平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:炭素陽イオン 奥野 恒久
前回の内容 ・ pKa ・炭素陰イオンの構造 ・有機リチウム試薬の構造 ・ カルベンの構造と反応性
混成軌道のエネルギー準位 p軌道 混成軌道 s軌道 sp混成 sp2混成 sp3混成 炭素陽イオン、炭素陰イオンとも どちらかの混成状態をとる
混成軌道のエネルギー準位 p軌道 e 3/4e 2/3e s軌道 sp2混成 sp3混成 6e 6e 炭素陰イオン(8電子): 4e sp2混成 sp3混成 s軌道とp軌道とはeだけエネルギーが離れているとする。 6e 6e 炭素陰イオン(8電子): (2/3e×6+2e) (3/4e×8) 4e 4.5e 炭素陽イオン(6電子): (2/3e×6+0) (3/4e×6)
Ph3C-イオン(Cs塩)の結晶構造 ・アニオン中心である炭素原子は平面構造をとる ・フェニル基はねじれている
(CH3)3C+の構造 Top View Side View
安定性という言葉の意味 速度論的安定性 熱力学的安定性 活性化エネルギーが高いか低いか。 エネルギーが低い。 標準生成エンタルピーが小さい(負で大きい)
安定性という言葉の意味 速度論的安定性 熱力学的安定性 活性化エネルギーが高いか低いか。 エネルギーが低い。 標準生成エンタルピーが小さい(負で大きい)
配位数 名称 2 Carbene 3 Cabenium Ion, Carbanion 4 Carbon 5 Carbonium Ion
> > > × ○ 炭素陽イオンの安定性 安定 CH3+ C2H5+ (CH3)2CH+ (CH3)3C+ Me基数 0 1 2 3 Me基の数が増大する程、カチオンは安定化される × σ結合を通じて電子を押し出す (電気陰性度 C: 2.5, H: 2.1) ○ C-H結合との超共役により安定化される
C-H結合と空のp軌道との相互作用 p C-H C-H カチオン中心 メチル基 電子が充填された軌道と空の軌道とが相互作用することにより安定化することが重要
ヒドリドイオン親和力及びラジカルのイオン化電圧 炭素陽イオンの熱力学的安定性を どのように見積もるか? ・ラジカルのイオン化電圧 R・ + e- → R+ + 2e- イオン化電圧が小さいほど安定 ・ヒドリドイオン親和力 R+ + H- → RH+ ⊿H0 = -HIA(R+) HIA(R+)が小さいほど安定
ヒドリドイオン親和力及びラジカルのイオン化電圧 カチオン HIA(R+) IP(R・) CH3+ 1310 949.3 CH3CH2+ 1130 795.0 (CH3)2CH+ 1050 725.0 c-C3H5CH2+ 1010 - C6H5CH2+ - 703 CH2=CH+ 1200 825.9 CH2=CHCH2+ 1070 774 kJmol-1
ヒドリドイオン親和力(置換効果) R3C+ 1置換 2置換 3置換 -CH3 1130 1050 979 -c-C3H5 1010 962 866 -C6H5 993.7 946 900
シクロプロパン環の場合 2つのC-C結合のなす角度は105.4 º?? s0.21p0.79 C-C結合を形成している軌道は 原子間を直線で結んだ直線から 約22.7 º外側に張り出している。 105.4º 114.5º
R3C+ 炭素陽イオンのNMR R1 R2 R3 δC CH3 CH3 CH3 335.7 CH3 CH3 H 320.6 CH3 CH3 Br 319.8 CH3 CH3 Cl 312.8 CH3 CH3 F 282.9 c-C3H5 c-C3H5 c-C3H5 272.0 CH3 CH3 C6H5 254.1 CH3 CH3 OH 249.5 C6H5 C6H5 C6H5 211.9 δC = 288.5 – 159.5q (qは電荷密度)
加溶媒分解の速度にみるカルボカチオンの安定性 ノルボルナン 2,3-ジメチリデン ノルボルナン ノルボルネン 相対反応 速度 1 104 1011 ホモ共役によりカチオンが安定化され 反応が促進されている。
ホモ共役 飽和のCH2をはさんで共役すること 先ほどの場合では、 π* NB π π電子 カチオン中心
軌道のエネルギー差や対称性が 重要な要素となる。
古典的イオンと非古典的イオン 実験事実 (C1, C2)(C3, C7)が等価(-159℃) Cs対称 固体のNMR (5 K) 2-ノルボルニルカチオン 実験事実 (C1, C2)(C3, C7)が等価(-159℃) Cs対称 固体のNMR (5 K) どのように解釈すればよいのか?
古典的イオンの非常に早い平衡 非古典的イオン 環状3中心4電子結合