Relative Performance and R&D Competition Joint work with Susumu Cato (加藤晋) and Noriaki Matsushima (松島法明) OT2010
Plan of the Presentation (1) Relative Performance and Competitiveness of the market (2) Stability of Collusion (3) Relative Performance and the Stability of Collusion (4) Strategic R&D Competition (5) R&D Competition and Competitiveness in the Product Market (6) R&D Cooperation and Relative Performance OT2010
Relative Performanceの重要性 OT2010
relative profit maximization 各企業が自社の利潤ではなくライバルとの相対利潤を最大化したら?(利潤の差を最大化) →よりaggressiveに生産する OT2010
Equilibrium Cournotタイプの複占数量競争を考える。 企業1と企業2が同時に独立に生産量Y1,Y2を決める。 目的関数は利潤の差。 P(Y)は逆需要関数、Ciは各企業iの費用関数。 F.O.C. P+P'Y1-C1' -P'Y2=0 →symmetricな均衡(Y1=Y2)では価格=限界費用となる(完全競争の世界) ⇒数量競争の文脈で、寡占市場でも激しい競争になる典型例 この状態がevolutionary stable (Vega-Redondo, 1997) OT2010
Relative profit, relative performance approach U1=π1-απ2 α=1 完全競争 α=0 Cournot α=-1 Collusion 完全競争からカルテルまで競争度を連続的に表現可能 OT2010
Relative profit, relative performance approach 応用例 カルテルの安定性はαに関して単調減少 R&Dの水準はαに関して非単調ーU字型 プロセスイノベーションとプロダクトイノベーションの選択に影響→競争が激しくなるとR&Dに多くの資源を投入するようになるが、innovationのsizeは小さくなる 製品差別化の程度はαに関してα非負の範囲で単調減少 自由参入市場の企業数と価格はαに関して単調減少 αが十分大きい・小さいときMulti-Storeが均衡に OT2010
Rationalizations for relative performance approach (1) CEOの市場での評価 (2) evolutionary approach (3) ねたみ、利他主義(実験経済学・経済心理学の成果) (4) Fershtman and Judd (1987)の応用 (5) 政治学の分野への応用 (6) ステータスの議論 OT2010
Conjectural Variation 自社が1単位生産量を増やすとrだけ市場全体の全体の生産量が増えると仮定して各企業が行動する。 Cournotならr=1。 Conjectural Variation Model~Cournotを特殊ケースとして含む一般的モデル(?) でもr=1以外のケースは意味あるのか? OT2010
Conjectural Variation Model 企業1の生産量の変化は企業2の生産量も変化させる →企業1の生産量を見てから企業2が生産量を決めるのでないとおかしい 企業2の生産量の変化は企業1の生産量も変化させる →企業2の生産量を見てから企業1が生産量を決めるのでないとおかしい ⇒静学的なモデルとしては論理的に破綻している OT2010
論理的に破綻しているのになぜConjectural Variation Modelが使われるのか? (1)an unmodeled dynamic model ~動学的なinteractionを考えている →もしそうなら動学モデルを作るのが筋 (2)結果的に同じ解が出てくるモデルがあるからこれでよい (3)市場の競争度を表現 OT2010
Conjectural Variation Modelの解 CV Modelでの企業1の一階条件 P+P'rY1 =c Cournot Model での企業1の一階条件 P+P'Y1 =c r=1に対応 Bertrand Model~完全競争モデルでの一階条件 P =c r=0に対応 Joint Profit Maximization(カルテル)での一階条件 P+P'(Y1+Y2) =c r=2に対応 それぞれ競争度の違うモデルに対応。rが小さいほど競争が激しい。競争度を特定化しないでモデル化できる。 OT2010
advantage of relative profit approach (1) 静学的モデルとして破綻していない(コンシステントなモデル)。 (2) Cournot, Bertrand, Collusionの3つの間の競争状態に対してもちゃんとしたfoundationがある。 (3) 静学的な文脈ではより現実的(おそらく賛否両論ある) OT2010
Stability of Collusion OT2010
囚人のジレンマ 2 C D (3,3) (0,4) (4,0) (1,1) 1 ナッシュ均衡:(D,D) OT2010
囚人のジレンマと協調 現実には囚人のジレンマの状況でも協調行動がしばしば見られる。なぜか? (1) 人間は合理的でない 。 (2) Playerの利得が第3者に分かる金銭的な(経済的な)利益のみに依存していない。→囚人のジレンマの状況になっていない。 (3) 短期的な利益を犠牲にしても長期的な利益のために協調する。→繰り返しゲーム OT2010
(2)の発想: 囚人のジレンマ修正版 2 C D C (3,3) (0,2) D (2,0) (1,1) 1 ある種の利他主義 ナッシュ均衡:(C,C) (D,D) OT2010
(3)の発想:繰り返しゲーム 同じゲームが将来にわたって長期的に繰り返される。 →将来の利益のために短期的な利益を犠牲にする可能性がある OT2010
無限繰り返しゲーム 同じゲームを無限回繰り返す。 各回ごとに利得が発生。 その割引現在価値を最大化する 今期の利得+δ次期の利得+δ2次々期の利得+ δ3次々々期の利得+... δ∈(0,1):割引因子 OT2010
割引因子の意味 (1) 利子率を反映 δ=1/(1+r) r:利子率 (2) 主観的割引率を反映:将来をどれぐらい軽視するかの指標、その主体がどれぐらい忍耐強いかを表す指標(忍耐強いほどδは大きい) (3) ゲームが次の期まで続く確率 ⇒実際には無限にゲームが続く確率はほぼゼロでもかまわない~見かけほど非現実的な状況ではない OT2010
部分ゲーム完全均衡 以下の戦略はδ≧ 1/3である限り、部分ゲーム完全均衡となる。 各playerはそれ以前に2人とも一度もDを取っていないときCを取り、これ以外の場合にはDを取る。 OT2010
協調の難しさ(不安定性)の指標 δ が十分大きければ協調は部分ゲーム完全均衡として実現できる → δ が小さくなったときにどこまで協調が可能か? 協調可能な最小のδ(δ*)が大きいほど 協調は困難 (協調は不安定) OT2010
Infinite Nash Reversion infinite Nash reversion (grim trigger strategy) 誰かがカルテルを破る →その後はずっと競争状態になる cf Optimal Penal Code OT2010
知られている結果 (1) 企業数が多いほどカルテルは不安定 (2) 企業間の非対称性が大きいほどカルテルは不安定 (例) (例) ・費用格差が大きいほどカルテルは不安定 ・設備保有量格差が大きいほどカルテルは不安定 ・垂直的製品差別化の程度が大きいほどカルテルは不安定 (例外) 同時手番より逐次手番の方がカルテルは安定的 OT2010
知られている結果 (3) 製品差別化が小さいほどカルテルは不安定(Hotelling, mill pricing) (4) 企業間の距離が大きいほどカルテルは不安定(delivered pricing) (5) cross licensingがあるとカルテルが安定(Bertrand, Cournotだと逆) (6) 成長産業ほどカルテルが安定的 (7) 好況期はカルテルが不安定に OT2010
やったこと 相対評価の指標とカルテルの安定性の関係をみる ~どんな市場構造でカルテルが安定的になるかをみる カルテルがないと仮定すればより競争的な市場 →でもこれがよりカルテルを安定的にしているとすれば、競争政策当局の監視が必要 OT2010
トレードオフ αが大きいほど競争が激しい →punishmentがよりきつくなる ⇒カルテルはより安定的に αが大きいほど相手を出し抜く誘因が強くなる ⇒カルテルはより不安定的に どっちが強いか先験的にはわからない α=0から出発してαが少しあがる(より競争的になる)とカルテルはより安定的になるのか? OT2010
結果 αが大きいほどカルテルは不安定に 単調性が出ると思ったのに。ちょっと残念。 OT2010
R&D and Competition OT2010
Two Views on Competition and R&D Monopoly View ~ Monopoly stimulates innovation ・R&D investments are financed from monopoly profits ・Monopolists internalize the spillover effects of R&D ・R&D has economy of the scale Competition View ~ Competition stimulates innovation ・Replacement effect (Arrow ,1950) ・Competitive pressure disciplines the management OT2010
Brander and Spencer (1983) Two stage Strategic R&D game Cost-reducing R&D Cournot Competition No Spillovers OT2010
Cournot Model Y2 Reaction Curve of Firm 1 Reaction Curve of Firm 2 Y2C Y1 Y1C OT2010
Shift of Reaction Curve of Firm 1 through strategic R&D Y2 New Reaction Curve of Firm 1 Reaction Curve of Firm 2 Y2C Y1C Y1 OT2010
Cost-Reducing Investments Model Duopoly, homogeneous goods market First stage: Each firm i independently chooses Ii (R&D investment level), which affect its production costs. Second stage: After observing firms' production costs, firms face Cournot competition. Payoff: Π1=P(Y1+Y2)Y1-C1(I1)Y1-I1 OT2010
backward induction Second stage ~ Cournot Competition Y1 C (I1,I2), Y2C(I2,I1) Firm's output is increasing in its own investment and decreasing in the rival's investment. First stage ~ R&D Competition F.O.C. P'Y1 (∂Y1C/∂I1 + ∂Y2C/∂I1)+P ∂Y1C/∂I1 -C1'(I1)Y1- C1 ∂Y1C/∂I1 -1=0 OT2010
First stage First Stage F.O.C. P'Y1 (∂Y1C/∂I1 + ∂Y2C/∂I1)+P∂Y1C/∂I1 -C1'(I1)Y1- C1 ∂Y1C/∂I1 -1=0 P'Y1∂Y2C/∂I1 -C1'(I1)Y1-1=0 (envelope theorem) Cost-Minimizing Level -C1'(I1)Y1-1=0 Investment level exceeds cost minimizing level under strategic substitutes~ strategic effect OT2010
Shifts of Reaction Curves New Reaction Curve of Firm 1 Y2 New Reaction Curve of Firm 2 Y2C Y1 Y1C Competition Reduces profits of Both firms OT2010
この論文でやったこと 相対評価の指標とR&D投資の大きさの関係をみる~どんな競争構造あるいは社会構造でR&D投資が盛んになるのかをみる OT2010
トレードオフ αが大きいほど競争が激しい →均衡生産量が多くなる ⇒より多く投資する誘因 αが大きいほど反応曲線の傾きが緩やかになる →投資を増やしてもよりライバルの生産量が減りにくくなる(戦略的効果が弱まる) ⇒より少なく投資する誘因 どっちが強いか先験的にはわからない OT2010
Proposition 1 αとR&D投資の関係はU字型。最小値はα=1/3のとき。 ・独占時と完全競争時に投資は極大。Cournot競争から少し競争が激しくなると投資量は減る。 ・Cournot競争から出発して競争度が少し増すと投資が減る。 ・Cournot競争から出発して「ねたみ?」が入ると投資量が減るが、その程度が激しくなると投資は増え出す。 OT2010
Implication of Proposition 1 ・競争度と研究開発投資の関係はU字型。 →競争的な環境でも独占的な状況でもそれぞれ投資水準はピークになる。 ⇒competitive viewもmonopoly viewもどちらも正しい ・Aghion et al (2005)とは逆の結果 OT2010
Joint Implementation 共同でR&D投資。 Second Stageでは競争。 命題2 投資量はαの減少関数 命題2 投資量はαの減少関数 →共同で研究開発する場合には、製品市場がcompetitiveだとinnovationが停滞する 競争が激しいほど、費用の増減が価格に転嫁されやすい→共通の費用を下げる誘因がなくなる OT2010
Oligopoly 共同研究開発なら結果は同じ。 単独投資なら、U字型という性質は同じ。相対的に減少の領域が大きくなる。 →企業数が大きければ、競争が激化することがR&Dの減少をよりもたらしやすくなる。 OT2010
Welfare αが小さいとき過大投資、大きいとき過小投資。 →生産量が小さいときには投資しても仕方がない OT2010
Summary ・ねたみの強い(競争の激しい)環境でもその逆の環境でも研究開発投資は盛んになる。 ・ねたみの強い社会では研究開発投資が過小になる。 ・共同研究開発においてはねたみ(製品市場での激しい競争)が常に研究開発を阻害する。 OT2010