1. イントロダクション:溶液中における構造不均一性の形成と拡散

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1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
環境表面科学講義 村松淳司 村松淳司.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
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シラバス説明(重要事項のみ) 到達度目標 授業計画 1.溶液中の酸化還元反応を理解し、反応式を自由に書くことができる(基礎能力)
第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
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第1回応用物理学科セミナー 日時: 5月19日(月) 15:00ー 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 Speaker:鹿野豊氏
輻射優勢円盤のMHD数値実験 千葉大学宇宙物理学研究室 M2 松尾 圭 Thu.
TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一.
科学的方法 1) 実験と観察を重ね多くの事実を知る 2) これらの事実に共通の事柄を記述する→法則 体積と圧力が反比例→ボイルの法則
ソースコードに対する適用可能な修正手順を 可視化するリファクタリング支援手法の提案
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
MBE成長GaAs表面の平坦化とそのAFM観察
乳児における 運動情報と形態情報の相互作用
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
耐COアノード用錯体触媒の機構解明と設計に向けた第一原理計算
「プラズマエッチングによるレジストパターン転写実習」
リチウムイオン内包フラーレン修飾体の13C NMR測定
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化学生命理工学実験 II アフィニティークロマトグラフィー (2)
中性子干渉実験 2008/3/10 A4SB2068 鈴木 善明.
情報化社会を支える量子ビームと化学 大阪大学産業科学研究所 古澤孝弘 ナノサイエンス・ナノテクノロジー高度学際教育研究訓練プログラム
今後の予定 4日目 10月22日(木) 班編成の確認 講義(2章の続き,3章) 5日目 10月29日(木) 小テスト 4日目までの内容
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
原子核物理学 第2講 原子核の電荷密度分布.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
塩霧室試験用丸棒試料の吸水及び乾燥過程の評価
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
分子動力学計算によりプリオンタンパク(野生型・変異型)が
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
超低コスト型色素増感太陽電池 非白金対極を使用 色素増感太陽電池 Dye-sensitized solar cells (DSSCs)
平成30年度教員免許更新講習 小学校理科の実験講習 2.水溶液の性質.
第8回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム 「機能性材料の最前線」
アセチリド錯体を構成要素とする 分子性磁性体の構築と その構造及び磁気特性の評価
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
サーマルプローブを用いたイオン温度計測の新しいアプローチ
第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム
B4報告会 拡散対を用いた銅系金属間化合物の生成挙動
タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
La及びY添加した層状熱電変換酸化物Ca349の結晶構造と熱電特性 H.Nakatsugawa and G.Kametani
全原子の位置 r(t) を求める(各原子がいつ,どこにあるか)
水素の室温大量貯蔵・輸送を実現する多孔性材料の分子ダイナミクスに基づく解明と先導的デザイン
プラズモニック構造付シリコン光検出器のHPC援用設計に関する研究
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
高プロトン伝導性ポリイミド薄膜の配向構造解析(S-13-NU-0012)
3.ワイドギャップ半導体の オーム性電極材料開発
屋外絶縁用高分子材料の 撥水性の画像解析に関する研究
シェールガス資源量評価を目的としたケロジェンナノ孔隙内のメタン吸着挙動に関する分子動力学シミュレーション
MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して)
大規模並列計算による原子核クラスターの構造解析と 反応シミュレーション
イミダゾリウム系イオン液体(3)ー分子性液体(2)混合溶液の二酸化炭素溶解度(1)
第35回応用物理学科セミナー Speaker:田中良巳氏 Affiliation: 横浜国立大学 准教授
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
YBCO線材の高磁界中における臨界電流特性
キャビテーションを応用した水質浄化方法に関する研究
電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
複合アニオンに起因した多軌道性と低次元性からうまれる 強相関電子物性の研究
K2 = [ln K] = ln K2 – ln K1 = K1.
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1. イントロダクション:溶液中における構造不均一性の形成と拡散 EX18706 (大阪大学サイバーメディアセンター推薦課題) 石井 良樹 (大阪大学大学院基礎工学研究科) イオン液体の輸送物性における構造不均一性の役割の分子論的解明 1. イントロダクション:溶液中における構造不均一性の形成と拡散 1.1 アルコール水溶液の構造不均一性 ここ数十年,イオン液体の優れた電解質特性,ガス吸収特性が注目されており,その材料設計の指針を得るため,輸送物性の実験測定が進められてきた。しかし,ナノスケールの不均一構造の発見は,分子の不均一な拡散挙動を誘起するものであり,巨視的な輸送係数と関連付けることが難しい。 一方で申請者らは,分子動力学(MD)計算を用いた研究から,混合溶液の過渡的な凝集体の形成を定量的に追うことができること,また液体系の輸送係数は分子間の相互作用の強さに依存し,その挙動は溶質のサイズが数ナノメートル程度まで大きくなっても変わらないことをそれぞれ明らかにしてきた。これらの結果から,溶質分子の溶媒和環境が不均一化すると,周囲から受ける相互作用が変化し,輸送物性にも影響しうると考えられる。 1.2 単成分溶液の分子の拡散ダイナミクス ① フラーレン分子の場合 system: 1-propanol aqueous solution molecules: 2200 : 8876 model: OPLS-AA, SPC/E MD package: Gromacs 4.5.5 reference: M. Ogawa, Y. Ishii, and N. Ohtori, Chem. Lett. 45, 98 (2016). system: fullerene nanoparticles in liquid Ar molecules: 8+160,000 reference: Y. Ishii, and N. Ohtori, PRE 93, 050104 (2016). ② 小分子の場合 2. 本研究の目的:  組成一定のまま温度や密度などの熱力学変数を変えると,構造不均一性はどのように変化し,輸送物性にどのように寄与するのかを調べる。特に分子動力学(MD)計算を用いることで,小分子が溶媒和した系に着眼し,溶媒分子と溶質分子の挙動の違いをナノ~メゾスケールの構造から調べることで,構造と溶媒和特性,輸送係数の間の関係を明らかにする。 3. 研究内容の紹介: 3.1 イオン液体の構造不均一性と溶媒分子 3.2 ガス分子を吸収したイオン液体の輸送係数 [C4mim]Cl 極性部 極性部と非極性部 非極性部 非極性部 ②温度や圧力,構造不均一性がどのように変わる?溶媒の輸送係数の依存性にも影響する? ③溶質となるガス分子の拡散係数は,構造や溶媒和特性で推量できる? ①ここに中性分子が溶媒和すると,極性部と非極性部とその界面,どこに溶媒和する? 中性分子 本日までに得られた結果については,口頭と別資料にてご説明させていただきます 4. 謝辞:  本研究は日本学術振興会・科学研究費助成事業(Grant No. 17J01006)の支援を受けて実施しており ます。また本研究の先行研究は,東京大学情報基盤センターの平成29年度若手・女性利用者推薦制度の 援助を得て,スーパーコンピュータReedbushを用いて実施させていただきました(平成29年度 萌芽採 択課題『密度汎関数法を用いた凝縮系の電荷分布とその溶媒和構造依存性の解明』課題番号:EX17328) 。この場を借りて御礼申し上げます。