Serendipity or dull reconfirmation?

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ウイロイド (Viroid) は塩基数が 200 ~ 400 程度と短い環状の一本鎖 RNA のみで構成 され、維管束植物に対して感染性を持つもの。分子内で塩基対を形成し、多くは 生体内で棒状の構造をとると考えられる。 ウイルスは蛋白質でできた殻で覆われているがウイロイドにはそれがなく、また プラスミドのようにそのゲノム上にタンパク質をコードすることもない。複製は.
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π電子自由自在 -C≡C- ポリジアセチレン ナノワイヤー FET素子 結晶工学 ナノ複合体 結晶内反応 イナミン化合物 環状化合物
生物学 第4回 多様な細胞の形と働きは      タンパク質のおかげ 和田 勝.
1
解剖生理学 12月16日(木) 炭水化物の消化・吸収 食環境デザインコース 3年 09210211~09210220.
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生 体 酸 化 Biological Oxidation
日本脳循環代謝学会 利益相反開示 筆頭発表者名:○○ ○○ 演題発表に関連し、開示すべき利益相反関係にある企業などとして、 顧問:A薬品工業
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活性化エネルギー.
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枯草菌C4-ジカルボン酸輸送体DctPとMaeNの機能解析
生体分子解析学 2017/3/ /3/16 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
外膜 内膜 R- (CH2)n -COOH R-(CH2)n-CO-S-CoA R-(CH2)n-CO-S-CoA CoA-SH
1)解糖系はほとんどすべての生物に共通に存在する糖の代謝経路である。 2)反応は細胞質で行われる。
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 水素伝達系.
アンモニア(アミン類) 配位結合:結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合。
代謝経路の有機化学 細胞内で行われている反応→代謝 大きな分子を小さな分子に分解→異化作用 第一段階 消化→加水分解
緩衝作用.
解糖系 グルコース グルコキナーゼ(肝) ヘキソキナーゼ(肝以外) *キナーゼ=リン酸化酵素 グルコース6-P グルコースリン酸イソメラーゼ
大部分の細胞はグルコースを燃料として使用する。グルコースは解糖系によって多段階からなる一連の反応で代謝され、結果的にピルビン酸を生成する。典型的な細胞では、このピルビン酸の多くはミトコンドリアに入り、そこでクレブス回路によって酸化されてATPを産生し、細胞のエネルギー需要に応えている。しかし、癌細胞や他の高度に分裂している細胞においては、解糖系から供給されるこのピルビン酸の多くは、ミトコンドリアとは離れて、乳酸脱水素酵素.
水素および水素水による放射線の防御 主 要 説 明 1.致死量放射線の死亡を抑制 2.放射線によるリンパ腫の発生を抑制
クラスターダイヤモンドの研究開発 精製プロセスの再検討 付加価値付与のための検討 マーケット調査とサンプル出荷状況 →小倉
サフラニンとメチレンブルーの 酸化還元反応を利用
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3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
コアB-1 個体の構成と機能(5)生体物質の代謝
中性シイステインプロテアーゼブレオマイシン水解酵素は、脱イミノ化されたフィラグリンをアミノ酸へと分解するのに不可欠である
22・5 反応速度の温度依存性 ◎ たいていの反応 温度が上がると速度が増加 # 多くの溶液内反応
第15章 表面にエネルギーを与える 生命と惑星の共進化による惑星燃料電池の形成
日本脳循環代謝学会 利益相反開示 筆頭発表者名:○○ ○○ 演題発表に関連し、開示すべき利益相反関係にある企業などとして、 顧問:A薬品工業
生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康
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好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
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2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第9回 公共データバンクの代謝パスウェイ情報
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Serendipity or dull reconfirmation? 五十嵐研雑誌会 No. 1068 Serendipity or dull reconfirmation? (Discussion on [r]TCA cycle) Masaharu Ishii

Metabolism-first or Genetic-first?  私は進化を真っ向から論じようとは考えていない。また、そう するための総合力が自分に足り ないことも充分に分かっている。  しかし、現在の代謝の姿から 何かが見えるのでは?と期待し、考え、その妥当性を自分なりに 検証することは止めたくない。

TCAサイクル ウィキぺディアより

還元的TCAサイクル 4CO2→Oxaloacetate (4ATP + 10[H]) Citrate Acetyl-CoA Citryl-CoA Citrate Succinyl-CoA Oxalosuccinate Isocitrate 2-Oxoglutarate Succinate Fumarate Malate Pyruvate Acetyl-CoA 4CO2→Oxaloacetate (4ATP + 10[H])

rTCAサイクルはAutocatalytic cycleと 成り得るか Simple cycleの候補 PLoS Biology, 6(1), 5-13 (2008)

成り得ないのでは!? ○ 酢酸やコハク酸に対してカルボキシル化反応が 生じている。同じ反応がリンゴ酸にも生じてしまう 可能性が高い。 ○ 酢酸やコハク酸に対してカルボキシル化反応が 生じている。同じ反応がリンゴ酸にも生じてしまう 可能性が高い。 ○ オキザロ酢酸、オキザロコハク酸、フマル酸の 還元反応が生じている。同じ反応がピルビン酸やα-ケトグルタル酸にも生じてしまう可能性が高い。 ○ 酢酸のカルボキシル化反応で、マロン酸を生成 しないような特別な触媒の存在が必要となる。 ○ チオエステル化合物生成性(CoA様物質)を酢酸、コハク酸、クエン酸に限定するのは難しい。 ○ サイクル外へ化合物を引っ張る反応が存在し得る。 PLoS Biology, 6(1), 5-13 (2008)

ホルモース反応はAutocatalytic cycleと成り得るだろう PLoS Biology, 6(1), 5-13 (2008) J. Theor. Biol. , 188, 201-206 (1997)

(r)TCAサイクルはAutocatalytic cycleではないのだろう では、TCAサイクルとrTCAサイクルのどちらが先に在ったのだろうか? (これは真っ当な質問だろうか・・)

TCAサイクルだろうか ピルビン酸 アセチルCoA 縮合 クエン酸 脱水 シスアコニット酸 水添加 イソクエン酸 脱水素 オキザロコハク酸 COOH CH2 C=O ピルビン酸 CH3 C=O SCoA アセチルCoA 縮合 COOH CH2 HO-C-COOH クエン酸 脱水 COOH CH2 C-COOH CH シスアコニット酸 水添加 COOH CH2 HC-COOH HO-CH イソクエン酸 脱水素 COOH CH2 HC-COOH C=O オキザロコハク酸 Genome Res. 9:1175 (1999)

rTCAサイクルでは? モジュール Citrate Acetyl-CoA Isocitrate Citryl-CoA 水添加 CO2 Oxaloacetate Citryl-CoA Citrate Succinyl-CoA Oxalosuccinate Isocitrate 2-Oxoglutarate Succinate Fumarate Malate Pyruvate Acetyl-CoA Gluco- neogenesis 脱水 Fe-S CoA付加 TPP 2電子還元 炭酸固定 開裂 モジュール 炭酸固定 炭酸固定 ビオチン ビオチン 2電子還元 TPP 炭酸固定 脱水 Fe-S 2電子還元 CoA付加

つまり、こんな考え・・・・・ Acetyl-CoA Succinyl-CoA 左側の代謝系が機能 シスアコニット酸まで 反応進行 酵素が二機能性を有していたため、クエン酸が生成 クエン酸処理のため、CoAが動員され、Citryl-CoAができる Citryl-CoA lyaseが機能し始め、回路が完結する 炭酸固定 炭酸固定 Pyruvate 2-Oxoglutarate 炭酸固定 炭酸固定 Oxaloacetate Oxalosuccinate 2電子還元 2電子還元 Malate Isocitrate 脱水 脱水 Fumarate cis-Aconitate Citrate Citryl-CoA 2電子還元 水添加 Succinate Acetyl-CoA + Oxaloacetate

アコニターゼが関わる分子 H2O H2O クエン酸:91% cis-アコニット酸:3% イソクエン酸:6%

フマラーゼが関わる分子 H2O リンゴ酸:75% フマル酸:25% フマル酸の分子対称性がフマル酸還元酵素を産んだ

フマル酸還元酵素 フマル酸還元酵素のサブユニット数が多いこと、さらにはモチーフが多いことは、生物が、とにかくフマル酸を代謝しよう、と喘いでいた歴史を刻んでいるのでは!?

モジュールの機能性 (サイクル形成前?) イソクエン酸リアーゼの不可逆性が問題 Acetyl-CoA Pyruvate Oxaloacetate Malate Fumarate Succinate Citrate cis-Aconitate Isocitrate 2-Oxoglutarate Succinyl-CoA Glyoxylate イソクエン酸リアーゼの不可逆性が問題

3-Hydroxypropionateサイクル Trifunctional Bifunctional Trifunctional アセチルCoAから プロピオニルCoAまで アセチルCoA マロニルCoA マロン酸セミアルデヒド 3-ヒドロキシプロピオン酸 3-ヒドロキシプロピオニルCoA アクリロイルCoA プロピオニルCoA PNAS 106, 21317 (2009)

参 考 文 献 ○ The implausibility of metabolic cycles on the prebiotic earth, Leslie E. Orgel, PLOS Biology, 6(1), 5-13 (2008) ○ Possible evolutionary role of methylglyoxalase pathway Anaplerotic route for reductive citric acid cycle of surface metabolists, Miklos Peter Kalapos, J. Theor. Biol. , 188, 201-206 (1997) ○ A prokaryotic gene cluster involved in synthesis of lysine through the amino adipate pathway: a key to the evolution of amino acid biosynthesis, Hiromi Nishida, Makoto Nishiyama, Nobuyuki Kobashi, Takehide Kosuge, Takayuki Hoshino, and Hisakazu Yamane, Genome Res. 9, 11751183 (1999) ○A soluble NADH-dependent fumarate reductase in the reductive tricarboxylic acid cycle of Hydrogenobacter thermophilus TK-6, Miura A, Kameya M, Arai H, Ishii M, Igarashi Y., J. Bacteriol., 190(21), 7170-7177 (2008) ○ The Viability of a nonenzymatic reductive citric acid cycle-kinetics and thermochemistry, David S. Ross, Orig. Life Evol. Biosph. 37, 61-65 (2007) ○ Which way to life?, Antonio Lazcano, Orig. Life Evol. Biosph, 40, 161-167 (2010) ○ Jan Zarzycki, Volker Brecht, Michael Müller, and Georg Fuchs, Identifying the missing steps of the autotrophic 3-hydroxypropionate CO2 fixation cycle in Chloroflexus aurantiacus, Proc. Natl. Acad.Sci. USA,106 (50), 21317-21322 (2009)