p. 1 有機化合物を構成する元素とその振舞い 2019/2/23 基礎化学B
はじめに 有機化合物が有機化合物らしくふるまうのはなぜか? ペニシリンの発見 1929 A.Flemingが発見 1941 最初の臨床試験 1941 最初の臨床試験 最初の抗生物質 アオカビの一種から産出 2019/2/23 基礎化学B
1 原子と分子; 軌道と結合 2019/2/23 基礎化学B
Bohrの水素原子モデル v mev2 1 e2 me r = r 4pe0 r2 2019/2/23 基礎化学B
原子モデルとオクテット則 1s 1s 2s 2p 閉殻 He 2s+2p=8 Ne e- 9F 9F- 10Ne 等電子配置 2019/2/23 基礎化学B
光子の持つエネルギーと光の吸収・発光 E2 吸収 放射 E1 DE = E2-E1 = hv = hc/l 2019/2/23 基礎化学B
水素原子の発光スペクトル 2019/2/23 基礎化学B
電子の波動性(電子回折) Davisson-Germerの実験(1928) 菊池正士 l = 1.4 Å 75 eV 電子線 d sinq = n l n=1, 2, 3 Ni d =2.5 Å q q d h h l = = de Broglieの式 p mv 2019/2/23 基礎化学B
1次元の井戸のSchrödinger方程式の解 a x Y ( ) |Y (x) | 2 E + h 8 ma x 16 x 9 x 4 節の部分では存在 確率は0になる 2019/2/23 基礎化学B とりうるエネルギ−と波動関数 粒子の存在確率
1次元の井戸のSchrödinger方程式 HΨ=EΨ HΨ(x)=EΨ(x) とりうるエネルギ−(E)と波動関数( Ψ(x) ) ( Ψ(x) )2 粒子の存在確率 h2 d2 H:Hamiltonian, Hamilton演算子:- + U(x) 2m dx2 2019/2/23 基礎化学B
原子の吸収・発光スペクトル 2019/2/23 基礎化学B
水素原子の波動モデル 2019/2/23 基礎化学B
原子軌道 波動関数 Ψ Ψ2 電子の存在確率 量子数 (n, l, m)= (主,方位,磁気) n=1, 2, 3, • • l=n-1 Ψ2 電子の存在確率 量子数 (n, l, m)= (主,方位,磁気) n=1, 2, 3, • • l=n-1 |m|= n-1 (n, 0, 0) s軌道 (n, 1, m) p軌道 (n, 2, m) d軌道 (n, 3, m) f軌道 2019/2/23 基礎化学B
原子軌道(波動関数)と量子数 主量子数:n 1, 2, 3, 4 ・ ・ ・ 方位量子数:l 1, 2, 3, 4 ・ ・ ・ 方位量子数:l 0, 1, 2, 3 ・ ・ ・ l = n -1 磁気量子数:m 0, ±1, ±2, ±3 ・ ・ ・ |m|= n -1 スピン量子数:s ±1/2 2019/2/23 基礎化学B p.5
原子軌道 1s 2px 2py 2pz 3dx2-y2 3dz2 3dxy 3dyz 3dxz 2019/2/23 基礎化学B
軌道のエネルギー 2019/2/23 基礎化学B
構成原理と電子配置 Spin量子数 S= ± 1/2 Pauli principle Hund’s rule 2019/2/23 基礎化学B
周期表 s p d f 2019/2/23 基礎化学B
分子モデルとオクテット則1 1s H2 1s 閉殻 2s 2p HF K殻 CH4 L殻 2019/2/23 基礎化学B
電子の波動と電子雲 + 電子の波動関数 ー 電子の存在する確率 =電子雲 2019/2/23 基礎化学B
結合の形成 Bond Formation σ bond Antibonding orbital 反結合性軌道 E H H 原子軌道 原子軌道(AO) Bonding orbital 結合性軌道 H2 分子軌道(MO) 2019/2/23 基礎化学B
結合力 結合性領域での電子密度の増加は結合力を生む 原子A 原子B 電子 原子Aと電子の クーロン力を 結合軸に投影 原子Bと電子の 反結合性領域 結合性領域 反結合性領域 2019/2/23 基礎化学B
水素とヘリウム H He H He H-H 分子を形成するメリットがない 2019/2/23 基礎化学B
軌道の重なり 大きな軌道の重なりは強い結合を形成 2019/2/23 基礎化学B
σ軌道とπ軌道 結合軸で回転しても符号が変わらない σ軌道 π軌道 2019/2/23 基礎化学B
炭素の4つの手 + + - C 1s2 2s2 2p2 - 2019/2/23 基礎化学B
炭素の4つの手 C 1s2 2s2 2p2 +400 kJ/mol C 1s2 sp3 hybrid orbital sp3 混成軌道 2019/2/23 基礎化学B
メタン methane 共有電子対 Shared pair of electron 109.5゜ 共有結合 Covalent bond Half-filled orbital 2019/2/23 基礎化学B
正四面体 Tetrahedron 2019/2/23 基礎化学B
√ 混成軌道 未混成 sp sp2 sp3 s, px , py, pz 1 1 (s+px), (s-px), py, pz 2 √ 2 6 √ √ 2 1 1 1 3 √ 6 √ √ 2 1 1 sp3 (s + px+ py + pz), (s + px- py - pz), 2 2 1 1 (s - px+ py - pz), (s - px+ py + pz), 2 2 2019/2/23 基礎化学B
sp2 混成軌道 sp2 hybrid orbital C 1s2 2s2 2p2 2p1 C 1s2 sp2 hybrid orbital sp2 混成軌道 2019/2/23 基礎化学B
パイ結合 - 二重結合 π bond - double bond 2p1 2p1 π結合 σ結合 π結合 2019/2/23 基礎化学B
エテン (エチレン) ethene 2019/2/23 基礎化学B
sp 混成軌道 sp hybrid orbital 2px 2py C 1s2 2s2 2p2 C 1s2 sp hybrid orbital 2p2 sp 混成軌道 2019/2/23 基礎化学B
パイ結合 – 三重結合 π bond - triple bond 2px 2py 2px 2py 2019/2/23 基礎化学B
エチン (アセチレン) ethyne 2019/2/23 基礎化学B
非局在化したパイ結合 delocalized p-bond 2019/2/23 基礎化学B
色素の例 インジゴ Dye Indigo 2019/2/23 基礎化学B
色 画像情報を伝えるもの color 2019/2/23 基礎化学B
結合の分極 双極子 dipole +q -q r 双極子モーメント μ μ = ∑qiri 2019/2/23 基礎化学B
イオン化電位(Ip) eV 1eV=23kcalmol-1 1 2 13 14 15 16 17 18 H He 電子放出能 Li Be B 13.60 He 24.59 電子放出能 Li 5.39 Be 9.32 B 8.30 C 11.26 N 14.53 O 13.62 F 17.42 Ne 21.56 Na 5.14 Mg 7.65 Al 5.99 Si 8.15 P 10.49 S 10.36 Cl 12.97 Ar 15.76 イオン化するのに必要なエネルギー A A+ + e- 第一イオン化エネルギー 直接測定可能、光イオン化法など 2019/2/23 基礎化学B
電子親和力(EA) 1 2 13 14 15 16 17 18 H He 電子を引付ける能力 Li Be B C N O F Ne Na 0.75 He 電子を引付ける能力 Li 0.62 Be B 0.24 C 1.27 N O 1.47 F 3.34 Ne Na 0.55 Mg Al 0.46 Si 1.24 P 0.77 S 2.08 Cl 3.61 Ar 陰イオン化したとき放出されるエネルギー A + e- A- 直接測定不可能、Born-Harberサイクルを利用 2019/2/23 基礎化学B
電気陰性度(c) 原子が電子を引付ける傾向 Mullikenの電気陰性度 c = Ip + EA Paulingの電気陰性度 (DAB/96.49)1/2 =|cAP - cBP| DAB = DAB - 1/2(DAA + DBB) D:結合エネルギー kJmol-1 2019/2/23 基礎化学B
電気陰性度 1 2 13 14 15 16 17 同周期 大きい 電子を引付け易い H 2.3 Li 0.9 Be 1.6 B 2.1 C 2.5 N 3.1 O 3.6 F 4.2 Na 0.9 Mg 1.3 Al 1.6 Si 1.9 P 2.3 S 2.6 Cl 2.9 同族 K 0.7 Br 2.7 Rb 0.7 I 2.4 2019/2/23 基礎化学B
双極子モーメント 完全に1電子移動したとすると 1.60×10-19 ×0.139×10-9= 22×10-30 =6.58D 1D=3.34×10-30 Cm 2019/2/23 基礎化学B
HFの双極子モーメント H F 完全に1電子移動したとすると 1.60×10-19 ×0.09169×10-9= 14.7×10-30 =4.40D 1D=3.34×10-30 Cm 実測値1.98D 1.98/4.40=0.45 1.86 D 0 D ほとんどの結合は極性共有結合であり、 電荷の偏りを持っている。 2019/2/23 基礎化学B
永久双極子 permanent dipole δ- δ- δ- δ- 2019/2/23 基礎化学B
誘起効果 Inductive effect d+ 電子求引性 d- d+ d- d+ d- d- d+ 電子供与性 2019/2/23 基礎化学B
1,3-dibromobutane の表記法 2019/2/23 基礎化学B
まとめ 有機化合物をつくる炭素原子の結合 炭素原子のsp混成軌道による4本の足 σ結合とπ結合 σ結合とπ結合 π結合とその非局在化による安定・電子の共有空間の広がり 結合の分極と誘起効果 2019/2/23 基礎化学B
非共有電子対 lone pair 107゚ 2019/2/23 基礎化学B
非共有電子対の働き 2019/2/23 基礎化学B
Basic Organic Chemisry /Takahara 周期表と有機化学 主役 1H1 hydrogen 6C12 carbon 7N14 Nitrogen 8O16 Oxygen 2019/2/23 Basic Organic Chemisry /Takahara
立体化学 電子対間の電気的反発 109.5゜ 105゚ 107゚ 2019/2/23 基礎化学B
構造異性体 Constitutional isomer (Structural isomer) 原子の組成が同じだが、別な化学的性質のもの C2H6O Boiling point -24゚C 78゚C 2019/2/23 基礎化学B
シス・トランス異性体 cis/trans isomer 二重結合がカンタンに回らないため、二重結合の炭素にそれぞれ異なる置換基があると構造のちがいが生じる。化学的性質は少し異なる。 立体障害 cis-2-butene trans-2-butene 2019/2/23 基礎化学B
酸と塩基 Acid and Base 2019/2/23 基礎化学B
塩化水素の解離と水素イオンの発生 Brφnsted-Lowry の酸-塩基の定義 Acid Proton donor Base Proton acceptor プロトン供与体 プロトン受容体 Brφnsted-Lowry の酸-塩基の定義 2019/2/23 基礎化学B
水素イオン=プロトン Proton p. 48 Oxonium ion proton 2019/2/23 基礎化学B
Brφnsted-Lowry の 酸ー塩基の定義 酸はプロトン供与体 塩基はプロトン受容体 2019/2/23 基礎化学B
酸の解離定数(Ka) 2019/2/23 基礎化学B
塩基の解離定数(Kb) 2019/2/23 基礎化学B
共役酸 Conjugate acid 塩基を平衡式の反対側からみたとき、塩基のプロトン化した形の酸を、対象とする塩基の共役酸という。 プロトン受容体 プロトン供与体 Base Proton acceptor Acid Proton donor 2019/2/23 基礎化学B
共役酸のKa p. 49 共役酸 対象とする塩基 2019/2/23 基礎化学B
共役酸・塩基のKaとKbの関係 p. 48 対象とする塩基 共役酸 水のイオン積 2019/2/23 基礎化学B
pKa and pKb pKa+pKb=14 (298K in H2O) pX=-log10X pH=-log10[H] (共役酸・塩基のとき) 2019/2/23 基礎化学B
pKa+pKb=14 (constant) 強酸 弱塩基 弱酸 強塩基 弱酸 強塩基 2019/2/23 基礎化学B
脱離基(leaving group)のめやすとしてのpKa 2分子的親核置換反応 強い酸の共役塩基 2019/2/23 基礎化学B
塩基の強さと脱離のしやすさ 塩基の強さ C2H5O- OH- CN- Cl- 脱離のしやすさ CN- C2H5O- OH- Cl- 2019/2/23 基礎化学B
酸の強さと分子構造 酸 pKa CH3CH2OH 18 H2O 14 C6H5OH 9.9 CH3COOH 4.8 H2SO4 very small 2019/2/23 基礎化学B
酸の解離状態を安定化する要因 アニオンを構成する原子の電気陰性度 負電荷の非局在化による安定化 溶媒和による安定化 2019/2/23 基礎化学B
アニオンを構成する原子の電気陰性度 Electronegativity of X- 負電荷をもつ原子の電気陰性度大 X-の安定化 E E 2019/2/23 基礎化学B
負電荷の非局在化による安定化 - E - - 2019/2/23 基礎化学B
共鳴構造 電子の局在化と非局在化 共鳴構造と極限構造式 共鳴構造 実在する構造 実在しない構造 曲がった矢印による電子の流れの表記 極限構造式2 極限構造式1 50%の寄与 50%の寄与 曲がった矢印による電子の流れの表記 2019/2/23 基礎化学B
共鳴 ベンゼンの結合は等価(1.4Å) 2019/2/23 基礎化学B
共鳴 従来から用いられている構造式のみでは正確に表せない構造がある。 極限構造式は実在しない。 極限構造式がいくつ書けても、実体の構造は一つである。 実体の構造から電子配置のみ局在化させると極限構造式が書ける(逆も可)。 極限構造式、双頭矢印と角括弧で示す。 一般にイオン構造(電荷)は少ないものほど寄与が高く、電気陰性度を反映したものほど寄与が高い。 2019/2/23 基礎化学B
共鳴と平衡 平衡 共鳴 A B C D E = 二つの異なる化学種 二つの異なるルイス構造式 (C, D)で書き表すことが出来る 2019/2/23 基礎化学B
Benzeneの共鳴 寄与の大きい極限構造式 Dewar Benzvalene Prismane 寄与の小さい極限構造式 電子の非局在化に対応できる構造の寄与が高い 2019/2/23 基礎化学B
1,3-butadiene きょうやく 共役二重結合 2019/2/23 基礎化学B
イオン反応-求電子試薬の反応 求電子試薬と芳香族化合物が関係する反応 2019/2/23 基礎化学B
試薬 Reagent 特定の薬品を意味するのではない。 化学合成上の工学的概念 求核試薬 Nucleophile Nu: 求電子試薬 Electrophile E ラジカル Radical R・ 2019/2/23 基礎化学B
求電子試薬 Electrophile E 電子対を受け取って共有結合をつくる電子密度の低い中心がある分子やカチオン H+ NO2+ δ+H-Brδ- δ+Br-Brδ- 2019/2/23 基礎化学B
求核試薬と求電子試薬の反応 Nu: E d+ 試薬:無機化学種および小さな有機化学種という定義もある。 2019/2/23 基礎化学B
Benzene 0.139nm 2019/2/23 基礎化学B
Benzene and Cycohexatriene Hydrogenation 水素化反応によるエンタルピー変化 E 非局在化による安定化 -360kJmol-1 予測値(-120×3) -209kJmol-1 実測値 -120kJmol-1 実測値 2019/2/23 基礎化学B
ベンゼンの低い反応性 水素化 Hydrogenation 臭素化 Bromination 重合 Polymerization 200℃, 200kPa Room Temp., 1Pa 臭素化 Bromination AlBr3 etc. No catalyst 重合 Polymerization No reaction Fast reaction 2019/2/23 基礎化学B
芳香環への付加 Ⅰ + X- δ+ EーX δ- Carbocation intermediate 2019/2/23 基礎化学B
芳香環への求電子置換反応 Ⅱ -H +X- Carbocation intermediate 2019/2/23 基礎化学B
Electrophilic Substitution EーX (A) Substitution Product Addition Product -H +X- (A) (E) 2019/2/23 基礎化学B
CH2=CH2 + Br2 BrCH2CH2Br Bromonium ion 2019/2/23 基礎化学B
Bromination of Benzene 2019/2/23 基礎化学B
C6H6 + Br2 C6H5Br + HBr Br+(AlBr4)- AlBr3 -H+ Strong E+ (A) (E) + HBr + AlBr3 2019/2/23 基礎化学B
Lewisの酸塩基 電子対の供与体:塩基 電子対の受容体:酸 Brfnsted-Lowryの定義とも矛盾せず より広義の定義となる 2019/2/23 基礎化学B
講義の情報を得るには http://chem.tf.chiba-u.jp/acb10/ E-mail; karatsu@faculty.chiba-u.jp E-mail に氏名・学籍番号・基礎化学Bと書いて上記に送付すること 2019/2/23 基礎化学B