用いた場合
燃料電池 固体電解質がプロトン導電体の場合 前と同様、酸素と水素をそれぞれの極に供給 O2 H2 O2 +4H+ +4e- →2H2O 2H2→4H+ +4e- H+ V 水の発生場所に注意! 起電力
2種類の固体電解質型燃料電池 酸素イオン導電体の場合 プロトン導電体の場合 O2- O2 H2 O2 +4e- →2O2- 2H2+2O2- →2H2O +4e- V 起電力 e- H+ O2 H2 O2 +4H+ +4e- →2H2O 2H2 →4H+ +4e- V 起電力 e-
火力発電と燃料電池発電の相違点 火力発電 :利点 欠点 燃料電池発電:利点 ・・・・ ロスが多い 多大な環境汚染 発電効率が低い 火力発電 :利点 欠点 燃料電池発電:利点 ・・・・ ロスが多い 多大な環境汚染 発電効率が低い 低環境汚染など多数 大電流が取り出せない 課題 1.燃料電池の利点・欠点を調べなさい。 2.燃料電池の中でも商用電源として期待される酸化物型燃 料電池に使用されるセラミックスについて調べなさい。
格子欠陥に関する問題 ZrO2を0.9モル、Y2O3を0.05モル混合後、空気中で焼成して作製した固溶体の組成式を記しなさい。 ZnO 0.99molとAl(NO3)3 0.01molを混合後、空気中で焼成して作製した固溶体の組成式を記しなさい。ただし、酸素のモル数を1とする。 MgOの組成に注目して、その電気伝導性について説明しなさい。 NiO中には陽イオン空孔が存在することを考慮して、酸化ニッケルの組成式を記しなさい。 NiOの粉末を成形加圧後、1000℃、および1300℃で焼成した。これら2種類の焼結体の電気伝導性の違いについて説明しなさい。 Zn1+O(=0.0001)で表される化合物中に含まれる格子欠陥について説明しなさい。 MgOにLi2Oを少量固溶させた場合に生成する可能性がある格子欠陥について説明しなさい。