第Ⅱ部 協力ゲームの理論 第10章 コア 2008/07/01(火) ゲーム理論合宿
内容 配分の支配 コア 非分割財市場のコア 負の公共財~ごみ処理ゲーム 凸ゲーム 配分間の支配関係 提携合理性と支配関係 コアの定義 コアの存在 非分割財市場のコア 負の公共財~ごみ処理ゲーム 凸ゲーム 凸ゲームのコアとシャープレイ値
1.配分の支配 ベンチャー企業をプログラマー1,2と営業3で起こす シャープレイ値は 平均プログラマ1 敏腕プログラマ2 営業3 シャープレイ値は いま、3人で提携することを考えたときに、利益の配分はどのようになるかを考える (提携形3人ゲームの配分の集合を図示することを考える) 一般に3人ゲーム(N={1, 2, 3},v)の配分は次のように表される
1.配分の支配 3次元の利得ベクトルで書くと(a) 高さv(N)の正三角形で表すと(b)
1.配分の支配 1 配分(120,0,0) 配分(0,120,0) 配分(0,0,120) 配分(30,40,50) 配分(20,45,55) 50 40 30 3 2
1.配分の支配 配分a(30,40,50)は提携{2,3}に関して 配分b(20,45,55)に支配されているという シャープレイ値的に(30,40,50)という配分にしましょう! ふざけんな!オレら二人だけで組むと100稼げるんだ! せめて(20,45,55)はもらわないと! ・・・・。(涙目) 配分a(30,40,50)は提携{2,3}に関して 配分b(20,45,55)に支配されているという
1.配分の支配 定義1.配分間の支配 ゲーム(N,v)において、2つの配分x,yについて、提携Sに関して (i)選好条件 (ii)実現可能条件 の2つの条件が成立するとき、提携Sに関して、配分xは配分yを支配するといい、次のように書く 選好条件:提携Sのすべてのメンバーにとって、配分xが配分yより大きい利得が 得られるため、yよりもxを選好する 実現可能条件:そのような配分xを提携Sだけで実現可能である
1.配分の支配 優加法的提携形n人ゲームにおける2つの配分をx,yとすると が可能なのはn≧5のとき。 ●提携合理性について ゲーム(N,v)において、利得ベクトルxがすべての提携にとって をみたすとき、この利得ベクトルは提携合理的であるという
2.コアの理論 支配される配分はその提携によって拒否され、実現されることは難しい。そこで、コアという解を定義する ●コアの定義(支配関係による定義) ゲーム(N,v)において、いかなる配分にも支配されない配分の集合をコアとよぶ ●コアの定義(提携合理性による定義) ゲーム(N,v,A)が弱優加法的であるならば、コアは提携合理的配分の集合である。すなわち、コアをC(v)とすると である
2.コアの理論 コアは一次不等式の組の解として与えられ、n次元ベクトル空間の有界閉集合である コアはシャープレイ値と異なり、配分の集合として定義された解ただ一つの配分を指定する解ではない コアが空集合でないゲームはプレイヤー全体が共同で行動した方が部分的な提携で行動するより、大きな利得が得られ、全体としての協力関係が安定的であることを意味する コアが空集合のゲームは全体提携の値に対して、部分提携の値が相対的に大きく、全体的な協力関係が不安定であることを意味する
2.コアの理論 3人ゲームの例 提携合理性の条件は 全体合理性の条件は これらの条件から図示したのが次頁
2.コアの理論 提携合理性の条件を コアの制約条件という 制約条件は 基本三角形上に図示でき、 三角形DEFがコアを示す
2.コアの理論 別の例 この場合、 コアは空である
2.コアの理論 3人ゲームでコアが空でない条件 プレイヤーの集合をN={1,2,3}としたとき、優加法的提携形3人ゲームのコアが存在するための必要十分条件は次の不等式を満たすことである。
3.非分割財市場のコア 非分割財:文字通り分割できない財。家、車など。 供給者1:a円以上なら売ってもいい 需要者2:b円以下なら買ってもいい 需要者3:c円以下なら買ってもいい ここではa<b<cとする 価格 価格Pは需要曲線と供給曲線の 交点として定まるから、b≦p≦c となる 実際、どこに決まるかは交渉によるので、提携形ゲームとして表現 c b a 数量 1 2
3.非分割財市場のコア 売らなくてもプレイヤー1はaの価値をもった家を持ってるので、 ここで、提携は売買と考えられるので、 三人で交渉され、もっとも高い価格で売買がなされると このゲームのコアは または と表現され、コアを求めることによって、市場における取引の結果として、各プレイヤーが受け取る価値と価格の範囲を求めることができる
3.非分割市場財のコア 具体的な数値例としてa=30, b=80, c=120とすると シャープレイ値はΦ(v)=(80,10,30)で コアに属さない。これは提携{1,2}が満たされる状況も考えているため。 実際に提携される構造は{1,3}{2}となる
4.凸ゲーム ゲーム(N,v)において、提携Sにプレイヤーiが参加したときの限界貢献度v(S∪{i})-v(S)が提携の規模が大きくなるにつれて、常に増加するとき。すなわち、 任意のi∈Nと任意のS⊂T⊂N-{i}について のとき、このゲームを凸ゲームという
4.凸ゲーム 凸ゲームの性質 N人凸ゲームにおいてコアは空でなく、かつその範囲が広く、任意のiについて境界xi=v(i)と共通部分をもつ 凸ゲームのシャープレイ値はコアに含まれる