小児に特異的な疾患における 一酸化窒素代謝産物の測定 東京慈恵会医科大学小児科学講座 浦島 崇 埼玉県立小児医療センター 小川 潔、鬼本博文
目的 小児に特異的に認められる疾患 (低身長と川崎病)においての 一酸化窒素代謝産物の血中濃度を測定し、 疾患との関連性に関して検討する。
低身長 低身長(同年齢、同性の標準値-2SD)の精査 成長ホルモン分泌刺激試験 (下垂体性 or 非下垂体性) インスリン・L-DOPA・グルカゴン・アルギニン 過去の報告では 腎性高血圧の患者にL-arginineを負荷したところ 負荷後30~40分で平均15%の平均血圧低下が出現し、 NO3-も有意に上昇。 低身長の小児ではどうか?
対象 低身長精査目的で入院した 男児9名 女児1名 平均8歳8か月 方法 アルギニン注 5ml/kgを30分でDIV 投与開始後30, 60, 90, 120分後に 成長ホルモンとNO3-を測定。 NO3-は高速液体クロマトグラフィで測定
結果 L-arginine負荷前後の血圧変化 mmHg mmHg 収縮期圧 拡張期圧 NS NS 負荷前 負荷30分後 負荷前 負荷30分後
結果 L-arginine負荷後のNO3-の変化 3000 μmol/ml 2000 1200 負荷後 30分 負荷後 60分 負荷後 90分 負荷後 120分 負荷前 AVG 2296.8 2137.0 2359.8 2155.0 2181.2 2440.2 294.2 303.2 192.4 350.0 298.8 243.2 SD
考察 L-arginineの枯渇によって発症した高血圧の場合には外因性L-arginineがNOを強く誘導する可能性があると報告 Patel A et al; Hypertension 22: 863,1993 L-arginineが枯渇していないと推測される正常血圧の環境下では外因性L-arginineはNOを強く誘導せず、血圧低下も認めない。
川崎病 乳幼児期に発症し 冠動脈炎、冠動脈瘤を 呈する原因不明の疾患。 既往者は早期に動脈硬化が出現すると報告されている。 治療前後、遠隔期においてNO3-を測定
対象 ① 急性期川崎病患者12名 男児8名 女児4名 平均1歳9ヶ月 γグロブリン治療前後でのNO3-の変化を検討 ① 急性期川崎病患者12名 男児8名 女児4名 平均1歳9ヶ月 γグロブリン治療前後でのNO3-の変化を検討 ② 川崎病による冠動脈病変が残存し10年以上経過した症例10名のNO3-を検討
川崎病γグロブリン前と解熱後の比較 NO3- 1143±482μmol/ml vs 2102±902μmol/ml; P<0.05 冠動脈病変なし 冠動脈病変あり 3000 2000 NO3- 1000 1143±482μmol/ml vs 2102±902μmol/ml; P<0.05
急性期(有熱期)川崎病と感染症有熱患者での比較 (1143±482μmol/ml vs 2051±920μmol/ml; P<0.05 川崎病発症後10年以上経過した症例と コントロール(中学生不整脈患者) 2008±706μmol/ml vs 2624±718μmol/ml;P<0.05
考察 急性期川崎病ではNO3-は低下していた。しかしiNOSの発現が増加しNO3-が上昇するとの報告があり、今後、さらに検討を加える必要がある。 川崎病の既往は動脈硬化の危険因子であることが近年報告されており、遠隔期におけるNO3-の低下は血管内皮機能異常を合併している可能性を示唆した。
まとめ 低身長と川崎病に関して、血中NO3-の測定を行った。 低身長ではアルギニン負荷で血圧低下はなく、 NO3-の上昇も認めなかった。 血管内皮機能の低下の可能性が考えられた。