小玉英雄 宇宙物理理論グループ 素粒子原子核研究所,KEK

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宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
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小玉英雄 宇宙物理理論グループ 素粒子原子核研究所,KEK 宇宙の音を聴く  小玉英雄 宇宙物理理論グループ 素粒子原子核研究所,KEK KEK・総研大夏期実習 2009年6月2日

宇宙の一様性の謎 宇宙ゆらぎの起源 天体の起源 宇宙構造の起源 ダークマターの実体 元素の起源 宇宙膨張の謎 物質の起源 宇宙創成の謎 インフレーション 熱いビッグバン宇宙 現在の宇宙の加速膨張 暗黒時代 ダークマターの実体 元素の起源 ダークエネルギー ダークマター 通常物質 宇宙膨張の謎 物質の起源 宇宙創成の謎

構成プラン 宇宙地図 宇宙膨張の謎 宇宙音波とCMB 宇宙創成の謎 Hubbleの法則 GRSによる宇宙地図 実習1:一様モデル 宇宙論の基本方程式 実習2:空間曲率 Friedmannモデル 宇宙パラメータ 宇宙の距離梯子 宇宙膨張による赤方偏移 光度距離・赤方偏移関係 実習3:宇宙モデルとd-z SNIa観測 実習4:宇宙の加速膨張 ダークエネルギー問題 宇宙音波とCMB 実習5:ビッグバン宇宙 Jeans長 実習6:宇宙のJeans長 実習7:宇宙ゆらぎ WMAP観測 Doppler peaks 宇宙のdark pie 宇宙創成の謎 フリードマンモデルの諸問題 インフレーション 量子ゆらぎから銀河へ CMBによるインフレーションの検証 インフレーション問題 宇宙誕生を観測する

宇宙膨張と宇宙地図

Hubbleの法則 銀河の後退運動 δ-Cepheid型変光星に対する光度周 期関係 Hubbleの法則 [Vesto Melvin Slipher (1912)] Andromeda銀河を除く多くの銀河から の光が赤方偏移. z´¢¸/¸ =v/c >0 δ-Cepheid型変光星に対する光度周 期関係 [Henrietta Swan Leavitt (1916)]  絶対等級 M = - a log(P) + b Hubbleの法則 [Edwin Hubble, Milton Humanson (1929)] z=v/c / d ) v = H0 d

補足: Cepheid Variables Cepheid型変光星の距離決定 周期光度関係 <MV> = -3.53 log P + 2.13 (<B0> - <V0>) + f f ~ -2.25: a zero point. P in days 適用範囲: 7Mpc (M101) on Ground; 25Mpc by HST Cepheidは超巨星であるため,遠方まで観測可能. Pop I 型星なので,楕円銀河(や球状星団)には含まれない.

Mathewson, Ford and Visvanathan (1986) ApJ 301: 664

Hubbleの法則 by Hubble & Humanson    赤方偏移: z = v c = 遠方の銀河は距離に比例する速度で我々から遠ざかる運動をしている. E. Hubble: PNAS 15: 168 (1929) 1Mpc=106 pc 1pc= 3.26光年

Hubble定数 by HST H0の観測値 H0= 71 +/- 7 km/s/Mpc 1Mpc= 106 pc 1pc=3.26 光年 = 3£ 1018cm

CfA Survey Outline Hubble則を用いて宇宙を測る CfA1 1977-1982 CfA2 1985-1995 CfA Huchra Hubble則を用いて宇宙を測る Outline CfA1 1977-1982 PI: Marc Davis, John Huchra, Dave Lathan, John Tonry Selection: m<14.5 in UGC CfA2 1985-1995 PI: John Huchra, Margaret Geller Sky coverage: ' 40% Redshift of 18,000 bright galaxies v < 15,000km/s (z<0.05)

CfA2/sky map Red V < 3000 km/s Blue 3000 < V < 6000 km/s Magenta 6000 < V < 9000 km/s Cyan 9000 < V < 12000 km/s Green 12000 < V km/s

CfA2/slice map

Great Wall & Southern Wall Geller MJ 1997 Rev. Mod. Astron. 10: 159 Ramella, Geller and Huchra ApJ 384, 404, 1992

銀河赤方偏移サーベイ プロジェクト名 観測期間 観測領域 銀河数 CfA 1977-1982 CfA2 1985-1995 34% (北天) 18,000 SSRS -1998? 13% (南天) 5,400 LCRS 1987-1997 1.7%(南北銀河極近傍) 26,000 2dFGRS 1996-2003 3.6% (南天) 220,000 6dFGRS 2001-2006 (南天) 150,000 SDSSI 2000-2005 19% (主に北天) 657,000 SDSSII 2005-2008 20% (主に北天) 790,000

2dF(two degree fields) GRS

銀河分布のフィラメント・ボイド構造

Void Statistics (2dFGRS) [Hoyle F, Vogeley MS “Voids in the 2dF Galaxy Redshift Survey” ApJ607:751 (2004)]

The Sloan Digital Sky Survey Outline SDSS-I: April 2000 - June, 2005. (5 years) Site: 2.5-meter telescope on Apache Point, NM, equipped with two powerful special-purpose instruments. The 120-megapixel camera can image 1.5 square degrees of sky at a time Selection criteria: Bright galaxies, the "main" sample, with Petrosian r-band magnitude < 17.77 (see this pie plot showing the redshift distribution of 78275 DR1 galaxies with -15° < DEC < 20°). Luminous Red Galaxies (LRGs) with Petrosian r-band magnitude down to 19.5 (see this redshift distribution of DR1 "main" galaxies and LRGs), and Quasars, targetting quasar candidates as faint as i < 20.2 (see this DR1 quasar redshift distribution). Skycoverage: More than 8,000 square degrees of the sky in five bandpasses, Objects: 200 million celestial objects, spectra of more than 675,000 galaxies, 90,000 quasars, and 185,000 stars. SDSS-II: June, 2005 -June, 2008 Three surveys: the Sloan Legacy Survey, SEGUE, and the Sloan Supernova Survey the Sloan Legacy Survey: 860,000 galaxies, 105,000 quasars; 8,400 deg2,z決定精度 30km/s SEGUE (Sloan Extension for Galactic Understanding and Exploration): 240,000 stars the Sloan Supernova Survey : 南天 300 deg2 の複数スキャン SDSS-III: 2008-

SDSS/DR6 Astrophys.J.674:768-783,2008. e-Print: arXiv:0708.0030 [astro-ph]

SDSS/slice map

SDSS Baryon Acoustic Oscillation SDSS Collaboration: ApJ 633: 560 (2005)

実習1 v = H0 r ) v’ = v- v(a)= H0 r – H0 a = H0(r-a) ) v’ = H0 r’ Q1-3 宇宙のVバンドでの光度密度の観測値 は で与えられる.天体の質量光度比を = M/L により定義すると,銀河に対する M/L比は 10 h(M/L)⊙ 程度となる.これら より,宇宙の平均密度を推定せよ.(太 陽質量はM⊙ = 2£ 1033g ) (解答) ½ = j0£ M/L ' 5£ 108 M⊙ /Mpc3    = 5 £ 108 £ 2£ 1033 /(3£ 1024 cm)3 ' 4£ 10-32 g/ cm3 cf. mp= 1.67£ 10-24 g ) ½ ¼ 0.03 mp/m3 Q1-1 Hubbleの法則 v=Hd が我々から見て厳 密に成り立つとすると,我々から距離 a の銀河にいる観測者にとって他の銀河は どのように運動して見えるか?(宇宙の 一様等方性) (解答) v = H0 r  ) v’ = v- v(a)= H0 r – H0 a = H0(r-a)  ) v’ = H0 r’ Q1-2 Hubbleの法則が大きな距離でもそのま ま成り立つとすると,銀河の後退速度が 光速に達する距離は?(ホライズン) z=1 , c / H0 = 3£ 105 km/s / (70 h70 km/s/Mpc) = 4,400 Mpc

Q1-6 Q1-5で求めた R(t)に対する方 程式の一般解を求めよ. (解答) k>0のとき: k=2GM/Rm, x=R/Rm , ¿ = t/(Rm3/(2GM))1/2 d¿ = x dx/(x(1-x))1/2 x=(1-cosµ)/2 ) ¿=(µ-sinµ)/2 (0· µ · 2¼) k<0のとき: k= - 2GM/Rm, x=R/Rm , d¿ = x dx/(x(1+x))1/2 x=(coshµ-1)/2 ) ¿=(sinhµ -µ)/2 (0· µ ) Q1-4 銀河の運動速度が一定とする.このとき,過去に時間をさかのぼると銀河の分布はどのように変化するか?また,その変化の特徴的な時間はいくらか.(宇宙年齢) (解答) t –t0= - 1/H0 で一点に集まる. 時間は,1/H0= 1.4 £ 1010 h70-1 yr Q1-5 半径 Rの質量Mの一様なガス球を考える.このガス球が一様性を保って膨張するとき,半径と密度の時間変化を決める方程式を求めよ.ただし,ガスの圧力は重力に比べて無視できるとする.さらに,時間t無限大で,膨張速度 dR/dtがゼロに近づく解を求めよ. (解答) d2 R/dt2 = -GM/R2 ) (dR/dt)2 – 2GM/R= -k. M= 4¼ ¹ R3/3 ) ¹ = 3M/(4¼ R3). R=(GM/2)1/3 (3t)2/3 ) R=R0 (t/tf)2/3; tf=1/(6¼ G ¹0 )1/2 ¹ = ¹ 0 (tf/t)2

宇宙膨張の謎

宇宙論の基本方程式 宇宙膨張の方程式 エネルギー方程式

実習2:空間の曲率 Q2-1. 3次元球面 (解答) Q2-2. Minkowski時空内の3次元双曲面 K=1/R2 K= - 1/R2 X2+Y2+Z2+W2=R2 において,北極 N(0,0,0,R)から距離  以下の点の集合 D(Â)の体積V(Â)および表面積S(Â)を求めよ. (解答) S(Â)= 4¼ R2 sin2(Â/R), V(Â)= s0 d S(Â)= (2Â-Rsin(2Â/R))R2/4 Q2-2. Minkowski時空内の3次元双曲面   X2+Y2+Z2-T2=-R2 において,点O(0,0,0,R)を中心としてQ2-1と同様の量を求めよ. S(Â)= 4¼ R2 sinh2(Â/R), V(Â)= s0 d S(Â)= (sinh(2Â/R) -2Â)R2/4 K=1/R2 K= - 1/R2

Friedmann宇宙モデル K=0 K>0 K<0 Hubbleの法則(1929) 銀河の後退速度 / 距離 v= H0 r  銀河の後退速度 / 距離  v= H0 r K=0 宇宙の膨張と一様等方性 Robertson-Walker宇宙モデル 空間は一様等方で,一様な曲率 K をもつ 空間のサイズ a(t)が時間 t 共に増大 K>0 K<0 重力は引力 ⇒ 宇宙膨張は減速型 ⇒ 有限な宇宙年齢         ⇒ Big-bangモデル

宇宙パラメーター ハッブル定数 宇宙膨張の方程式 エネルギー方程式 物質組成 密度パラメーター wパラメーター

宇宙膨張による赤方偏移 Robertson-Walker計量 宇宙膨張とハッブル則 光線の伝播 赤方偏移 特に,d= c(t_0-t) が小さいとき,

光度距離ー赤方偏移関係 赤方偏移 z と宇宙サイズ a の関係 距離と面積の関係 dL – z関係

実習3:光度距離-赤方偏移関係 Q3-1 次の3つのモデルに対して,光度距離とzの関係を求めよ: (解答) Einstein-De Sitter宇宙モデル: (M,K,¤)=(1,0,0) De Sitter宇宙モデル: (M,K,¤)=(0,0,1) Milne宇宙モデル:(M,K,¤)=(0,1,0) (解答) Q3-2 Einstein-de Sitterモデルを基準にするとき,他の2つのモデルでは,z=1にある天体の等級はどれだけずれるか?(ln 10 =2.3)

Hubble Diagramの拡張 Flat ΛCDM models Curved CDM models Degeneracy

SNIa で宇宙を計測する Ia型超新星までの距離 これまでの観測 光度曲線が、ピーク時の色指数と光度減衰時間により良い精度で分類されることを用いて,絶対光度を推定. 適用距離: >60Mpc これまでの観測 (High z) Supernova Search Team 1998 Riess AG et al 16 SNe Ia (z=0.16-0.62) + 34 nearbys 2004 Riess AG et al 16 SNe Ia (z>1.25 by HST) + 170 SNe Supernova Cosmology Project 1997 Perlmutter S et al 7 SNe Ia (z=0.35-0.46) 1998 Perlmutter S et al 42 SNe Ia (z=0.18-0.83) 2003 Knop RA et al 11 SNe Ia (z=0.36-0.86, HST) Supernova Legacy Survey 1st yr 2005 Astier P 71 SNe Ia (0.249<z<1.01) + 44 nearbys

Supernova Legacy Survey SNLS collaboration: A&A 447:31 ( 2006)

実習4:何を意味するのか? 宇宙は現在,加速膨張している!! 重力が引力 ⇔ 宇宙膨張が減速 宇宙膨張が加速 ⇒ 重力が斥力 Q4-1.宇宙膨張の基本方程式を用いて,現在の宇宙膨張 の加速度(d2 a/dt2)を密度パラメータで表せ.また, 密度パラメーター (M,K,¤) =(0.26,0,0.74)に対 して,加速度の値をを計算せよ. (解答) Q4-2. 宇宙膨張の基本方程式を用いて,宇宙膨張の加 速度(d2 a/dt2)をエネルギー密度½と圧力Pで表せ. (解答) Q4-3. ダークエネルギーの密度をPlanck単位(G=1, c=1, ~=1)で表すといくらか?(tpl=(G~ /c5)1/2 =5.4£ 10-44 s, 1yr=3£ 107 s) 重力が引力 ⇔ 宇宙膨張が減速 宇宙膨張が加速 ⇒ 重力が斥力 重力が斥力 ⇔ 圧力 P < - /3

Reacceleration of the Universe Discovery by SNIa (SNCP, HzST) WMAP 1st year 2005 BAO (SDSS) WMAP 3rd year Chandra X observation (fgas method) 2008 WMAP 5 year data 宇宙の膨張速度 インフレーション 熱いビッグバン宇宙 宇宙時間 現在の宇宙の加速膨張 暗黒時代

ダークエネルギー問題 一般相対性理論が宇宙のスケールで正しいとすると,量子エネルギーを含めて,真空のエネルギーが 正である (加速問題), 素粒子物理の特徴的なエネルギースケールと比べて異常に小さい (階層性問題), Cf. 真空の構造が変化する特徴的なエネルギースケール EPlanck=1028eV, EGUT=1025eV, EEW=1011eV, EQCD=108eV ちょうど現在の物質密度と同程度である(一致問題).

 様々な理論的試み 特別の場を導入 Quintessence, K-essence, phantom field, dilatonic ghost condensate, tachyon field(¾ Chaplygin gas), 量子重力 Spacetime foams, EPI, baby universe 重力理論の変更 ミクロでの変更: 弦理論・M理論 長距離での変更: Lorentz不変性の自発的破れ, f(R,,r) モデル, TeVeS理論, DGPモデル 人間原理 ダークエネルギー問題は、21世紀に残された最大の難問。その解決には,真空のエネルギーを完全にコントロール出来る基礎理論(重力を含む統一理論)の構築が不可欠! Ref: Copeland, Sami, Tsujikawa: IJMPD15, 1753(2006)

宇宙音波とCMB

実習5:ビッグバン宇宙 Q5-1. 現在の宇宙は,約2.74KのPlanck分布をする 熱放射により満たされていることが知られてい る(CMB).光子ガスのエントロピー密度がT3に 比例することを利用して,宇宙のエントロピー が一定とした場合のCMBの温度Tとスケール因 子aの関係を求めよ.また,T=3000K, 3800Kと なる時期の赤方偏移の値と時刻を求めよ. (解答) T3 a3=一定 ) T/ 1/a zdec= 1,100, tdec= 3.8£ 105 yr zrec= 1,400, trec= 2.1£ 105 yr Q5-2. 現在のCMBの密度パラメーはh2CMB=2.39£ 10-5 T2.74で与えられる.これより,熱輻射のエ ネルギー密度とダークマターのエネルギー密度 が等しくなるときのzと温度,時間を求めよ. zeq=DM/CMB=5,000, Teq=15,000K, teq= 4£ 104 yr Q5-3. 輻射のエネルギーが支配的な時期において, スケール因子の時間依存性を求めよ. (解答) ½ / T4 / 1/a4 より, (da/dt)2/a2= Heq2 (aeq/a)4 ) a =aeq (t/teq)1/2 Q5-4. 物質優勢な宇宙および輻射優勢な宇宙におい て,宇宙誕生時を頂点とする光円錐の宇宙時間 tにおける半径lH(t)を時間の関数として求めよ. この値と 1/Hを比較せよ. 光波面の方程式は,cdt=-a d より, 物質優勢とすると: lH(t) = 3c t = 2 /H 輻射優勢とすると: lH(t) = 2c t =1/H

Jeans Length 半径Lのガス雲(領域)において, 一様なガス雲のゆらぎに対して, ガスの圧力勾配 単位体積当たりの重力 P/L » cs2 m/L 単位体積当たりの重力 Gm M/L2 » Gm m L 両者が等しい長さ ) Jeans長 LJ= cs/(Gm)1/2 = cs tff L < LJ のガス雲は膨張し密度勾配が減少 L > LJ のガス雲は重力収縮し,さらに密度が上昇. 一様なガス雲のゆらぎに対して, 波長  < LJ のとき,音波として伝播 波長  > LJ のとき,重力収縮によりゆらぎは成長 圧力 重力 L

実習6:Jeans長とホライズン Q6-2. Q6-1と同じ仮定の下で,宇宙 物質のエネルギー密度½と圧力P をスケール因子の関数として求め よ.さらに,これを用いて,この ガスの音速 をスケール因子の関数として求め よ.また,原子物質が中性化して 以降の音速を求めよ. (解答) P=Pb ) cs は 3.7£ 10-5-倍 Q6-1.宇宙物質を輻射 (r)と物質(b) (電子,陽子プラズマ)の混合 気体と見たとき,両者の圧力の 比 Pb/Prをもとめよ.ただし, 輻射と物質は同じ温度とする. また,CMB=4.8£ 10-5, b=0.046, kB TCMB=2.4£ 10-4 eV. mp=940 MeV/c2 とせよ. (解答)

Q6-3 水素再結合時tdec以前のCDM 優勢な時期では,電磁輻射と 物質の混合気体を伝播する波 数k/aの音波の方程式は, となる.このWKB解 に対して,t=tdecでの振幅|¢r|2 は離散的な波数knでピークを もつ.kn/(a(tdec) H(tdec))を求め よ. (解答) WKB解は次のように書き換え られる: ここで, よって,

Sounds of CMB 膨張宇宙におけるJeans長 H2= 8 G /3 ) LJ ¼ cs /H 宇宙の晴上り 現在 膨張宇宙におけるJeans長 H2= 8 G /3 ) LJ ¼ cs /H Cf. ホライズン長 LH ¼ c/H LJは宇宙の晴れ上がり直前で最大となる. 晴れ上がり前: LJ ¼ LH 晴れ上がり後: LJ < 10-5 LH 熱い膨張宇宙 長さ c /H cs /H CMB 時間 t

実習7: 宇宙音波の観測 Q7-1. CMBの最終散乱面t=tdecで我々が観測 できる領域の半径(t=tdec時での固有長 rplc(tdec)と対応する現在の長さ(共動長) Âplc(tdec))を求めよ.それとlH(tdec)の比を 求めよ.ただし,宇宙膨張は物質優勢 FRWモデルで近似できるとする. (解答) Q7-2. CMBの最終散乱面t=tdecでのホライズン を見込む角度を求めよ.ただし,宇宙膨張 は平坦な物質優勢FRWモデルで近似でき るとする. (解答) Q7-3. Q6-3の結果を用いて,第1Dopper peakの波長を¸1として,l=2¼ rplc(tdec)/¸1を求めよ.

CMB Temperature Map by WMAP

Doppler Peak CMBの音波(振動部分) の波長には最大値 Lm ¼ LJ(trec)が存在する. 角度 / 波長 ¼ Lm/ n に対応する角度で強い相関をもつ. Lmは,宇宙の(晴れ上がり前後での)物質組成と物理だけで決まる. WMAP 5yr: arXiv:0803.0593

Cosmometry by CMB Dopplerピークの位置は空間曲率を決める. WMAP観測 晴れ上がり時でのDopplerピークの波長 Lp とそれを見込む角度pの対応は,主に空間曲率に依存: WMAP観測 1st Doppler peak l ¼ 200 , K¼ 0 観測値:  |K| < 0.1 WMAP Collaboration: ApJ Suppl. 170:377 (2007)

宇宙のDark Pie WMAP 5yr data: arXiv:0863.0547 ダークエネルギー ダークマター 通常物質 WMAP 5yr data: arXiv:0863.0547 WMAP Collaboration: ApJ Suppl. 170:377 (2007) SDSS Collaboration: ApJ 633: 560 (2005)

宇宙創成の謎

平坦性問題 Planck時での空間曲率 Q8-1 現在の宇宙でK=0.1とすると, Planck時(t=tpl)での½K/½mの値はいく らになるか? (解答) (古典的な)宇宙の始まり 平坦性問題は,宇宙初期にエネルギー密度 m が曲率 K/a2より緩やかに減少する(i.e. 宇宙の加速膨張)時期が十分長く続けば解消される. Planck定数 h, 光速 c, 重力定数 G Planck時間 tpl ¼ 10-43s Planck長 Lpl ¼ 10-33cm Planckエネルギー Epl¼ 1019GeV ¼ 1032 K Planck時の曲率半径 > 1030 Lpl

ホライズン問題 Friedmannモデルを仮定すると ホライズン問題も,宇宙初期に宇宙膨張が加速する時期が十分長く続くと解消される. 我々がCMBで観測する領域のサイズは,宇宙晴上りの時点で,ホライズンサイズの33倍程度 初期面 宇宙晴上り 現在 時間 観測領域で,CMB温度ゆらぎは 10-5 程度 宇宙の一様等方性は,宇宙誕生時の初期条件.量子論と整合しない.

宇宙膨張の起源 宇宙の膨張速度 インフレーション 熱いビッグバン宇宙 現在の宇宙の加速膨張 暗黒時代 宇宙時間 なぜ宇宙は膨張を始めたのか?

宇宙構造の起源 L Q8-2. 同じサイズの各々の領域でエネルギーがδEだけラン ダムに変動するとき,N個の領域の全体でのエネルギー は N1/2 δEだけ変動する.また,サイズLの領域で重力ポ テンシャルのゆらぎは δE/Epl /(L/Lpl)で与えられる.こ のことを用いて,Planck時でホライズンサイズの領域で エネルギーがランダムに比率 ² で変動するとき,t=tdecで ホライズンサイズの領域での重力ポテンシャルのゆらぎ はいくらになるか?ただし,Friedmannモデルを仮定し, ホライズンより大きなゆらぎのポテンシャルゆらぎがほ ぼ定数となることを用いよ. (解答) 宇宙誕生時のゆらぎのスペクトルは lH(tdec)に対応するPlanck時でのサイズとLplの比は 観測は 「曲率ゆらぎはすべ てのスケールで一定で10-5程 度」を支持 (Harrison- Zeldovichスペクトル)。

宇宙のインフレーション ビッグバンの起源 平坦性問題 宇宙初期での加速膨張 ホライズン問題 モノポール問題 宇宙構造の起源 解決 宇宙の膨張速度 インフレーション 熱いビッグバン宇宙 宇宙時間 ビッグバンの起源 平坦性問題 ホライズン問題 モノポール問題 宇宙構造の起源 宇宙初期での加速膨張 解決

実習9:インフレーション宇宙 ) Htpl=3 ¢ 10 - 6 Q9-1. インフレーション時の宇宙膨 張率Hが一定で,時刻t=tfにイン フレーションが終了し直ちに輻 射優勢LFRWモデルに移行する とする.LFRW宇宙に移行した 直後の宇宙の温度Trが1016 GeV となるとすると,Hはいくらか? ただし,この時点での物質のエ ネルギー密度は0.165 g (Tr/Epl)4 Epl/Lpl3, g=100とする. (解答) Tr=5 ¢10-4 Tpl , g=100 ) Htpl=3 ¢ 10 - 6 Q9-2. Q9-1と同じ設定で,現在サイズL の領域は,t=tfにおいて,そのとき のHubbleホライズンサイズ1/Hの何 倍か? (解答) NL=L (T0/Tr) H = (L/Lpl) (T0/Tpl) (1.38g)1/2 (Tr/Epl )1/2 = 1.7 £ 1030 (L/4000Mpc) (Tr/Epl )1/2

Q9-3. Q9-1と同じ設定で,ホライ ズン問題が解決される,すなわ ちインフレーションの始まりに 現在の観測領域が1/H以下のサ イズであるためには,インフ レーションが続く時間¢ tがいく ら以上必要か?H¢ tの値で答え よ. (解答) H¢ t >> ln(NL) ¼ 69+0.5ln(Tr/Epl ) Q9-4. Q1と同じ設定で,平坦性問 題が解決されるには,H¢ tがい くら以上である必要があるか? N=exp(H¢ t)とおくと, Q9-5. 計量のゆらぎを± gとおくと, 重力場のサイズLの領域での量子 ゆらぎの大きさは,h=κ-1± gを用 いて,h= 1/Lで与えられる.イン フレーション時の量子ゆらぎが Hubbleホライズンより引き延ばさ れると一定に保たれることも示さ れる.このことから,インフレー ション時に生成される重力波の振 幅を宇宙の再加熱温度で表せ. (解答)

宇宙加熱(graceful exit)問題 インフレーションは起こせるか? インフラトン =重力が斥力となる物質 宇宙加熱(graceful exit)問題 新インフレーションモデル カオティックインフレーションモデル

量子ゆらぎから銀河へ インフレーション時. インフレーション後 長さ 時間 t 宇宙の加熱 宇宙の晴上り 現在 インフレーション時. インフラトンの量子ゆらぎはスケール不変な宇宙ゆらぎを生成する. 同様に,インフレーションによりスケール不変な重力波背景放射が生成される. インフレーション後 インフラトンのゆらぎは再加熱により通常の物質密度のゆらぎに変化し,CMBのスカラ型ゆらぎを生み出す. 重力波背景放射は宇宙晴れ上がり後,CMBにテンソル型ゆらぎを誘起する. 熱い膨張宇宙 長さ 量子ゆらぎ 時間 t

CMBによるインフレーションの検証 WMAP(+others) 温度非等方性のスケール依存性は,CDM+インフレーションの予言とよく一致. スカラ型スペクトル指数: ns = 0.95 » 0.97 WMAP 5yr: arXiv:0803.0593

インフレーション問題 適当にポテンシャルを手で与えれば,スカラインフラトンを用いて(現在の)観測と整合的なインフレーションモデルを作ることは容易である. そのようなモデルは,インフレーションの背後に重力を含む統一理論が隠れていることを示唆する. インフレーションがPlanck時に始まることが要求される. インフラトンと他の場の相互作用は,重力相互作用程度となる. 現在,超弦理論・M理論は整合的な重力を含む統一理論の唯一の候補であるが,未だにそれに基づくインフレーションモデルは存在しない.特に,次のNo-Go定理は大きな障害となっている. 10次元ないし11次元の超重力理論の余剰次元を定常,コンパクトで滑らかな空間によりコンパクト化することにより得られる4次元理論では宇宙の加速膨張は起こらない. [Gibbons GW 1984]

宇宙誕生を観測する CMB非等方性 スペースレーザー干渉計 原始重力波 LiteBIRD(KEK CMB group, 10年後) より精密な観測.特に,ゆらぎの非ガウス性の測定 ⇒ 非線形効果を通して,インフレーショ ンの情報を得る. Planck (今年5月に打ち上げ) 偏光(特にBモード)観測 ⇒ インフレーションで生成された重力 波の観測 ⇒ インフレーションの終了時期など新 たな情報 QUITE, PolarBear, …. LiteBIRD(KEK CMB group, 10年後) NASA EPIC(Einstein Probe of Inflationary Cosmology, 10年後) 原始重力波 スペースレーザー干渉計 Lpl at inflation ⇒ L >10 RE LISA, DECIGO (20年後) LISA (of Great Observatories), The Structure and Evolution of the Universe 2003 roadmap, "Beyond Einstein: From the Big Bang to Black Holes.“ (NASA) WMAP 5yr data: arXiv: 0803.0593

まとめ

B-mode Satellite, GW BBO, Space VLBI, ICECube 新しい窓は新しい物理を生む COBE, HST, SNLS, WMAP, SDSS B-mode Satellite, GW BBO, Space VLBI, ICECube より高感度,より高解像度の観測 Cosmophysics Group Key Projects 重力を含む統一理論を宇宙初期進化で検証する 宇宙ジェットとブラックホールの高エネルギー物理

2009年度総研大高エネルギー加速器科学研究科 夏期実習A04 実習問題集

実習1 Q1-3 宇宙のVバンドでの光度密度の観測値は で与えられる.天体の質量光度比を = M/L により定義すると,銀河に対するM/L 比は 10 h(M/L)⊙ 程度となる.これらより, 宇宙の平均密度を推定せよ.(太陽質量 はM⊙ = 2£ 1033g ) Q1-1 Hubbleの法則 v=Hd が我々から見て厳 密に成り立つとすると,我々から距離 a の銀河にいる観測者にとって他の銀河は どのように運動して見えるか?(宇宙の 一様等方性) Q1-2 Hubbleの法則が大きな距離でもそのま ま成り立つとすると,銀河の後退速度が 光速に達する距離は?(ホライズン)

Q1-6 Q1-5で求めた R(t)に対する方 程式の一般解を求めよ. Q1-4 銀河の運動速度が一定とする.このとき,過去に時間をさかのぼると銀河の分布はどのように変化するか?また,その変化の特徴的な時間はいくらか.(宇宙年齢) Q1-5 半径 Rの質量Mの一様なガス球を考える.このガス球が一様性を保って膨張するとき,半径と密度の時間変化を決める方程式を求めよ.ただし,ガスの圧力は重力に比べて無視できるとする.さらに,時間t無限大で,膨張速度 dR/dtがゼロに近づく解を求めよ.

実習2:空間の曲率 Q2-1. 3次元球面 Q2-2. Minkowski時空内の3次元双曲面 X2+Y2+Z2+W2=R2 において,北極 N(0,0,0,R)から距離 Â 以下の点の集合 D(Â)の体積V(Â)および表面積S(Â)を求めよ.また,空間曲率Kを求めよ. Q2-2. Minkowski時空内の3次元双曲面   X2+Y2+Z2-T2=-R2 において,点O(0,0,0,R)を中心としてQ2-1と同様の量を求めよ.

実習3:光度距離-赤方偏移関係 Q3-1 次の3つのモデルに対して,光度距離とzの関係を求めよ: Einstein-De Sitter宇宙モデル: (M,K,¤)=(1,0,0) De Sitter宇宙モデル: (M,K,¤)=(0,0,1) Milne宇宙モデル:(M,K,¤)=(0,1,0) Q3-2 Einstein-de Sitterモデルを基準にするとき,他の2つのモデルでは,z=1にある天体の等級はどれ だけずれるか?(ln 10 =2.3)

実習4:何を意味するのか? Q4-1.宇宙膨張の基本方程式を用いて,現在の宇宙膨張の加速度(d2 a/dt2)を密度パラメータで表せ.また,密度パラメーター (M,K,¤) =(0.26,0,0.74)に対して,加速度の値をを計算せよ. Q4-2. 宇宙膨張の基本方程式を用いて,宇宙膨張の加速度(d2 a/dt2)をエ ネルギー密度½と圧力Pで表せ. Q4-3. ダークエネルギーの密度をPlanck単位(G=1, c=1, ~=1)で表すとい くらか?(tpl=(G~ /c5)1/2 =5.4£ 10-44 s, 1yr=3£ 107 s)

実習5:ビッグバン宇宙 Q5-1. 現在の宇宙は,約2.74KのPlanck分布をする 熱放射により満たされていることが知られてい る(CMB).光子ガスのエントロピー密度がT3に 比例することを利用して,宇宙のエントロピー が一定とした場合のCMBの温度Tとスケール因 子aの関係を求めよ.また,T=3000K, 3800Kと なる時期の赤方偏移の値と時刻を求めよ. Q5-2. 現在のCMBの密度パラメーはh2CMB=2.39£ 10-5 T2.74で与えられる.これより,熱輻射のエ ネルギー密度とダークマターのエネルギー密度 が等しくなるときのzと温度,時間を求めよ. Q5-3. 輻射のエネルギーが支配的な時期において, スケール因子の時間依存性を求めよ. Q5-4. 物質優勢な宇宙および輻射優勢な宇宙におい て,宇宙誕生時を頂点とする光円錐の宇宙時間 tにおける半径lH(t)を時間の関数として求めよ. この値と 1/Hを比較せよ.

実習6:Jeans長とホライズン Q6-1.宇宙物質を輻射 (r)と物質(b)(電子,陽子プラズマ)の混合気体と見たとき,両者の圧力 の比 Pb/Prをもとめよ.ただし,輻射と物質は同じ温度とする.また,CMB=4.8£ 10-5, b=0.046, kB TCMB=2.4£ 10-4 eV. mp=940 MeV/c2 とせよ. Q6-2. Q6-1と同じ仮定の下で,宇宙物質のエネルギー密度½と圧力Pをスケール因子の関数と して求めよ.さらに,これを用いて,このガスの音速 をスケール因子の関数として求めよ.また,原子物質が中性化して以降の音速を求めよ.

実習7: 宇宙音波の観測 Q7-1. CMBの最終散乱面t=tdecで我々が観測できる領域の半径(t=tdec時での固有長rplc(tdec) と対応する現在の長さ(共動長)Âplc(tdec))を求めよ.それとlH(tdec)の比を求めよ. ただし,宇宙膨張は物質優勢FRWモデルで近似できるとする. Q7-2. CMBの最終散乱面t=tdecでのホライズンを見込む角度を求めよ.ただし,宇宙膨張 は平坦な物質優勢FRWモデルで近似できるとする. Q7-3. Q6-3の結果を用いて,第1Dopper peakの波長を¸1として,l=2¼ rplc(tdec)/¸1を求めよ.    

実習8: Friedmannモデルの諸問題 Q8-1 現在の宇宙でK=0.1とすると,Planck時(t=tpl)での½K/½mの値はいくら になるか? Q8-2. 同じサイズの各々の領域でエネルギーがδEだけランダムに変動するとき,N 個の領域の全体でのエネルギーは N1/2 δEだけ変動する.また,サイズLの領 域で重力ポテンシャルのゆらぎは δE/Epl /(L/Lpl)で与えられる.このことを用い て,Planck時でホライズンサイズの領域でエネルギーがランダムに比率 ² で変 動するとき,t=tdecでホライズンサイズの領域での重力ポテンシャルのゆらぎは いくらになるか?ただし,Friedmannモデルを仮定し,ホライズンより大きなゆら ぎのポテンシャルゆらぎがほぼ定数となることを用いよ.

実習9:インフレーション宇宙 Q9-1. インフレーション時の宇宙膨張率Hが 一定で,時刻t=tfにインフレーションが 終了し直ちに輻射優勢LFRWモデルに 移行するとする.LFRW宇宙に移行し た直後の宇宙の温度Trが1016 GeVとな るとすると,Hはいくらか?ただし, この時点での物質のエネルギー密度は 0.165 g (Tr/Epl)4 Epl/Lpl3, g=100とする. Q9-2. Q9-1と同じ設定で,現在サイズLの領域 は,t=tfにおいて,そのときのHubbleホラ イズンサイズ1/Hの何倍か?

Q9-3. Q9-1と同じ設定で,ホライズン問題が解決 される,すなわちインフレーションの始まり に現在の観測領域が1/H以下のサイズである ためには,インフレーションが続く時間¢ t がいくら以上必要か?H¢ tの値で答えよ. Q9-4. Q1と同じ設定で,平坦性問題が解決され るには,H¢ tがいくら以上である必要がある か? Q9-5. 計量のゆらぎを± gとおくと,重力場のサイズ Lの領域での量子ゆらぎの大きさは,h=κ-1± gを 用いて,h= 1/Lで与えられる.インフレーショ ン時の量子ゆらぎがHubbleホライズンより引き 延ばされると一定に保たれることも示される. このことから,インフレーション時に生成され る重力波の振幅を宇宙の再加熱温度で表せ.