国際金融・為替リスク管理 一橋大学大学院経営管理研究科 小川英治 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
講義内容 為替相場の動向-実質実効為替相場の読み方 外国為替リスク管理 為替相場変動が企業価値に及ぼす影響に関する実証分析 世界金融危機時における流動性不足と為替相場 FRBの金利引上げと為替相場 安全通貨としての円と円高 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
為替相場の種類(1) 二国間為替相場vs.実効為替相場 二国間為替相場:2つの国の通貨間の交換比率 実効為替相場:ある特定国の通貨の価値(通常は、貿易相手国通貨の加重平均値) 産業別実効為替相場:経済産業研究所website(http://www.rieti.go.jp/users/eeri/) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
為替相場の種類(2) 名目為替相場vs.実質為替相場 名目為替相場:通貨と通貨の交換比率: 実質為替相場:通貨の実質価値の交換比率: 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図1:名目二国間為替相場(円/ドル) ドル高円安 Data: 日本銀行 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
実質為替相場の読み方 実質為替相場=国際的相対価格 実質為替相場↑(ドル高円安) =米国相対価格↑、日本相対価格↓ =名目為替相場↑価格↑が主因であれば米国の価格競争力悪化 但し、利潤マージン↑⇒価格↑が主因であれば米国の高い価格競争力が背景。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図2:実効為替相場(円)(2010年=100) 実質実効為替相場 名目実効為替相場 円高、価格上昇、価格競争力悪化(実質実効為替相場)or利潤マージン上昇⇒価格上昇 実質実効為替相場 名目実効為替相場 Data: 日本銀行 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
実質実効為替相場の読み方 実質実効為替相場:当該通貨の貿易相手国に対する加重価値を指数で表現。数字が上昇すると、通貨高。 円の実質実効為替相場↑(円高) 名目実効為替相場(円高)↑、日本価格↑、外国価格↓が原因 円の実質実効為替相場↑(円高)が意味すること: 名目為替相場↑価格↑⇒日本の価格競争力悪化 価格競争力が高い産業では、利潤マージン↑⇒価格↑⇒実質実効為替相場↑。価格競争力が低い産業では、利潤マージン↓⇒価格↓⇒実質実効為替相場↓。 ⇒産業別に見て、実質実効為替相場の水準が低い産業は競争が激化。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図3a:産業別実質実効為替相場(円) 通貨高、 価格競争力悪化 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム Data: 経済産業研究所 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図3b:産業別実質実効為替相場(米ドル) 通貨高、 価格競争力悪化 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム Data: 経済産業研究所 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図3c:産業別実質実効為替相場(人民元) 通貨高、 価格競争力悪化 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム Data: 経済産業研究所 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図3d:産業別実質実効為替相場(韓国ウォン) 通貨高、 価格競争力悪化 Data: 経済産業研究所 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図3e:産業別実質実効為替相場(ユーロ、ドイツ) 通貨高、 価格競争力悪化 Data: 経済産業研究所 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図3f:産業別実質実効為替相場(英ポンド) 通貨高、 価格競争力悪化 Data: 経済産業研究所 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
外国為替リスクとは 外国為替リスク:予想将来為替相場から実現された為替相場が乖離すること。 ⇒BSやPLの為替エクスポージャーを通じて資本金や収益に影響。 為替リスクの尺度: ①分散(=平均値から乖離の二乗の平均値) ②標準偏差(=分散の平方根) ③予測誤差(=為替相場(予測)モデルからの予測値(推計値)と実際値との乖離) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
企業が直面する3つの外国為替リスク 佐藤清隆・清水順子「日本の輸出企業の為替リスク管理とその効果の検証」財務省財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』平成30 年第4号、2018年 為替取引リスク:為替相場の変動によって決済時に自国通貨建ての換算金額が変動するリスク 為替換算リスク:企業の財務諸表に計上された外貨建て資産・負債の評価額が,為替相場の変動によって増減するリスク 為替経済性リスク:為替相場の変化によって価格競争力が影響される,あるいは企業の生産構造に変化が生じるなど,企業の経営全般から捉えるリスク 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
企業が直面する外国為替リスクへの対応 企業が直面する3つの外国為替リスクへの対応 為替取引リスク⇒キャッシュフローを伴う一般的な為替リスクとして、ヘッジされる。 為替換算リスク⇒時価評価が原則となっており、損益計算書において為替差益/差損として計上。実際のキャッシュフローが伴わないため、ヘッジの対象としていない企業が多い。 海外子会社の財務諸表について連結決算を行う際に為替換算調整勘定として把握。 為替経済性リスク⇒為替相場の変動が企業経営全体に影響を与えるリスクであり、ヘッジの対象とするのは難しい 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
為替リスクヘッジの代表的な手法と分類 出所:清水・佐藤(2018) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図4:為替エクスポージャーと外国為替リスク 110円/ドル 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図4:為替エクスポージャーと外国為替リスク 100円/ドル 円高によって外貨建て資産の円建て評価額が減少 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
外国為替リスク管理 ナチュラル・ヘッジング(マリー、ネッティング等) ⇒バランスシートの調整 金利スワップ ⇒バランスシートの調整 金利スワップ 金融派生商品の利用(先物、フューチャー、オプション) ⇒将来の為替相場の確定 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図5:ナチュラル・ヘッジング ドル建て資産相当額のドル建て負債を保有。 110円/ドル 110円/ドル 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図5:ナチュラル・ヘッジング ドル建て資産相当額のドル建て負債を保有。 100円/ドル 100円/ドル 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図6:金利スワップ ドル建て資産相当額のドル建て負債と円建て資産をスワップ。 110円/ドル 110円/ドル 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図6:金利スワップ ドル建て資産相当額のドル建て負債と円建て資産をスワップ。 100円/ドル 100円/ドル 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図7:先物取引による為替ヘッジ (先物ドル買いのケース) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図8:オプション取引による為替ヘッジ (コール・オプションのケース) 110円/ドル 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
オプション取引による為替ヘッジは事前的・事後的リスク管理 オプション取引による為替ヘッジは事前的かつ事後的なリスク管理。 事後的なリスク管理に見合ったプレミアム(手数料)を支払わなければならない。 裁定取引によって、マーケット全体から見れば、先物取引のメリットとオプション取引のメリットの相違に見合った手数料の相違が発生する。 ①先物取引:低コスト+事前的リスク管理 ②オプション取引:高コスト+事前的・事後的リスク管理 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
為替ヘッジの便益・費用 為替ヘッジの便益(=為替リスク軽減)と為替ヘッジ費用はトレードオフ関係にある。最適解はフルヘッジではないかもしれない。 ⇒リスク許容度に依存。経営の判断が必要。 為替ヘッジ費用節約のために為替エクスポージャー、すなわち為替リスクが残る場合には、的確な為替相場予測が不可欠。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
為替相場変動が企業価値に及ぼす影響に関する実証分析 小川英治・品田直樹・佐藤正和「企業の海外進出と為替レートの変動の影響」財務省財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』平成30 年第4号、2018年 日本の上場企業を対象に1999年度~2015年度までのパネルデータを用いて、海外拠点の資産規模の違いで為替相場の変動が企業価値(PBR)に及ぼす影響がどのように異なるかを分析。 為替換算リスクに焦点を当てて、為替相場の変動に伴う海外拠点のバランスシートや損益の変化が、関連する業績指標(自己資本・自己資本比率、ROE)に及ぼすインパクトを分析。 企業の海外拠点の資産・負債に対する為替相場の変動による影響を為替換算調整勘定によって捉えた。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図9:自己資本の変動に占める為替換算調整勘定の変動額のインパクト(前年度の自己資本を基準) 出所:小川・品田・佐藤(2018)、データ:日本政策投資銀行「財務データバンク」 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図10:為替換算調整勘定の変動額が自己資本比率に及ぼすインパクト 出所:小川・品田・佐藤(2018)、データ:日本政策投資銀行「財務データバンク」 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図11:為替換算調整勘定の変動額がROEの変動に及ぼすインパクト 出所:小川・品田・佐藤(2018)、データ:日本政策投資銀行「財務データバンク」 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
分析の結果 海外拠点の資産規模の大きな企業ほど輸出も多く行い、円安によって企業価値が高まる傾向がみられた。世界金融危機後、円安が企業価値を高めるインパクトが拡大。 為替相場変動に伴う自己資本・自己資本比率への影響は、海外拠点の資産規模の大きな企業ほど大きなインパクトを受け、短期間でも急速に円高が進む場合には、そのインパクトは累積して企業に相応の負の影響を及ぼす。 為替相場変動がROE に及ぼす影響は、円安に動く場合は分子(純損益)のROE の引き上げ効果が大きいために、ROE は上昇する傾向がみられた。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
世界金融危機時の穏やかなドル高とユーロの暴落 リーマン・ブラザーズ・ショック(2008年9月)以降、穏やかなドル高とユーロの暴落。 リーマン・ブラザーズ・ショックがインターバンク市場でカウンターパーティ・リスクを顕在化。 特に、サブプライム・ローン関連の証券化商品の損失によってバランスシートの悪化した欧州金融機関がドル資金を調達できない。 ユーロ圏の域内取引はユーロが利用可能だが、域外取引にはドルが必要。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図12:ユーロの対ドル・対円為替相場 Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
世界金融危機時の米ドル流動性不足 住宅価格バブルの崩壊によってサブプライムローンの問題が発生した。サブプライムローン及びMBSなどの証券化商品に資金運用していた米国の金融機関とともに欧州の金融機関のバランスシートの資産サイドが毀損した。 そのため、欧州の金融機関は、カウンターパーティ・リスクのために欧州の銀行間金融市場において米ドル流動性を調達することが困難となった。カウンターパーティ・リスクとは、銀行間金融取引において取引相手の金融機関がどれほどの不良債権化した証券化商品を保有しているかについて不確実性を意味。 米国ではFRBが中央銀行として米ドルを供給できるが、欧州ではECBなどが中央銀行として米ドルを供給することに限りがあったために、米ドル流動性の供給不足となった。そのため、外国為替市場でドルに対する超過需要が発生していた。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
信用スプレッド 信用スプレッド=安全資産(国債)との金利差 信用スプレッド=LIBOR-US TB金利 ⇒信用スプレッドを信用リスク・プレミアムと流動性リスク・プレミアムに分解。 ・信用リスク・プレミアム=LIBOR-OIS金利 ・流動性リスク・プレミアム=OIS金利-US TB金利 LIBOR=London InterBank Offered Rate (無担保) OIS=Overnight Index Swap (有担保) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図13a:LIBOR (USD,3mo)とOIS金利(USD,3mo)とUS TB金利(USD,3mo) Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図13b:信用スプレッドと信用リスク・プレミアムと流動性リスク・プレミアム Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
米ドル流動性不足に対するFRBの対応 FRBは、米ドル流動性不足を解消するために、政策金利であるFF金利をゼロとして量的金融緩和政策を開始するとともに、通貨スワップ協定を締結して、主要諸外国の中央銀行に無限の米ドル供給を行った。 そして、ECBなどの中央銀行は、欧州の金融機関に対して、FRBによって供給された米ドル流動性に基づいて欧州の金融機関に無限の流動性供給を行った。 =>カウンターパーティリスク及び信用スプレッドが2008年11月以降縮小。 このことは、ユーロ圏やEU域内において域内経済取引のためにユーロが利用されているにもかかわらず、米ドルを域外経済取引の決済通貨として必要としていたことを意味する。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
原典:日本銀行 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
FRBの金利引上げ 2014年3月19日のFOMCのステートメントでは、「資産購入プログラムが終わってから相当の期間はFF金利を現在の目標幅に維持することが適切であろう」と叙述されていたところ、Yellen FRB議長がFOMC後の記者会見で「相当の期間」は6か月程度であると発言。量的金融緩和政策を終了した後6か月ほどでFF金利を上げ始めることが示唆。 これは、まさしく量的金融緩和政策の出口戦略から金利引上げ政策への転換を意味する。そのため、市場参加者は、2015年春には米国の金利が引き上げられ始めると予測。 2015年12月16日にゼロ金利から金利引上げ( FF金利の目標値: 0%~0.25 %⇒0.25%~0.5%)を実施。その後、0.25%ポイントずつ引上げ、 2018年11月時点で2.00~2.25%。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
FRBの資産圧縮 2014年9月16日、金融政策正常化計画(Policy Normalization Principles and Plans)を発表。⇒漸進的な資産圧縮 2017年6月14日、FOMCがFRBの資産圧縮計画の具体的なアプローチを合意。 ①米国債:60億ドル/月から開始、12か月にわたって3か月毎に段階的に60億ドル/月ずつ縮小額を300億ドル/月に達するまで増加。 ②MBS等:40億ドル/月から開始、12か月にわたって3か月毎に段階的に40億ドル/月ずつ縮小額を200億ドル/月に達するまで増加。 2017年9月20日、FOMCがバランスシート正常化プログラムを開始することを決定。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図14:日米欧の政策金利 Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図15:日米欧のマネタリーベース Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図16:米国のCPIインフレ率 Data: Bureau of Labor Statistics 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図17:米国の失業率 Data: Bureau of Labor Statistics 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
実証分析結果のインプリケーション-出口戦略・金利引上げの影響- Eiji Ogawa and Zhiqian Wang, “Effects of Quantitative Easing Monetary Policy Exit Strategy on East Asian Currencies,” The Developing Economies, 54, no. 1 (March 2016): 103–129. FRBの出口戦略・金利引上げによって、東アジア諸国の金利がそれを追随するような形で上昇することが予想される。 東アジア諸国金利の上昇が抑制されると、米国に有利な金利差が発生し、東アジア諸国通貨が米ドルに対して減価することが予想される。 内外金利差や予想収益率格差を東アジア諸国に不利となり、東アジア諸国から証券投資やその他投資において資金逆流や資本流出が発生することが予想される。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図18a:米国金利ショック( 1S.D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S.E.) Interest rate in US ⇗ ⇢ interest rate East Asian country ⇗ Japan Korea Each graph shows estimation results of VAR model with four lags in 10 days. Accumulated Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E. (Japan) Relationship between interest rate in US (IUSD) and interest rate in Japan (IJPY) From the upper left to the down right, response of interest rate in US to interest rate in US; response of interest rate in US to interest rate in East Asian country; response of interest rate in East Asian country to interest rate in US; response of interest rate in East Asian country to interest rate in East Asian country. Analytical period: January 1, 2000 to December 31, 2013. Hong Kong Singapore 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図18b:金利差ショック( 1S.D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S.E.) Interest differentials (US–Asia) ⇗ ⇢ exchange rates (N.C./US$) ⇗ Depreciation of N.C. against US$ Japan Korea Hong Kong Singapore 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図19:FF金利と中韓香港金利 Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図20:FF金利と中韓香港為替相場 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
世界金融危機前後のアジア通貨への影響 世界金融危機以前、米欧と日本との間で金利差があったが、危機時、米欧金利急低下、それ以降超低水準(図14)。 ⇒円キャリートレードが発生。東アジア地域の域内における大きな資本フローにも関係した。 グローバル金融危機によって、キャリートレード(資金)が引き揚げられた。 東アジア域内で複雑なマネーフローによって、東アジア通貨間のミスアライメントが発生。 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図21:円とウォンと元のAMU乖離指標 Data: 経済産業研究所 (http://www.rieti.go.jp/users/amu/index.html) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
安全通貨としての円 円が安全通貨safe haven currencyとしてみなされ、危機・ショック時(①2008年の世界金融危機、②2010~12年のユーロ圏危機、③2015年8月の中国ショック、④2016年6月のBrexitショック)に円高へ。 円が安全通貨として認識されている理由 ①円の金融・外為市場の規模(流動性)が大きい ②対外純債権国通貨 ③自己実現的期待(投機)[バブル] 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図22:円の為替レートの推移 Data: Datastream 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
円の安全(避難)通貨指数の計測 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
図23:円の安全(避難)通貨指数の推移 出所:増島(2019) 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム
参考文献 小川英治・岡野衛士『国際金融』東洋経済新報社、2016年. 小川英治「世界金融危機とユーロ圏危機-金融危機管理における東アジアへの教訓」小川英治編著『世界金融危機後の金融リスクと危機管理』東京大学出版会、2017年7月、117-139. 小川英治・品田直樹・佐藤正和「企業の海外進出と為替レートの変動の影響」財務省財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』平成30 年第4号、2018年. 佐藤清隆・清水順子「日本の輸出企業の為替リスク管理とその効果の検証」財務省財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』平成30 年第4号、2018年. 増島雄樹「安全通貨としての円とドル:ファンダメンタルズから不確実性へ」小川英治編著『世界金融危機後の国際通貨制度――基軸通貨ドルへの挑戦』東京大学出版会、2019年. Eiji Ogawa and Zhiqian Wang, “Effects of Quantitative Easing Monetary Policy Exit Strategy on East Asian Currencies,” The Developing Economies, 54, no. 1, 103–129, March 2016. 2018/11/16 一橋大学財務リーダーシップ・プログラム