※このような学習する組織の定義は抽象的で具体的ではない。それに対 して、組織学習の定義の方がより具多的である。 第8回 学習する組織(3章4節) 学習する組織の定義 Peter senge[1990]”The Fifth Discipline”(邦題『最強組織の法則』),p.1、で は、「人々が 継続的 にその能力を広げ、望むものを創造したり、新しい 考え方やより普遍的な考え方を育てたり、集団の やる気 を引き出した り、人々が互いに学びあう 場 」と定義している。 Nonaka[1991]”The Knowledge Creating Company”(邦題『ナレッジ・クリエ イティング・カンパニー』),p.97、では、「新しい 知識 を創り出すのが何も 特別なことではなく、その組織の中では 誰も が知を生み出す成員とし て振る舞い、存在するような組織」と定義。 ※このような学習する組織の定義は抽象的で具体的ではない。それに対 して、組織学習の定義の方がより具多的である。 Chris Argyris[1977]”Double-Loop Learning in Organization”では、組織学習 を「 間違い を突き止め、これを 修正 するプロセスである」とした。
3-4-1 学習する組織(p.77) 個人学習から組織学習へ 個人学習から組織学習への橋渡し: ・相互理解のための コミュニケーション (共通の言語や 通信手段および場の提供など)が必要になる。 ・組織目標を達成するために、 ミドル がビジョンの共有 化(ミッションの確認)や従業員の動機づけや方向づける役 割を担う。 ・さらに、 人事評価システム 等の組織体制も個人学習 の成果を組織学習に統合することを促進するものでなけれ ばならない。 あなたしか気づいていない営業のコツがあります。 あなたは周囲に教えますか? それを組織的に広めるには何が必要ですか?
3-4-2 組織能力の必要性(p.79) 資源の有効活用 組織は、成長する過程の中で、縦割りや膠着などの状態に陥ることが ある。組織の規模が拡大するとともに、中央集権的組織による画一的 な対応では無理が生じるようになる。 次第に、分権化の必要性が強く認識されるようになり、組織が縦割り構 造に変化する。分権化された組織の中でも、惰性や慣性が働き易く、長 年の 慣行 や 手続き が重視され、変化を嫌う土壌が生まれる。 近年、グローバル化や技術革新の影響で、組織を取り巻く環境の 変 化 は激しさを増している。そのような中で、縦割りかつ膠着的な組織 では、保有している資源や外部の 資源 を有効に 活用 することは 難しい。 組織によっては、組織横断的な活動の促進や細分化した組織の再編な どを行って、 縦割り の弊害を解消し、より 柔軟 に内外の資源を 活用できるようにしようとする動きを活発化させている。
3-4-3 イノベーション・ギャップ(p.81) 戦略的意図の明示 組織能力を高めるための 枠組み を整備するのはトップの役目で ある。 最初に、トップは、 戦略的意図 を持って、組織が達成すべき将来 目標を設定する必要がある。 設定される目標は、現時点の組織能力で簡単に達成が見込めるもの では意味がなく、「 イノベーション・ギャップ 」を明確にしているも のでなければならない。 適切な将来目標の設定は、現時点において 不足 しているものお よび 改善 すべきものを浮き彫りにする。そして、それらの存在を組 織内全体に 周知 させることがトップの仕事である。 あなたはどのようなきっかけで勉強を始めますか?
ミドルによるイノベーション・ギャプ解消の働きかけ 次のステップは、そのイノベーション・ギャップを埋めるのに必要な構成員 の 挑戦意欲 を引き出すことである。 各構成員がイノベーション・ギャップを 個人 の問題として認識し、それ を埋めるために貢献しようとする意識を持ち、実際に 行動 に移させる ようにする必要がある。 その際、重要となるのが ミドル (中間管理職)である。彼らが、将来目 標に込められている 戦略的意図 を現場の構成員に正確に理解させ、 そして現場の構成員のやる気を喚起し、行動につなげさせる役割を担う。 戦略的意図 トップ 将来、個人が求められる能力 行動 翻訳 伝達 ミドル 動機づけ 個人の現時点の能力
3-4-4 組織における学習プロセス(p.82) 組織が 慣性 や惰性に支配されている状態では、大規模な環境変 化に遭遇した際に、適切に対応することが困難な事態に陥ることがあ る。そして、そこからの 脱却 も期待できない。 組織は 既存 の方法や対処法では対応しきれない問題を迅速に認 識し、その問題を解決する 対策 を的確に講じる必要がある。 組織が問題を認識し、それへの解決策を講じる 行為 が組織学習 の具体的なプロセスであると言える。 トップが イノベーション・ギャップ を提示することは、組織が解決 すべき 問題 を明確にし、それを組織内に周知させる行為である。 イノベーション・ギャップによって、 組織学習 を開始させることを 狙っているのである。イノベーション・ギャップを効果的かつ効率的に 解消するには、各構成員の努力に加えて、組織としての学習プロセス も重要な働きをする。
組織ルーチンとアンラーニング 最初に、組織 ルーチン (手続きや手順)による問題解決とは、組 織が設定しているルーチンで対応しきれない場合は、組織内で蓄積 されている 他 のルーチンの中から、最適なルーチンに切り替えを 行うというものである。それでも対応しきれない場合は、 新たな ルーチンを考案し、問題の解決を図ることになる。 次に、不適切になった知識や価値観を 捨て去る 行為が必要にな ることもある。この行為は アンラーニング と呼ばれる。既存の ルーチンや体制では、外部環境の変化を迅速かつ的確に把握できな くなった場合や適切に対応できなくなった場合に、既存の知識や価値 観を含めてルーチンや構造を 見直す というものである。 \\ 既 知 いつもの対処法 問題 未 知 新たな対処法 別の対処法
シングル・ループとダブル・ループ学習 最後に、組織変革に関するものがある。下図 は、学習における「シングル・ループ」と「ダブ ル・ループ」を図示したものである。 行動した結果が満足できるものでなかった場 合に、 行動 や 構造 を変えるのが、シン グル・ループ学習である。シングル・ループ学 習は適応的な学習である。 それに対して、結果に満足できなかった時に、 目標 や既存の 価値観 自体に疑問を呈し、 変更するのがダブル・ループ学習である。この ように、状況に応じて、行動だけでなく、組織の 構造や目的の変革も行われる 。