血中PCB全異性体分析について 大塚製薬株式会社 大塚ライフサイエンス事業部 EDC分析センター                平井 哲也.

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血中PCB全異性体分析について 大塚製薬株式会社 大塚ライフサイエンス事業部 EDC分析センター                平井 哲也

内容 ・血中PCB全異性体測定について ・プール血液の分析とデータ解析 ・血液サンプル測定結果と臨床検査  結果等との関係について

PCBをめぐる課題及び状況 早期処理 の必要性 POPs条約 環境汚染 PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する 生産・使用等 保管・紛失・放出 国産生産 58,787 t (1954-1971) ・高圧トランス・コンデンサ等 ・熱媒体用  ・感圧紙・その他  ・高圧トランス・コンデンサ 保管 220千台 (58%) ・環境への放出 ノンカーボン紙 蛍光灯の安定器 船底塗料 等に使用 約90% 約10% 回収熱分解されたもの 5,500 t (S62~H元年) 鐘淵化学工業 早期処理 の必要性 POPs条約 環境汚染 PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する 特別措置法(H13.06.15成立)

血中PCB測定 ・血中ダイオキシン類測定 ・血中総PCB測定 ・血中PCB全異性体測定 TEFの定められているDioxin類 29異性体測定  (PCDDs+PCDFs 17異性体 Co-PCBs 12異性体) ・血中総PCB測定 ・血中PCB全異性体測定  PCB209種類の全異性体(Co-PCBsを含む)を別に測定 PCBの詳細な解析には Congener Specific な分析法が要求される

血中PCB全異性体測定 ・PCB製品(KC300-600等)の使用用途により 特異的な異性体・同族体分布を呈する。  特異的な異性体・同族体分布を呈する。  低塩素化物中心:ノンカーボン紙・紙コンデンサー由来(KC300)  高塩素化物中心:船底由来(KC600) ・PCB全異性体を測定する事により詳細な異性体情報が得られ、  環境、ヒトにおけるPCBの挙動把握 ・PCB曝露の有無・曝露経路の推定 ・TEFをもたない異性体にダイオキシン毒性とは異なるホルモン  様作用がある

プール血液中のPCB全異性体の分析 ・インフォームドコンセントの得られた健常人 血液(N=10)をプールしPCB全異性体分析  に用いた。また、プール血液を4つに分け  測定した繰り返し再現性データを得た。 ・PCB全異性体の組成比・PCB製品との比較を行った。 ・血液試料に特徴的な異性体と生体内代謝  について解析した。

Scheme Outline of clean up method and measuring method 13C12-PCBs Internal standard solution Blood 15 ml 2 M-KOH/Ethanol 10 mL Shaking 120 min Ethanol 4 mL Water* 8 mL n-Hexane 15 mL Extraction with n-Hexane 15 mL under shaking 30 min Hexane phase Water phase Hexane phases (2 times) are set to one Washing up by water* 10 mL(x2) *:Water was washed up by n-Hexane Dehydration by Sodium sulfate anhydrous and concentrate Multilayer silica gel column chromatography 10%DCM / n-Hexane (V/V) 100 mL HRGC/HRMS measure 13C12-PCBs syringe spike solution PCBs are concentrated to 40μL under nitrogen gas in GC vial.

The Conditions of Measurement Method for PCBs Instruments HRGC / HRMS HP6890series (Hewlett Packard) / AutoSpec-Ultima ( micromass ) Analysis conditions Injection Temp. 290 ℃   Flow 1 ml / min. (constant flow) Column HT8-PCB (Kanto Chemical Co., INC.,) 60 m x 0.25 mm I.D. Oven Temp. mono ~ penta 120 ℃ ; 20 ℃ / min.;180 ℃,0 min.;          2 ℃ / min.; 252 ℃ ; 50 ℃ / min.;310 ℃ ,5 min. hexa ~ deca 120 ℃ ; 20 ℃ / min.;180 ℃,0 min.;          2 ℃ / min.; 260 ℃ ; 5 ℃ / min.;310 ℃ ,5 min. Interface Temp.  290 ℃ Source Temp. 280 ℃   Electron Energy 35 eV Resolution 12000

BZ Number ( Ballschmiter K and Zell M , 1980 )

血中PCB全異性体測定結果・繰り返し再現性

D2CB #11 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample Retention Time (min.)

T3CB #28 #31 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample Retention Time (min.)

T4CB #74 #80 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample Retention Time (min.)

P5CB #118 #99 #105 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample #118 #99 #105 Retention Time (min.)

H6CB #153 #163 #138 #164 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample #153 #163 #164 #138 Retention Time (min.)

H7CB #180 #182,187 #170 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample #180 #182,187 #170 Retention Time (min.)

O8CB KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample #199 #194 #203 #195 #202 #196 Retention Time (min.)

N9CB #206 #208 #207 KC-300,400,500,600 equivalent mixture Pooled blood sample #206 #208 #207 Retention Time (min.)

プール血液中で検出した塩素数別異性体数

Fig. Homologue distribution of PCBs in Kanechlor and pooled blood KC-200 KC-500 KC-300 KC-600 KC-400 Pooled blood Fig. Homologue distribution of PCBs in Kanechlor and pooled blood

#74

#99 #118 #153 #138

PCBの生体内動態 ・脂溶性が高い 体内に取り込まれると ・生物学的に安定 蓄積し排泄が困難   の程度には顕著な差がみられる。 2) 動物の種類によっても大きく異なる事が報告されている。   ・塩素数4個以下の場合、代謝とともに比較的容易に体外  に排泄される。 ・ヒト、ラット、サルではほとんど代謝されない2,4,5,2’,4’,5’ -    HxCB (#153)が、イヌ,モルモットでは代謝能が高い。

・2,4,5-位塩素置換体  2,4,4’,5-TeCB(#74)   2,2’,4,4’,5-PeCB(#99)  2,3’,4,4’,5-PeCB(#118)   2,2’,3’,4,4’,5-HxCB(#138)  2,2’,4,4’,5,5’-HxCB(#153)  2,2’,3,4’,5,5’,6-HpCB(#187)  血液中の主要なPCB異性体は2,4,5-位が置換(上記)された  ものが残留している。今回分析したプール血液においても  #153が総PCBの19.7 %, #138が総PCBの7.9 %を  占めていた。 ・3,3’-DiCB (#11)  PCB製品には極微量にしか存在しないが、環境試料中でも  無視できない場合がある。合成有機顔料、トナーの3,3’-  ジクロロベンジジン由来との報告がある1)。   1) S.Litten et al, Organohalogen compounds, 46, 369-372 (2000)

健常人血液中のPCB測定結果(主異性体・総濃度)

総PCB濃度と年齢の関係

総PCB濃度と   甲状腺検査の関係

総PCB濃度と脂質検査の関係

まとめ ・HRGC / HRMSとHT8-PCB カラムを用いて血中PCB全 異性体分析を行い健常人血液中PCB異性体の解析とPCB製品との組成比較等を行った。 ・血液中総PCB濃度と年齢・臨床検査結果との関係についての解析を行った。