弱電離気体プラズマの解析(LXXIV) 大気圧コロナ放電によるベンゼン、トルエン およびキシレン分解 平成19年度 電気・情報関係学会北海道支部連合大会 平成19年10月27日 北海道工業大学 弱電離気体プラズマの解析(LXXIV) 大気圧コロナ放電によるベンゼン、トルエン およびキシレン分解 Decomposition of benzene, toluene and xylene using a corona discharge at atmospheric pressure Studies on weakly ionized gas plasmas (LXXIV) 長尾 浩二* 坂本 孝弘 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 (室蘭工業大学) Kohji Nagao*, Takahiro Sakamoto, Kohki Satoh and Hidenori Itoh (Muroran Institute of Technology) MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
背景 ベンゼン(C6H6) 大気中に排出される環境汚染物質 放電プラズマを用いたベンゼン分解の研究例 大気中への排出量上位物質[1] ・ 発癌性および催奇形性を有する ・ 白血病との因果関係がある ・ 優先的な排出規制の取り組みが必要 ・ 放電プラズマを用いた処理方法が 注目されている 放電プラズマを用いたベンゼン分解の研究例 後藤ら[2] ・・・バリア放電を用いたベンゼンの分解における酸素濃度変化の影響を調査 金ら[3] ・・・酸化チタン触媒を用いたプラズマ駆動触媒反応によるベンゼン分解の最適化 条件を提案 実際には様々な汚染物質が混在している排ガスを処理する必要がある [1] 環境省:平成17年度PRTRデータの概要 (2007年2月23日公表) [2] 後藤 他:電学論A,Vol.123 No.9 (2003) 900 [3] 金 他:静電気学会誌,Vol.29 No.1 (2005) 32 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
目的 実験内容 実験① ベンゼン,トルエン,キシレンの分解特性の調査(単体) 実験② ベンゼン‐トルエンおよびベンゼン‐キシレン混合ガス中 窒素‐酸素混合ガスにベンゼン‐トルエンまたはベンゼン‐キシレンを添加したガス中で大気圧直流コロナ放電を発生させたときの各物質の分解特性を明らかにする キシレン (C6H4(CH3)2) トルエン (C6H5CH3) ベンゼン (C6H6) 実験内容 実験① ベンゼン,トルエン,キシレンの分解特性の調査(単体) 実験② ベンゼン‐トルエンおよびベンゼン‐キシレン混合ガス中 の各物質の分解特性の調査 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
実験装置 マクセレック製 LS40-10R1 Infrared Analysis., 10-PA 平板電極(ステンレス製) 複数針電極 直径 : f80mm 厚さ : 10mm 針電極数 : 13本 針電極 : f4mm(ステンレス製) 針電極支持板 : f50mm(真鍮製) 針密度 : 0.66本/cm2 マクセレック製 LS40-10R1 Vmax : ±40kV Imax : ±10mA 放電チェンバー (ステンレス製) 内径 : f197mm 高さ : 300mm Infrared Analysis., 10-PA 光路長 : 10m O2純度 : 99.5% N2純度 : 99.99% ベンゼン濃度 : 983ppm トルエン濃度 : 1001ppm キシレン純度 : 85% MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
実験条件 電極構成 : 針(13本)対平板電極 電極間隔 : 35mm 印加電圧 : +27kV(DC) 電極構成 : 針(13本)対平板電極 電極間隔 : 35mm 印加電圧 : +27kV(DC) 窒素‐酸素混合比 : N2:O2=80:20% 封入ガス圧 : 1013hPa MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
実験① ベンゼン,トルエン,キシレンの分解特性(単体) 実験① ベンゼン,トルエン,キシレンの分解特性(単体) 窒素‐酸素混合ガスにベンゼン,トルエン,キシレンを添加したガス中でコロナ放電を発生させたときの各物質の分解特性を調査する 各物質の初期濃度[ppm] legend ベンゼン トルエン キシレン B300 300 T300 X300 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
注入エネルギーに対する各物質の濃度変化の近似式 注入エネルギーに対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度変化 分解に要するエネルギー キシレン < トルエン < ベンゼン 分解初期における各物質の濃度は指数関数的に減少する 一次反応に従う 注入エネルギーに対する各物質の濃度変化の近似式 C0 : 初期濃度 a : 減少係数 e : 注入エネルギー MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
ベンゼン,トルエンおよびキシレンの減少係数の違いを検討するため,各物質の分子構造に注目 注入エネルギーに対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度の減少係数 各物質の濃度の減少係数aおよびB300の減少係数との差Da legend a Da B300 0.043 T300 0.125 0.082 X300 0.237 0.194 ベンゼン,トルエンおよびキシレンの減少係数の違いを検討するため,各物質の分子構造に注目 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
注入エネルギーに対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度の減少係数 各物質の濃度の減少係数aおよびB300の減少係数との差Da legend a Da B300 0.043 T300 0.125 0.082 X300 0.237 0.194 ベンゼン (B300) トルエン (T300) -CH3 キシレン(X300) -CH3 -CH3
注入エネルギーに対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度の減少係数 legend a Da B300 0.043 T300 0.125 0.082 X300 0.237 0.194 メチル基 2個 メチル基の解離Da メチル基 1個 ベンゼン環の 開裂aB
注入エネルギーe に対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度C(e) 注入エネルギーに対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度の減少係数 legend a Da B300 0.043 T300 0.125 0.082 X300 0.237 0.194 メチル基 2個 メチル基の解離Da (nに比例) メチル基 1個 ベンゼン環の 開裂aB 各物質の減少係数 注入エネルギーe に対するベンゼン,トルエン,キシレンの濃度C(e) C0 : 初期濃度 n : メチル基の数 e : 注入エネルギー
実験② B‐T,B‐X混合ガス中の各物質の分解特性 窒素‐酸素混合ガスに,ベンゼン‐トルエンあるいは ベンゼン‐キシレンを添加したガス中でコロナ放電を発生させたときの各物質の分解特性を調査する 各物質の初期濃度[ppm] legend ベンゼン トルエン キシレン B300T300 300 B300X300 B300 T300 X300 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
注入エネルギーに対する混合ガス中のベンゼンの濃度変化 混合ガス中のベンゼン分解 分解の初期においては混合物の影響をほとんど受けない 分解が進むと,わずかに分解が促進されるようになる 混合ガス中の分解生成物がベンゼンの分解を促進する可能性がある MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
混合ガス中のトルエン分解 混合ガス中のキシレン分解 注入エネルギーに対する混合ガス中のトルエンおよびキシレンの濃度変化 混合ガス中のトルエン分解 混合ガス中のキシレン分解 分解の初期においては分解が抑制されるが、全体としては促進される 全分解過程において分解が抑制される 混合物としてのベンゼンおよび混合ガス中の分解生成物が トルエンおよびキシレンの分解に影響を与える可能性がある MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
赤外吸収スペクトル分析による分解生成物の調査 B300T300 C6H5CH3 C6H6 C6H5CH3 C6H6 C6H6 wavenumber [cm-1] MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
主な分解生成物 : CO2, CO, HCOOH, HCHO 赤外吸収スペクトル分析による分解生成物の調査 B300T300 O3 C6H5CH3 CO2 HCOOH HCOOH C6H6 CO2 N2O C6H5CH3 C6H6 CO HCHO N2O C6H6 wavenumber [cm-1] 主な分解生成物 : CO2, CO, HCOOH, HCHO B300, T300, X300, B300X300においても,同様の結果 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
まとめ 窒素‐酸素混合ガスにベンゼン‐トルエンまたはベンゼン‐キシレンを添加したガス中で大気圧直流コロナ放電を発生させたときの各物質の分解特性を調査した ベンゼン,トルエン,キシレンの分解特性(単体) 各物質の濃度は,分解の初期において指数関数的に減少する 分解に要するエネルギーは,キシレン,トルエン,ベンゼンの順に大きくなる 注入エネルギーe に対する各物質の濃度C(e)は,各物質の初期濃度C0および 各物質が有しているメチル基の数nを用いて以下のように表される ベンゼン‐トルエン,ベンゼン‐キシレン混合ガス中の各物質の分解特性 ベンゼンは分解の初期においては混合物の影響を受けないが,分解が進む と,分解が促進されるようになる トルエンは分解の初期において,キシレンは全分解過程においてベンゼンに より分解が抑制される 混合ガスの分解生成物は,各物質単体の分解生成物と変わらない MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
各物質の分子構造 ベンゼン (C6H6) トルエン (C6H5CH3) キシレン (C6H4(CH3)2)