行動障害心理学05 第4回:行動を減じるための伝統的 操作 消去・罰・分化強化 行動障害心理学05 第4回:行動を減じるための伝統的 操作 消去・罰・分化強化 望月昭 mochi@lt.ritsumei.ac.jp
結果操作による 行動減少の試み(消去、罰、分化強化) 結果操作による 行動減少の試み(消去、罰、分化強化) 1)消去:これまで当該の行動に随伴していた強化刺激を停止し行動を(強化刺激がない状態で自発的に出現するレベルまで)減少させる。 母親の姿・・・・泣く・・・対応しない。 ? ・・・・自傷・・・無視する 2)罰:(嫌悪的な)刺激を当該の行動に随伴させて行動を減少させる(自発レベル以下になる)。 ?・・・・・・自傷・・・嫌悪刺激
Lovaas & Simmonms (1969) Extinction(消去)とpunishment(罰)
ロバースによる状況・背景説明 自傷ケースに対するトリートメントの多くは「薬物療法」と「心理セラピー」(interpersonal therapy)、時にはそれに「電気ショックセラピー」が組み合わされることがあった。しかし、それらの効果は実証されていない。おそらく悪化させている場合もあるのではないか? 先行した我々の事例(Lovaasら, 1965)では自傷行動は、社会的注意(atttension)で強化される学習された社会的行動であることを示唆している(p.143)。
ロバースによる罰や消去を使った理由説明: 嫌悪刺激の使用も消去(無視)も倫理的問題がある。問題行動とは相容れない行動を構築する事が最も望ましい。しかし対象児が治療後に戻る州立病院では、望ましい行動を維持する環境ではない(人手もない)。そもそも、そうした環境が、自傷行動を維持していると思われる。 であれば、可能な選択肢は、「無視」による消去手続きか「強い嫌悪刺激」による行動抑制となる。
対象児: 3名ともに自傷の最悪のケース。 John(8歳、IQ=24):無発語、便コネ(食)、異食 2歳から自傷、拳でこめかみや額を打つ。悪化して7歳で入院。入院中、腕と脚を拘束。 鎮静剤投与も効果なし。UCLAに入院した時点では、蹴る、叫ぶなどの行動あり。拘束時に落ち着くようになるが、なくなると再開。
自傷に対する消去手続き 90分の間「消去手続き」 →先行刺激(大人)が存在しないので一般的な意味での「消去」とはやや異なる
John :行動が停止するまで9000回の自傷あり。 Gregg:反応は比較的少ないが時間がかかる。 消去は、Johnのように比較的短時間で行動を減少させる事例少ない。 また多くのケースで、場面間で効果は般化しない。 深刻な事態に陥る可能性あり:嫌悪刺激による「罰」が適当と思われる(p.147)。
消去手続きにおける一般的留意点・問題点 ●消去手続きの効果は時間がかかることが多い そのあいだ一貫して消去できるか? →「解説」してもダメ「悪いことは無視すんだよ」× →手続き中の行動の出現に周囲の人間も消去できるか →(これまで罰で禁止されていた場合)罰が解かれる ことによって、周囲の人間が当該行動を模倣しないか →消去期間中に出現する「問題行動」が本人に致命的なダメージを与えないか? ●消去手続きの初期には、反応はかえって増大する →その反応の増大に耐えられるか? ●消去手続き中に、攻撃行動や他の「問題行動」が でる場合がある。
John: ●ふたつの場所でトリートメント(5分と10分) 罰セッション(消去セッションと並行して) John: ●ふたつの場所でトリートメント(5分と10分) ●電気ショック:1秒間の電気ショックを自傷に随伴させる。 ●ショックは、全セッションのうち4日間のみ。 計12回施行 ●従属変数:2カ所(各5分と10分)での ・自傷の回数(Hitting self) ・参加成人から逃げる行動(Avoiding) ・泣き声を出す行動(whining)
●10セッションで、「消去室」では消去しているのに、ここではまだ出ている(消去は般化していない)。 ●30セッションの後は自傷が出ない。ショックなしでも出なくなる。 1)罰の執行者がいないと当初は効果がなかった(弁別していく)。セッション30から訓練者3がショックを与えたら、他の大人でも行動減る 2)ショックを与えると大人からの回避行動やむずかる行動も減った(その場面での他の行動も抑制する)。 3)以降、場面が違うと般化はない。ただし数回のショックで減じることができた。
Linda: ●ふたつの場所でトリートメント(5分と10分) (ショックは一カ所でのみ) ●ショックは同様4セッションのみ ●従属変数:2カ所(各5分と5分) ・自傷の回数(Hitting self) ・参加成人から逃げる行動(Avoiding) ・泣き声を出す行動(whining) ●電気ショックと共に「NO」と強く言う(SN)。 (NOは、もともとは自傷行動に対して中性) →ショックと対呈示することで効力を持つか?
●16セッション(ROOMで)ショック(+NO) の随伴から、自傷行動減じる。 ●途中のNセッション(NOのみ)でも行動減 ●別の場所(WALK:廊下)では、ベースライン期 においても、やや減じるが、NOの導入で始めて、殆ど0になる。
罰(電気ショック)の効果について(ロバース) ●自傷に随伴する電気ショックは、行動減少を即時的にひきおこす。 ●ショックの効果はそれが呈示された場面(人)に限定され、他の場面や他の人にその効果は及ばない。 つまり、場所、人を弁別(区別)する。 →人については、複数名が施行すると般化もあり。 ●罰のサイドエフェクトはセラピー的観点からは 許容される。
自傷行動が、社会的強化(attention)によって、強化されている証拠 1)最初の消去の図の中で、GreggのREIは、 自傷行為があった場合に、大人が、部屋に入り、”Don’t do that, Gregg, everything is OK” と声をかける。 2)消去最終日から7回のセッションの中で、 「彼の望むであろう行動」を自傷の後で行うと・・・・・
追加セッション Greggの自傷行動に対して5回に1回程度、注意を向けたり彼の好きな行動を随伴させると・・・
ロバースの例は正の罰(行動に刺激呈示) 他に、 ●レスポンスコスト(罰金) トークンなどを使って、(望ましい行動には呈示、 )望ましくない行動には一定量を奪ってしまう。 ●タイムアウト: 強化刺激(正の強化刺激)の機会を一定時間与えなくする:行動の機会を停止する。(隔離など) ●過剰修正: トイレを汚す → トイレ全体を清掃させる
分化強化(Differential Reinforcement)の方法 ●分化強化:特定の行動を強化し、別の行動は消去する手続き →「反応の形態」だけではなく、反応の特定のペース(時間当たりの反応数:rate)に対して分化強化する手続きもある。(DRH, DRL) ●問題行動に対して、 1)それが一定時間生じなかったら強化 →Differential Reinforcement of O rate (other behavior): DRO 2)その行動とは「相容れない」行動を分化強化 →Differential Reinforcement of Incompatible Behavior
DRO, DRI
その他:プロテクターによる反応減少 もし自傷行動の強化が、皮膚感覚であるとしたら、あるいは「叩く」という感触であった場合には、その強化力を弱める 一種の「消去」手続き
ヘルメットでプロテクト
1.分化強化(正の強化を使う) 2.消去 3.罰 実践の際に推奨される問題行動対処の順番 DRI, DRO, DRA(次回紹介) レスポンスコスト タイムアウト 正の罰