力覚計算と更新周期 電気通信大学知能機械工学科 長谷川晶一.

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力覚計算と更新周期 電気通信大学知能機械工学科 長谷川晶一

必要な更新周期は? 1kHz for 70kN/m, 100Hz for 6.7kN/m [Love and Book 1995] 1kHz: 1kg重 で 0.14mmの侵入 100Hz: 1kg重 で 1.5mmの侵入 私の感覚@SPIDARとはちょっと合わない。 おそらく、機構の粘性や摩擦が大きい。 [T.L.Brooks 1990]

安定になる更新周期 [J.E.Colgate and G.Schenkel 1997] を紹介 1自由度 位置計測・力出力 デジタル部分 T: 制御周期 K:バーチャル壁のバネK B:ダンパ B 実デバイス部分 m: デバイスの質量 b: デバイスの粘性 m 位置計測 力提示 デジタル部 Clock 操作者 + - Zero order hold

安定になる更新周期 証明が論文 J.E.Colgate and G.Schenkel: Passivity of a Class of Sampled-Data Systems: Application to Haptic Interfaces 1997, Journal of Robotic Systems 14(1), 37-47 (1997) にありますが、                                と出てきます。 機構にダンパ性 b が必須。 Tが大きいとKを大きく出来ない。 ところで、B(壁のダンパ)は逆効果? ⇒ 普通、b は高域ほど大きいので、効果がある  (w< wN が小さいときは、        に近くなる) 1kHzは制御のため(だけ)に必要

目次 1kHzを実現するための力覚計算 低速な物理シミュレータとの接続 衝突判定の高速化 力覚ポインタが形状を持つ場合の計算 Bounding Volumeの階層化による高速化 力覚ポインタが形状を持つ場合の計算 Point Cloud モデル 凸多面体モデル 低速な物理シミュレータとの接続 1ステップが低速な物理シミュレータを利用するには 拘束解消法(LCPなど)の物理シミュレータとの接続法

Bounding Volumeの階層化による高速化 階層的にBouding Volume (Ruspini 97では球) でポリゴンを覆う。 ポリゴン数が多いときに有効 力覚ポインタの接触判定は、 まず、一番外側の球(赤)と判定。 もし当たっていたら、紫と判定。 紫と当たっていたら…最後に ポリゴン(黒)と判定 [Ruspini et.al. SIGGAPH 97]

Bouding Volume自体の階層化 物体数が多い場合に有効 物体数nに対して、 log2 n 回の判定で済む log2n n

6自由度力覚レンダリング 3自由度力覚レンダリング 6自由度力覚レンダリング 力覚ポインタは点 接触対象の形状とポインタの点の距離を計算 力覚ポインタが形状を持つ 接触対象の形状とポインタの形状の距離を計算

力覚ポインタにPoint Cloudを用いる方法 力覚ポインタをPoint Cloud、 静止物体をVolxelや ポリゴンでモデル化 判定が単純で高速 欠点 特殊なモデルが必要 静止物体が多い場合専用 [McNeely et.al. SIGGAPH 99] Point Cloud Voxel [足立ら JRSJ 03]

形状に、凸多面体を用いる方法 凸多面体 最侵入点でのペナルティ法はだめ 凸多面体 非凸多面体 体積を計算すればOK 高速計算法 物体は凸多角形でモデル化 GJKで共有点を1つ見つける [Muller and Preparata 1978]で 共有部分の凸多角形を高速計算 凸多面体 非凸多面体

[Muller and Preparata 1978] を簡単に紹介 2つの凸多面体の共通部分は、半空間表現のアンド 双対変換とQuick Hullで欲しい情報を取り出す 双対変換とは? 距離を逆数に 点を線に、線を点に 半空間表現 共通部分の頂点 Quick hull で最外の 点と辺を見つける 双対変換 双対変換 O 双対変換 O

物理シミュレーションと力覚レンダリング 剛体の運動 運動方程式 ならば,速度一定・角運動量一定 m: 質量 I: 慣性テンソル f: 外力 v: 速度 w:角速度 運動方程式 ならば,速度一定・角運動量一定

kx mg fn ft 剛体に働く力 重力→ f=mg… 定数 バネ→ f=kx… 位置に比例 拘束力 力の大きさは不明 剛体同士の位置・速度関係が決まっている 蝶番:2物体の相対位置が一定 抗力:2物体が互いに侵入しない 静止摩擦力:物体が滑らない 拘束力(接触力も拘束力の一種) の計算が難しい ⇒ 物理シミュレーションの主な仕事 mg fn ft 13 13

物理シミュレータと力覚レンダリングの関係 物理シミュレータ ⇒ 任意形状同士の接触力を計算 ⇒ 6自由度力覚レンダリング シミュレータ内で加わった接触力をそのまま提示⇒△ ペナルティ法ならばOK.解析法だと提示力が撃力になる問題あり バーチャルカップリング:バネダンパを仮定 = 位置 速度 6自由度バネ・ダンパ 位置 速度

1kHzは本当に必要か? 制御には必要 人の感覚としては必要ない 人間には、1kHzのループは不要なのでは? [T.L.Brooks 90] 人間には、1kHzのループは不要なのでは?

多体の剛体運動(Multi Body Dynamics)シミュレータ 物理シミュレータの種類 拘束力の計算法が違う 速度ベース・加速度ベース:拘束条件の書き方 速度ベース : 侵入しない=相対速度 ≧ 0 加速度ベース : 侵入しない=相対加速度 ≧ 0 多体の剛体運動(Multi Body Dynamics)シミュレータ 撃力法 解析法 ペナルティ法 全自由度法 自由度削減法 Moore & Williams 89 Hahn 88 J. J Moreau の方法 LCPによる定式化 Mirtich 96 Springhead1 加速度 ベース 速度ベース Stewart 96 Armstrong 79 Bullet ODE Featherstone 83 Springhead2 Baraff 89 OpenTissue 後退積分(が使いやすい) 16

更新周期と計算量 解析法のシミュレータ 処理時間の比較 後退積分だから安定 ⇒ Dtを大きくできる シミュレーション1ステップには時間がかかる。 処理時間の比較 ガウスザイデル法(近似解法)を使うとそこまで遅くない ? 5 10 15 20 30 40 50 60 計算時間[ms] ブロック数 ペナルティ法(Springhead) 解析法(ODE ガウス消去法) ガウス消去法 ガウスザイデル法

ポインタ付近だけ1kHz 物理は20Hz 力覚は1kHz 力覚プロセスで何をすればよいか? 物理プロセス 位置,姿勢 1kHz 力覚プロセス 20Hz 提示力 形状特徴 力積 [Adacheら 1995: “Intermediate Representation for Stiff Virtual Objects”]

力覚プロセスの処理での注意 提示力は連続に 力触覚は高域で敏感⇒不連続な提示力はだめ。 だめ OK 20Hz 1kHz 1kHz 時刻 fx t

力覚プロセスの処理での注意点 物理プロセスで接触判定をするとだめ 制御のループに注意:把持が発振する 1kHzで力積を計算して、20Hz(物理シミュ)に返せばOK [長谷川ら 1999] 制御のループに注意:把持が発振する 力が遅れて伝わる ⇒ 発振 20Hz (運が良い場合) 20Hz (間が悪いと) 1kHz(どちらも同じ) 20Hz 20Hz

力覚プロセスの処理 [技術展示 : T4 遅れをなくすには? 力覚ポインタ近傍のシミュレーションも行う 低速 口頭発表:さきほど 2A2-1 近傍物体のコピー 大域シミュレーション 力覚ポインタ 近傍物体 近傍物体の 情報 低速 近傍物体のシミュレーション結果 局所シミュレーション 力覚レンダリング [技術展示 : T4 口頭発表:さきほど 2A2-1 大規模バーチャル世界のための高品質力覚提示 ]

力覚レンダリングでの工夫 イベントベース:制御しないのも手です フィードバック制御 ⇒ 発振 オープンループで提示:Event-based haptic 接触した瞬間に撃力を加える Braking force pulse [S.E.Salcudean and T.D.Vlaar 1994] 接触時の振動を再現する [P. Wellman and R. D. Howe 1995] 力覚インタフェースで再現 Figure 4 - Typical waveforms played during virtual reality testing (green line) and a recorded waveform at 0.289 m/s impact velocity (red line).

まとめ 安定な制御のために、1kHz以上の更新周期が必要 物理シミュレーションは遅くても良い 人間の感覚のために必要なわけではない 物理シミュレータ自体は20Hz~50Hzで十分。 ただし、力触覚は高域で敏感⇒不連続な提示力はだめ。 把持の問題:制御のループに注意 Event-based haptic = 制御しないのも手 物理シミュレーションは遅くても良い 剛体シミュレーションは、後退積分が可能な、 解析法のシミュレータで、Dtを大きくすると高速 力覚プロセスでの処理に工夫が必要 提示力を連続に 遅れのあるループが出来ていないか ⇒ 把持の問題 近傍だけを高速シミュレーションすれば、遅れません