小児科外来で採血を受ける幼児への説明に オノマトペを用いた介入の有効性の検証

Slides:



Advertisements
Similar presentations
分散分析と誤差の制御 実験結果からできるだけ多くの情報を取り出すために 分散分析を利用する 主効果の大きさ 交互作用の大きさ 誤差の大きさ 採用した因子の効果の有無 の検定には,誤差の大きさ と比較するので誤差を小さ くできれば分散分析での検 出力が高まる どのようにしたら誤差を小さくできるか?
Advertisements

1標本のt検定 3 年 地理生態学研究室 脇海道 卓. t検定とは ・帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統 計量が t 分布に従うことを利用する統計学的 検定法の総称である。
計量的手法入門 人材開発コース・ワークショップ (IV) 2000 年 6 月 29 日、 7 月 6 ・ 13 日 奥西 好夫
第 2 章 子どもの成長・発達と看護 3. 幼児期の子どもの成長・発達と看護( 2 ) 学習目標 1 .幼児の睡眠と規則正しい生活の必要性を理解する. 2 .幼児の健康維持に対する取り組みとしての清潔行動確 立に向けた援助を理解する. 3 .幼児にとっての遊びの意義と発達を促すために必要な 遊びへの援助を理解する.
エクセルと SPSS による データ分析の方法 社会調査法・実習 資料. 仮説の分析に使う代表的なモデ ル 1 クロス表 2 t検定(平均値の差の検定) 3 相関係数.
「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討
第6回授業(5/17)での学習目標 1.2.1 実験計画法のひろがり(途中から) 1.2.2 節完全無作為化デザインをもっと知 ろう
当院における糖尿病患者の 自己効力に関する調査
第1部 一元配置分散分析: 1つの条件による母平均の違いの検定 第2部: 2つの条件の組み合わせによる二元配置分散分析
分散分析マスターへの道.
コメント 「ファセット・アプローチの 魅力とパワー」
パレスチナ人の越境移動に関する意識と経験
RコマンダーでANOVA 「理学療法」Vol28(7)のデータ
入院患者の満足構造に関する理論的・実証的考察
児童の4年間の成長曲線と給食から見られる 食事の偏りとの関連性の検討
色のかくれんぼ (5・6年) 実施学年 年 月( 時間) -1- (描画材の造形活動の評価規準) 学習の目標
高感度CRPの新たな有用性 ~H.pyloriにおける検討~
-レイプ支持態度と回答者の立場による検討-
音楽による影響と 事象関連電位との関連 大正大学 人間学部人間科学科3年  宮内 悠.
第9回 二標本ノンパラメトリック検定 例1:健常者8人を30分間ジョギングさせ、その前後で血中の
4.「血液透析看護共通転院サマリーVer.2」 の説明
第6章 2つの平均値を比較する 2つの平均値を比較する方法の説明    独立な2群の平均値差の検定   対応のある2群の平均値差の検定.
ドイツの医師職業規則 から学ぶもの 東京医科歯科大学 名誉教授  岡嶋道夫.
かゆみが血液透析患者のQOLに与える影響の検討 ~SF-36v2を使用して~
3群以上の場合,t-検定か多重比較検定か? 片側か両側検定かどちらを選ぶ? ◎報告書に記載してください
臨床統計入門(3) 箕面市立病院小児科  山本威久 平成23年12月13日.
第8回授業(5/31)での学習目標 一事例デザインとは? 分割区画型反復測定デザインとは? メタ・アナリシスとは?。
当院における透析間体重管理指導方法についての検討
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 社会統計 第8回:多重比較 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
介護予防サービス・支援計画表 記入のポイント.
動詞の共起パターンを用いた 動作性名詞の述語項構造解析
採血を受ける幼児へ説明する「ことば」の地域差の検討
離婚が出生数に与える影響 -都道府県データを用いた計量分析
CKD患者に対する食事記録が 食事療法に及ぼす効果の検討
全自動コンソールTR-3000MA®の感染面からの評価 ―ルミノール試験を用いて―
中山和弘(聖路加看護大学) 戸ヶ里泰典(東京大学大学院健康社会学)
スピーキングタスクの繰り返しの効果 ―タスクの実施間隔の影響―
Rコマンダーで分割プロットANOVA 「理学療法」Vol28(8)のデータ
健診におけるLDLコレステロールと HDLコレステロールの測定意義について~高感度CRP値との関係からの再考察~
メンタルレキシコン3:ことばの意味を実験から探る
血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~
Rコマンダーで2元配置ANOVA 「理学療法」Vol28(8)のデータ
第11回授業(12/11)の学習目標 第8章 分散分析 (ANOVA) の学習 分散分析の例からその目的を理解する 分散分析の各種のデザイン
二重課題による ワーキングメモリの増減  情報システム工学科3年 038 田中 祐史.
血液透析患者における運動と身体測定値、QOLの関係性
臨床研究への参加のお願い  病気の原因を調べたり、予防、診断、治療などが進歩、発展していくために人を対象として行う、複数の臨床研究が必要となります。  船橋市立医療センターでは臨床研究を開始するにあたり、倫理委員会おいて、研究内容について医学的な面だけでなく患者さんの人権、個人情報、安全に対する配慮も十分検討したうえで、問題がないと考えられた研究のみを行っております。
予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による回復期リハの成果測定法の提唱
二硫化ジフェニル(Cas No ) 高用量群の雌RBC(-11%)になぜ有意差が付かないか/前回勉強会
藤田保健衛生大学医学部 公衆衛生学 柿崎 真沙子
母音[i]のF1, F2平均値の分析.
STAS-Jでの情報収集に困難を感じるのはケアの困難さと関連があるのか
血液透析患者の震災に対する備え(第二報) ~緊急離脱訓練を通して~
看護研究における 統計の活用法 Part 4 京都府立医科大学 浅野 弘明 2012年11月10日 1.
院内の回復期リハ病棟間の成果比較  -予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による測定法を用いて-
第12回授業(12/18)の目標 ANOVA検定の実習 WEB を用いたANOVA検定と、授業で行った検定結果の正誤の確認方法(宿題)
東日本大震災後の小中学生の作文におけるポジティブな語り ~テキストマイニングによる分析~   ○いとう たけひこ(和光大学)    西野 美佐子(東北福祉大学) 日本教育心理学会第58回総会 ポスター発表 PG 01 サンポートホール高松1階展示場 2016年10月10日(日)在席10-11時.
「アルゴリズムとプログラム」 結果を統計的に正しく判断 三学期 第7回 袖高の生徒ってどうよ調査(3)
N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Cas No
藤田保健衛生大学医学部 公衆衛生学 柿崎 真沙子
運動部活動がソーシャルスキル獲得に及ぼす影響について
サッカーにおける コーディネーショントレーニング 効果について
欅田 雄輝 S 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科
要因Aの差,要因Bの差を見たい 2つの要因なので二元配置分散分析の適用 要因B 水準A 水準B 水準C 要因A 水準a
新しい医療機器の治験にご協力いただける方を募集しています。
疾患バリアントデータベースMGeNDのご案内と 臨床ゲノム情報統合データベース整備事業へのご協力のお願い
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
DI者の権利擁護にかかる相談窓口とソーシャルワーク・ポリシー
ビデオレビューによる 外来教育 北海道家庭医療学センター 草場鉄周.
疫学概論 臨床試験の種類 Lesson 14. 無作為化臨床試験 §B. 臨床試験の種類 S.Harano,MD,PhD,MPH.
2018年度 患者さま満足度調査結果の報告 <入院部門> <外来部門> <外来部門> <入院部門>
Presentation transcript:

小児科外来で採血を受ける幼児への説明に オノマトペを用いた介入の有効性の検証 石舘 美弥子 1)  山下 麻実 2)  いとう  たけひこ 3) 1) 常葉大学健康科学部 2) 横浜創英大学看護学部 3) 和光大学現代人間学部 目 的  採血は多くの子どもにとって大変な苦痛を伴う処置である。小児科で幼児に対して無意識ながら頻繁に用いる オノマトペ(擬音語・擬態語)は言語能力の未熟な幼児にとって、感性的に理解できることばといえる。本研究 の目的は、採血を受ける幼児に対してオノマトペを用いた説明を行い、その有効性を検証することである。  【用語の操作的定義】  本研究におけるオノマトペとは,小児医療現場において対幼児に使用していることばであり,実際に存在する 音に真似てことばとする擬音語や,視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象をことばとする擬態語,および,擬音 語・擬態語に類似した形を持つ表現の総称とする. 方 法 結 果 1.研究参加者:小児科外来を受診した3歳から6歳の幼 児とその保護者30組. 2.研究方法:外来診察順に,オノマトペ群と非オノマト ペ群に交互に割り当てる無作為化比較試験とした.幼児が 採血前後で感じる痛みの客観的評価として,Merkel, Voepel-Lewis, Shayevitz, & Malviya (1977)の FLACC(Face, Legs, Activity, Cry, Consolability) Behavioral Scaleを用いた。測定ポイントは、先行研究 (Movahedi, Rostami, Salsali, Keikhaee, & Moradi, 2006) を参考に,採血前,採血直後,採血5分後の3回を設定した. また,採血後の痛みの主観的評価として,Wong & Baker (1988)のFaces Pain Rating Scaleを採用した(FRS).採 血終了後,子ども自身が感じた痛みの程度を6つの顔の表 情から1つ選んでもらった. 3.分析方法: Mann-WhitneyのU検定,2要因分散分析, Bonferoniの多重比較を行なった.統計解析にはSPSS ver.22.0を使用した.有意水準を5%とした. 4.倫理的配慮:所属機関の倫理委員会および病院の倫理 委員会の承認を得て実施した.対象者に研究目的,方法, 結果発表について文書で説明し,同意を得た.研究への自 由な参加,途中中断の権利,不利益からの保護,プライバ シーの保護を保証した. Figure 1 Wong & Baker (1988)のFaces Pain Rating Scale Figure 2 オノマトペ群と非オノマトペ群によるFRS の比較 Table 1. FLACC (Face, Legs, Activity, Cry, Consolability)Behavioral Scale 行 動 判  定 スコア 表情 ・表情の異常なし,または笑顔 ・時々顔をゆがめる,しかめっ面をする,視線が合わない,関心を示さない ・頻回またはずっと下顎を震わせる,歯をくいしばる 1 2 足の動き ・正常な姿勢でいる,リラックスしている ・落ち着かない,じっとしていない,緊張している ・蹴る,足を抱え込む 活動性 ・おとなしく横になっている,正常な姿勢でいる,容易に動くことができる ・もだえている,前後に体を動かず,緊張している ・反り返る,硬直,けいれんしている 泣き方 ・泣いていない(起きているか眠っているかにかかわらず) ・うめき声またはしくしく泣いている,ときどき苦痛を訴える ・泣き続けている,悲鳴,むせび泣いている,頻回に苦痛を訴える あやしやすさ ・満足している,リラックスしている ・触れてあげたり,抱きしめてあげたり,話しかけることで気を紛らわせ安心する ・あやせない,苦痛を取り除けない Figure 3. オノマトペ群と非オノマトペ群によるFLACC score の比較 考 察 * * p<.01, * p<.05 幼児の主観的評価では,オノマトペ群は非オノマトペ群より痛みが弱く,有意な傾向が認められた (p=.027). FLACC Behavioral Scaleにおいて,2要因の分散分析の結果、時間要因の主効果、時間と群間の 交互作用に有意な差が認められた(F(2,48)=27.07,p<.001;F(2,48)=6.243,p<.005)。 Bonferoniの多重比較の結果、オノマトペ群では、採血前と採血5分後,採血直後と採血5分後の結 果に有意な差が認められた.採血前は不安や恐れの強い傾向が見られたオノマトペ群が,採血5分後 に非オノマトペ群より不安や恐れが有意に低下することが明らかとなった.  以上の結果より,オノマトペを用いた説明は幼児の痛みの程度,不安や恐れを軽減するのに有効で あることが示唆された.   # 本研究は文部科研費#24660030の助成を受けて行った研究の一部で ある.  (連絡)石舘 美弥子 E-mail : mishidate@sz.tokoha- u.ac.jp