東京ベイ浦安市川医療センター 菅原 誠太郎.

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東京ベイ浦安市川医療センター 菅原 誠太郎

severe sepsis患者に、血液培養採取前に抗生剤を投与することは、 Introduction Severe septic もしくはseptic shockの発症1時間以内に血液培養を採取し、 広域の抗菌薬を投与し、12時間以内に外科的なsource controlを推奨 (Surviving Sepsis Campaign Guideline 2012) Crit Care Med 2013, 41:580–637. 低血圧発症から6時間以内では、抗生剤が1時間遅れる毎に死亡率が7-8%上昇する Crit Care Med 2006, 34:1589–1596. 適切な時間に、適当な抗生剤の投与が生存に最も重要な予測因子である Crit Care Med 2010, 38:668–678. severe sepsis患者に、血液培養採取前に抗生剤を投与することは、 院内死亡率の増加因子となる Crit Care Med 2010, 38:367–374.

Introduction 今までの研究は、主に救急部、もしくはICUで治療された患者に焦点を当てられており、 Source controlの遅延を評価していない Severe sepsisの患者は一般病棟でも入院しており 効果的なsource control が必要なことがある 一般病棟の患者も含めて、敗血症に伴う臓器障害発症後の 抗生剤の遅延がアウトカムに強い影響を与えるか 敗血症の最近の研究に基づく推奨がどの程度守られているか を検証する

PICO Patient: Severe sepsisもしくはSeptic shockの患者 Intervention: 抗生剤、source controlまでの時間 推奨が守られているか Comparison: なし Outcome: 28日死亡率

quality improvement processを参加している施設 Methods ドイツの44施設における前向き縦断観察研究 敗血症患者の初期診療を行っており、 quality improvement processを参加している施設 ICUがない施設は除外 regional and national research and quality improvement networkにて募集

Patients 期間:2010年12月~2011年4月 Inclusion: 感染が確立もしくは疑われ、少なくとも1つ以上の新規臓器障害を認めた患者 Exclusion: 他院で初療が行われた症例、フルで治療されていない患者 臓器障害の定義: ・急性脳症 ・血小板減少(<10万、24時間で30%以上の減少) ・room airで、PaO2<75mmHg or 酸素投与下でP/F比<250 ・充分な補液にもかかわらず、尿量<0.5ml/kg or Creが2倍以上上昇 ・BE<-5mmol/lの代謝性アシドーシス or 乳酸値が1.5倍上昇 ・昇圧薬、補液にもかかわらず、SBP<90mmHg or MAP<70mmHg

Data collection カルテで記載されている最初の臓器障害を伴う感染を発症時間とする 臓器障害発症前、24時間以内に投与された抗生剤投与(Antimicrobial therapy: AT)を previous ATとして扱う 術前の抗生剤は、previous ATとして扱わない Empirical ATはday5に評価され、不十分と判断された場合5日以内に拡大される Source controlは、手技がうまく行かないときに不十分と判断される ATまでの時間、source controlまでの時間、乳酸値、発症時のプロカルシトニン、 採取された血液培養数、ICU・在院死亡率 を因子として抽出

Statistical analysis Primary endpoint: severe sepsis発症後28日時点での生存率 カテゴリー変数は絶対的相対的頻度で表現され、カイ2乗検定 or Fisher検定を用いて解析 連続変数は中央値と四分位数範囲で表現され、Mann-WhitneyのU検定を用いて解析 抗菌薬投与時期は、 ①以前に投与 ②1時間以内 ③1−3時間 ④3−6時間 ⑤6時間以上 に分類 Source contorlまでの時間は ①6時間以内 ②6時間以上 に分類

Result 1048人の患者がinclude 37人の患者が、データ欠損により除外 1011人の患者を評価 臓器障害の所見は 85.1 %の患者で、複数の臓器障害+ 28日死亡率は、34.8% (ICU33.0% 病院死亡率41.4%) 大学病院 or not、病院の大きさで関連なし

28日死亡率(p=0.227) 34.9% 36.2% 1時間以内AT投与:36.6% 投与までの中央値は2.1時間(0.8-6) 臓器障害後では AT投与時間と死亡率に有意差なし ORは1時間毎に1.0増加;95%CI1.0-1.0 (p=0.482)

German recommendation Compliant VS non-compliant 28日死亡率 ↓ 28日生存では有意差なし (ICU、院内生存率ではあり) German recommendation Compliant VS non-compliant 28日死亡率 34.9% VS 34.3%(p=0.869) Source control 十分VS不十分 26.7% VS 65.6%(p=0.001) (28日死亡率)

Adequate VS inadequateで 5日以内にescalate:41.9% 9.5%で5日以内にde-escalation De-escalation ありなしで 28日死亡率 22.9%VS36.0%(p=0.01) AT時間1時間以内でも 1時間以上でも、 Adequate VS inadequateで 有意差あり

1時間以内にAT投与で 28日死亡率に有意差なし

Discussion Surgical controlを6時間以内にすることで、28日死亡率が有意に低下する。 SSCGは、source controlを6時間から12時間に拡げた ↓ 壊死性軟部組織感染症患者のうち 14時間以上経過後手術した群では、死亡率が増加するというstudyに基づいている (Intensive Care Med 2009, 35:847-853) より短い時間での遅れの評価がない 今回のstudyを通し、source controlは可能な限り早く行うべき

細菌感染確定後に抗生剤を行く方がempiricalに投与するより、死亡率が低い Discussion 臓器障害発生前に敗血症を認識し、早期ATにより28日死亡率低下する 敗血症性ショック後に、抗生剤が遅れても時間毎に死亡率が増加しない Crit Care Med 2011, 39:2066–2071. 集中治療が必要な外科的患者で 細菌感染確定後に抗生剤を行く方がempiricalに投与するより、死亡率が低い ↓ 両群で投与までの時間が長く、解釈困難 (11hr VS 17.7hr) Lancet Infect Dis 2012, 12:774–780.

Discussion 敗血症性ショック患者では 1/3しかガイドライン遵守で、抗生剤が1時間以内に投与されていない AT前の血液培養採取は、64.2% 2setは50%程度 Empirical ATは、ドイツのガイドライン遵守75% 40%で5日以内に不十分と判断され変更 AT投与時間にかかわらず、十分な抗生剤投与がアウトカムに関連

Limitation 長所 ・前向き、多施設 ・ICU以外の部署でも、date抽出 ・施設のレベルに関係なく、date抽出 短所 ・スタッフの問題で、薬剤感受性結果で抗生剤の十分性を判断できていない →医師に、5日以内に抗生剤を変更したか確認することで代用 ・乳酸以外の指標を評価していないため、死亡率にどう影響するか評価できていない (fluid resuscitation その他のsupportive measure )

Conclusion ・source controlは可能な限り早く施行する(6時間以内) ・十分なempirical ATが重要