2004年世界の需給動向と 将来の見通し - PGM - 平成17年3月30日 金属資源開発調査企画グループ 北 良行
プラチナの需給 パラジウムの需給 プラチナの需給予測 パラジウムの需給予測 南ア偏在とAAplc寡占 PGMの価格推移 本日の発表は ①プラチナの需給実績 ②パラジウムの需給実績 ③プラチナの需給予測 ④パラジウムの需給予測 ⑤PGMの南ア偏在とAAplcへの寡占 ⑥PGMの価格推移実績 の順に簡単な説明を行う PGMの価格推移
PGMの主な用途 投資 宝飾品 自動車触媒 自動車プラグ 燃料電池 メモリーディスク PGM白金族金属の主の用途は ①宝飾品として ②自動車排ガス用触媒として ③投資としてが 有名。 そのほかの用途として ④メモリーディスク ⑤自動車のプラグ ⑥そして将来的に燃料電池の触媒 として期待されている。 この中で現在 ①宝飾品と ②自動車排ガス用触媒 としての需要が7割以上を占める。
Platinum Palladium PGMは6種類 Rhodium PGMは周期律表で見ると 8族の遷移元素で Ni Co Feの下にある パラジウム プラチナ ロジウム イリジウム ルテニウム オスミウム の6種類を言う そのうち存在及び需要が多いものは でそれにロジウムが続く。
20世紀のプラチナ生産推移 (tons) 戦後生産が飛躍的に伸びる プラチナの利用 古代エジプトまで遡る 他の多くの金属同様、 第二次世界大戦後その需要が飛躍的に伸びた金属 その需要は、金等の貴金属同様、 宝飾需要が当初主体。 しかし、 1970年代カリフォルニアに始まる環境対策により、 自動車産業への供給が近年特に増大
プラチナの用途概要 プラチナ有史以来の生産量 プラチナはかなり貴重 PGMの中で最も知られるプラチナの需要は 宝飾品であり ついで自動車排ガス用触媒 しかし、その有史来の使用量はわずか4,000トン程度 貴金属の王様である金の使用量140,000トンの わずか35分の1 金がオリンピック50mプール3倍分と言われるのに比して プラチナは5×5×5mの立方体程度の量に収まってしまう。 故にかなりの貴重性がある (tons)
プラチナの需要 (tons) 次の表は1975年から2004年までのプラチナの需要 #1975年のプラチナ需要は80トン #そのほぼ半分の38トンが宝飾品 自動車触媒用需要は11トンであった 次に1975年以降プラチナ需要の変化を図に示した。 J & M platinum 2004 Interim report
プラチナの需要 (tons) J & M platinum 2004 Interim report 橙が宝飾 赤が自動車触媒 青系統が化学・電気需要 #1975年 38tであった宝飾品需要 1980年台にいったんは落ち込み その後1999年まで右肩上がりで上昇 #自動車触媒用需要は 1977年を境に上昇、宝飾需要との比率を一気に縮小、同様の右肩上がりの上昇をする。 しかし、そのほかの #化学 #電気 と言った需要は全く伸びていない。 全体として、プラチナの需要は1980年以降緩やかに上昇し続けている。
プラチナの需要 (tons) 成長の結果 2004年のプラチナ需要は前年比で1%未満の増加にとどまるものの、 合計201.3トンの最高記録に達している。 ①自動車触媒 2004年の自動車触媒産業によるプラチナ購入量は、全世界で7%増加して106.7トンに 一方 ②宝飾品 宝飾品用は2004年に10%減の68.4トンと 7年間の最低水準水まで落ち込む。 これ プラチナ価格の上昇が主因となって 中国宝飾品業界の購入量が急減していることが原因。 J & M platinum 2004 Interim report
プラチナの地域別需要推移 1970年代 日・米 1990年代 日・欧・米 2000年代 欧・日・米中 (tons) 1970年代 日・米 1990年代 日・欧・米 2000年代 欧・日・米中 (tons) プラチナの需要を地域的に見た場合 #1975年には日本と米国が多く、欧州が続いたが、 #1990年代には日本、米国、欧州がほぼ需要を3分 中国の需要はJ&Mではその他の国に含まれているが、 その殆どは中国の需要で 1995年以降増加傾向が始まり #2000年には欧州、日本、米国を抜いて #2004年には欧州30%、日本20%、米国17%、その他30%と4分する形となった。 プラチナ需要は3局体制から、4局体制になった。 J & M platinum 2004 Interim report
パラジウムの需要 (tons) 次ぎにパラジウムの需要であるが #1980年の総需要は63トン #多くはエレクトロニクス #歯科用としての需要であった。 J & M platinum 2004 Interim report
パラジウムの需要 (tons) パラジウム需要推移を示すと #1980年代 10トン程度であった自動車排ガス触媒用は 1990年代に入ると上昇し始め、 1994年から急上昇 1999年には180トンを越えるまでになった。 しかし、その後、需要は落ちこんでいる。 #一方、歯科用需要は徐々に上昇し、 1995年には40トンに達したが、 1999年に以降減少している #エレクトロニクス産業も同様に1990年代上昇したが、同様に2000年以降減少している。 #一方宝飾品としての用途は元来少ない。 パラジウムの需要は概して 1980年代は除増、 1990年代に急増、 2000年以降激減した といえる。 J & M platinum 2004 Interim report
パラジウムの需要 (tons) 以上の推移の後 パラジウム需要は2004年、 #2002年以降の上昇貴重が続き、191トンに。 自動車触媒産業による需要は #2004年に113.5トンになる。 北米の自動車メーカーでは、在庫の取り崩しを引き続き縮小しており、これが全体の購入量を押し上げる主因。日本・その他の地域でも、小型車の増産と排ガス基準の強化により需要の増加が見込まれる。ただし、欧州では、ディーゼル車のシェア拡大により需要の減少が予想される。 #そのほか 歯科用合金は26.1トン エレクトロニクス28.5トン 宝飾品23トンに達する J & M platinum 2004 Interim report
パラジウムの地域別需要推移 1980~90年代 米・日・欧 2000年以降 米・日・欧・中 (tons) 地域的に見た場合 1980~90年代 米・日・欧 2000年以降 米・日・欧・中 (tons) 地域的に見た場合 #1980年には日本と米国に欧州が続き、 1990年代には欧州が増加、日本、米国、欧州がほぼ需要を3分し #1995年以降は中国で代表されるその他の国での需要も拡大、 #2000年には急増 #2004年には欧州、日本、米国、その他が拮抗して4分する形となっている。 J & M platinum 2004 Interim report
プラチナの供給推移 (tons) 増加の殆どが南ア J & M platinum 2004 Interim report 次ぎにプラチナの供給について説明 1975年 79トンの供給のうち55トンを南アが供給 #その南アの供給はほぼ一定の割合で増加し続け 2004年には200トンのうち155トンを供給 #ロシアからの供給は1990年代に入り増加したが、 非常に不安定な状態で、その後伸びているとは言えない。 #北米 #その他については殆ど増加していない。 #すなわちこの30年間に供給は120トン増えたが 100トンが南アで、増加の殆どが南アから。
パラジウムの供給推移 (tons) ロシアは不安定 J & M platinum 2004 Interim report パラジウムについてはロシアが主要な供給国である。 #1980年72トンの供給のうち半分以上の38トンを供給 その後、1990年代にはいると供給量は急増 1998年には180トンに達した。 2002年には急減して60トンとなったが 2004年には100トンに回復 #南アの供給は 1980年の27トンから 2004年の80トンへ順調な増加 #北米も少ないながら順調に生産を伸ばしているといえよう。 #その他では大きな増加は見られない。 #パラジウムについてはロシアの不安定を要注意 以上がこれまでの実績に基づいた需給動向 次ぎに今後の予測について説明する。
世界のプラチナ需要予測 増加 2004年 2015年 自動車排ガス触媒 3,200 → 5,312 燃料電池 10 → 1,000 増加 2004年 2015年 自動車排ガス触媒 3,200 → 5,312 燃料電池 10 → 1,000 宝飾品 3,200 → 4,400 Nedcor 2004 1,000 oz 南ア銀行系投資会社であるNedcorの調査部門 2015年までの需給見通し 一番下の灰色に示すように、世界のプラチナ需要は 2003年の6百万オンスから 2015年には11百万オンスに #Nedcorは化学、石油やその他における需要増は殆どない。 #自動車触媒としての需要は 2003年の3.1百万オンスから 2010年には4.5百万オンス、 2015年には5.3百万オンスとなる 差し引き増加はおよそ2百万オンス #燃料電池ではほぼゼロから百万オンス #宝飾品は2.7百万から4.4百万となる すなわち、燃料電池としての需要増より、従来の触媒としての需要増を大きく見込んでいる。 この予測では、特に宝飾品としての需要が2004年でJMと90万オンス違うので現在の価格であれば過剰予測と考えられる。
プラチナ供給予測 増加の殆どが南ア 1,000 oz Nedcor 2004 供給実績では、 1975年の79トンのうち70%の55トンが南アから 2004年の見込みでは、200トンのうち78%の155トンが南アから 供給されている。 121トンの増加のうち82%の100トンは南ア。 したがって、南ア以外での埋蔵量・生産は規模が小さく 今後の需要増に対応する増産は南アを中心に検討せざるを得ない。 #Nedcorでは生産見通しについて南ア、ロシア、北米、ジンバブエに分けて推測している。 #世界合計で2003年の6.1百オンスから9.7百万オンスへの増加を期待している。 #ロシア#北米#ジンバブエ#その他には急激な増産を期待せず #大きな増加を期待しているのは南アの4.6百万から7.9百万 この予測では南アの供給を中心に若干多めである。
プラチナ需給バランス予測 1,000 oz Nedcor 2004 以上の需給を差し引くと #赤の供給は #青の需要を常に下回り #黒のバランス曲線のごとく不足が続く。 #数値的には下表のピンクの需給バランスとなり 供給不足は毎年50万オンス程度で 2015年には百万オンスを越える すなわち #今後ともプラチナは中長期的に供給不足の状態が続くと予想 しかし、需給ともに過剰気味であるため、特に、価格高騰時の投資や宝飾需要が伸び悩む事を考慮、 需要で80万オンス、供給で30万オンスを差し引いて利用したのがリバイスした数字で、これによると、大まかバランスするといえる。
パラジウム需給バランス予測 1,000 oz Nedcor 2004 パラジウムについての需給バランス 上の灰色部分は供給サイド 2004年の6.6百万オンスから 2015年まで平均して7.1百万オンスを保ち、 一方の需要は下の灰色 常に7百万オンスを下回る状態にある #NedcorではバランスをMovement in stockとして表現 数十万オンスの恒常的な供給過剰が続くと予想。 2004年は供給は実績がより多く、需要は実績が少なくなっている。 より、供給過剰の方向にある。 さらに、 プラチナの多くが南アから増産される見込みで、 南アでは、今後の増産に関し、 鉱床としては現在よりUG2リーフを、 また、地域として東岩体を開発して行く予定。 これらは、 プラチナとパラジウム生産比率に関し、 よりパラジウムを多く生産することになるため、 供給過剰はより一層多くなると考えられる。 Nedcor 2004
南ア供給の半分はAnglo Platinum 南アからのプラチナ供給 南ア供給の半分はAnglo Platinum 1,000 oz プラチナの供給に話が戻るが、 南アでどの様な増産が見込まれているか #Nedcorのデータでは全世界の生産量は 2015年には現在より320万オンス多い、790万オンスに。 #会社もしくはプロジェクト毎に生産予測されているが、 #AACでは 2003年の2.3百万 から 2015年の3.9百万 このうち既存鉱山からは60~70万オンス 新規等鉱山から百万弱程度が見込まれている。 #Impalaでは 1.4百万 から 2.1百万 #Lonmin 91万 から 1.4百万 各社毎にほぼ平均的に増加を見込んでいる。 さて、プラチナの生産面では 世界に占める南アの生産が80%近く、 南ア全生産の半分弱がAnglo Americanによって生産され、 将来的にもシェア50%弱は同様に続くわけであるが Nedcor 2004
PGM資源量の8割が南ア 9割が南部アフリカ #次ぎが資源量 #世界のPGM資源について2000年にMisraが取りまとめたもの #Buchveld、Great Dyke、Stillwater、Sudbury、Norilskについて 資源量がまとめられている。 ここには合計が書かれていないが、 世界でプラチナはおよそ34,800t パラジウムはおよそ29,200t 合計で75,000t弱ある Bushveldは #Merensky、 # UG-2、 # Platreefに分けられ、 PGM総量は39,000tで世界の79%を プラチナに限れば29,000t 82%以上の資源量が南アに偏在 ジンバブエを含めれば9割を越える
南アの資源の8割がAP社 世界の (8割×8割=) 64%が AP社 次の表は 南アPGM生産者の鉱量、資源量(各社の年報等から)。 #鉱量・資源量 Merensky ・UG2に分けられ計上、 #鉱量・資源量合計では Anglo Americaは1億58百万オンス 南アの57%を #Inplatが17百万オンス #南ア合計で2億7千万オンス、トンベースで8,600t存在 #資源量をみれば Angloは7億4千万オンス82%を占有している。 南ア全体で9億オンス、トンベースで28,000t存在する。 # PGM総量では南ア全体で36,700tの存在し、Aaplcは77%を占める。 #すなわち南アの8割のPGMがAAPlcに寡占され #8割×8割の64%のPGMはAaplc1社に寡占している 世界の (8割×8割=) 64%が AP社
PGMの価格推移 1990年前半まで 金と同様の動き 1990年代後半から 独自の動き Kitco homepage dataから作成 1990年前半まで 金と同様の動き 1990年代後半から 独自の動き 次ぎに価格推移概要ですが、 白金は1990年代中頃まで金とほぼ同様な動き。 しかしながら、冷戦の終了にともない金のお金としての価値が見直され、 いくつかの中央銀行による保有金の放出などにより下落、 一方、工業的利用の比率が高いPGMは1995年以降独自の価格を形成するようになった。 当時比較的価格の低かったPdへの需要シフトと 不安定なロシアからの供給により パラジウム価格が1999年高騰したことは周知 その後、有事の金、金融商品からの資金流入などにより、価格を上げてきた金とともに、環境規制など実需を伴うPtは急激な上昇を初め、現在に至っている。 J&Mでは昨年11月 今後6か月間の価格はプラチナで1オンス760ドルから880ドル、 パラジウムで160ドルから250ドルで推移するとの予想を発表 現在その上限近くを行っている。JMの短期予測ではプラチナ需要は揺るむ傾向にあるとするが、未だなおbullな状況にある。 Kitco homepage dataから作成
ま と め 恒常的なパラジウムの過剰 Pt需要増を満たすは南アのみ Anglo American 過度の寡占化 以上簡単にまとめると ま と め 恒常的なパラジウムの過剰 Pt需要増を満たすは南アのみ 以上簡単にまとめると #プラチナは慢性的な供給不足 #一方パラジウムは恒常的な過剰 #供給側を見た場合、需要増を満たせるのは南アの増産のみで #その南アの生産量、埋蔵量ともAnglo Americanに寡占している Anglo American 過度の寡占化