合成伝達関数の求め方(1) 「直列結合 = 伝達関数の掛け算」, 「並列結合 = 伝達関数の足し算」であった。

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Division of Process Control & Process Systems Engineering Department of Chemical Engineering, Kyoto University
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合成伝達関数の求め方(1) 「直列結合 = 伝達関数の掛け算」, 「並列結合 = 伝達関数の足し算」であった。 では、もっと複雑な場合はどうであろうか? 例えば、以下の場合で G(s) = Y(s) / R(s) を求めることを考えよう。 関係式を書き出すと、U(s) = R(s) – Y(s), Y(s) = G0(s)U(s) の2つ。求めたいのは、R(s) と Y(s) の関係であるから、無関係な U(s) を消去しよう。 Y(s) = G0(s)(R(s) – Y(s)) 移項すると、(1 + G0(s))Y(s) = G0(s)R(s) となるので、R(s) と Y(s) の比を求めると、 R(s) U(s) Y(s) G0(s) + –

合成伝達関数の求め方(2) より複雑な場合も同様に合成伝達関数を求めることができる。 [例] 関係式: U1(s) = U(s) – Y2(s), U2(s) = Y1(s) – Y3(s), U3(s) = Y2(s), Y(s) = Y3(s), Y1(s) = G1(s)U1(s), Y2(s) = G2(s)U2(s), Y3(s) = G3(s)U3(s) U1(s), U2(s), U3(s), Y1(s), Y2(s), Y3(s) を消去。 Y (s) = G3(s)G2(s)(G1(s)(U (s) – G3(s)–1Y (s)) – Y (s)) U (s) U1(s) Y1(s) U2(s) Y2(s) U3(s) Y3(s) Y(s) G1(s) G2(s) G3(s) + + – –

フィードバック系の伝達関数(1) 単純フィードバックの場合: 補償器 C(s) を入れたフィードバックの場合: U(s) E(s) Y(s) G0(s) + – 一巡伝達関数: G0(s) = C(s)GP(s) とおけば、 単純フィードバックの場合と同じ U(s) E(s) Y(s) C(s) GP(s) + –

フィードバック系の伝達関数(2) フィードバックループ内に補償器を2つ入れた例: 一巡伝達関数…E(s) から始まって、フィードバックの枝で戻ってくるまでの一巡の伝達関数。 どの場合も、「一巡伝達関数」G0(s) と「入力から追従誤差までの伝達関数」の関係は、E(s) / U(s) = 1 / (1 + G0(s)) 。 U(s) E(s) Y(s) C1(s) GP(s) + – C2(s)

フィードバック系の極とゼロ点 単純フィードバック、あるいはプラントの前に補償器を置く構成を考える。 一巡伝達関数を次のようにおく。 このとき、 フィードバックによって 分子は変わらない (極-ゼロ相殺の場合を除く) 分母は変えることができる。 つまり、安定性を変えることができる。

定常偏差 プラントの前に補償器を置く構成を考える。 入力 u(t) = L–1[U(s)]が出力 y(t) = L–1[Y(s)] の目標値である場合、 e(t) = L–1[E(s)] は、”出力とその目標値との偏差”である。 偏差 e(t) が、t   のときある値に収束するなら、その値を定常偏差と呼ぶ。 入力が u(t) = 1 (単位ステップ入力) であるときの定常偏差 … 定常位置偏差 入力が u(t) = t (単位ランプ入力) であるときの定常偏差 … 定常速度偏差 入力が u(t) = t2 / 2 であるときの定常偏差 … 定常加速度偏差 U(s) E(s) Y(s) C(s) GP(s) + 一巡伝達関数: G0(s) = C(s)GP(s) –

最終値定理の復習 時間関数 f(t) の最終値 f(+) をラプラス変換から求める方法。 [仮定1] 任意の T > 0 に対して、f(t) は区間 [0, T] で積分可能。 [仮定2] 最終値 f(+) が存在する (極限が発散したり、振動が残ったりしない)。 つまり、 の最終値を求めれば、定常偏差が得られる。 ただし、「最終値が存在すれば」という条件が付く。最終値が存在しない場合においては公式を使うと無意味な値が出てしまう。 最終値定理: 上記の仮定を満たすならば、

定常位置偏差 定常位置偏差が存在する条件: 閉ループ系 G0(s) / (1 + G0(s)) が安定であること。 このとき定常位置偏差は次のように求められる。 ただし、 。 を位置偏差定数という。 定常位置偏差が 0 となる条件:閉ループ系 G0(s) / (1 + G0(s)) が安定であり、かつ D(0) = 0 となること。つまり、閉ループ系が安定で、一巡伝達関数の極が1つ以上 s = 0 にあること。 補償器の分母多項式に因子として s をもち、閉ループ系が安定ならば定常位置偏差が 0。 [例] 分母多項式に因子として s をもつ

定常速度偏差 定常速度偏差が存在する条件: 定常位置偏差が 0 であること。 このとき定常速度偏差は次のように求められる。 ただし、 。 を速度偏差定数という。 定常速度偏差が 0 となる条件: 閉ループ系 G0(s) / (1 + G0(s)) が安定であり、かつ D(s) / s  0 (s  0)。つまり、閉ループ系が安定、かつ一巡伝達関数の極が2つ以上 s = 0 にあること。

定常加速度偏差 定常加速度偏差が存在する条件: 定常速度偏差が 0 であること。 このとき定常加速度偏差は次のように求められる。 ただし、 。   を加速度偏差定数という。 定常加速度偏差が 0 となる条件: 閉ループ系 G0(s) / (1 + G0(s)) が安定であり、かつ D(s) / s2  0 (s  0)。つまり、閉ループ系が安定、かつ一巡伝達関数の極が3つ以上 s = 0 にあること。

定常偏差の計算の例 [例] C(s) = K (正の定数) の場合: G(s) = K / (Ts + K + 1) … 安定 → 定常位置偏差は存在する。 定常位置偏差は C(s) = K / s (ただしK > 0) の場合: G(s) = K / (Ts2 + s +K) … 安定 → 定常位置偏差は存在する。 定常位置偏差は →定常速度偏差も存在 定常速度偏差は U(s) E(s) Y(s) C(s) GP(s) + –

PID制御 前置補償器として、 を使う制御。これは、 比例制御 (P制御) KP 積分制御 (I制御) KI /s 微分制御 (D制御) KDs を組み合わせたものである。I制御のおかげで、定常位置偏差は0である。 KD  0 のとき、C(s) はプロパーではなくなる。そのため、D制御を除いた、「PI制御」も良く用いられる。 KP + U(s) E(s) R(s) + Y(s) KI /s GP(s) + – + KDs

PIDゲインの決定法(限界感度法など) PIDは系を安定にするとは限らない。ゲインの決め方はほとんど経験則。 限界感度法 (Ziegler=Nichols の限界感度法) 部分的モデルマッチングに基づく方法 (北森の方法)…. 限界感度法 求めたい保証器を C(s) = KP(1 + 1 /(TI s) + TD s) のようにおく。 制御対象を、2次系 + 無駄時間系 (無駄時間 L) とする。 GP(s) = Ke–sL/{(T1s + 1)(T2s + 1)} いったん、C(s) = KC (定数) とし、安定限界になるまで KC を大きくする。そのときの振動周期を TC とおく。 KP, TI, TD を次のように決める。 KP TI TD P 0.5KC - PI 0.45KC TC / 1.2 PID 0.6KC 0.8TC TC / 8L

I-PD制御 PID制御系において、目標値 r(t) をステップ状に変化させた場合、入力も急峻に変化する。特にD動作が入っている場合、インパルス状の入力になる。 これを避けるために、P動作とD動作に目標値 r(t) の影響を直接受けないようにする「I-PD制御」が考案された。 TD  0 のとき微分器が必要になるが、I-PD制御の場合、状態の一部を取り出すことで微分の代わりにすることができることがある。たとえば、機械系で「位置」が出力のとき、微分器を用いる代わりに、状態の一部である「速度」を用いればよい。 + R(s) E(s) + U(s) Y(s) 1 / TI s KP GP(s) + – – – 1 TDs