第7回 日本ホスピス緩和ケア協会近畿ブロック会 LCP日本語版 使用方法の実際 ~事例検討~

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A case of pneumatosis cystoides intestinalis attributed
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     【症例2:91歳女性】  認知症、胆管がん 20XX年 1月(90歳): ・アルツハイマー型認知症の疑い、骨粗鬆症、変形性膝関節症で近医にて加療 ・黄疸のため近隣の病院にて入院加療。胆管ステント留置し退院 ⇒加療が奏功し、全身状態は比較的安定 ・サービス付き高齢者向け住宅に入所し療養 ・廃用により体幹・下肢筋力低下。ほぼベッド上での生活。移動はストレッチャ型車いす.
学習目標 1.栄養代謝機能に影響を及ぼす要因について説明することができる. 2.栄養代謝機能の障害による影響を,身体,精神機能,社会活動の三側面から説明することができる. 3.栄養状態をアセスメントする視点を挙げることができる. 4.栄養状態の管理方法について説明することができる. SAMPLE 板書.
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第7回 日本ホスピス緩和ケア協会近畿ブロック会 2011.11. 20 LCP日本語版 使用方法の実際 ~事例検討~ 東北大学大学院医学系研究科               清水 恵

事例に沿って実際の使い方を説明します。 なお、事例は仮想事例です。

事例紹介 A氏 60歳代 女性 疾患 大腸がん 肝転移 腹膜転移 家族背景 両親:他界 夫:死別 子供:娘1人(既婚 別世帯 孫2人) 疾患 大腸がん 肝転移 腹膜転移 家族背景 両親:他界  夫:死別  子供:娘1人(既婚 別世帯 孫2人) 兄妹:兄と妹が近隣に在住 関係良好 キーパーソン:娘 疾病の経過 200X年 大腸がん(横行結腸がん)と診断。 診断時すでに、肝転移・腹膜転移が認められ、Ope適応なし。 化学療法施行後自宅で一人暮らしをしてきた。 200X+1年 腹痛、ADL低下、食欲低下にて、自宅療養困難となり入院。血液データ上 低アルブミン血症、肝機能 腎機能低下 腫瘍マーカー高値 電解質異常・・・等々 認められた。

入院後の経過 LCP開始 終日臥床、意識の低下、経口摂取低下を認める。 チームで予後数日と判断。 入院後、補液1500ml/日。疼痛緩和目的にてフェンタニルパッチ開始され腹痛は緩和。食事も楽しみ程度の摂取は可能となり、お孫さんの訪問を楽しみに待つ姿が見られた。 入院後2週間が経過。次第に病状進行による症状の変化が顕著に見られ始める。(終日傾眠傾向、ADL低下、食欲低下 等) 医師も、臨床症状や血液データから予後が日単位と判断。 終日臥床、意識の低下、経口摂取低下を認める。 チームで予後数日と判断。 LCP開始        (200X+1年 11月25日10:00)

セクション1 初期アセスメントの項目に沿って・・(1) セクション1  初期アセスメントの項目に沿って・・(1) A氏 診断名:   大腸がん 肝転移 腹膜転移 年齢:  60歳    性別:  女性

≪身体症状≫ 苦痛症状: フェンタニルパッチ貼付中、苦痛増強なし。 呼吸器症状: 呼吸困難なし。喘鳴なし。痰がらみなし。 セクション1  初期アセスメントの項目に沿って・・(1) ≪身体症状≫ 苦痛症状: フェンタニルパッチ貼付中、苦痛増強なし。 呼吸器症状: 呼吸困難なし。喘鳴なし。痰がらみなし。 消化器症状: 嘔気・嘔吐なし。嚥下困難なし。 意識・精神の状態:終日傾眠傾向 呼名反応あり。          明瞭な会話困難。家族の認識はできる。          せん妄、抑うつ等精神症状はなし。 排泄: 便秘なし。便意尿意なく、おむつ内失禁。 その他の症状: 四肢の浮腫あり。

≪目標1~3:安楽の評価≫ ≪目標4、5:精神面/病状認識≫ 投薬方法:末梢静脈ルート、貼付剤、 一部内服薬あり セクション1  初期アセスメントの項目に沿って・・(1) ≪目標1~3:安楽の評価≫ 投薬方法:末梢静脈ルート、貼付剤、 一部内服薬あり 頓用薬の指示:疼痛時・発熱時オーダー:                        いずれも内服指示 治療・検査のオーダー: 定期採血(3日毎) 看護ケアの内容: 2時間毎PC バイタル4時間毎チェック   シリンジポンプの準備: 病棟に常備あり。 ≪目標4、5:精神面/病状認識≫ 日本語の理解:本人家族とも問題なし  病状認識:本人・家族ともに病名告知あり。        予後告知なし。

初期アセスメント・患者の問題(セクション1)のバリアンス抽出 によって変更された治療とケア  目標1.投薬方法 →内服薬中止。注射薬 坐薬の指示に。 目標2.頓用薬の指示 →内服指示からSp 皮下注射へ変更 目標3.治療・検査のオーダー →定期採血中止 DNR確認(面談) 目標3a.2時間毎体位交換/骨突出の発赤 → Airマットへ       バイタル4時間毎チェック→必要時適宜(家族とも確認)  目標5.病状認識:予後告知なし→ 病状説明の面談セッティング                         ( DNR確認など) 目標7.家族他との連絡:→ 必ずつながる連絡先を確認 *ページ下欄の、“このページのバリアンス” に記入

≪目標7、8:家族/関係者とのコミュニケーション≫ セクション1  初期アセスメントの項目に沿って・・(2) ≪目標6:宗教/信条≫ 宗教に関すること:本人・家族、仏教で特別な慣習はない。 ≪目標7、8:家族/関係者とのコミュニケーション≫ 家族他との連絡:何かあれば常時連絡(病院まで車20分)             つながらないときの連絡先は未確認 施設案内:オリエンテーション用紙あり ≪目標9、10:まとめ≫ ケア計画の開示、理解:必要時パンフレットなど用いて 9

初期アセスメント・患者の問題(セクション1)のバリアンス抽出 によって変更された治療とケア  目標1.投薬方法 →内服薬中止。 目標2.頓用薬の指示 →内服指示からSp 皮下注射へ変更 目標3.治療・検査のオーダー →定期採血中止 DNR確認(面談) 目標3a.2時間毎体位交換/骨突出の発赤 → Airマットへ       バイタル4時間毎チェック→必要時適宜(家族とも確認)  目標5.病状認識:予後告知なし→ 病状説明の面談セッティング                         ( DNR確認など) 目標7.家族他との連絡:→ 必ずつながる連絡先を確認 *ページ下欄の、“このページのバリアンス” に記入

身体症状の情報からチェックしてみてください。 セクション2  各項目に沿って継続アセスメント                           (11月25日10:00) *LCP開始時 セクション2 各項目を記入しながら評価する。 身体症状の情報からチェックしてみてください。

≪身体症状≫ 苦痛症状: フェンタニルパッチ貼付中、苦痛増強なし。 呼吸器症状: 呼吸困難なし。喘鳴なし。痰がらみなし。 セクション2  各項目に沿って継続アセスメント                           (11月25日10:00) ≪身体症状≫ 苦痛症状: フェンタニルパッチ貼付中、苦痛増強なし。 呼吸器症状: 呼吸困難なし。喘鳴なし。痰がらみなし。 消化器症状: 嘔気・嘔吐なし。嚥下困難なし。 意識・精神の状態:終日傾眠傾向 呼名反応あり。          明瞭な会話困難。家族の認識はできる。          せん妄、抑うつ等精神症状はなし。 排泄: 便秘なし。便意尿意なく、おむつ内失禁。 その他の症状: 四肢の浮腫あり。

セクション2  各項目に沿って継続アセスメント                           (11月25日10:00) 口腔ケア    経口摂取なし。口腔乾燥著明。 褥創ケア    骨突出部に可逆性発赤あり。除圧マットレス使用    自力体動なし。体位交換2時間おき  家族/その他関係者の病状理解     家族への日単位の面談はまだ。 宗教:前述に情報あり 家族/関係者のケア     キーパーソン娘。家庭・子供があり付添したいが困難。     家族の思いにも関心を向け、可能な範囲でのお見舞い     として、病棟も支援している。

開始の時点で セクション2(継続アセスメント)のバリアンス 抽出によって変更された治療とケア 口腔ケア:口腔乾燥 →口腔ケアの方法 口腔保湿剤の使用                 ケア頻度など見直し 褥瘡ケア:骨突出の発赤 → 圧切り替え型Airマットへ変更 家族/その他の関係者の病状理解 :予後告知なし                  → 病状説明の面談セッティング ページ下欄の、“このページのバリアンス”あるいは、次ページの“バリアンス分析シート”へ記入

記入例 バリアンス分析 *どちらを利用して記入するかは、病棟で約束事を決めておく どのようなバリアンスがなぜ生じたか? 対処方法 結果 口腔乾燥がある。 経口摂取なし。唾液分泌低下 口腔内感染、脱水の進行、不十分なケア等 によると考えられる。 サイン       ○本    . 日付/時間   11/25 14時   .  口腔内観察し、口腔ケアを一日3回と定期化し清潔を保つ。口腔保湿剤を併用し、 口腔内の保湿を保つ。 サイン    ○本        . 日付/時間11/2514時       . 口腔内は常に清潔・湿潤環境となった。 サイン     ○本        . 日付/時11/25 14時30分    . サイン                  . 日付/時間                 . *どちらを利用して記入するかは、病棟で約束事を決めておく

LCP開始後2日目         (11月27日 10:00)

終日傾眠傾向さらに強まっている。呼名にも明確に反応 しないことも多くなる。しかし、疼痛増強したのか苦顔みら 開始後2日目  (11月27日 10:00) ≪患者の状態≫ 終日傾眠傾向さらに強まっている。呼名にも明確に反応 しないことも多くなる。しかし、疼痛増強したのか苦顔みら れる。レスキュー投与してみるが表情の変化はない。   → 疼痛 また、咽頭喘鳴みられ、効果的な喀痰もできず、吸引して もすぐ湧き上がってくる状態となる。 → 気道分泌 他の症状は見られない。  口腔内は、清潔が保たれている。 排泄は、排便排尿とも失禁。(排泄にともなう苦痛はない) 新たな皮膚トラブルの発生なし。

開始後2日目  (11月27日 10:00) ≪家族の状態≫ 家族面談後、病状が看取りであることを理解し家族間で娘が側にいられるようサポートされている。医療者にも不安なことや自身の気持ち(悲しさ)を話すことができている。

セクション2(継続アセスメント)のバリアンス抽出によって         変更された治療とケア  疼痛:  疼痛増強?(苦顔)明確な評価困難   → 家族とともに苦痛の程度を評価し、オピオイド増量した。 気道分泌:  咽頭喘鳴=死前喘鳴? 非効果的な対処(吸引)   → 気道分泌の状態を評価し(感染? 水分過多徴候?)    適切な治療を行う。(輸液量の検討、分泌抑制剤の開始)    ケアの目標と意味を家族と共有し、対処方法を検討する。    (吸引のメリット/デメリット、薬物療法の効果、ケアの工夫     家族にできることなど) 死が近づいていることについて話し合い共有する。 ページ下欄の、“このページのバリアンス” あるいは、 次ページの “バリアンス分析シート” へ記入

記入例 バリアンス分析 どのようなバリアンスがなぜ生じたか? 対処方法 結果 疼痛増強の可能性 苦顔がみられる。 疼痛増強の可能性 苦顔がみられる。 昏睡状態にて明確な症状の確認は困難 原疾患の進行 他に関連したと考えられる サイン    ○田              . 日付/時間  11/27 10:00 . ご家族と苦痛の状況を確認。苦痛であろうこと、苦痛緩和優先を希望される。 NSAIDs鎮痛薬レスキュー使用。→× オピオイド鎮痛薬レスキュー使用。 オピオイド鎮痛薬ベースUp。 サイン      ○田            . 日付/時間   11/27  10:15  . オピオイド鎮痛薬レスキュー使用、ベースUpで効果あり。苦痛表情消失。 日付/時間   11/27 11:00   . 咽頭喘鳴出現。気道分泌増強。 死前喘鳴か感染によると考えられる。 サイン     ○田             . 日付/時間  11/27 10:00  . 吸引では効果的な対処は困難。 家族と病態と対処方法について相談。 輸液量減量。分泌抑制剤の開始。 体位の工夫。 吸引は苦痛のない範囲で。 死が近付いていることについても話し合う。 サイン       ○田           . 日付/時間  11/27 10:30     . 喘鳴は自然消失。 家族は残された時間が少ないことを理解。 サイン        ○田          . 日付/時間  11/27  14:00   .

看取り~その後        (11月29日11:00)

看取り~その後 (11月29日 11:00)    ≪患者の状態≫   苦痛や喘鳴への対処後、苦痛症状を感じている様子   もなく、喘鳴も消失。穏やかな表情となり2日間を   過ごす。娘、孫、兄妹に見守られ最期を迎えた。 ≪家族の状態(目標11~14)≫   看取りまで、娘が中心となり付き添う。娘はしばらく   側を離れることができない様子が見られた。

セクション3≪死亡診断≫のバリアンス抽出によって 変更されたケア 目標11.  娘の悲嘆 → 娘の気持ちに配慮して、十分な時間を提供した。    また、死後のケアを娘の希望に応じてともに行うことで、喪失    の悲嘆への支援を行った。      その経過の中、次第に娘の表情も和らぎ、本人への感謝の     言葉を伝える姿がみられた。 目標12.  娘がキーパーソンではあるが、悲嘆の状況を考慮し、他の家族  に説明を行なった。 目評14.  何かあれば相談窓口として病棟に連絡が欲しいことをご家族に  伝えた。

事例を通してのまとめ ・看取りの時期の認識が主観(個々の感覚的判断)に よるのではなく、客観的指標によってチームで判断され 共有できる。  よるのではなく、客観的指標によってチームで判断され  共有できる。 ・適切な時期での治療やケアの見直しが見落としなくで  きる。(薬剤、投与経路、ケア方法、環境調整 など) ・苦痛症状へのタイムリーな対応と評価ができる。 ・看取りの時期における家族ケアも実践される。  *看取りの支援がチームによって継続的に共通の目標    を持ち行うことができる。