高齢者虐待防止SOSネットワークシステム

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介護支援サービス(ケアマネジメント) 要援護者やその家族がもつ複数のニーズと社会資源 を結びつけること。 要援護者の生活の質を高めること。 保健,医療,福祉,住宅等の各種公的サービスだけ でなく,家族、ボランティア,近隣等の支援とも調整 し,在宅生活を支えていくもの.
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( 平成29年6月30日時点精神科病院長期入院者数[暫定値] )
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在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
退院後支援事業における手順 ⑧退院後支援計画による支援の終了 ⑦退院後支援計画に基づいたサービスの利用 ⑥退院後支援計画の決定・交付
基礎情報の収集・・・前年度の出欠席状況、配慮の必要性、長期欠席経験者への対応
~「依存症対策のあり方について(提言)」(平成29年3月)と府の対応~
大津市自立支援協議会人材育成部主催 大津合同中堅研修 「中堅さん!一緒に学ぼう!2018」 私の研修ネタ ~高齢者虐待防止研修の場合~
精神科医療機関とハローワークの連携モデル事業の実施
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高齢者虐待防止SOSネットワークシステム 大和保健福祉事務所

大和保健福祉事務所所管市町村 綾瀬市 大和市 面積:49.3km2 人口:30.5万人 面積:22.3km2 面積:27.1km2 人口:8.3万人 老年人口:13.3% 大和市 面積:27.1km2 人口:22.2万人 老年人口:13.6%

「はいかい高齢者等SOSネットワークシステム」 経緯 平成9年 「はいかい高齢者等SOSネットワークシステム」 平成12年 介護保険制度開始 隠れていた 介護問題の表出 身体虐待事例 の発見 平成12年7月から平成13年3月 ①相談窓口の設置 ②措置制度と一時保護のための施設の必要性 ③市民への啓発・普及 ④介護者へのサポート ⑤対応フロー図の作成 ⑥電話相談  ⑦警察、法律家との話し会い ⑧学習会の継続 設立準備 事例把握調査 参加37機関に過去2年間の事例16例把握 8割が女性。虐待される高齢者の9割に痴呆、精神疾患がある。 介護者の9割が息子・娘。身体的暴力が最も多い。 介護者とは、介護疲れと複雑な家族関係も関係する。 平成13年3月 「高齢者虐待防止SOSネットワークシステム」設立

構成団体

高齢者虐待防止SOSネットワークシステムの特徴 虐待、虐待疑いのケースの受け皿。 関係機関の職員が、高齢者虐待についての問題意識を絶えず持つことになり、結果的に、ケースを早期発見しやすくなる。 対応方針に関係機関の共通認識が形成される。 関係機関の役割分担を確認できる。

対応フローチャート

事例1 65歳男性。 要介護5、加害者妻 <概要> 近隣に長女、長男が住んでいる。 事例1 65歳男性。 要介護5、加害者妻 <概要> 近隣に長女、長男が住んでいる。 58歳 脳動脈瘤手術。その後、左半身不随。障害1級から、介護保険へ。 車椅子で移動。妻のみが介護に従事。現在に至る。 この間、医療機関に入院するも、暴言、点滴を抜くなどの行動より、退院を迫られる。 退院してからも、暴言、暴行がひどく、妻の顔を殴ったり、食事を投げたりする。 <虐待の状況>(身体的、精神的、介護放棄) 保健師訪問時、暴言のため、口の中にガーゼを入られて、ガムテープを何重にもはられている。 手は、紐で拘束されているので、拘縮している。また、本人が妻を殴った場合、妻から殴り返すので歯が折れたときがある。 妻は、介護サービスも拒否し、1日2食の食事のみ。 「今まで騙されて真剣に介護してきたが、もう止めた。」 <対応> 病院へ入院した。

事例2 75歳男性。要介護2 痴呆あり 加害者:妻 68歳 <概要> 長女43歳と同居。本人:元公務員 65歳 パーキンソン病発病 事例2 75歳男性。要介護2 痴呆あり 加害者:妻 68歳 <概要> 長女43歳と同居。本人:元公務員 65歳 パーキンソン病発病 74歳 駅で転倒し、股関節置換術を受ける。退院後痴呆症状が始まる。 <虐待の状況>(身体的、精神的) 妻より、「本人の首をしめてしまった。」と大和保健福祉事務所に電話があった。 (妻の発言) 「首をしめてしまった。」 「時々刃物を持ち出してしまう事がある。」 「本人の言う事を無視する事がある。」 「トイレの失敗を執拗に責め、尻をたたいたり、蹴飛ばす事がある。」 <対応> 家庭訪問の結果、「夫と妻と分離した方がいい」旨妻に伝え、同意してもらう。 ショートステイを利用する。

事例3 77歳女性。要介護2 痴呆あり 加害者:息子の妻 事例3 77歳女性。要介護2 痴呆あり 加害者:息子の妻 <概要> 実息子は、妻と別居。 本人は1戸立てに息子の妻、孫と同居しているが交流なし。 <虐待の状況>(身体的、経済的、介護放棄) 顔面などに内出血、打撲傷あり、嫁に怯える。 嫁の介護は全くなく、別居の息子は、月1-2回程度面倒をみるだけ。 息子の収入が不定期。お金がないため、食べる物がないため、生活消耗品が買えない。冷暖房器具が使えない。 <対応> 緊急性はないが、第3者を交えて、息子夫婦の関係修復を兼ねて話し合いをもつ。

事例4 76歳男性。要介護1 痴呆あり 加害者:息子(42歳) 事例4 76歳男性。要介護1 痴呆あり 加害者:息子(42歳) <概要> 妻に対しても息子が介護をしていた。本人が痴呆症状がでて、2人介護することになった。 <虐待の状況>(身体的) デイサービス利用時からの相談。 たばこの火、殴るなどで顔に傷や内出血の後が見られた。妻は、四六時中夫を見張っていて、夜、息子に相談している。 (息子の話) 介護サービスについては、介護保険外になり、自己負担を増やしたくない。 <対応> 援助:家族へのカウンセリング。一時保護を検討する

高齢者虐待防止SOSネットワークシステムの 運営上の課題

・関係機関(行政、在宅介護支援センター、老人福祉施設、医療機関)職員向けの研修、マニュアル策定 相談窓口の開設 対応フローチャート ・市民向けの広報 ・関係機関(行政、在宅介護支援センター、老人福祉施設、医療機関)職員向けの研修、マニュアル策定 相談窓口の開設

・チーム検討会の開催、 ・ケースの分析 ・ショートステイなど一時保護施設の確保 ・入院が直ちにできるよう病床の確保 対応フローチャート ・ショートステイなど一時保護施設の確保 ・入院が直ちにできるよう病床の確保 ・家族の了解なしに一時保護できる制度 ・成年後見制度の利用

対応フローチャート 地域福祉権利擁護事業へつなげる 介護保険サービスの最大活用 介護者への 支援

運営上の課題 ○初期対応、早期発見 相談窓口の開設 市民向けの広報 関係機関(行政、在宅介護支援センター、老人福祉施設、医療機関)職員向けの研修、マニュアル策定 ○適切な対応の推進 チーム検討会の開催(ケースの分析) ○緊急時の対応 ショートステイなど一時保護施設の確保 入院が直ちにできるよう病床の確保 家族の了解なしに一時保護できる制度 成年後見制度の利用 ○非緊急時の対応 介護保険サービスの最大活用 介護者への支援 地域福祉権利擁護事業へつなげる

高齢者虐待防止SOSネットワークシステムの法的課題 責任体制 通報は誰がどこまで責任をもって行うのか? 緊急対応の一時入所等は、どの組織が、どこまで責任を負うのか? 家族以外の者が、被虐待者への保護をどこまでするのか、どこまで許されるのか? 予算的、法律的裏づけがない中で、システムを安定的に動かしていくか? 熱意と問題意識の高い職員、関係機関が日ごろから信頼関係があったためにSOSネットワークシステムがスタートすることができたが、その後も発展させるためには、どうするか?