平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:芳香族性 奥野 恒久.

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平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:芳香族性 奥野 恒久

芳香族化合物 平面環状のπ電子系を有する単環・縮合多環の化合物 例1)ベンゼン、ナフタレン、アントラセン 例2)アヌレン、アズレン、フルバレン、フラーレン

芳香族性の尺度 反応性 水素化熱 理論計算(旧) 1H NMRの化学シフト 磁化率 理論計算(新)

芳香族性の尺度1 反応性 付加反応ではなく置換反応が進行する。 共鳴安定化 例)

シクロヘキセンの水素化熱:-119kJ/mol 芳香族性の尺度2 水素化熱 ベンゼンの水素化熱:-206 kJ/mol シクロヘキセンの水素化熱:-119kJ/mol シクロヘキサトリエン 119x3-206 = 151kJ/mol 安定化

芳香族性の尺度3,4 1H NMRの化学シフト 磁化率 磁気異方性(環電流効果)を利用 H外側 H内側 H外側 H内側 芳香族 低磁場シフト 高磁場シフト diatropic 反芳香族 高磁場シフト 低磁場シフト paratropic 磁化率 反磁性磁化率(<0)の大きさで議論 芳香族→反磁性環電流→磁化率小さい(負で大きい) 反芳香族→常磁性環電流→磁化率大きい(負で小さい)

REPE: Resonance Energy per Electron Hückel 則 平面性 単環性 (4n+2)π電子 安定化エネルギーの定量化 REPE: Resonance Energy per Electron 単環性共役電子系の1電子当りの共鳴エネルギー (b=140kJmol-1)

Dewarの共鳴エネルギー ・半経験的分子軌道法で分子エネ ルギーE1を原子化熱として計算 ・C=C, C-C, C-Hに固有の基準結合  ルギーE1を原子化熱として計算 ・C=C, C-C, C-Hに固有の基準結合  エネルギーを割り当てる。総和をE2 DRE = E1 – E2 DRE > 0 : 芳香族 DRE < 0 : 反芳香族 DRE ~ 0 : 非芳香族 縮合多環共役電子系、ヘテロ共役電子系への適用

Hess-Schaadの共鳴エネルギー ・C=C, C-C, C-Hに固有の基準結合 エネルギーを割り当てる。総和をE3  エネルギーを割り当てる。総和をE3 ・HMOから求めたπ電子エネルギーE4 結合エネルギーb(b>0) CH2=CH2 2.0000 CH=CH 2.0699 CH2=C 2.0000 CH=C 2.1083 C=C 2.1716 CH-CH 0.4660 CH-C 0.4362 C-C 0.4358 HSRE = E4 – E3

DewarとHess-Schaadの共鳴エネルギーの相関 ベンゼン ナフタレン アントラセン フェナントレン ピレン トリフェニレン ペリレン コロネン アズレン ペンタレン ヘキサレン シクロブタジエン テトラレン? カリセン DewarとHess-Schaadの共鳴エネルギーの相関

芳香族性の尺度 新しい理論計算 環の中心の遮蔽の大きさを計算 NICS: Nucleus Independent Chemical Shift 芳香族:NICS<0 反芳香族:NICS>0 ベンゼン -9.7 シクロブタジエン 27.6

単環性アヌレン1:[4n]アヌレン シクロブタジエン 単純ヒュッケル分子軌道法によると a-2b a a+2b 基底三重項状態? vs.

構造と電子配置 正方形(D4h) 三重項状態 (3A2g) 一重項状態 (1B1g)

構造と電子配置 長方形(D2h) 一重項状態 (1Ag)

エネルギー相関図

シクロブタジエン誘導体の構造 152.4 pm 144.1 pm 結合交替している 対称性:D2h

[8]アヌレン シクロオクタテトラエン(COT) C=C: 134.0 pm, C-C: 147.6pm D4h D8h D4h BS BS RI RI BS: Bond Shift RI: Ring Inversion DG‡BS = 70.0 kJ/mol DG‡RI = 52.2 kJ/mol

[12]アヌレンおよび[16]アヌレン [12]アヌレン [16]アヌレン

[4n+2]アヌレン [6]アヌレン = ベンゼン [10]アヌレン 光照射 熱反応 光照射 光照射 cis体は非芳香族

アヌレン(おまけ) デヒドロアヌレン 架橋アヌレン

さまざまな共役電子系 交互および非交互炭化水素 ひずんだベンゼン 縮合多環共役系 交差共役系 多段階酸化還元系 安定中性ラジカル ホモ共役系

交互および非交互炭化水素 ・炭素原子に交互に星をうっていく  交互炭化水素・・・星が隣り合わない (alternant hydrocarbon) 偶交互炭化水素・・・星と非星が同数 (even alternant hydrocarbon) 奇交互炭化水素・・・星と非星が異なる (odd alternant hydrocarbon) 非交互炭化水素・・・星が隣り合う (non-alternant hydrocarbon)

交互および非交互炭化水素 星:5 非星:5  交互炭化水素 星:7 非星:7 非交互炭化水素 偶交互炭化水素 奇交互炭化水素 星:7 非星:6

Kekulé炭化水素と非Kekulé炭化水素 ・閉殻構造が書けるか否か 非Kekulé炭化水素 Kekulé炭化水素 ・交互系では、結合性と反結合性軌道のエネルギーが対称 ・奇交互系では、星組ー非星組の数だけNBMOが存在 分子磁性体(高スピン分子の合成)